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中小企業投資促進税制を使って賢く設備投資を!

起業家の基礎知識

資産規模が大きくない中小企業にとって、設備投資は大きな負担として両肩にのしかかります。しかし、一方で既存の古い設備のままでは生産性が向上しません。そのようなジレンマを抱える担当者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回紹介する中小企業投資促進税制をうまく活用することで、設備投資によって発生する税金を大幅に節約することができるようになります。もちろん、全ての設備投資に適用されるわけではなく、期間も限られています。

そこで今回はどのような場合に「中小企業投資促進税制」を適用することができるのかをご紹介していきたいと思います。

1. 中小企業投資促進税制とは

中小企業投資促進税制とは、機械装置などの税制対象の設備を購入したり、制作したりした場合に特別償却か税額控除のどちらかを選択できる制度のことです。さらに、一定の条件を満たせば特別償却もしくは税額控除に加え、さらに上乗せして節税ができる措置を受けられるようになります。

各種条件を満たした上で、平成31年3月31日までに設備を購入し、指定された事業に使用した場合にのみ適用されます。それでは、本制度を適用される条件を確認しましょう。

 

2. 制度を利用するための条件

⑴ 中小企業の定義

最初に、中小企業投資促進税制を受けることができる中小企業の条件をご紹介します。下記の4種類のいずれかに該当する場合であれば、中小企業投資促進税制を受けることができます。

  • 資本金又は出資金の額が1億円以下の法人の場合
  • 資本金又は出資金をもたない法人のうちで、常時使用する従業員が1,000人以下の法人の場合
  • 個人事業主で、常時使用する従業員が1,000人以下の場合
  • 農業組合など

例外として、大規模法人から2分の1以上の出資を受けている子会社であったり、2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けている子会社は本制度の適用対象外になります。

⑵ 特別償却と税額控除に必要な条件

次に、特別償却を受けるための条件と、税額控除を受ける条件をご紹介します。中小企業のなかでも、中小企業投資促進税制の適用対象は、さらに下記の条件のどちらかを満たすものに限られます。

  1. 個人事業主の場合及び資本金3,000万円以下の法人
  2. 資本金3,000万円を超え、1億円以下の法人

このどちらかに該当しない場合は、税制の適用対象外となります。また、1と2では適用される特別償却または税額控除の大きさが異なります。

上記の条件に加え、さらに投資する機械類と投資額にも条件があります。上乗せ措置を受けるための条件も同様の内容になります。

ここまでの条件を満たしていれば、特別償却か、税額控除のいずれかを受けることができます。しかしながら、両制度共に限度額が定められていますので注意が必要です。特別償却の限度額の計算方法は以下の通りです。

特別償却限度額
基準取得価額×30%+普通償却限度額

※ 基準取得額⇒船舶:取得価額×75%
⇒その他の資産:取得価額

また、税制控除の限度額の計算方法は以下の通りになります。

税額控除限度額
基準取得価額×7%

※1 税額控除限度額>法人税額×20%の場合、税額控除限度額は法人税額×20%
※2 20%を超えた分は1年間の繰越が可能
※3 前述2の法人は適用なし

 

3. 適用される事業

中小企業投資促進税制は全ての事業に対して適用される訳ではありません。以下に適用対象となる事業を確認しましょう。

⑴ 上乗せ措置を受けるために必要な条件

上乗せ措置の内容は以下の表のものになります。

上乗せ措置を受けるための投資は「生産性向上に資する設備」であると認定を受ける必要があります。認定を受けるための条件は「先端設備である」もしくは「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備である」のどちらかです。それでは、次にこれら2つに認定されるための条件を確認しましょう。

⑵先端設備とは

先端設備の対象となるのは、機械装置、サーバー用電子計算機、試験又は測定機器、一定のソフトウェアでかつ、次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 最新モデルであること
  • 旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの(ソフトウェアは除く)
  • 表1の取得価額要件を満たしていること

※サーバー用電算機、ソフトウェアを複数台購入して要件を満たす場合、1台・1基あたりの取得価額が30万円以上であること

⑶ 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備とは

これに該当するものは、機械装置、試験又は測定機器、一定のソフトウェアに加え、測定工具・検査工具、一定のデジタル複合機、一定の電子計算機です。その上で次の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 年平均の投資利益率が設備投資によって5%以上になること。5%以上になることを承認されるためには税理士又は公認会計士のサポートが必須になります。
    「営業利益+減価償却費」の増加額 / 設備投資額 ≧5%
  2. 特別償却か税額控除の取得価額要件を満たしていることが必要になります。

※サーバー用電算機、ソフトウェアを複数台購入して要件を満たす場合、1台・1基あたりの取得価額が30万円以上であること

 

4. 申請方法

中小企業投資促進税制を受けるためには、これまでにご紹介した諸条件を満たすだけでなく、みずから申請する必要があります。最大で10%も税額が控除される可能性がある制度ですので必ず申請するようにしましょう。また、申請方法は個人事業主と法人で異なりますので注意してください。

⑴ 個人事業主の場合

特別償却を申請する場合には、青色申告の「減価償却費の計算」に記載する必要があります。また税額控除を申請するときには、「中小企業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除に関する明細書」を確定申告の際に添付して提出する必要があります。

⑵ 法人の場合

特別償却を申請するときには、法人税の確定申告をする書類に「特別償却の付表(三)」と「適用額明細書」を併せて提出する必要があります。税額控除を申請する場合には、法人税の確定申告書類に「別表六(十二)」と「適用額明細書」を添付する必要があります。

中小企業投資促進税制を利用するときのQ&A4選

Q1. 中古資産でも適用できる?
A. できません。適用対象は「新品」に限られます。

Q2. 5年後くらいに使う予定のものだけど、今のうちに買っておいても適用内?
A. 適用を受けるためには事業年度中に取得・使い始め(稼働し)なければなりません。したがって適用外です。逆に支払が完了していなくても取得・稼働していれば適用されます。

Q3. 検査工具と電子計算機の両方で価額要件を満たすから、適用は受けられる?
A. 受けられません。価額の評価は「一定の試験又は測定機器、測定工具、検査工具」の合計価額、「一定の電子計算機」の合計価額でそれぞれ別で行われます。

Q4. リース資産は適用外?
A. ファイナンス・リース取引のうち、所有権移転リース取引による貸借人の資産取得が認められれば、適用対象です。ただしこの場合、適用は税額控除のみになります。

 

中小企業投資促進税制まとめ

中小企業投資促進税制の利用による節税額は、とても大きなものです。特別償却は本来何年もかかって少しずつ経費として計上するものをまとめて全額経費として計上できたりするため、課税所得の低減に大いに貢献してくれます。

なお、本税制を利用できる期間は2021年3月31日まで(平成29年3月31日までだったものが2年延長されました)と限られているため、積極的に活用して資産負担を軽くしましょう。