棚卸資産には何が含まれるの?棚卸資産の業か方法について解説します。

 

企業にとって棚卸資産は売上に直結している大切な資産です。

この棚卸資産の評価額によっては会社の利益を左右してしまうこともあります。

棚卸資産の評価方法について説明します。

1.棚卸資産とは

棚卸資産とは企業が、販売する目的で一時的に保有している商品・製品・原材料・仕掛品のことを言います。

一般的には、「在庫」とも呼ばれます。

棚卸資産は、貸借対照表の借方項目である「資産の部」の「流動資産」に含まれていて、棚卸資産は、商品・製品として販売されることによって、はじめて会社の収益となります。

 

2.棚卸資産の種類

棚卸資産には商品と貯蔵品と原材料があります。

(1)商品

販売することを目的として、外部の取引先から仕入れた物ときは商品で処理します。

分記法(商品勘定分記法)では、商品の売買取引を仕訳するのに、商品勘定を用います。

(2)貯蔵品

決算時に、未使用の切手などがあるときは貯蔵品で処理します。

少額の場合は、経費の勘定科目で処理しても構いません。

(3) 原材料

製造会社や飲食店など製造に伴う材料や部品や食材など、仕入原価に算入すべき物が期末に棚卸した結果未使用となっている場合、購入した金額で原材料に振り替えます。

 

3.棚卸資産の会計処理(評価方法)

 

棚卸資産については企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」により、評価方法について以下の4種類を定めているます。

(1)個別法
(2)先入先出法
(3)平均法
  ① 総平均法
  ② 移動平均法
(4)売価還元法
  ① 売価還元平均原価法
  ② 売価還元低価法

 

(1)個別法(Specific identification method)

個別法では、棚卸資産の原価を個別に評価します。

販売目的で購入した商品が期末に売れ残った場合に、あらかじめ記録しておいた1つ1つ個別商品の購入単価によって売上原価と期末棚卸資産を評価します。

いわゆる単品管理のことです。

欠点としては、計算が過度に煩雑になるため高価な商品が少数ある場合にしか事実上使用できないことがあげられます。

さらに、個別法では簡単に利益操作を行うことが可能です。

利益操作とは会社が意図的に利益額を変動させることですが、例えば、実際より仕入単価の小さな商品を売ったことにすれば、売上原価が小さくなり利益を大きくすることができます。

逆に、実際より仕入単価の大きな商品を売ったことにすれば、売上原価が大きくなり利益を小さくすることが可能です。

このような操作により各期の納税額を意図的に変更して不正に税金を逃れる可能性があります。

具体的には以下のような計算を行います。

X社の商品の受入・払出の状況は以下の通りです。

なおX社では、扱う商品の個別性が非常に高いため、棚卸資産の評価方法として個別法を採用しています。

4月1日(期首):在庫なし
5月1日:商品A(仕入価格30,000円)を仕入
6月1日:商品B(仕入価格50,000円)を仕入
10月31日:商品Bを販売
1月15日:商品C(仕入価格40,000円)を仕入
3月31日(決算日):在庫は商品Aと商品Cでした。

X社では個別法を採用していますので、個々の商品ごとに仕入価格を管理しておき、販売した商品の払出単価にはその商品の実際の仕入価格を使用します。

したがって、10月31日の商品Bの払出単価は、商品Bの実際の仕入価格である50,000円となります。

また、期末在庫の評価は期末に残っている商品Aと商品Cの実際の仕入価格を使用しますので、期末在庫残高(期末商品棚卸高)は以下の金額となります。

期末商品棚卸高:30,000円(商品A)+40,000円(商品C)=70,000円

 

(2)先入先出法(First-in, First-out method、FIFO、ファイフォ)

先入先出法では、実際の物の流れとは無関係に先に仕入れた物から売れてゆくと考えます。

このため、在庫は常に後から仕入れた物だけが残っていると仮定して、期末棚卸資産を評価します。

物価上昇時には売上原価が小さくなり売上総利益が大きくなるという特徴があります。

物価が上昇すると最近仕入れた商品の販売単価が大きくなるために、売上原価が小さくなり、売上原価が小さくなると、売上金額が一定であるので売上総利益が大きくなります。

このことは損益の計算において考慮する必要があります。

また、期末棚卸資産が時価に比較的近くなるという特徴がありますが、期末に在庫として残っている商品は最近購入した物の割合が高いためです。

Y社の商品の受入・払出の状況は以下の通りです。

4月1日(期首):在庫なし
5月1日:仕入 200個 (@100円)
6月1日:仕入 150個 (@105円)
7月7日:売上 100個
10月10日:仕入 150個 (@102円)
12月12日:売上 250個
3月3日:仕入 50個 (@110円)

先入先出法では、先に仕入れたものから順次払出を行うという計算上の仮定を設定し、この仮定に基づいて商品の払出単価を算定します。

上記の事例において、7月7日の売上商品100個については、最も古い在庫である5月1日に仕入れた在庫200個のうち100個を払い出したものであるとして払出単価・在庫商品の評価を行うことになります。

