個人ローンは原則として資金使途は自由ですが、事業資金融資の場合は事業のために利用されることを前提とした融資です。
一般的には、会社の事業に対する融資が該当しますが、個人事業主に対する融資も事業資金融資となる場合があります。
事業資金融資の特徴を説明して、事業資金融資の流れと注意すべきポイントについて解説します。
1.事業資金とは
事業資金とは、企業や個人事業主が事業を運営するために設備を購入したり、運転資金として仕入れ代金の支払いや従業員の給与支払いに充当するような資金を言います。
基本的には、事業に対する資金を投入することでより一層の収益を獲得することを目指して金融機関などからの融資をうけることになります。
事業資金融資は、上記の収益の中から返済されることになるので事業の将来性に対する予測は極めて重要なファクターとなります。
一方で個人ローンの場合は個人の収入が返済原資になるので、個人収入が増えるかどうかよりも安定して給与が振り込まれるか、大きな借金はないか、などといった点が重要なポイントとなります。
また、個人ローンの場合は金利水準が高く、場合によっては10%以上の金利が付されているものもあります。
しかし、事業資金融資の場合は1%~3%くらいの水準であることが一般的です。
これは金融機関からすると、金利収益を獲得することも大切ですが、地域経済の発展に寄与したり、将来的に企業を育成することに貢献したり、といった目的も重要であるからです。
事業資金の融資を通じて企業が大きく育つことで、金融機関は融資以外の取引(保険、財形、年金など)も提供して収益機会を広げることも可能になるのです。
事業資金の金利水準はどのようにして決まるのでしょうか。
基本的には、返済リスクが高い取引先に対しては高い金利が付されていると考えてよいでしょう。
融資の金利は国債の金利をベースに考えられていますが、国債の金利はリスクフリーと考えられていますので、その金利にリスクプレミアムを加味したものが融資金利となります。
倒産リスクが少ない超優良企業であればリスクプレミアムも少ないので、融資金利は低くなることが一般的です。
また、超優良企業とは多くの金融機関が取引をしたいと考えるので、他の金融機関との対抗上も金利の引き下げ競争が生じているといってよいでしょう。
2.事業資金融資の流れ
事業金融融資が実行されるまでは以下のようなプロセスを経ることが一般的です。
手続き | 備考 | |
---|---|---|
① | 金融機関への相談 | 決算書(確定申告書)を持参 |
② | 必要書類の提出 | 必要書類は、3期分の決算書(確定申告書)、印鑑証明書、登記簿謄本(法人の場合)、住民票(代表者)、納税証明書、
|
③ | 審査 | 保証の有無、にもよりますが、金融機関で3日間から1週間、保証ありの場合は保証協会の審査で別途3日間から1週間くらいの期間が必要 |
④ | 実行 | 手形貸付、振込、当座貸越、など契約に沿った形式で融資が実行 |
① 金融機関への相談
最初に金融機関に融資の打診をしに行くことが一般的です。
どのくらいの金額をいつまでにどのくらいの金利で融資を受けたいのか、また融資された資金はどのような目的で利用するのか、といった内容を自分で決めて(あるいは社内で決定して)金融機関の担当者に申し出ることが必要です。
その際に自社がどのような業況なのかを客観的に事実ベースで説明するためにも、自社の決算書(あるいは確定申告書)を用意しておくことが大切です。
その後の本格的な審査のことを考えると、最初から過去3期分の決算書(確定申告書)を用意しておいてもよいかもしれません。
② 必要書類の提出
金融機関に事業資金融資の相談(打診)をして、前向きな返答をもらったら必要書類を集めて提出します。
必要書類は金融機関によって若干異なる可能性がありますがおおむね以下のような書類の提出を求められることになります。
・3期分の決算書、あるいは確定申告書
法人の場合は過去3期分の決算書、個人事業主の場合は過去3期分の確定申告書の提出が必要になります。
開業してまだ時間があまり経っていない場合には、現在あるだけの決算書(確定申告書)を提出します。
なお、開業資金としての事業資金融資を申し込む場合には、決算書(確定申告書)はまだないので、創業事業計画(含む損益予測)を提出することが要求されることが多いでしょう。
・印鑑証明書
法人の場合は、会社と代表者個人の印鑑証明書がそれぞれ必要となります。
法人の印鑑証明書は法務局で、個人の印鑑証明書は区役所や市町村役場で入手することができます。
・登記簿謄本(法人)
法人の場合は、法務局で商業登記簿謄本を入手して、提出する必要があります。
金融機関と取引を始める際には必ず要求される書類です。
・住民票
法人の代表者個人の住民票も提出が必要になりますし、個人事業主の場合も提出が要求されます。
・納税証明書
自治体などの制度融資を利用する場合には納税証明書の提出が求められることが一般的です。
自治体の税金を利用した制度融資なので、きちんと納税をしてることが制度を利用できる条件になっているからです。
③ 審査
必要書類を提出したら審査に移ります。
金融機関にとって審査基準は異なっていますが、事業の見通しや返済の確実性を中心に審査されることになります。
担保や保証の有無についても融資可否の審査においては大きなポイントとなるでしょう。
個人事業主の場合は、原則として保証は不要になっていることが多いと思われますが、法人の場合(特に中小企業の場合)は、社長による個人保証の提供を要求されることが一般的です。
原則として、3期連続で赤字を出している会社や債務超過となっている会社に対しては事業資金融資の実行は難しいと考えられます。
金融機関における審査は3日間から1週間くらいの時間がかかると考えておきましょう。
審査期間中に、追加のヒアリングや追加書類の提出を求められる可能性もあるので、丁寧に対応するようにしましょう。
しかし、一般的には金融機関は自社での直接融資(プロパー融資)の前に信用保証協会の保証付融資を検討します。
したがって、自社での審査を行う前に信用保証協会での審査が行われることになります。
信用保証協会での審査も3日間から1週間くらいの時間がかかりますので、保証付融資の場合は金融機関での審査期間と合わせて、1週間~2週間くらいの時間がかかります。
融資が実行されるまでの時間を含めて、ゆとりを持った事業資金融資の申し込みが必要になることには留意しましょう。
事業資金の審査期間については、「銀行融資の審査期間・諸条件とは?個人・法人別に詳細解説」の記事でもわかりやすく、詳細に解説しています。
3.事業資金融資における留意点
前述したように3期連続赤字の場合は原則として融資の実行は難しいと考えられますが、毎年順調に赤字幅が減少していて将来的に黒字化する見込みが高いようなケースでは融資が実行される可能性もあります。
すぐにあきらめないで金融機関に相談してみることをおすすめします。
また、事業資金融資には銀行だけではなく、ノンバンクなどによるビジネスローンというものもあります。
金利水準が高い一方で、審査基準は銀行ほど厳しくないことと一般的には考えられています。
事業資金が必要な緊急度合や返済負担などを総合的に勘案して、一時的な資金繰り方法として利用することは考えられるでしょう。
ただし、会社の資金繰りを考えずに、その場しのぎで高い金利のビジネスローンを借りることは絶対に止めるべきです。
事業資金融資まとめ
事業資金融資とは、会社にとっては事業を上手に回転させるためには必要な資金調達です。
事業を成長させるために必要不可欠であると同時に、融資を通じて金融機関から適切なアドバイスをもらうこともできるでしょう。
金融機関の融資判断の指標については、「【保存版】経営課題の解決に踏み込む「事業性評価」で資金調達を!」の記事で非常に詳細に解説しています。