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コロナ禍における新しい在宅医療ビジネスの将来性とは

コロナ禍における新しい在宅医療ビジネス 業務改善

日本においては65歳以上の高齢者の増加と労働人口の減少(いわゆる、少子高齢化の進展)が顕著になると言われている2040年を念頭ににおいて、「日常的に診察してもらっている医師がその立場を活かした役目を発揮することが可能な、適時適切なオンラインによる診療などの医療アクセスの手段の確保」と「地域内で病院や医師が連携して専門的な医療相談(コンサルテーション)を実施することを目標としていて、2025年までに、

①「どんな場所にいても(場所を問わずに)患者にとって必要な医療を適時適切に」

  • 無限にあるわけではない医療的なリソースを最適に配置すること(医療従事者、入院ベッド、医療機器、など)⇒医療計画において「地域医療構想」や「医師の確保計画」などを明示することにより、特定の分野に偏ることなく、総合的な医療提供体制の改革が可能に
  • 日常的なかかりつけの医師がその役目を発揮するために必要な医療情報のネットワーク整備をベースとした、地域医療の連携や適時適切なオンラインによる診療実施

②医師・医療従事者の働き方改革で、より質が高く安全で効率的な医療へ

  • 医療従事者の適切な人員配置やICTなどのデジタル技術等を利用することにより、チーム医療を推進するとともに業務の効率化も図る
  • 医療のクオリティ(質)や安全確保に役に立つような医療従事者自身の健康を確保することや負担を軽減させること
  • 業務を、適切な部署などに移管したり(タスク・シフティング)、複数の部署で担当するように共同化したり(タスク・シェアリング)、することを浸透させること

に着手する、としています。(平成31年4月24日、第66回社会保障審議会医療部会(資料1-1)「医療提供体制の改革について」

上記のような構想への取組が論じられていたところに、今回の新型コロナ感染症の拡大がさらに影響を及ぼすことになっており、医療体制の提供に関する考え方も大きく変化しています。そこで、コロナ禍において、特に在宅医療という医療提供体制が大きな注目を浴びるととともに、この「在宅医療」における新たなビジネスチャンスを狙う企業も増えいます。

本稿では、コロナ禍において新たに生まれた在宅医療ビジネスとは、中小企業と在宅医療ビジネスとのかかわり、在宅医療の課題と将来について、などについて詳しく説明します。

1.コロナ禍における医療提供体制について

新型コロナ感染症の拡大により、多くの病院では外来診療を回避・抑制するようになっています。従来、日本の医療機関においては、外来診療と入院診療の2つが大きな柱となる機能であったと言えます。

最近では(コロナ以前では)、ベッド数(病床数)が多い大規模な病院では、「専門外来」を外来診療の中心に据えており、軽医療の比率を減少させる、という傾向がありました。このコロナ禍において患者の数が減っているのは「軽医療」です。

よって、「専門外来」の比率が多い大規模な大病院では、新型コロナを理由とする外来診療が減少している影響は必ずしも大きない、と言えるのです。他方で、軽医療の比率が多い中小規模の病院や個人診療所などにおいては、新型コロナ感染症の影響が病院の経営を直撃・圧迫している、という状態なのです。

次いで、入院診療の状況についてみてみましょう。入院診療に関しては、新型コロナ感染症の患者を受け入れている医療機関とそうではない(受け入れていない)医療機関とに区分して考える必要があります。

新型コロナ感染症の患者を受け入れている医療機関においては、新型コロナ感染症の患者専用のベッド(病床)を確保することやナースなどの医療従事者の配置の影響により、新型コロナ感染症以外の患者を診療に行うためのベッド(病床)や要員が減少しており、手術などの収益源となる医療サービスを行うことが後回しになっているのが現状です。したがって、新型コロナ感染症の影響により、新型コロナ感染症の患者を受け入れている病院の方が経営難に陥ってしまう、という現象が発生しているのです。

ただし、新型コロナ感染症の患者を受け入れていないような医療機関であっても、新型コロナ感染症の影響が皆無なわけではありません。医療機関における機能の細分化により、回復期病院(急性期病院から回復途上の入院患者の転院を受け入れている病院、のこと)では、急性期病院から転院してくる患者数が急激に減少している、という現象が発生しています。

また、新型コロナ感染症の患者は、急性期病院から回復期病院に転院することも少ないと考えられます。回復期病院に限定した話ではありますが、入院患者が急激に減少するような事態はこれまでになかった事態である、と言えるのです。

