中小企業の財務改善策に社会保険料削減を使うテクニックを紹介!

社会保険

 

中小企業経営者が悩む事実の1つとして、社会保険料負担があります。社会保険料は事業主(会社)折半になっていますから、支払保険料の半分は会社負担になります。

社会保険料負担は人件費と同様に経費ですから、経常利益が赤字水準になると、会社事業の主体が弱いと判断されます。財務諸表では、最終利益は経常損益と特別損益(主力事業とは関係ない会社の損益)を計算します。結果として最終利益は赤字か黒字しか存在しません。赤字体質企業に対しては融資審査が厳しくなります。そこで、財務改善として社会保険料を削除する方法がありますから、テクニックを紹介します。

企業の財務改善に必要な社会保険料削減の7つのテクニック!

社会保険料には、健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳から)、雇用保険、労災保険があります。社会保険料の計算基準は、4月~6月の給与の平均値を標準報酬月額として、料率を乗じて計算します。

中小企業の財務改善において、重荷になっている社会保険料を削減する方法があります。一般的な考え方ですと、社会保険料削減は人件費削減などのリストラを想定するかもしれませんが、決してそうとは限りません。

ここでは、リストラという手法に頼らずに、重荷になっている社会保険料負担を削る方法を紹介します。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150515-01.html
(日本年金機構)

 

1.経営陣に非常勤役員を設定する

中小企業は身内で営む場合が多く、法的に同族会社を形成します。会社の代表者はもちろん、役員も従業員と同じく、社会保険に加入して保険料を支払うことを義務づけられています。

日本年金機構のホームページではそう説明していますが、あまり気づかれない雇用があります。それは役員の中でも、非常勤役員を設定した場合です。これらは年金機構が情報開示していませんが、会社側として保険・年金加入をしなくても大丈夫です。しかも非常勤ですから、常時従事するわけではなく、役員報酬が高額でもないとしたら、給与などの人件費を抑え込むことができます。

経営陣は、会社の方針を決めますから、まずは役員構成と人事によって社会保険料削減を実行しましょう。実質の労働部隊は従業員ですから、従業員経費のカットを先に考えるのではなく、役員から意識を持って変えることが職場環境も改善できます。中小企業は大企業ほど組織が重たくありませんから、こうしたことに柔軟に対応することができるという強みを活かしましょう。

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150518.files/1101.pdf
(日本年金機構)

 

2.試用期間中でも社会保険加入は必要だから、採用前の雇用契約を工夫

会社は、本採用する前に試用期間を設定する場合がよくあります。試用期間中は社会保険加入が必要ですから、本採用になる前から加入する必要があります。ところが中小企業であっても採用したところで離職率が高い職場は、試用期間中でも社会保険加入手続きをしない会社は多いのが実態です。手続きしてすぐ辞められてしまうと、何度も社会保険事務所に行って社会保険資格取得と消失手続きの繰り返しになるからです。

事務が煩雑になりすぎ、手続きを社会保険労務士に委託すると、つどつど手数料を取られてしまいます。経営者にとって、ルール違反をすると社会的によくない立場になりますから、採用時には注意を要します。しかし社会保険料をできるだけ削減したければ、試用期間から本採用という手順より、雇用契約の内容で乗り切ります。

紹介派遣などを利用すると、派遣会社に手数料を支払わなければなりませんが、派遣契約は社会保険料を支払わなくて済みます。どちらかというと派遣型契約社員みたいなもので社会保険料は派遣会社が負担します。そしてやがて本採用(正規雇用)に持って行くという手順です。

正規雇用社員になる前の雇用条件設定により、社会保険料を削減するというテクニックです。雇用は長く勤めてくれるかどうかが重点でありますから、社会保険加入手続きを行ったにかかわらず、長く勤めずすぐに辞められてはたまりません。

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyonushi/oshirase/20150521-08.files/tottori002.pdf
(日本年金機構)

 

3.就業規則を変更する

会社の雇用関係で、労使関係のルールを保持する規則が就業規則です。重たく圧し掛かってくる社会保険料を削減する方法として、就業規則の変更を行います。社会保険料の計算基準を知っていればできるテクニックです。

毎年4~6月までの標準報酬額が算定基準ですから、保険料率が変更される4~6月の給与幅を上げなかったら、その年度の社会保険料削減につながります。通常、一般企業は定期昇給を4月に設定していますから、社会保険料も同時に上る給与体系になっているため、そこを変更するテクニックです。

簡単に言えば、4月に定期昇給せず4~6月を外した7月に昇給させる方法は経営および会社内の判断で可能です。この考えは、夏になると賞与の季節になりますから、月給のおよそ2カ月分ほど賞与分の社会保険料負担を考えなければならず、社会保険料の削減にもつながってきます。賞与に関しては次の4を参照してください。

 

4.就業規則の変更(賞与について)

賞与を支給する条件を設定している会社は、通常、夏と冬に分けて支給します。賞与の支給基準は就業規則により定めていますが、業績が悪化していると支給できないと定めている会社もあります。

