会社の経営では「資金繰り」が非常に大事だといわれますが、なぜでしょうか?
会社を経営していくうえで、「資金繰り」が重要なのは当たり前だと感じる方も多いと思います。しかしながら、この「資金繰り」はかなり難しくて厄介なものであり、実は「資金繰り」をしっかり把握できている会社は意外と少ないというのが実状なのです。
そこで今回は会社を経営していくに当たって大変重要となる「資金繰り」関してぜひとも知っておくべき5つのポイントについてご紹介していきたいと思います。
「資金」とは「事業の元手や経営のために必要な金銭」のことです。よく会社の「血液」とか「空気」に例えられます。
なぜ「血液」とか「空気」に例えられるのかというと、「資金」がなくなってしまうと、会社は倒産してしまう(存続することができなくなってしまう)からです。
「黒字倒産」という言葉があります。これは会社に利益は出ているものの、資金が底を尽きてしまって倒産してしまうことをいいます。
つまり、いくら会社が利益を出す事業を行うことができたとしても、「資金」が底を尽きてしまうと倒産してしまうということです。
だから「資金」「資金繰り」が本当に大事なのです。
ポイント1:資金繰りとは何かを知る
「資金」「資金繰り」はこれほど大事なものなのに、なぜ「黒字倒産」が起こってしまうのでしょうか?
1つの理由としては、会計ソフトから出力されたり、会計事務所や税理士さんからもらう決算書や残高試算表(「損益計算書」や「貸借対照表」)というものが、資金の動きを管理する「資金繰り表」や「キャッシュ・フロー計算書」と全く異なる考え方で作られているからです。
つまり、「会計ソフトや会計事務所からもらっているメインの資料を見ているだけでは、資金繰りがうまくいっているか分からない」ということです。
まず、決算書や残高試算表にある「損益計算書」(会社の利益を計算している表)と「資金繰り表」(会社の資金の推移を表している表)は全く異なるものであり、この違いを理解することは結構難しいということを知っておいてください。
ポイント2:開業資金と運転資金の違いを知る
特に起業当初に大事になるのは、
①事業をスタートするために当初だけ必要になるお金(開業資金・設備資金)と、
②事業を継続していくために必要なお金(運転資金・固定費)を分けて考えることです。
「①事業をスタートするために必要なお金」は、開業をするにあたって調達できていなければならない資金なので、開業時にこの資金をどうやって調達するか(資本金、役員借入金、銀行借入金等)をしっかり決め、これを確保しておくことが必要です。
「②事業を継続していくために必要なお金」は、開業後に必要な資金になります。少なくとも考えておかなければならないものは、売上がゼロであっても発生する費用(固定費)になります(例:地代家賃・人件費)。この固定費が毎月どのくらい発生するのかをあらかじめ把握しておくことが大変重要です。
(この固定費を賄うために毎月いくらの売上が必要になるかという、損益分岐点売上高を知ることも大変重要です。
飲食業のように売上の入金が先で、仕入の支払が後になるような業種の場合は、あまり考える必要はありませんが、商品の仕入が先で、売上代金の回収が後になるような業種(例:小売業)については、事業を運営するために必要な「運転資金」(通常は、売掛金+棚卸資産-買掛金で計算)の確保が必要になります。
事業が急拡大した場合に、利益は出ているのに資金繰りが厳しくなるケースがありますが、これは必要となる運転資金が大きくなってしまい、一時的に資金繰りがひっ迫している状況になります。
ポイント3:簡単な資金繰り表を作ってみる
毎月の売上や仕入などの変動費を見積もって、月次の「資金繰り表」を作ってみましょう。
「資金繰り表」は次のような仕組みになっています。
1.経常収支の部
普段の業務による収入と支出が記載され、企業の経営状態が現れる部分です。
2.経常外収支の部
掲載例では設備投資も経常収支の部に含めていますが、設備投資や税金の支払いを経常外収支として別掲することもあります。
