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【保存版】経営課題の解決に踏み込む「事業性評価」で資金調達を!

財務改善

 

■ 中小企業の事業資金調達の動向

中小企業の資金調達をとりまく環境が変わってきています。

「平成の徳政令」とも言われた中小企業金融円滑化法が2013年3月に終了しました。この金融機関に対する努力義務は恒久的な措置として適用が続いており、金融機関へのリスケの申込件数は漸減傾向にあるものの、申込件数の95%以上がリスケに応じてもらえる状況が続いています。また、中小企業庁は2016年1月に信用保証協会による「条件変更改善型借換保証」を創設しました。これは返済条件を緩和した既往の保証付き借入金の借り換えを可能にするものです。これらの政策の結果として倒産件数は減少を続けていますが、円滑化法を利用する中小企業は30~40万社、さらに複数回のリスケを行っているのはその8割、事業継続が難しい企業が1割、7割がグレーゾーンにあり、リスケから脱出できる企業は2割程度というのが実態と見られています。これを踏まえると、リスケを実施したにも関わらず経営改善が進まない企業を放置していても状況が悪化していくことは明白ですし、リスケ支援を打ち切り倒産が増えれば金融機関側の経営にも悪影響が出ます。これを打開するために金融機関側では今後、融資とともに経営改善や事業再生に向けた支援に注力していくと思われます。

金融行政の転換とも言われているのが、金融庁による「金融仲介機能のベンチマーク」の公表(2016年9月)、経産省による「ローカルベンチマーク」の策定(2016年3月)です。

前者は取引先企業や地域経済活性化に貢献するための金融機関の自己評価のための評価項目で、とりわけ従来の担保や保証に依存する融資姿勢から事業性評価による融資判断を重視することを金融機関側に求めていることに注目が集まっています。

後者は融資を受ける企業側の経営状態を評価するためのツール的な位置づけで、中小企業の経営力の向上と健全な財務体質を目指すための、企業側と金融機関、加えて支援機関等が同じ視点で対話を深めるためのたたき台としての性格を与えられています。

融資の際の担保や保証を見直すという点では、融資を受ける際に求められる経営者保証について課題解決の方策が進められています。現状では売上が20億円以下の企業の8割超が経営者保証を提供しており、中小企業の積極的な事業展開や事業再生の早期決着を阻害する要因となっています。これを踏まえ日本商工会議所と全国銀行協会が策定した「経営者保証に関するガイドライン」(2014年2月適用)は経営者保証によらない融資への取り組みを金融機関側に求めています。

これらが何を意味するかというと、金融機関による中小企業の資金調達、資金繰りへの支援は融資を受ける企業側の事業の将来性と経営改善の結果により選別されていくことにつながっていきます。

 

■ 日本政策金融公庫と信用保証協会の保証付き融資は中小企業の資金調達の基本

中小企業の資金調達の基本とも言えるのが日本政策金融公庫と信用保証協会による保証付き融資です。

中小企業は385万社のうち日本政策金融公庫を利用しているのは100万社弱、信用保証協会を利用している企業は140万社にのぼります。

中小企業の金融支援を目的とした公的機関である日本政策金融公庫は、貸付対象者の要件と貸付の内容により数十に及ぶ種類の融資制度が設けられています。

無担保、無保証で受けられる融資も多くあり、民間金融機関にくらべて低金利なのが特徴です。地域の商工会議所や商工会との連携が強く、国の中小企業施策と連動し融資に向けての情報提供や経営指導、推薦状の作成などを行っています。

創業や事業承継のための融資や災害など緊急時の救済を目的とした融資は公的融資としての大きな役割を担っています。

設備資金、運転資金ともに資金の使途として融資を受けることができますが、融資期間が数年から20年と長期間にわたる設備投資や資金繰りの改善等を目的とした資金調達手段となります。

信用保証協会も中小企業の資金繰りを円滑化することを目的とした公的機関であり、事業者が民間金融機関から融資を受ける際に信用保証協会がその債務を保証することで、金融機関の審査基準が下がり、調達額や借入条件が有利になります。

