流動比率とは?貸借対照表から経営状況を理解する

 

「流動性」という言葉は、多くの場面で用いられる表現ですが、こと財務会計の用語としては、企業の支払能力のことを意味するものです。今回は、この企業の流動性について基本的理解を確認しながら、流動比率分析についてみていきます。 

1.流動性とは何か

流動性(liquidity)とは、債務の支払能力を意味します。債務が返済できなければ債務超過となって企業は倒産しますので、流動性は倒産の可能性を示す指標でもあるわけです。流動性が高いということは債務返済能力が高く、倒産の可能性は低いと言うことなのです。

流動性は、財務流動性、財務安全性、健全性、堅実性、支払能力など、さまざまな表現が用いられますが、基本的にどれも同じ意味です。銀行などの融資機関はこの指標を重要視することになります。そして、流動性は、短期と長期、ストックとフローの観点から検討されるものです。ここで短期というのは、おおむね2~3年以内に企業が倒産する心配がないかどうかに関する判断であり、主に債務の返済に充当されるべき現金預金等の資金いわゆるキャッシュが不足していないかを問題にすることです。短期については、ストックである流動資産や流動負債のバランスとフローである現金預金の流入・流出の両面から検討することが求められます。一方、長期というのは、おおむね3年以上の長期的な将来において不況や営業不振等の逆境に遭遇したときに耐え得る能力があるかどうかが問題にされるというものです。したがって長期的な流動性はフローである現金預金の流入・流出ではなく、会社の財務構造や財務体力といったストックである財務基盤が問題とされます。 

 

2.流動比率とは何か

次に具体的に流動比率について見ていきましょう。

普通一般的に、流動比率は、財務分析の安全性分析の経営指標のひとつで、短期的な支払能力を分析する際に用いる指標と言われています。

流動負債に対する流動資産の割合を示しています。式にすると次の通りです。

◆流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債

※流動資産は1年以内に現金化が見込まれる資産。

※流動負債は1年以内に支払期限が到来する負債。

式が示している流動比率とは、1年以内に現金化できる資産が、1年以内に返済すべき負債をどれだけ上回っているかを表す指標です。つまり1年以内に支払わなければならない負債は1年以内に現金化する流動資産で賄うべきであるという考えに基づく比率です。

経営分析においては最も古くからよく用いられているベーシックな比率であり、銀行が貸し出す時に重視する比率なので、かつては銀行家比率とも呼ばれていました。ただし注意したいことは流動資産の中には、不良売掛金や長期滞留あるいは陳腐化した在庫が含まれていることが考えられます。そこでとりあえず、1年以内に現金化するのが流動資産の半分だとすると、流動負債を返済するには流動資産が流動負債の2倍あればよいだろうということになります。そしてこの場合、流動比率は200%で、一般的には流動比率は200%以上あるのが望ましいと言われています。この流動比率は、理解がしやすいこともあり、経営分析では最もポピュラーな指標となっています。

一般に資金繰りが逼迫すると流動資産が減少し、流動負債が増加しがちです。したがって、流動比率が低い企業は短期的な支払能力が乏しいと融資機関から判断されます。すなわち、業績が悪化すると資金に余裕がなくなってまず現金預金が減少します。次第に資金繰りが苦しくなるにつれて得意先から回収した受取手形はすぐに裏書したり割引いたりして流出し、手元の有価証券は資金捻出のために売却します。さらには資金を捻出するために売掛金の回収を始め、仕入を抑えて在庫の圧縮を図ります。こうして流動資産が減少していくことになります。一方では、資金繰りをつけるために買掛金を現金払いから支払手形へシフトし、手形の支払期間を延長して借入金が増加して流動負債が増加します。加えて、企業の信用力が低下すると長期借入金による資金調達が困難になり短期借入金に依存せざるを得なくなります。こうして流動比率は低下するのです。

流動資産と流動負債はともに貸借対照表の最上部に表示されているので流動比率は計算も簡単で、理解しやすいと思います。自分の会社の流動比率を計算してみてください。 

 

3.流動比率分析における留意点

次に、実際に流動比率分析を行う場合の留意点についてみていきます。

流動資産には支払いに充当できない資産が含まれている場合があります。例えば預金には、定期預金が借入担保に差し入れられているために取り崩しが不可能な場合などです。倒産するのは資金不足によって債務の支払いができなくなるからで、多くの現金を有していながら倒産するのは、こうした担保差し入れの影響によるものなのです。その詳細について代表的な項目について見ていきます。

① 売掛金

売掛先が既に倒産しているとか、長期間、回収が難しい売掛金や粉飾による架空の売掛金が存在するかもしれません。業績低迷が続くと不良債権は償却したくても償却できない事態が生じます。このような不良売掛金は回収による資金化が困難です。 

② 棚卸資産

不良棚卸資産の存在です。在庫長期滞留の在庫が含まれるかもしれません。購入した材料の一部がその製品の生産中止によって使用されなくなる事態などが想定されます。こうした不良棚卸資産の現金化は困難です。 

③ 有価証券

売却にあたっての実際の時価簿価と額面簿価との差額で影響が出てきます。また本来はいつでも売却可能であるはずですが、実際には諸事情で売却できないこともあります。一方では、長期保有のはずの投資有価証券の中には即時に売却可能な有価証券がありますので、実際に資金化できる有価証券を注意深く検討する必要があります。 

④ 業種特性とタイムロス

小売業の多くは現金商売なので売上債権(売掛金や受取手形等)が少なく、電力・ガスなどのインフラ企業は棚卸資産が極めて少ないなどその業種によって数値は変わってきます。

さらに、流動比率は貸借対照表時点での流動性を示すものです。貸借対照表の流動資産も流動負債も決算日時点の状況です。事業には季節性のある企業もあり、期中の状況が必ずしも期末時点の貸借対照表の状況と同じとは限りません。つまりはタイムロスがあるということです。

⑤ 運転資金需要のパターンによって流動性は異なる

買入債務回転期間の方が、売上債権回転期間よりも長い場合は、売上が成長している間については資金に余裕があるため流動比率が低くても支払能力に問題は生じません。しかし、一旦売上が減少に転ずると支払能力に問題が生じます。買入債務回転期間の方が、売上債権回転期間よりも短い場合は、これと全く逆の現象が生じます。

  • 買入債務回転期間=支払手形・買掛金÷売上高
  • 売上債権回転期間(回転日数)=売上債権÷売上高

 

流動性まとめ

ここまで流動性分析の意味と、その代表格である流動比率についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

再度まとめると、流動比率とは、会社の短期安全性を分析する指標で次の式で表される比率。

◆流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動比率は100%を下回っていると、短期の支払能力が不安視されることに繋がります。一概に流動比率だけをみて結論を出すのは危険ですが、基本的な一つの有効な指標であることがおわかりいただけると思います。自社の貸借対照表を見て、企業経営の実態を読み解けるようにしましょう。

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