会社の経営方針は、取締役会、株主総会の承認という手続きに基づいて行われますが、中小企業の株は従業員では持ち得ない事情があります。中小企業の条件は製造業だと、従業員数が300人以下となっていますが、上場会社みたいに従業員にストックオプション制度を導入できない事情はあります。

給与と社会保険料負担は正比例しますが、賞与は別途金額に応じた保険料負担が必要です。社会保険手続き書類は毎年7月に提出ですから、賞与支給時期は7月~8月にします。新しい保険料額は9月から適用されますから、夏の賞与は標準報酬月額の適用外になります。

賞与とは年3回支払いをいいますので、支払う金額と標準報酬月額を比較して、年4回以上の賞与支払いにすると、賞与ではなく給与とみなされます。給与として支払ったほうが標準報酬月額を計算して、社会保険削減できる場合もあります。これらは現行法のテクニックを駆使したやり方であり、社会保険労務士の専門分野ですので、相談してみても良いでしょう。

なお、賞与の社会保険手続き時点は、支払い後5日以内ということを覚えておきましょう。

 

5.会社の決算期を変更する

社会保険料は4月~6月の給与平均を標準報酬月額として計算します。会社の決算期は3月決算が標準型ですが、9月または12月決算の会社もよく見かけます。社会保険料は9月から適用されますので、年度決算月をずらすことはできます。もちろん会社内で一定の手続きを踏まなければいけませんが、会社の方針で決算月は変更できます。

これは社会保険料を大きく負担する会社には有効です。少なくとも社会保険料負担を抑え込むと経常利益に影響しますから、決算期変更でタイムラグを使うテクニックです。タイムラグの利用で単年度の社会保険料削減を決算書上で見せることができます。

ただし、社会保険料が毎年上昇すること、給与水準が毎年上昇して標準報酬月額水準が高くなることを条件とします。同時に決算期変更は何度もするべきではないという会計原則を知っておくべきでもあります。

 

6. 通勤費

通勤費は税務上では非課税ですが、なぜか社会保険料の標準報酬月額の計算に組み入れます。通勤途中で労災が起こる場合を想定しているからです。通勤費が多いほど、標準報酬月額は高くなりますから負担する社会保険料も増えます。

計算式からもわかる通り、1カ月分の通勤費を安くすれば良いわけです。つまり、1カ月定期より3カ月定期。さらに6カ月定期にすれば値段は安いですので、月分で按分すれば計算上の通勤費は安上がりで標準報酬月額を少しは抑え込むことができます。費用負担における税務上の認識と社会保険料の認識は差異があることを知っておきましょう。

社会保険料の計算式と考え方については、「社会保険計算方法は?社会保険の中味と計算式を知る」の記事でも詳細に解説しています。

 

7. 税制改正による配偶者に係る法的テクニックを活用

2018年1月1日から税制改正によって、配偶者の年収が103万円以下の上限が150万円以下ならば配偶者控除が受けられることになり、38万円控除できる配偶者の年収幅が拡充されました。

税制テクニックとして減税となる場合がありますが、夫の収入が1,120万円を超えると、妻の年収により増税または減税になったりします。社会保険料控除については、妻の年収が130万円を超えると、夫の社会保険扶養から外れるため、配偶者自身が社会保険加入者として保険料を負担しなければならなくなります。

社会保険料削減について、妻をパート従業員として使用すると、税金と併せて130万円以下の年収で収まるように、雇用主と従業員で協議することができます。社会保険料納付義務をなくす方法です。しかし、それでは妻の配偶者控除を利用する世帯年収の確保テクニックとして、税制基準にするか、社会保険料基準にするかに変わるだけで、会社側の給与計算で妻の年収を調整する実情になります。

中小企業において高額所得者は別として、一般的に実質減税を利用し保険料負担を失くすことにより、従業員の負担額を減らすことはできますが、家計の事情は様々ですから雇用する会社側としてやるべきことは、事前に労使で協議しておくほうが良いでしょう。

http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/193diet/st290203g.pdf
(財務省)

https://www.nenkin.go.jp/info/uneihyogikai/dai05kai.files/05.pdf
(日本年金機構)

 

中小企業社会保険料削減まとめ

社会保険料削減は、主に非常勤役員を設定、雇用契約を工夫、就業規則変更により昇給時期を変更、会社会計決算期変更、通勤費は長期定期券、配偶者控除に係る法的テクニック活用などがあります。

会社の社会保険料負担と人件費は正比例しますので、今後高齢化社会から老齢化に向けて、社会保険料率の改定について毎年注視しなければなりません。社会保険料は公課のため、租税に比べて法的順位の強さは劣後します。滞納して分納するなどの状況になれば遅延利息を上乗せさせられますので、負担だけが重くなり経営が苦しくなります。

経営者として、社会保険料削減は「リストラ」という最終的な決断に至る前にやっておく財務改善です。中小企業において従業員は1人ひとりが重要な人材です。新たに採用するとしても、人手不足といわれる時代でもあります。財務改善は会社内部の整理改善ですから、経営陣が率先してやるべき仕事と言えるのです。

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