●はじめに
企業経営者にとって、銀行と借り入れの相談をする場面は何度もありますよね。季節商品の仕入れ、売上の減少、設備の買い替えなど借り入れが必要な理由もたくさんあるでしょう。しかし、似たような理由だとして、銀行の借り入れ審査が毎回通るかいうとそれは違います。売上が増えて経営が順調そうなのに審査が通らないことがあります。逆に、赤字なのに審査が通ることもあります。では、どこに違いがあって借り入れの審査結果に影響するのでしょうか。
この記事では、銀行から借り入れをする際の審査方法について解説し、どんな場合に審査が通りやすいのかをまとめてみました。審査に通りやすい条件を把握しておくだけで、いざ借り入れを相談する際はこちらのペースで交渉することが可能になります。5分あれば読める内容なので、お見逃しなく!
●借り入れ審査が通りやすくなる条件
実際、銀行側は何を見て借り入れを行うか拒否するか判断しているのでしょうか。経営者の方には、売上が黒字かどうかを見ていると思っていらっしゃる方が大勢います。しかし、銀行の融資担当者が1番始めに確認するのは、そのような業績ではないのです。特に中小企業であれば、黒字かどうかに頼って判断する銀行はないと言っていいでしょう。では、実際に重要視されているのは何か。ここでは、2つ紹介します。
① 自己資本はいくらあるのか
銀行としては、貸したお金は返してもらわなくてはいけません。そのために見たいのは、その企業の返済能力です。現時点での業績も重要ですが、それ以前にどのような事業運営を行ってきたか、という方をより重要視します。具体的には、貸借対照表の自己資本の部分に注目しています。ご存知の通り、自己資本の部分には創業から現在までに積み重ねてきた利益の備蓄状況が書かれてあります。ここから、その企業が利益をあげ続ける能力を備えているか判断するのです。月々の収益はもちろんですが、自己資本の金額を、企業の希望する借り入れ金額と比較して審査していきます。
ここで気を付けたいのは、自己資本の内容です。金額が大きくても、資産として価値のあるものかどうかも銀行は判断します。例えば、本事業と関係のない資産の有無をチェックします。具体的には有価証券、施設の会員権、他社への貸付金などです。これらの項目は将来的に収益を生み出さず、現金化することも難しい場合が多いです。もし、このような資産がある場合は、極力圧縮しておきましょう。
② 事業計画に具体性はあるか
繰り返しになりますが、銀行側は企業に返済能力があるかどうかに重点を置いて審査します。自己資本は、過去から現在までの企業の能力を見るための材料でした。そして、未来を見るたけの材料が「事業計画」です。
では、審査が通りやすくなる事業計画とはどんなものでしょう。それは、実現可能な数値を使い、具体的に計画されている計画書です。銀行からの融資が決まった後、企業の経営が傾く可能性も十分にあります。ですから、これまでの実績から大きく外れることなく、収益を得られる計画でないと信用しづらいのです。どんなに立派な事業計画を立てたとしても、その通りに実現することはほとんどありませんよね。銀行側もそう思っていますから、過去の企業経営と比較しやすい具体的な数値を使った、手堅い事業計画を好むのです。具体的な事業計画は経営にも役立ちますので、意識して作成しておくのが望ましいです。
●銀行からの信用度を上げるために
現在の業績がどのようで、直近の決算書は黒字か赤字か、といったことは勿論大切です。しかし、借り入れをするために業績を作るわけではありませんし、決算書の内容も変えられません。それ以外の方法で審査が通りやすいようにしたいのならば、銀行からの印象を変えることは可能です。何もご機嫌伺いをするというわけではありません。これから書く3つの行動をするだけで銀行からの信用度が増し、借り入れ審査の際に力を発揮することが可能になります。では、順番に説明していきましょう。
① 試算表を定期的に銀行の担当者へ見せる
試算表では、直近の決算以降の運営状況を確認することができます。例えば、直近の決算が赤字であったとしても、試算表で業績が改善されているようであれば審査に通ることがあります。もちろん、試算表で業績の回復が見られなければ、いい審査結果は見込めないかもしれません。しかし、銀行側に企業の状態を定期的に見てもらうことで、企業のイメージを持ってもらうことができます。健全な運営を心がけているか、ということは定期的な情報交換によっても伝えられます。業績が悪いとしても返済をする能力があるかどうかを、日々のコミュニケーションで汲み取ってもらいましょう。
② ノンバンクのビジネスローンや保証協会付きの借り入れを避ける
銀行は、企業がこれまでにどのような借り入れを行ってきたかも注目します。そこで気を付けたいのが、ノンバンクのビジネスローンと保証協会付き融資の利用です。起業して間もない場合は、保証協会やノンバンクの利用もやむを得ないと判断されやすいです。しかし、そうでない場合でも利用履歴や借り入れ残渣がある場合、企業への信用度は低くなります。それらの利息や保証料は経営を圧迫しかねませんし、経営を続けていられるなら銀行借り入れの方が圧倒的に手数料は安く済みます。特に、経営を続ける中で資産を獲得している場合、担保をつけることで利息を少なくすることができます。ノンバンクや保証協会の借り入れ残渣がある場合、銀行へ一度相談してみると良いでしょう。もしかすると、銀行で借り換えを提案してくれるかもしれませんし、今後お得な借り入れをするためのアドバイスを受けられるかもしれません。悩んでいる時に相談されることも、銀行側としては企業への信用を上げるきっかけになりますよ。
③ 借り入れをする銀行の預金取引を大切にする
銀行側としては、口座を利用してもらっている企業にはお金を貸したいと思っています。それに加えて、口座の利用履歴からその企業のお金の流れが見えることで、その企業への信用を高めます。例えば、毎月決まった取引先から入金が確認できるような場合、収益の継続性が認められるので好印象になります。また、複数の取引先から入金が確認出来るような場合は、一部の取引先の支払遅延などで資金不足に陥るリスクも少なく見えます。また、万が一のことがあった場合に預金を押さえることができるので、審査には有利です。
売上の入金は1つの口座にまとめると管理はしやすいです。しかし、複数の口座に分散させることで複数の銀行から信用を高めてもらえるというメリットもあるのです。
●おわりに
いかがでしたか?自己資本の金額は急に変えられないとしても、すぐにでも実行できることがいくつかあったと思います。現在は借り入れを検討されていない方でも、今後のために参考になさってください。