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経営計画書はなぜ必要なのか、どのように策定するべきか

経営分析

 

事業を行っている方が今後の事業の方針や具体的な経営戦略を記したものが経営計画書になります。大企業では必ず作られていますが、中小企業や個人事業主の方は策定していない方も多いのではないでしょうか。そもそも経営計画書は何のために策定するのか、また、策定するにはどのような手段で行うのかについて説明していきます。

 

経営計画書の意義

経営計画を策定するにあたり、経営者の方から「事業はやってみないと分からない部分があり、計画を策定したところで、計画通りいくことなんて少ないから策定する意味がない。」とおっしゃる方がいます。しかし、業績が良い企業ほど、事業規模に関わらず経営計画を策定して、計画に沿った経営を行っています。経営計画を策定していない企業ほど業績が悪い企業が多い傾向があります。

では、経営計画はなぜ重要なのかについてですが、日ごろの生活で計画を策定する機会はたくさんありますが、そもそも計画とは何のために策定するのでしょうか。例えば海外へ1週間旅行に行くとき、多くの方はしっかりと計画を立ててから行きます。飛行機やパスポートの手配、ホテルの予約、現地でどこに行くかなどを決めますよね。これは、旅行を充実させるためという目的があるからではないでしょうか。飛行機の予約をとらなければ、そもそも海外旅行へ行くこともできませんし、ホテルの予約もしなければ、泊る所もありません。1週間という限られた旅行の時間を充実させるために、色々な手続きを行うと思います。

つまり、計画とは目的を達成させるための具体的な手段を表したものといえます。経営計画も考え方は同じであり、目標を達成するための具体的な手段、道筋を示したものとなります。経営計画を策定しないと、目標がないまま漠然と事業を行ったり、目標までの到達手段がわからずに行き当たりばったりの経営を行ってしまう可能性があります。経営計画はよく「地図」と言われることが多いですが、地図なしに目標地点まで行くのと、地図があって目標地点まで行くのとではどちらが効率的か一目瞭然ですよね。以上から経営計画の策定は非常に重要となります。

 

経営計画書の期間

まず、経営計画の期間についてですが、経営計画は一般的に3年から5年程度の期間で策定をされることが多いです。これを中長期経営計画と呼びます。また、これとは別に1年単位で策定される経営計画を短期経営計画と呼びます。中長期経営計画を策定し、1年ごとに短期経営計画を策定し、事業の進捗等により計画の修正を行っていきます。

 

経営計画の具体的な策定手順

① 経営理念・経営ビジョン

経営計画を策定する際にまず決めるのが、経営理念、経営ビジョンです。経営理念とはその企業の存在理由を示したものであり、一度決めたら不変です。経営理念は創業時に決定することが一般的ですので、すでにある場合は問題ありませんが、経営理念がない場合や、あっても従業員に浸透しておらず、お飾りになっている場合等は経営理念の作成、見直しを行いましょう。

次に、経営ビジョンについてですが、経営ビジョンとは将来、企業の目指すべき姿です。例えば、5年後に業界シェアNO1、売上5億、地域一番店になる等々を決めるものです。一言でいうと「目標(ゴール地点)」です。当たり前の話ですが、目標(ゴール地点)を決めておかないと、どこを目指して進めばいいのか分かりません。経営ビジョンは、定性的な表現でもいいですが、同時に定量的(数値面)についてもしっかりと検討しましょう。数値目標の方が、具体的なイメージを持ちやすくなります。

② 内部環境、外部環境分析

目標地点が決まったら、次にスタート地点を決めます。スタート地点とは現在の企業の状態です。目標に対して、現在の企業はどの程度の位置にいるのかを客観的に見れるようにします。内部環境分析とは、自社内の経営資源や業績についての分析です。自社の強みは何か、弱みは何か、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、ノウハウ)はどのようなものがあるか、現在の業績はどのような状況かという点です。これらを書面に落とし込みを行い、客観的に自社についての分析を行います。ここで重要なのは客観的視点です。多くの経営者の方は自社については理解をしているつもりになっていることが多いです。自社の強みや弱み、業績をなんとなく分かっているが、それを明確に説明できないことが多く、他人に説明する際に、根拠を示すことができない場合があります。自社のことを客観的に把握することは意外にも難しいことです。内部環境分析を行う際は、自分だけで行わずに、従業員や取引先、関係者から意見を聞くことが非常に重要です。

