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社会保険料額表とは? 種類や利用方法について解説します

社会保険料額表の利用方法を説明するイメージ画像 社会保険

社会保険料の種類毎にその料額を定めている表があり、その表を確認すれば支払うべき社会保険料の金額を把握することができます。各社会保険料の金額表について、利用方法などを詳しく説明します。

1.社会保険の種類と社会保険料額表

広義の社会保険には、(1)健康保険、(2)厚生年金保険、(3)介護保険、(4)雇用保険、(5)労災保険、がありますが、それぞれの保険によって支払うべき保険料が定められています。各保険料の決定方法は以下の通りです。

社会保険の種類

保険料の決定方法等

(1)健康保険

「健康保険料 標準報酬月額 × 保険料率 × 0.5*」

*労使で折半して負担

(2)厚生年金保険

「厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率 × 0.5*」

*労使で折半して負担

(3)介護保険

「介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率 × 0.5*」

*労使で折半して負担

(4)雇用保険

「雇用保険料=毎月の給与×雇用保険料率**」

**業種により労使の負担割合が異なる

(5)労災保険

「労働保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率***」

***全額会社が負担

社会保険料の計算式は上記の通りですが、具体的に社会保険毎に社会保険料額表が定められているかどうかを確認してみましょう。

(1)健康保険

健康保険については、運営主体ごとに社会保険料率表が定められています。例えば、日本最大の保険者(医療保険引受人)である「全国健康保険協会」(略称:協会けんぽ」の場合では、都道府県毎に健康保険料の料額表が設定されています。

(参考:平成314月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)、https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040213tokyo.pdf

上記の協会けんぽ(東京都)の場合は、標準報酬月額によって等級を1~50等級に分けて保険料額を決めています。

例えば、平成30年の4月から平成306月(3ヶ月間)の収入が、4月:21万円、5月:25万円、6月:23万円、の場合は報酬月額の平均は23万円となります。上記の保険料額表に照合すると、平成309月~令和元年8月の等級は19等級となり、39歳以下であれば、健康保険料は11,880円となります。

なお、 被保険者負担分(表の折半額の欄)に円未満の端数がある場合には以下のように対応します。

①事業主が、給与から被保険者負担分を控除する場合には、被保険者負担分の端数が50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円とします。

②被保険者が、被保険者負担分を事業主に対して現金で支払う場合には、被保険者負担分の端数が50銭未満の場合は切り捨て、50銭以上の場合は切り上げて1円とします。

 ただし、上記①、②にかかわらず、事業主と被保険者との間で特約が存在する場合には、特約に基づいて端数処理をすることが可能です。

また、7月以降に、特定の従業員の3カ月の平均報酬月額が2等級以上変動するような場合には、月額変更届を提出して、3カ月経過後に等級を変更する必要があります。

健康保険については上記の協会けんぽ以外に、会社で独立した健康保険組合を設立しているケースも多いと思われますが、その場合には健康保険組合毎に健康保険料額表を策定しているものと考えられます。

その場合には、会社で健康保険料を算出する際に当該健康保険組合が設定している健康保険料額表を確りと注意深く確認することが重要です。

(2)厚生年金保険

厚生年金保険料の料率に関しては、現在(201910月時点)、一律18.30%に固定されています。健康保険と同様に、厚生年金保険料額表が標準報酬額に基づいて定められています。なお、厚生年金は、「政府が管掌する」と定められており、厚生労働大臣がその責任者となっていますが、実際の運営事務の大部分が日本年金機構に委任・委託されています。

(参考:平成314月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)、https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040213tokyo.pdf

上記の例を用いて厚生年金の保険料額表(東京都)を確認してみると、平均の報酬月額は同じく23万円なので、上記の保険料額表に照合すると、平成309月~令和元年8月の等級は16等級となり、39歳以下であれば、厚生年金保険料は21,960円となります。

なお、厚生年金保険が適用されている事業所の事業主は、厚生年金保険料の他に児童手当の支給に要する費用等の一部を「子ども・子育て拠出金」として拠出する必要があります。従業員には負担がありません。

子ども・子育て拠出金の拠出金額は、それぞれの被保険者の厚生年金保険の標準報酬月額及び標準賞与額に、拠出金率(平成304月以降は、0.29%)を乗じた金額の総額となっています。

(3)介護保険

介護保険料は労使で折半の負担とされており、40歳から64歳までの従業員(第2号被保険者)は健康保険料と合算して徴収されています。また、協会けんぽの場合には、毎年介護保険料率は変動します。ただし、料率は全国一律となっています。なお、健康保険料のように都道府県別の差異はありません。

介護保険の保険者は、原則として、市町村及び特別区ですが、厚生労働省が広域化を推進してきたため、広域連合や一部事務組合といった主体で運営されている事例も多いようです。

(参考:平成314月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)、https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040213tokyo.pdf

なお、上記の保険料額表にも記載されていますが、介護保険の第2号被保険者は、40歳から64歳までの人が対象となり、組合けんぽ(東京)の場合は、健康保険料率(9.90%)に、介護保険料率(全国一律の1.73%)が加算されます。

(4)雇用保険

雇用保険と(5)労災保険を合わせて「労働保険」と呼ぶこともありますが、労働保険に関しては上記(1)~(3)の狭義の社会保険とは異なり、標準報酬額を利用して保険料額を計算はしません。「毎月の給与」や「賃金総額」を利用します。

雇用保険については、保険料額表はありませんが、下記のように厚生労働省から「平成31年度の雇用保険料率について」が公表されています。

(参考:平成31年度の雇用保険料率について、https://www.mhlw.go.jp/content/000484772.pdf

上記の参考の通り、失業等給付の保険料率は、労働者と事業主の負担はそれぞれ3/1,000となっています。なお、農林水産・清酒製造の事業及び建設の事業は4/1,000です。

雇用保険二事業の保険料率(事業主のみが負担)も3/1,000となっています。(建設の事業は4/1,000です。

(5)労災保険

「労災保険は、政府が、これを管掌する。」と定められており、厚生労働大臣がその責任者となっています。労災保険制度の管理運営は厚生労働省の労働基準局が行っていますが、地方では適用、保険料徴収、費用徴収、二次健康診断等給付の事務、に関して都道府県労働局が実施しています。

保険給付(除く、二次健康診断等給付)、特別支給金、労災就学等援護費、休業補償特別援護金、などの事務は労働基準監督署が執り行っています。

労災保険については業種によって細かく保険料率が定められています。なお、従業員には負担義務はないので、全額が会社負担です。

(参考:労災保険率(平成30年4⽉1⽇改定)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000489156.pdf

 

<まとめ>

狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)についてはそれぞれ社会保険料額表が定められていますが、労働保険に関しては料率表はあるものの料額表には存在しない点には留意してください。正しい社会保険料額を従業員の給与・賞与から控除するためには、社会保険料額表のどの等級にその従業員(の標準報酬額)が該当するのかよく注意して確認することが必要です。