この方法における商品有高帳は以下の通りです。

日付 概要 受入 払出 残高
5/1 仕入 200個 (@100) 200個 (@100)
6/1 仕入れ 150個 (@105) 200個 (@100)
        150個 (@105)
7/7 売上 100個 (@100) 100個 (@100)
        150個 (@105)
10/10 仕入 150個 (@102) 100個 (@100)
        150個 (@105)
        150個 (@102)
12/12 売上 100個 (@100)  
      150個 (@105) 150個 (@102)
3/3 仕入 50個 (@110) 150個 (@102)
        50個 (@110)

期末在庫の評価は期末に残っている商品の仕入単価を使用しますので、期末在庫残高(期末商品棚卸高)は以下の金額となります。

期末商品棚卸高:150個×@102円+50個×@110円=20,800円

 

(3)平均法

 ①総平均法(Weighted-Average method)

総平均法とは、合計金額を総数で割って総平均単価を算出し、これに期末に残っている個数を掛けることで期末棚卸資産(Ending Inventory)とする方法です。

総平均法は、事務的に簡便な方法ですが、平均原価を算定する対象となる期間をすべて経過するまでその期間の平均原価を算定することができないため、期中に在庫の払出単価を算定することはできません。

Z社の商品の受入・払出の状況は以下の通りです。

4月1日(期首):50個 (@117円)
5月1日:仕入 200個 (@100円)
6月1日:仕入 150個 (@105円)
7月31日:売上 100個
10月10日:仕入 150個 (@102円)
12月12日:売上 250個
3月3日:仕入 50個 (@110円)

 

総平均法では、期末に当期受入棚卸資産原価(期首商品棚卸高+当期仕入高)を当期受入棚卸資産数量(期首商品数量+当期仕入数量)で除し、棚卸資産(商品)1単位当たりの平均原価を算出し、この平均原価をもって棚卸資産の払出単価および期末在庫を評価します。

上記事例の商品1単位当たりの平均原価の計算と商品有高帳は以下の通りです。

日付 概要 受入 払出 残高
4/1 繰越 50個 (@117) 50個
5/1 仕入 200個 (@100) 250個
6/1 仕入 150個 (@105) 400個
7/31 売上 100個 (@104) 300個
10/10 仕入 150個(@102) 450個
12/12 売上 250個 (@104) 200個
3/3 仕入 50個 (@110) 250個
3/31 繰越 250個(@104)

期末在庫の評価も平均原価@104円を使用して算定しますので

期末商品棚卸高:250個×@104円=26,000円

となります。

②移動平均法(Moving-average method)

移動平均法は平均単価を計算する点で総平均法に似ていますが、総平均法が期末に一括して平均単価を求めるのに対して、移動平均法では期中で商品を仕入れる度に平均単価を計算しなおします。

移動平均法は期中でも常に売上原価が把握できるため、管理会計としては有益であり、財務会計としても期末の結果が予想できるのは良い点です。

ただし、そのためには頻繁な計算が求められる(継続記録法)ので採用は困難なことも考えられます。

移動平均法による単価の推移は以下のようになります。

  購入と販売(単価計算)
 4/1   期首在庫(Beginning Inventory):200個、5,000,000円分
   (5,000,000/200=25,000)
 6/20  単価20,000円の物を200個購入
   (25,000×200+20,000×200)/(200+200)=22,500)
7/10   商品を100個販売
   ((22,500×400-22,500×100)/(400-100)=22,500)
 10/18  単価29,000円の物を250個を購入
   ((22,500×300+29,000×250)/(300+250)≒25,454)
 11/5  商品を300個販売
   ((25,454×550-25,454×300)/(550-300)=25,454)

したがって、期末棚卸資産  = 25,454×250 = 6,363,500           

売上原価 = 期首棚卸資産+仕入れ-期末棚卸資産

            = 5,000,000+11,250,000-6,363,500

            = 9,886,500

となります。

(4)売価還元法

① 売価還元平均原価法
② 売価還元低価法

売価還元法は仕入、売上、残高は数量の管理を行なうだけで価格は期中は考慮せず、期末に各商品の値札から実地棚卸高を求めて、各商品グループごとの原価率を乗じて取得原価による棚卸高を逆算する方法です。

売価還元法は原価率を求める計算式の違いで2つに分かれます。

① 売価還元平均原価法の計算式

各商品グループごとの原価率 = (期首棚卸資産 + 当期仕入れ高)/(期首棚卸資産の小売価格 + 当期仕入価格 + 原初値入額 + 値上額 - 値上取消額 - 値下額 + 値下取消額)

② 売価還元低価法の計算式

上記の売価還元平均原価法の計算式から値下額と値下取消額を省いたものとなります。

 

棚卸資産まとめ

上記のように、棚卸資産の評価方法についてはいろいろな方法がありますが、一度採用した評価方法は勝手に変更することはできませんし、一つの棚卸資産には一つの評価方法しか採用することができません。

したがって、業種や在庫に応じた適切な評価方法を選ばないと、実際の利益との誤差が大きくなってしまいますので注意が必要です。

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