この場合は、設備投資の金額などが大きなマイナスになることがあります。
3.財務収支の部
銀行から借入金を行う場合、借入金額はプラスに、月々の返済金額はマイナスになります。
季節的な変動が大きな業種の場合は、売上代金(売掛金)の回収や仕入代金(買掛金)の支払の金額やタイミングに気を付ける必要があります。
ポイント4:資金繰り表のポイントを知る
ポイント3で作った「資金繰り表」は、将来を予想して作成をする「将来の資金繰り表」のものですが、一方で、事業をスタートし、適時にきちんと記帳作業を行っておけば、ほとんどの会計ソフトで「過去の資金繰り表」というものを見ることができます。
「将来の資金繰り表」を作成して今後の資金繰りがうまくいくかどうかを把握することが大変重要になりますが、一方で「過去の資金繰り表」を見て現時点で問題がないかどうか、自社の資金繰りにはどのような特徴があるのかを確認することも重要です。
ポイント5:専門家に聞く
特に、事業経営の中に次のような事象が生じてくるようになった段階では、会計事務所等の専門家に相談するのが良いでしょう。
① 税金の支払い
利益が出てくると所得税や法人税を支払わなくてはなりませんが、その金額は決して少ないものではないため、その計算や支払いのタイミングは会計事務所にお任せすることをお勧めします。
その他、消費税は課税事業者になると支払う必要が出てきますが、非常に複雑で難解なため、この計算や支払うタイミングについても会計事務所にお願いしたほうがよいと思います。
経営者はこのような税金が存在することを理解し、納税資金をしっかり確保しておかないといけないこと、税金は資金繰りに大きな影響が出てしまうことを覚えておいてください。そのためには、利益が出ている企業は節税対策などを検討することも追々必要になってくると思います。
② 借入金の返済
借入金の返済は借りてきたお金を貸主に返すという行為のため、試算表に含まれている「損益計算書」には出てこないので特に注意が必要です。借入金の返済は、ポイント4の財務収支に出てくるものになりますが、留意しなければならないのは、「税金支払後」の経常収支の中から返済原資を生み出さないと、手元資金が減少してしまうという点です。
つまり、例えば100の借入金を返済するためには、税引前で150~200の利益が必要だというような理解をしておく必要があります。借入金の返済は結構大変なのです。
③ 大型の設備投資
設備投資をするような場合には、当該投資が将来の資金繰りを考えた場合に十分耐えられるものかどうかをしっかり判断する必要があります。企業が経営不振に陥る2大原因の一つが、「事業の将来への過信に基づく過剰投資」だといわれています。)
可能であれば、会計事務所と事業計画を作るなどして、将来の資金繰りがしっかり回るかどうかをシミュレーションすることをお勧めします。
このような資金繰りのことについても親身になって相談してくれる会計事務所を探すことをお勧めします。
資金繰りまとめ
資金繰りをよくする考え方は次の5項目にまとめられます。
① 入金額を多くする
② 支払額を少なくする
これらは当たり前ですが、これ以外に常に考えておくことは以下の3つです。
③ 入金は早める
売上代金については以下に早く回収するかを常に考えるようにしてください。あまりにも回収が遅くなるような場合は、現金払いの場合は値引きをするなどしてもよいかもしれません。
④ 支払は遅らせる
③とは反対に、支払はできる限り遅くできないかを常に考えるようにしてください。
例えば飲食店が開業するような場合、借入金の支払いが、保健所の審査が下りてからになってしまうため、店舗の改装費用などを借入ができる前に支払わないといけないケースがあります。このような場合には、業者にお願いをして支払いを遅らせてもらったりすることで資金繰りを何とかする必要があります。常に支払いは遅くできないか、ということを考えるようにしてください。
⑤ もらえるものはもらう
補助金、助成金など…。本業をおろそかにし、このようなものにばかり頼るのはよくないですが、もしもらえそうなものがあれば申請するのもよいと思います。