一方、軽医療においては、そもそも論として、医療サービスが不要だったこと(不要・過剰なサービスを提供していること)が明白になってしまうような場合もあるようです。具体例としては、アレルギー性の鼻炎治療を受けていた患者が、病院・診療所などへの通うことを控えることにより、処方箋が不要で買うことが可能なOTC医薬品(薬局・ドラッグストアで自分で選んで買える「要指導医薬品」と「一般用医薬品」のこと)を使用するようにしたり、発熱した子供がいても自宅で様子をみたりする場合、を挙げることが可能です。

このような軽症の患者に隠れて、重症の疾病が潜んでいるような可能性もゼロではありませんが、極端に死亡者の人数が増加していない現状においては、患者に対して積極的に医療機関の受診を促進するような状況ではないと考えられるので、患者自主的な判断に任せられることになります。

2.コロナ禍において新たに生まれた在宅型医療とは

このような中で大きく注目を集めているのが、「オンライン診療」です。オンライン診療は在宅医療の一種ですが、従来から在宅医療という概念は存在していて、わかりやすいのが「往診」でしょう。外出することが難しい病人や高齢者を対象に、普段はかかりつけのお医者さんが自宅まで診察に出向いてくれる診察方法のことを「往診」と言います。

しかし、「オンライン診療」とは、PC(パソコン)やスマホなどを利用して、直接患者と医師が対面することなく(非対面の)診察・診療を受けることができるものです。もともとは、離島や過疎地域などの医師が常駐していない環境に対応するために誕生したものですが、この度の新型コロナ感染症の拡大で、医師・看護師などの医療従事者と患者が直接接触することなく、診察・診療を受けたい、というニーズが高まっています。つまり、オンライン診療のニーズが多くはないと考えられていた都市部においても新たなニーズが誕生した、ともいえるのです。

対面診療においては、視診(医師が患者の顔色を見ること)、聴診(聴診器を当てる診察)、触診(脈をとること)、などを行うことにより症状を判断していましたが、非対面で実施されるオンライン診療では、こういった診察を全て代わって行うことは困難である、といわれてきました。

しかしながら、高血圧症・糖尿病といったの長期入院患者のように、これまでに診断ができており、薬剤の投与や注射など継続的に治療を実施しているような患者に関しては、毎度毎回の聴診や触診は不要であると考えられます。したがって、このような診療についてはオンライン診療で代わって行うことは十分にできる、と思われます。

また、インターネット回線を利用するオンライン診療では診療場所が限定されない、という利点もあります。国民皆保険制度においては、わが国ではどんな人であっても自分が選んだ医療機関で診療を受けることが可能となっています。

ただし、現実から言えば、北海道や九州などの遠隔地の患者が、突然、東京(築地)にある国立がんセンター中央病院において受診することは物理的にも困難でした。しかし、オンライン診療においては、このような物理的な制限は撤廃されることになるので、将来的には、オンライン診療を利用して遠隔地にある医療機関で診療を受ける機会や患者は増加するものと思われます。

加えて、新型コロナ感染症の拡大による影響で著しく進歩したのが「宅宅医療」です。本来、在宅医療というものは、医療従事者が感染者と接することも多く、医師・看護師などを自宅に招き入れることになるので、その点を嫌う患者が多いかもしれないことが危惧されていました。

しかしながら、これまでの経緯を冷静に検証してみると、これまでに在宅医療の現場において、世間的に目立つような患者から感染した集団(クラスター)は発生していません。また、通院治療と比較しても、在宅医療の感染リスクが極端に高くなる、とは思われませんし、現実的に多くの患者が在宅医療を選択・利用しているのです。

さらに、新型コロナ感染症の対策で通院を回避しようと考える患者やコロナ禍による面会禁止といった不便な点をなくすことを目的にに入院治療から在宅医療へと切り替える患者も増加しています。在宅診療であれば、通院・入院などのように不特定多数の人と接触するような危険性は基本的にありません。

厚生労働省によると、「人生の最後は自宅でを過ごしたい」と考えている患者が多い、という調査結果を受けて、在宅医療の普及を積極的に推し進めており、今後は高齢者を中心に在宅医療を利用する人はますます増加するものと思われます。

今後さらに在宅医療が進化する可能性について解説します。進化の形としては、在宅医療とオンライン診療を組み合わせるような形へと進化していく可能性が十分に考えられます。具体的には、ナースが患者の自宅にPCやスマホを持参して、遠隔地の医師によるオンライン診療を手助けするようになれば、オンライン診療における課題(デメリット)をある程度は補足することが可能になります。