次に外部環境分析ですが、これは自社内でコントロールできない項目についての分析です。よく使われるのが、競合相手の状況、市場環境、業界動向、経済動向などです。自社の競合はどんなところか、どのような商品を取扱っており、どんなところが強みなのか、市場はどのくらいの規模があるのか、今後拡大していくのか、市場ニーズはどのように変化していくのか等を調査します。外部環境を分析して、事業にとってチャンスとなるもの、ピンチとなることを明確にします。

③ 事業ドメイン(事業戦略)の設定

次に事業ドメインの設定をします。事業ドメインとは事業領域のことです。事業をどのような範囲で行うのかを表したものになります。事業ドメインを設定する際には、

  • 「だれに(ターゲット)」
  • 「何を(商品・サービス)」
  • 「どのように(販売戦略)」
    の3つの軸を基本に考えます。

経営ビジョンや内部環境分析や外部環境分析で抽出した強みや弱み、チャンスやピンチを考慮しながら、3つの軸を決定していきましょう。「だれに」、「何を」、「どのように」の組み合わせは色々なパターンが出てくると思います。その組み合わせを事業戦略と呼びます。複数の事業戦略について、すべて同時に実行することが出来ればよいですが、経営資源が限られていることもありますので、現実的にはなかなか難しいです。その際は、事業戦略ごとに評価をし、実行する事業戦略を決定します。評価基準は様々ですが、例えば、

  • 実現可能性
  • 経営理念との整合性
  • 自社の強みの活用度
  • 成長性
    などがあげられます。

④ 課題の抽出

事業戦略が決定した後は、その事業戦略を実行するにあたり、どのような課題があるかを検討します。課題については、

  • 「ヒト」
  • 「モノ」
  • 「カネ」
  • 「情報・ノウハウ」
    の視点で検討すると抽出しやすいです。

例えば、「ヒト」であれば、どのような能力をもった人材を育てる必要がある、人材の採用が必要、従業員のモチベーションアップ、
「モノ」であれば、どのような設備投資が必要か、不要な設備はどのようなものか、
「カネ」であれば、事業資金がいくら足りないか、いつまでに調達をしないといけないか、
「情報・ノウハウ」であれば、事業を行ううえでの必要なスキルは何か、どのような情報を収集する必要があるかといった感じです。

それぞれの課題を抽出し、優先して解決するべきものを明確にするために、課題に優先順位をつけましょう。優先順位が高い課題から解決策の方法を検討していきます。

⑤ アクションプランの策定

課題が抽出されたら、アクションプランを策定します。アクションプランとは、実行計画と呼ばれるものです。計画を策定して、実行しなければ、それは絵に描いた餅で終わってしまいます。そうならいためにも、抽出した課題について

  • 「誰が」
  • 「いつまでに」
  • 「何を」
  • 「どうやって」
    行うのかといった項目を検討しましょう。

イメージとしてはアクションプランをみれば行動すべきことが分かるといいです。アクションプランには期間をあらかじめ決めて置き、(1カ月後、2カ月後、3カ月後等)その時点で、再度修正を行っていきます。アクションプランの管理がしっかりできれば、目標に対して現在、どのような位置にいるのかも明確になってきます。アクションプランについては、日ごろから目に入る場所に置いておき、いつでも確認できる状態にしましょう。

 

経営計画書について まとめ

以上が基本的な経営計画の作成手順です。経営計画書は事業を行う上で非常に重要です。また、策定しただけでは意味がありません。どんなに良い計画をたててもそれを実行しなければ意味がありません。また、計画を実行して、計画と実績を比較し、振り返りをしていくことも非常に大切です。

通常、経営計画には販売計画、資金計画等の数値的な部分が含まれる計画書を作成します。今回は数値計画について触れていませんが、数値計画の作成も非常に重要です。ただ、上記の点を先に検討しないと、実現が難しい数値目標や根拠のない数値目標になりがちであるため、数値計画より先に上記のことを検討することをおすすめします。