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起業における自己責任とは何か?

起業家の基礎知識

起業する際には多くのリスクがありますが、起業した結果会社の運営が上手くいかなかった場合には、その結果責任は原則として起業をした自分自身にあります。

起業して順調に会社の業績が良かった場合にも、起業した人はその利益を享受することができるので、企業のリスクとリターンはどちらも自己責任の結果だと言えるでしょう。

起業における自己責任の重要性について解説します。

 

起業のリスクと自己責任

自分で会社を起業しようとしているのならば、起業する前に以下の5つのリスクについてはあらかじめ考えておくべきでしょう。

(1) 社長が全ての責任を負うリスク
(2) お金を払わなければならないリスク
(3) 法律に違反してしまうリスク
(4) 災害に見舞われてしまうリスク
(5) 人間関係が壊れるリスク

(1)全責任を社長が負わなければならない

独立して会社の経営を行うということは、原則として、自分自身の判断で会社の運営を行う自由を得ることと同時に、何の後ろ盾もなく競争の激しいビジネスという荒海に会社を漕ぎ出さなければならないことに他なりません。

経営者として社長が判断できるという権限はありますが、その判断が誤っていて会社の業績がおかしくなってもその責任は社長にあるのです。

もし従業員が誤った決定をしたとしても、使用者として社長が責任から逃れられるとういことはありません。

その場合には、会社として最終決定をする前に社長がチェックできる体制が構築できていないという点において責任が発生します。

(2)取引先や従業員にお金を支払わなければならない

起業すれば商品やサービスの販売などで収入が発生しますが、その反面支払わなければいけない費用なども発生します。

個人事業主のように自分一人で仕事をしている場合には、極論すれば、自分の収入だけ考えていれば良かったと言えます。

しかし、自分以外の人間を雇う場合には、従業員本人だけでなくその家族のことも考えてきちんと給与を支払わなければいけません。

安易な起業をして従業員を雇うような場合には、その家族も含めて多くの人の人生や生活がかかっていることを肝に銘じておく必要があります。

従業員の給料だけではなく、会社の家賃が払えない、銀行に借金を返済することができない、取引先に仕入れ代金を支払うことが出来ない、といったお金を払うことができないリスクというものもあります。

一般的には、様々な支払を念頭におき準備をしてから起業することが望ましいのですが、全ての企業が資金的に余裕のある中で実行されているわけではありません。

少なくとも、起業した会社が軌道に乗るまでは、会社は緊縮財政を保つような運営をすることと、いざという時のライフライン(資金を調達する手段)を確保しておくことが必要です。

初めから高い家賃のオフィスビルに入居したり、必要以上の資金を金融機関から借り入れたりしない、などの観点から起業する人間として将来の経営に対する自己責任を果たすように努めましょう。

(3)会社が法律を犯してしまう

多くの場合、法律違反を犯そうと思って違反をしてしまうケースは少ないでしょう。

もしわかっていて法律違反をしてしまった場合には、その行為は「故意」とみなされてしまいますので、場合によってはより重い処罰が下されることになります。

会社としての法律違反は、業務上の過失ということで社長が知らないところで発生することも十分に考えれますが、使用者責任が認められれば社長も逮捕されてしまう可能性もあります。

例えば、工場の社員が酒に酔って喧嘩をして相手に怪我を負わせてしまったようなケースを考えると、就業時間中に酒を飲んでいたのはどういった経緯なのか、会社として被害者に真摯に謝意を伝えたのか、などを考慮して、社長に対する法律的な責任の取らせ方も変わってくるでしょう。

また、社長が知らないところで法律違反が発生しやすいのは、著作権法違反です。

無体財産と言われる資産に対する侵害は昨今多くの企業が注意を払っている分野ですが、中小企業であっても十分に注意をしなければいけません。

特に開発などの事業を手掛けている会社であれば、弁護士や弁理士との緊密な連絡を取ることと同時に、社長自身も積極的にこの分野に対する知見を増やす努力をするべきでしょう。

また、中小企業、特にオーナー企業で問題になるのが脱税です。

自分で頑張って稼いだお金をなんで税務署に持っていかれなきゃいけないんだ、と思っている人は多いかもしれません。

しかし、脱税となるとそれはれっきとした犯罪です。

対応如何では重加算税が課されてしまうこともあります。

節税であれば、税法などの活用によって納付税額を少なくすることは適法ですが、法律に違反して税金を払わないのはいただけません。

(4)災害に遭ってしまうリスク

会社を経営している場合に、どうしても避けられないのは自然災害に遭遇してしまう可能性です。

例えば東日本大震災のような大きな自然災害にあってしまった場合には、会社そのものや従業員までも失ってしまうリスクがあります。

もちろん命が助かることが最優先ではありますが、災害が去った後に残るのはどうやって会社を再建しようか、どうやって日々の糧を稼ごうか、という切実な問題だったりするのが真実です。

日本ではこのところ大きな自然災害が多かったことから、多くの企業で地震保険などの保険に加入することで少しでも被害を少なくしようという動きが一般的になってきています。

中小企業にとっては保険料の支払いは決して軽い負担ではありませんが、機械設備などだけでなく工場社屋など何もかもなくしてしまった被災経験者からすれば、保険は大きな安心材料と言えるでしょう。

(5)人間関係を壊してしまう

起業した会社が好調な時には多くの人があなたの周りには集まるでしょうし、あなたもその期待に十分に応えることができるでしょう。

しかし、会社の業況に陰りが見え始めると、少しずつ人が離れていき、気が付くと自分一人になっていたということがあるかもしれません。

従業員にとっては、働いてきちんと給料を支払ってくれるから、あなたの会社で仕事をしているのです。

給料が支払われないようになってからいつまでもそこで働き続けるような人はありえないでしょう。

多くの友達は、あなたが苦境に陥った時に頑張れと励ましてくれるでしょう。

しかし、借金の申し込みをしたり借金返済の延長をお願いしたりしても、今まで通り付き合ってくれる友人がどのくらいいるでしょうか。

口では「仕方ないよ」「もう少し頑張ればなんとかなるよ」と言ってくれたとしても、内心ではもう勘弁してほしいと思っているかもしれません。

起業した場合には、友人や知人を巻き込んで、それまでに築いてきた人間関係を壊してしまうリスクがあることは忘れないようにしましょう。

そして、会社の取引先にとっても、支払がきちんと行われないようになれば取引は打ち切りにせざるを得ませんし、この先も二度と取引ができない可能性があります。

 

自己責任まとめ

起業におけるリスクと自己責任の発生については上記に述べてきたとおりですが、現在ではリスクを発生させないようにするという観点よりも、発生したリスクをどのように最小限の影響に留めるかという観点が重要になってきています。

あらかじめ予見できるリスクであればその発生可能性を抑制することが重要かもしれませんが、そうでないリスク(例えば、自然災害など)の場合はそのリスクが顕在化した場合の対策手法の検討と費用の見積もりがより求められことになります。