このような連携スタイルを推進することにより、24時間患者をモニターすることが可能になり、まるで自宅が病室のような状況になります。このようなスタイルは、在宅医療やオンライン診療などの次元を超えて、創造的な新しい医療のスタートとなると思われます。

3.中小企業と在宅医療ビジネスとのかかわり

これまで説明してきたように、コロナ禍において在宅医療に対する期待は高まっており、そこには大きなビジネスチャンスが生まれているものと考えられるのです。医療に関するビジネスについては大企業の得意分野であって、中小企業にはハードルが高く参入余地に乏しいと考えがちですが、中小企業ならではの機動性や独自の技術力などを武器に活躍している中小企業はたくさんあります。

(1)画像診断受託サービス

画像診断受託サービスとは、病院などの医療機関が撮影した患者のCTやMRI等の画像データをメールなどを使って電子的に送信してもらって、画像診断を実施することです。このような遠隔画像診断の受託サービスを提供するような企業が現れており、「遠隔医療ビジネス」として推進されつつあります。この「画像診断受託サービス」のマーケットには大企業のみならず、中小ベンチャー起業や民間の医療機関などが参入を進めています。

この画像診断という部分が先の部分に先駆けてビジネス化されている理由には、CT・MRI機器が相当程度多くの病院や診療所に既に導入されていること、また、その一方で、画像診断を実施できる専門的な技術者や専門医などは機微が小さな医療施設では常駐していないため、高度かつ専門的な画像診断をすることができない、といったことも考えられます。

また、そもそも医療用の画像はデジタル化されているので、遠隔地における診療・診断であっても診療のクオリティ(品質)が劣化しないこともあり、比較的事業化しやすいと考えられることも挙げることができます。

遠隔画像診断受託サービスを提供している企業としては、以下の3社を挙げることができます。最も有名かつ有力な事業者としては、警備事業を営んでいるセコムが提供している「ホスピネット(Hospi-net)」があります。

「ホスピネット」の他には、また「ネットホスピタル」「ドクタ―ネット」も有力企業として紹介することができます。ただし、この3社以外にも様々な企業がlこのマーケットには参入してきており、更なる新規参入組が増えています。この遠隔地画像診断受託サービスのクライアント(顧客)は、現状で約500件の医療施設において画像診断を企業(サービス事業者)に委託している状況にあり、今後ますますマーケットとして大きく伸びていくものと期待が集まっています。

<主な遠隔画像診断のサービス提供企業>

企業(サービス)名 主な提供サービス・特徴など
ホスピネット(Hospi-net)
  • 警備授業を営むセコムのグループ会社であるセコム医療システム株式会社が提供している遠隔画像診断サービス
  • マーケットの6割を押さえるトップ企業
  • 常勤医:4人、非常勤医:21人、を抱えている
  • ビデオキャプチャーを活用した診断
ネットホスピタル
  • 1995年に創業した遠隔画像診断支援サービスのパイオニア企業である株式会社ネットホスピタルが提供しているサービス
  • 全国に11人の契約読影医を用意
  • ビデオキャプチャーを活用した診断
ドクターネット
  • 遠隔画像診断のリーディングカンパニーである株式会社ドクターネットが提供しているサービス
  • 8人の放射線科医を抱える
  • *DICOM用語集に規格を採用
*DICOM用語集
DICOMとは、Digital Imaging and Communications in Medicineの頭文字を繋げたもので、MRや内視鏡などの医療用の画像診断装置や医療情報システムなどの間でデジタル画像データや診療データなどを通信、保存、する方式など定めた国際標準規格、のことで、この規格に関する用語を集めたものをDICOM用語集と言います。

(2)情報共有システム

コロナ禍における在宅医療の提供においては、医療従事者の間で患者などの情報を共有することが極めて重要になります。この点に関しては新潟市や泉佐野市などで地方自治体が旗振り役となって導入を進めています。

主体など 解説
Net4U
  • 新潟市における在宅医療・介護連携情報共有システムの名称
  • 地域内の、病院、診療所、調剤薬局、などが患者の情報を共有することが可能なヘルスケアSNS
  • 将来的には、クラウド型の電子カルテや電子処方箋への活用が期待されているシステムです。
ICTガイドライン
  • 泉佐野市では、在宅生活を安心して送るために必要なケア・ネットワークの構築を目指して、医療や介護などの様々な職種間において相互理解がされるように、インターネットなどの「ICT(在宅医療・介護情報共有システム)」を活用するためのガイドラインを策定。

4.在宅医療の課題と将来について

コロナ禍の影響もあり、在宅医療は今後ますます注目を浴びていく新たな医療体制のあり方になっていくものと期待されていますが、そのような期待の中にあっても現実的に様々な課題に直面していることも事実です。在宅医療における課題を抽出したうえで、在宅医療の将来性について論じてみたいと思います。

