健全な財務体質はキャッシュフローから

 

中小企業では、資金繰りが悪くなると銀行借入に大きく依存するケースが多いのではないでしょうか。しかし借入はいずれ返済しないといけない借金です。したがって借入への依存もいずれ限界が訪れます。では、どうすればいいのでしょうか?財政の健全化のポイントは自社のキャッシュフローの改善から考えてみることなのです。

具体的には、営業・投資・財務のそれぞれの3つのキャッシュフローを改善する対策について考えていきましょう。

そもそも、キャッシュフローとは資金の収支のことです。決して資金の残高ではないことに注意してください。入金と出金を意識して、次のように使い分けます。

  • キャッシュ・イン・フローとは入金・収入のこと
  • キャッシュ・アウト・フローとは出金・支出のこと

一般にキャッシュフロー経営の必要性で強調されるのは、黒字倒産を回避できるというものです。黒字倒産とは、利益が出ているのに資金不足に陥って倒産することで、いわゆる「勘定合って銭足らず。」ということです。では、黒字倒産はなぜ起こってしまうのか。それは、実際の現金の出入りのタイミングと、会計上の利益を計上するタイミングがずれて、利益が出ているけれどもキャッシュ ( 現金 ) がない状態になってしまうことで起こってしまうのです。

この状況を無くし健全な財務体質を維持するためにキャッシュフローを意識することが大事ということなのです。

① 営業活動のキャッシュフローの改善

営業活動のキャッシュフローは、自社の通常の営業活動で発生する本業のビジネスで発生するキャッシュフローです。ここでは特に必要運転資金を指し示す売上債権残高、棚卸資産残高、仕入債務残高の3つの項目についての注意が必要となります。

必要運転資金は次の式で表されます。

◆必要運転資金=売上債権残高+棚卸資産残高-仕入債務残高

この必要運転資金が少なければ少ないほど、自社の資金繰りは改善されます。

例えば、売上債権残高をさらに細分化すると、以下の内容になります。

売上債権残高=売掛金+受取手形-前受金

この式をベースに考えると、それぞれの要素において以下の対応策が考えられます。

  1. 売掛金の回収日数を早めて売掛金を少なくする
  2. 売掛金は期日通り回収して、回収漏れを防ぐ
  3. 受取手形の取引を削減する。もしくは受取手形の取引自体を行わない
  4. 継続サービスを提供する場合は、年払サービス等は前受金でもらう

このように、一つ一つの項目における改善対応策を確認して、いかにキャッシュフロー(資金の回転)を良くするのか、これを意識して取り組むことが大事です。最近では、この必要運転資金を日数で表した指標としてキャッシュ・コンバージョン・サイクル(必要運転資金日数)という言葉が新聞紙上をにぎわす機会も増えてきています。自社の必要運転資金をいかにして削減するのか、今や中小企業だけでなく、上場企業でさえこの数値の改善に必死になっているのが現状なのです。であるならなおさら中小企業はこの数値に敏感でなければならないということです。目標とすべき状態は毎月の返済額はフリーキャッシュフローの範囲に留めるようするのがベストということです。

 

② 投資活動のキャッシュフロー

投資活動のキャッシュフローは文字通り、設備投資をはじめとする自社の設備投資を中心とした資金の流れを表したキャッシュフローです。投資は会社が成長し、持続していくために必要不可欠な活動です。この投資活動のキャッシュフローでは、 フリーキャッシュフローの創出とその投資に対する効果・回収がポイントになります。フリーキャッシュフローとは、営業活動と投資活動を合計した数値のことです。これは、営業活動で出たプラスの範囲内で、投資活動を行うという制限をかけて、フリーキャッシュフローをプラスに維持し、ひいては会社全体のキャッシュフロー改善につなげて会社の財務的な健全性を保つという考え方です。固定資産は購入したら終わりと思っていませんか?決してそうではありません。購入後に自社の事業に対してどれだけの効果を生み出せたのか、そして投資した分を利益やキャッシュで確実に回収できているかどうか投資効果を確認することが重要です。製造業などではサイクル的・定期的に投資活動で設備投資を行って行く必要があります。また、最近はIT投資がどの業種でも不可欠になってきています。しかしながら、IT投資の費用対効果も測定することは非常に難しいのが現状です。投資にはどうしても銀行からの資金調達が必要不可欠になります。そして問題はその後です。実際に借入の返済を行うペースが、自社で生み出す営業・投資のキャッシュフローの合計額で賄えるかどうか、ここがポイントです。借入を行う前に、ぜひこの部分を検証して、そのうえでプラスが出るという判断であればゴーサインを出しても構いません。しかし、返済が厳しいようであれば、設備投資計画を見直すことも必要ではないでしょうか。今は自社の投資活動を定期的にかつ総合的にチェックして定量的に効果測定することが求められています。投資に対する費用対効果が上がれば、自ずとキャッシュフローも改善されていくはずです。さらには、既存の借入金返済額が重たくなっているケースの対策も必要です。少々の額であれば、従来の手元資金で切り抜けられますが、返済額が大きい場合は、既存の借入先に借換えを依頼するなどして毎月の元金返済を削減するか、もしくは同様の内容を他の取引銀行に打診する等して、毎月の元金返済額を自社のフリーキャッシュフローの範囲内に留める努力をしなければなりません。

 

③ 財務活動のキャッシュフロー

中小企業の場合は、増資をして資金調達を行うという活動はほとんど見られません。したがって、財務活動では自ずと銀行からの借入金の調達と返済にその焦点が絞られます。

ここでの改善ポイントもやはり、「自社に見合った借入返済ペース」の把握となります。

銀行に対しては定期的に状況説明を行うことで、信頼関係を築いていくことが重要です。いつ、なぜ、資金が必要なのかをきちんと理由を述べて説明できること。さらにはタイムリーに、自社に都合の悪い事情もきちんと報告することが大事です。

また、中小企業が、銀行と円滑に付き合うために、定期的に提示すると役立つ3つのツールがあります。意外と提出していない会社が多いようです。確認してみましょう。できていなければすぐに取組みをスタートしてください。

3つのツールとは、

  1. 月次決算書
  2. 資金繰りの実績表
  3. 月次業績分析表

です。

健全な財務体質の実現には、会社全体のキャッシュフローの改善が必要で、具体的には営業・投資・財務の3分野でプラスに導くことです。

仮に必要運転資金がいらず、設備投資も自己資金の範囲内で賄えるビジネスモデルであれば、無借金経営を目標としても構いません。むしろそれが理想と言えます。しかし、中小企業のほとんどでは、必要運転資金や設備資金等で資金調達を行わなければならないのが現状です。しかし銀行から借りるだけ借りたとしても、返済元金や利息の負担が大きくなります。一方で、会社の事業がいつも順調に推移すればよいですが、当然のことながらうまくいかなくなることも多く起こります。このような場合に備えて、実質的な無借金経営の状態を目指し、自己資金をどれだけ確保するのかが重要と言えます。一般的な自己資金の確保の目安としては、最低でも月額固定費の3ヵ月分、できれば中小企業では6ヵ月分以上の確保が望まれると言われます。自己資金を確保しておけば、非常事態が発生したとしても、それに耐えるだけの体力が備わっていることです。会社を存続させるため、安定した自己資金の確保=財務の健全性を意識していきましょう。

関連記事

ページ上部へ戻る