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企業の財務改善に必要な社会保険料削減を考える

社会保険

中小企業経営者が悩む大きな経営課題の大きなものの1つとして、社会保険料負担があります。会社経営の場合、社会保険料は事業主(会社)折半になっていますから、従業員の支払保険料の半分は会社が負担します。しかも、社会保険料の負担は人件費として経費となりますから、売上高の厳しい会社では経常利益が赤字水準になってしまい、会社事業の主体が弱いと判断されることがあります。財務諸表上では、最終利益は経常損益と特別損益で計算されるので、結果としての最終利益は赤字か黒字しか存在しません。そして赤字体質企業に対しての金融機関の融資審査は当然に厳しくなることとなります。

そこでここでは、財務改善として社会保険料を削除する方法について考えてみましょう。

 ご存じの事と思いますが、社会保険料には、

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険(40歳から)
  • 雇用保険
  • 労災保険

があります。そしてこれら社会保険料の計算基準は、4月~6月の給与の平均値を標準報酬月額として、料率を乗じて計算されています。

中小企業の財務改善において、重荷になっている社会保険料を削減する対策は大変重要です。一般的なイメージだと社会保険料削減イコール人件費削減などのリストラを想定するかもしれませんが、決してそうとは限らないのです。経営の重荷となる社会保険料負担をすこしでも軽減するための代表的な方法を5つ紹介します。

 

1.経営陣に非常勤役員を設定する

中小企業の場合の多くはその経営を身内で営む場合が多く、法的には同族会社を形成しています。一方で、社会保険はそのルールとして会社の代表者、役員も従業員と同じく、社会保険に加入して保険料を支払うことを義務づけています。日本年金機構のホームページでは、加入について、法人事業所は従業員の数に関わらず、常時雇用される者は全員が被保険者として厚生年金保険及び健康保険に加入しなければならないと説明しています。

しかし雇用に際して一つのテクニックが実はあるのです。それは役員の中でも、非常勤役員を設定した場合です。年金機構は情法を公にはしていませんが、この場合、会社側としては保険・年金加入をしなくても大丈夫なのです。非常勤ですから、常時、従事するわけでなく、役員報酬もそれほど高額でもなければ、人件費を抑え込むことができます。

つまり、役員構成と人事によって社会保険料削減が実行できるのです。人件費削減というと、真っ先に従業員経費のカットが浮かびますが、役員から変えていく事で職場環境の改善も進みます。通常、中小企業は大企業ほど組織が重たくないはずですから、対応しやすい強みとして考えてみてください。

 

2.就業規則を変更するその1

会社の雇用関係で、労使関係のルールを保持する規則が就業規則です。この就業規則を変更することで社会保険料を削減することが可能になります。これは社会保険料の計算基準について理解していれば可能なものなのです。

社会保険料の基準は毎年の4月~6月までの標準報酬額がその算定基準となっています。したがって、保険料率が変更される4月~6月の給与幅を上げなければ、その年度の社会保険料削減につながることになるのです。通常、一般企業は定期昇給を4月に設定していますから、社会保険料も同時に上る給与体系になっているので、ここを変更するわけです。

簡単に言えば、4月に定期昇給せずに4月~6月を外した7月に定期昇給を実施するのです。このことは経営判断の範囲で変更は可能です。しかし、就業規則の変更は従業員に理解してもらうことが大前提ですし、それまでの定期昇給が制度変更によって後ろにずれることになるので従業員に十分な説明が必要です。

 

3.就業規則を変更するその2:賞与について

賞与を支給する条件を設定している会社は、通常ですと夏と冬に分けての支給となります。賞与の支給基準は就業規則により定めていますが、会社の業績が悪化している場合などは賞与を支給できないと定めている会社も見受けられます。給与と社会保険料負担は正比例していますが、賞与は別途にその金額に応じた保険料負担が必要となります。

社会保険手続きの書類は毎年7月に提出ですので、通常は賞与支給時期を7月~8月にします。そうすると、新しい保険料額は9月から適用されますから、夏の賞与は標準報酬月額の適用外ということになっているのです。また、賞与とは年3回までの支払いをいいますから、支払う金額と標準報酬月額を比較して、仮に年4回以上の賞与支払いにしてしまうと、それは賞与ではなく給与とみなされます。

場合によっては給与として支払ったほうが標準報酬月額を計算して、社会保険削減できる場合もあります。これらは現行制度を理解して行う事が前提です。なお、賞与の社会保険手続き時点は、支払い後5日以内ということも覚えておくと良いでしょう。

 

4. 通勤費

通勤費は税務上では非課税ですが、社会保険料の標準報酬月額の計算には組み入れています。これは通勤途中で労災が起こる場合を想定しているからなのです。したがって通勤費が多いほど、標準報酬月額は高くなりますから負担する社会保険料も当然増えることとなります。

言い換えれば、1カ月分の通勤費を安くすれば社会保険料は下がるわけですから、1カ月定期より3カ月定期、さらには6カ月定期にして、月分で按分すれば計算上の通勤費は安上がりで標準報酬月額を少しは抑え込むことが可能になります。ただし、費用負担における税務上の認識と社会保険料の認識は差異があることを知っておきましょう。こちらも実際には税理士などの専門家に相談して進めてください。

 

中小企業社会保険料削減のまとめ

社会保険料削減は、主に非常勤役員を設定、就業規則変更により昇給時期を変更、通勤費は長期定期券にする、会社会計決算期変更などで可能ということを理解いただけましたでしょうか。会社の社会保険料負担については、今後ますますの高齢化社会の進展、そして老齢化に向けて、社会保険料率の上昇については会社経営上においても注目していくことがますます必要とされています。社会保険料は公課ですから租税に比べ、法的順位の強さは劣後しますが、滞納や分納するなどの状況になればさらに遅延利息を上乗せさせられますから、やはりその負担は重たく経営が苦しくなります。中小企業において従業員は1人ひとりが重要な人材です。社会保険料削減は最終的にリストラという決断に至る前にやっておく財務改善として考えてみてください。