(1)患者紹介などの不適切と思われるケース

①患者による自由な選択を阻害・制限してしまう可能性があると思われるケース

  • 高齢者用の施設を新たに設置する際に、特定の医師に対して、優先的に入所する人を紹介することへの報酬(見返り)という形で、診療報酬額の2割にあたる金額をキックバックとして要求しているような場合
  • マンション業者がそのマンションに居住する者の診療に関する独占契約を特定の医療機関とのみ締結する報酬(見返り)として、診療収益の一定の割合を報酬(キックバック)として要求するような場合。

診療報酬を利用したた経済的な理由で、診療における独占的な契約を締結してしまう(結んでいる)可能性があり得る

②「過剰な診療」という医療行為を惹き起こすことがあると思われるケース

  • 診療所を開設した人の親戚が経営している高齢者用に施設に入居している人約300名だけを対象にした訪問診療を実施しているような場合
  • 医療機関が、特別な関係がある施設などに対してのみ、極めて短い時間内で多くの患者に対する訪問診療を実施するような場合

患者による選択を阻害・制限してしまっている可能性があることに加えて、過剰な診療行為を実施してしまっている、という可能性も考えられる。

(2)地域連携や医療従者間連携が不足している

在宅医療における大きな課題の一つとして、地域連携や医療従者間連携が上手く進められていない、という点を挙げることができます。在宅医療はたった一人の医療従事者だけでどうにかできるものではないので、同じ医療従事者、行政、在宅医療サービス提供企業、など様々な人々の協力・連携が必要になります。

その中でも同じ地域内で人員や機器類などの過不足を調整できるような連携が可能になれば、非常に有効な在宅医療における医療提供体制が構築できるものと考えられます。では、そのような体制を整備するためにはどのような点に注意すればいのでしょうか。

①ネットワークの確認とICTシステムの必要性

在宅の医療と介護を連携させるための情報通信(ICTシステム)を整備するためには、「人同士のネットワーク」が存在していることがが前提になります。人同士の繋がりを支援するために、デジタル技術やコンピュータを利用した「ICTシステム」が必要になります。

②行政における対応手順の主要な流れ

最初に、当該地域の実際の状況に合わせて、医療従事者間の連携にどういった情報の共有必要なのか、等以下の5つの視点から検討します。

5つの視点

  1. 情報を共有する目的・意義を理解すること
  2. 地域状況を共有するモデルパターンを参照すること
  3. 共有する情報内容を整理すること
  4. 現状の地域内における情報共有を整理すること
  5. 地域の情報を共有することに対するICTシステムを導入することの意義や手順、課題を理解しておくこと

↓(ICTシステムを用いて情報共有する、ということを検討するケース)

次いで、ICTシステムの導入を踏まえて在宅医療の連携ネットワークを構築することの検討をします。ここでは、具体的に、運営主体を決定する(現状の把握、基本的な構想を策定、永続性を確保、など)が必要になります。

↓(ICTシステムを導入するようなケース)

ここで、在宅医療における連携ICTシステムを導入する際の注意点を明確にしておく必要があります。具体的には、個人情報の取扱、「同意」を取得する方法、セキュリティ管理システムなどの導入に関する重要な課題(例えば、安全管理責任、など)と参考となるガイドラインの提示、などです。また、ICTシステムの機能(ホームページなどの取り組むことが比較的易しい機能から徐々に何度の高い機能へと移行)や運用における具体的な事例の紹介、なども挙げることが可能です。

次に、初期導入費用(イニシャルコスト)、維持費用、運用費用、などを確保することを検討します。ここでは、将来を見据えた予算の確保、地域関係者におけるメリットとデメリットの整理、を実施します。

次いで、業務の標準化、個人情報保護に関するセキュリティ対策、ガイドラインへの対応、などを実施します。具体的には、管理者を設置して運用方針を文書化する、PDCAサイクルを回していつでも最新の対策が施されるようにしておく、複数の事業者の間を跨ぐような場合には留意すること(例えば、管理者を設置したり運用の文書化をする)、を挙げることができます。

そして、SLA(Service Level Agreement)の締結、となります。ASP(Application Service Provider、ソフトを実行するために必要なプログラムをネット上のクラウドサーバーに格納していて、インターネット回線を経由してプログラムにアクセスし、ソフトを利用可能にした仕組みのこと)やSaaS(Software as a Service、ソフトをクライアント側に導入するのではなく、サーバー側(業者側)で動いているソフトをインターネット経由で、クライアントがサービスとして利用するサービス)などのサービスを利用するケースでは外部のサーバをインターネット経由で利用するので、サービス内容や安全確認が重要になります。