自治体が窓口となり信用保証協会と金融機関が協調して融資を行う制度融資(斡旋融資)と金融機関が窓口となり信用保証協会の保証付き融資を行う経由融資の2つのパターンがあります。

制度融資は日本政策金融公庫と同様な形で自治体ごとに様々な融資メニューがあります。経由融資は地域の信用金庫や信用組合、地方銀行などがそれぞれ独自に保証付き融資に対応するものです。

 

■ 金融機関が融資判断を行うための着目点は

公的融資、民間金融機関からの融資をうける場合、それぞれの規定のフォーマットによる申請書類の他に、財務諸表、試算表、資金繰り表、借入残高表、計画書などが求められます。

これらの資料のなかで審査の判断基準となる主要な指標をあげてみます。

貸借対照表では大口の売上債権の信用力(売上債権)、長期滞留在庫の有無や在庫の価値(棚卸資産)、売却可能性と時価との比較(不動産、有価証券、投資等)などが注目ポイントです。

損益計算書では部門別売上高の傾向や計画対比が不採算部門の検出や企業継続性の判断材料となります(売上高)。販売管理費明細の前年対比では人件費、その他固定費の負担の度合いが見られます(営業利益)。特別損益は発生原因と資金流出の有無により業績への影響度を判断します(特別損益)。

資金繰り表では過去6ヶ月と今後6ヶ月について、経常収支から業況を確認し、それに対する財務収支が適正なものであるかどうかを判断します。

借入残高表では各借入先のシェアが確認されます。

計画書等ではその計画の実現可能性が具体的数値をもって評価されます。

民間金融機関ではこれらから算出される様々な指標を用いて融資の判断を決定しています。

 

■ 事業性評価による融資の入り口となるローカルベンチマーク

ローカルベンチマークは二段階の構成となっており、第一段階は支援する側となる金融機関や支援機関が、融資先となる中小企業を取り巻く地域の産業構造や経済の動向等の外部環境を分析し個別企業への対応方針を決定する前提となります。第二段階は融資先となる個別企業の評価を行うための財務情報と非財務情報で、企業側が自己診断として用いるとともに、融資、支援を行う金融機関や支援機関の側も企業を評価する際の活動に組み込むことが期待されるものとなっています。

ローカルベンチマークの財務情報は6つの指標から構成されます。

  1. 売上増加率<売上持続性>
  2. 営業利益率<収益性>
  3. 労働生産性<生産性>
  4. EBITDA(有利子負債倍率)<健全性>
  5. 営業運転資本回転期間<効率性>
  6. 自己資本比率<安全性>

事業から生み出されるキャッシュフローの把握を根幹とし事業価値と成長性、持続性を評価することを目的としています。

また、これらの指標は同業種の平均と比較することができるようになっています。

現時点までの企業の状態をあらわす財務情報に対し、非財務諸情報は財務情報の裏付けと財務情報にあらわれない資産や将来に向けての可能性を評価するためのものです。4つの分析の視点が与えられています。

  1. 「経営者」の着目
  2. 「事業」への着目
  3. 「企業を取り巻く環境・関係者」への着目
  4. 「内部管理体制」への着目

これらの定性情報の具体化により企業の強みや課題を明らかにすることを目的としています。

 

■ 経営者と金融機関の対話のきっかけとなるローカルベンチマーク

これまで資金を調達する側の中小企業と融資を行う側の金融機関は決算書という定量情報をあいだに挟んで債務者と債権者という関係、あるいは、顧客と売込み側という関係から、「お願いする」、「お願いされる」という微妙な関係の上で取引を行ってきました。

融資の可否は決算書という過去の結果が重視されるものであったことから、恣意的に正確とは言えない定量情報となってしまう誘引も存在しています。

これに対しローカルベンチマークにもとづく事業性評価により見えてくる経営課題等を、融資・支援する側が経営者側に提示・共有することで、課題解決に向けた対話の入り口として機能していくことに期待がよせられています。