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繰延資産について

起業家の基礎知識

 

さまざまな支出のなかでも、支出の効果が1年を超えると考えられる場合には、その支出があった年度だけの費用とせず、次年度以降にも償却される資産として扱うことができるものがあります。これを繰延資産と言い、一般の資産の考え方とは異なるように思われますが、1年以上続く効果によってもたらされる売上と対応させる費用という考え方に基づいています。
繰延資産は会計上の繰延資産と税務上の繰延資産とで、分けて考える必要があります。特に会計上の繰延資産では、事業を始める際の費用を翌事業年度に繰り延べすることができるため、先行きが不安な事業主の強い味方となるでしょう。今回はこの繰延資産について詳細にご紹介していきたいと思います。

 

1、繰延資産とは

会社における資産の扱い

繰延資産は節税に向いていると聞いたことはあっても、実際どのようなものなのか、その活用方法について詳しい方は少ないと思います。資産という言葉から、実態のある物だとか手元にある金銭そのものを連想してしまいがちですが、その中には契約金や広告宣伝費など目に見えず意識しにくいものも多く含まれます。そもそも法人における資産は大きく分けて流動資産・固定資産・繰延資産の3種類あり、これらはそれぞれ減価償却資産か非減価償却資産に分けられます。

繰延資産について

国税庁の定めるところによると、繰延資産とは会社や個人事業主の方が支払う支出の中でその支出効果が1年以上に及ぶ場合にその負担を当期だけでなく次事業年度以降に繰り延べることが認められている資産のことです。減価償却と似たような取り扱いをしますが、一部繰り延べ期間などに違いがあります。
繰延資産は特に会社を設立したばかりの時に有効です。設立に要する全ての支出をただ費用として計上してしまっては、初事業年度に大赤字でその後は黒字となり、その分税負担も重くのしかかってきます。このように初期投資による経理上の圧迫は初事業年度以降も大きく、賢く取り扱わないとその後の経営にも影を落とすこととなるでしょう。しかし設立費用を繰延資産として計上することができれば、初事業年度以降も税負担を軽減できるので、事業を始める際の強い味方となってくれます。
上述のように、繰延資産は会社法上における「会計上の繰延資産」と、税法における「税務上の繰延資産」の2つに分けられます。以下ではそれぞれの繰延資産について、対象となる項目、償却方法、期間、限度額などについて解説していきます。

 

2、会計上の繰延資産

対象となる項目

会計上の繰延資産とは、企業会計上で取り扱われる項目の中で繰延資産として計上可能なものを指します。具体的には以下の5項目です。

  1. 創立費
    設立登記の登録免許税や定款作成費、証券会社の取扱手数料をはじめとする、会社設立に関わる費用全般のことです。
  2. 開業費
    会社設立後から営業を開始するまでの間に、広告費や印鑑・名刺を作る費用、接待費など、開業準備のために直接支出する費用です。
  3. 開発費
    新技術または新経営組織の採用、新市場の開発などに要する費用です。
  4. 株式交付費
    新株の発行や自己株の処理等にかかる費用など、株式関連に要する費用です。
  5. 社債発行費
    社債を発行する際に要する費用などです。

繰延資産の償却方法

会計上の繰延資産はその償却(繰り延べ)方法を任意償却と均等償却のいずれかを選択することができます。任意償却の場合はいつでも繰り延べが可能です。他方の均等償却の場合、

  • 創立費、開業費、開発費は5年以内
  • 株式交付費は3年以内
  • 社債発行費は社債の償還期限内
    に償却しなければなりません。

償却上限

償却額の上限額は、任意償却の場合は帳簿上の残存価額です。均等償却の場合、その上限額および期間には特有の計算方法があります。これは税務上の繰延資産と同様の方法となりますので、次項で詳しく解説します。

 

3、税務上の繰延資産

対象となる項目

  • 資源の開発のために特別に支出する費用
  • 共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
  • 公共的施設の設置又は改良のために支出する費用
  • 資産を賃借するための権利金等
  • ノーハウの頭金等
  • 広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
  • スキー場のゲレンデ整備費用
  • 出版権の設定の対価
  • 同業者団体等の加入金
  • 職業運動選手等の契約金等
    等があり詳しい内容は国税庁のホームページで確認してください。

繰延資産の償却方法

税務上の繰延資産は均等償却を用いて償却します。資産の項目によってそれぞれ定められた期間でその資産総額を割り、その期間中は毎年費用として計上することができます。
期間に関しては基本的に、一定の契約をするに当たって支出した費用はその契約期間を基準として算定した期間、固定資産を利用するために支出した費用はその固定資産の耐用年数を基準として算定した期間となります。その他の資産の場合、詳細に区分けされておりますので、それぞれの検討項目に応じて国税庁のホームページを確認してください。

償却上限

償却上限額は

繰延資産の額×当期の月数÷償却期間の月数

として計算します。

少額繰延資産

均等償却を行っていく中で、分割金額が20万円未満となった場合、その全金額が損金算入することが可能です。これを少額繰延資産と言います。

特に税務上の繰延資産に関しては会計処理が難しく、その扱いについては詳しく調べ上げないとなかなか判断がつきません。そのため、知らず知らずのうちに節税のチャンスを失っている場合もあります。

 

4、繰延資産の活用方法

繰延資産の償却方法は大きく分けて3種類ありそれらは繰延資産の種類によって選択することができます。均等償却や任意償却、少額繰延資産のうち、金額によって選択できる少額繰延資産を除くと、均等償却よりも任意償却の方がより節税効果が高いといえます。年による益金に応じて償却額を調整することで、毎年の納税金額を最低限に抑えることが可能です。特に設立したての会社の場合、繰延資産として扱うことのできる支出が多いですし、個人事業主の方々にとって納税額の多寡は死活問題ですので、会計上の繰延資産の任意償却を積極的に活用していきましょう。

 

5、まとめ

今回は繰延資産の基礎知識とその活用方法についてご紹介してきました。繰延資産をはじめ、償却を活用して合法的に節税することのできる項目を見落としてしまうのは非常にもったいないはなしです。正しい知識を持ち、自社の経理の処理をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。