譲渡所得にはどのような所得が含まれているのでしょうか。また課税対象となる譲渡所得とそうでない課税所得にはそれぞれどのようなものがあるのでしょうか。
譲渡所得の考え方と取扱について説明します。
(出典:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法 国税庁)
- 1.譲渡所得とは
- 2.譲渡所得の対象資産
- 3.資産の「譲渡」
- 4.所得税の課税対象とならない譲渡所得
- 5.譲渡所得以外の所得として課税されるもの
- (1)事業の所得者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得は事業所得となります。
- (2)不動産所得や山林所得、雑所得を得るような業務を行っている者がその業務に関して上記(1)の棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得は雑所得となります。
- (3)使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産、取得価額が20万円未満である減価償却資産で取得の際に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたものを譲渡した場合の所得は事業業所得、又は雑所得となります。
- (4)山林を伐採してその木を譲渡した場合、あるいは立木のまま譲渡した場合、の所得は山林所得となります。しかし、山林を取得後5年以内での伐採のよる譲渡や立木の譲渡は事業所得、又は雑所得となります。
- (5)上記(1)から(4)までの資産以外の資産を相当期間にわたって、継続的に譲渡している場合の所得は事業所得、又は雑所得となります。
- 6.課税方法
- 譲渡所得まとめ
1.譲渡所得とは
譲渡所得とは、不動産などの資産の譲渡による所得のことをいいます。
譲渡所得は、他の所得とは別に所得税と住民税が課税されることになります。
なお、譲渡所得がマイナスの場合には課税対象にはなりません。
2.譲渡所得の対象資産
譲渡所得の対象となる資産には、
- 土地
- 建物
- 借地権
- 公社債
- 株式
- 金地金
- 美術品(書画・骨とう・絵画、など)
- 宝石
- 機械器具
- 船舶
- 土砂・土石
- 借家権(取引の慣行がある)
- 漁業権
- リゾートクラブ会員権
- ゴルフ会員権
- 著作権
- 特許権
- 鉱業権
などがあります。
なお、金銭債権である貸付金や売掛金などは譲渡所得の対象外となります。
3.資産の「譲渡」
譲渡とは、有償無償に関わらず、所有している資産を移転させる全ての行為を指します。
したがって、通常の売買のほかにも
- 代物弁済
- 収用
- 交換
- 公売
- 競売
- 財産分与
- (法人に対する)現物出資
なども対象となります。
また、次のような場合も資産の譲渡があったものとみなされて、課税対象となります。
(1)法人に対する資産の贈与や限定承認による相続などが生じた場合
次のような理由で資産を移転させた場合には、資産を時価(通常売買されている価格)で譲渡したものとして、課税対象となります。
- 法人に対する贈与・遺贈、もしくは、時価の半分未満の価額での譲渡
- 限定承認の相続と限定承認の包括遺贈(対個人のものだけ)
(2)有価証券などを1億円以上持っている居住者が国外に転出するような場合
(3)賃借権や地上権などを設定して、その権利金などを受領した場合
建物や構築物を所有するための地上権や賃借権の設定などで受領する権利金などについても、権利金などの金額が借地権の設定された土地の時価の1/2を超えるような場合であれば、譲渡所得として課税対象となります。
(4)資産が消滅することによって補償金などを受領した場合
収用などで、借地権や漁業権といった資産がなくなったり、その価値が減少したり、することによりいっぺんで補償金などを受領した場合には、その補償金などは譲渡所得として課税対象となります。
4.所得税の課税対象とならない譲渡所得
資産の譲渡による所得のうち、次のような所得は課税対象となりません。
(1)生活用動産の譲渡による所得
家具、什器、通勤用の自動車、衣服、などの日常生活に必要な動産の譲渡による所得は課税対象にはなりません。
しかし、貴金属、宝石、書画、骨とう、などで金額が30万円を超えるような「もの」の譲渡による所得は課税対象となります。
(2)強制換価手続で資産が競売などをされたことによる所得
資力を失って債務を弁済することが甚だしく困難な場合には、強制換価手続で資産を譲渡したことで受領できる所得、及び、強制的な換価手続による執行が避けられないと認められるような場合における資産の譲渡で受け取ることができる所得で、その譲渡代金の全てが債務の弁済に充当された場合には課税対象とはなりません。
なお、強制換価処分とは、滞納処分や強制執行、抵当権などの担保権の執行としての破産手続や競売、などのことを言います。