次に、事業継続の計画(コンティンジェンシー・プラン、Contingency Plan)を検討することが必要になります。例えば、大規模な地震災害をはじめとする、台風、津波、落雷、大雪、といった自然災害や大規模な停電など、地域の特性を十分に勘案した対策を検討することが必要です。

最後に、(デジタル)技術の動向や社会情勢の変化などに対応することも必要になります。具体的には、セキュリティの水準と利便性のレベルの比較、費用とのバランスの適切さ、「医療等ID(従来は医療機関別に管理されていた個人レベルの医療情報が、今後は情報通信(ICT)技術を利用して、医療機関の間で情報を共有することを実現できる仕組みと位置付けられており、高い期待を集めているもの)」と個人情報の保護、患者の参加可否に関する動向、そして、医療職と介護職間にある壁や使用している異なる用語の問題、などにも対応しなければなりません。

③運用手順(マニュアル)の策定手順

最初に、運用管理を担当する組織や体制を決定する必要があります。例えば、協議会などの中に運営管理者を設置する、それぞれの施設に管理責任者を設置する、管理責任者が職員(利用者)の管理を担当する、といったことを決定する必要があります。

ポイントとしては、

  • 医師会の会長と首長がお互いに協力することを確認し合う
  • 相互に実務者を指名する、例えば、医師会の会長は医師会の事務担当を、首長は地域の医療係を置く、などです。
  • 医師会の事務担当と地域医療係とが相互に連携して、歯科医師会、看護協会、といった多くの職種に対して参加に応ずるように呼び掛ける(声を掛ける)
    ・それぞれの各団体の責任者が集まって、基本方針を策定して、連絡係(地域医療係など)を設置する。
  • 事務の手続や予算の確保といった実務は医師会の事務担当が担当する。
    といった点を挙げることができます。

次に、管理項目・管理手法を決定します。例えば、情報システムに関する機器類の取扱方法、情報システムをる要する人を認証する方法、IDの発行と管理手法、加えて、取扱マニュアルの整備やセキュリティに関する教育の実施、定期的な監査の実施 などもきめておかなければなりません。

ここでのポイントとしては、それぞれの団体における責任者が実務担当者を指名すること、実務担当者は医師会が選出したベンダと一緒に(協調して)詳細な検討を実施する、.検討した結果は理事会に諮問したうえで決定すること、になります。

最後に、運用規定と関連文書を作成して、報告・周知します。医師会の事務担当が地域の中核病院や先進的な事例などを参考にした運用規定、申込書、同意書、などを手に入れて参考とすることも重要です。

(3)在宅医療の将来の方向性について

病気を抱えていても、自宅などの住み慣れた生活環境の中で療養することで、自分らしい、あるいは自ら望む生活を維持するためには、地域における医療提供主体同士の連携が必要であり、包括的で持続的な在宅医療の提供が不可欠である、と考えます。

例えば、在宅医療をサポートする関係機関としては、地域の病院など定期的な訪問診療が可能な医療機関、ベッド(病床)を有している(あるいは、病状が急変した際に一時的にでも入院の受入が可能な)在宅医療を支援する病院や診療所、 病院などの医療機関と連携して、服薬や点眼の管理や、褥瘡の防止、浣腸などのケアが実施可能な訪問看護事業所、入浴、排泄、食事、といった介護サービスを提供している事業所、などを挙げることができます。

したがって、関係諸機関が連携して、多様な関連し合う職種が協働することにより、在宅医療というサービスを総合的かつ一体的に提供可能な体制を築き上げなければなりません。つまり、行政が中心となり、地域の医師会などの団体と密接に連携を取りながら、地域における関係諸機関との連携体制を構築することが極めて重要だと考えられるのです。

まとめ

新型コロナ感染症の拡大以前から在宅医療の重要性については論じられてきましたが、このコロナ禍が在宅医療の推進の背中を押した部分は否めないでしょう。今後ますます在宅医療の重要性は高まっていくものと考えられますので、様々な課題に対応するためにも手順を踏んで在宅医療体制の整備とサービスの活用をすることが重要であると考えます。

在宅医療体制の構築は一人の医師やナースだけでできるものではありません。地域における医療従事者の強固な連帯や医療機関と患者との信頼などが必要不可欠となってきます。全国では具体的に在宅医療体制の構築に成功している自治体もありますので、そういった事例を参考にして推進することも役に立つかもしれません。

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