(3)国や地方公共団体への財産の寄附行為や公益を目的とする事業を行う法人に対する財産の寄附行為で国税庁長官の承認を受けた場合の所得
法人に対して財産を贈与や遺贈をした場合には、時価で財産の譲渡があったものとみなして譲渡所得の課税対象となります。
しかし、国や地方公共団体に財産を寄附した場合や、公益を目的とする事業を行っている法人への財産の寄附で国税庁長官の承認を受けた場合には、その寄附はなかったものとみなされて、課税対象にはなりません。
(4)国などに対して重要文化財等を譲渡した場合の所得
文化財保護法により指定されている重要文化財(除く、土地)を国、独立行政法人国立文化財機構、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立科学博物館、地方公共団体又は一定の地方独立行政法人(以下、「国等」)に譲渡した場合の譲渡所得については、課税対象にはなりません。
なお、文化財保護法の規定により指定されている重要有形民俗文化財を平成30年12月31日までに国等に譲渡した場合の譲渡所得については、その2分の1相当額が課税対象となります。
一定の地方独立行政法人への重要文化財又は重要有形民俗文化財の譲渡については、平成26年4月1日以後の譲渡について適用されます。
(文化財保護法による)
(5)財産を相続税の物納に充てた場合の所得
相続税の物納に財産を充てた場合には、その財産の譲渡はなかったものとみなされます。
ただし、物納の許可限度額を超えるような価額の財産を物納した場合には、その超過した部分は譲渡所得の課税対象となってしまいます。
(6)債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の所得
中小企業である法人の取締役などでその法人の債務の保証人が、その法人の事業に利用されている資産を、債務処理計画に基づいて平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間にその法人に贈与した場合には、一定の要件の下において、その贈与はなかったものとすることができます。
5.譲渡所得以外の所得として課税されるもの
資産の譲渡による所得であっても、次のような所得は譲渡所得ではなく、事業所得、雑所得、山林所得として課税対象となります。
(1)事業の所得者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得は事業所得となります。
(2)不動産所得や山林所得、雑所得を得るような業務を行っている者がその業務に関して上記(1)の棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得は雑所得となります。
(3)使用可能期間が1年未満の減価償却資産、取得価額が10万円未満である減価償却資産、取得価額が20万円未満である減価償却資産で取得の際に「一括償却資産の必要経費算入」の規定の適用を受けたものを譲渡した場合の所得は事業業所得、又は雑所得となります。
(4)山林を伐採してその木を譲渡した場合、あるいは立木のまま譲渡した場合、の所得は山林所得となります。しかし、山林を取得後5年以内での伐採のよる譲渡や立木の譲渡は事業所得、又は雑所得となります。
(5)上記(1)から(4)までの資産以外の資産を相当期間にわたって、継続的に譲渡している場合の所得は事業所得、又は雑所得となります。
6.課税方法
譲渡資産の種類によって譲渡所得は分離課税の対象になるものと、総合課税の対象になるものとに区分されて課税されます。
分離課税の場合は、譲渡所得金額についての税額を、事業所得や給与所得などの他の所得の金額とは区別し、租税特別措置法に規定された税率によって計算します。
総合課税の場合は、譲渡所得の金額を事業所得や給与所得などの他の所得の金額と合計し、所得税法に規定された累進税率によって税額を計算します。
譲渡した資産の種類別の課税方法
譲渡資産の種類 | 課税方法 |
---|---|
土地(借地権等の土地の上に存する権利を含みます。)及び建物等 | 分離課税(土地建物等) |
株式等 短期所有土地の譲渡とみなされるもの | 分離課税(土地建物等) |
ゴルフ会員権の譲渡に類似するもの | 総合課税 |
上記以外の株式等に係る譲渡 | 分離課税(株式等) |
上場カバードワラント(平成22年1月1日以後に譲渡するもの) | 分離課税(先物取引等) |
店頭カバードワラント(平成24年1月1日以後に譲渡するもの) | 分離課税(先物取引等) |
その他の資産 | 総合課税 |
譲渡所得まとめ
どのような所得が譲渡所得となり課税対象になるのかを認識した上で取引などを行うことはとても大切です。また、他の所得と通算して税額を計算することができるか否か、についても非常に重要なポイントです。譲渡所得に関する理解を深めることは会社や自分の確定申告などの際にはとても有益だと考えられます。