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生産管理に重要な「QCDS」の活用方法と概要を徹底解説

生産管理における構成要素「QCDS」を解説 業務改善

QCDSとは、Quality(クオリティ、品質)、Cost(コスト、費用)、Delivery(デリバリー、納期)、Safety(セイフティ、安全)、の頭文字を繋げた言葉で、製品の評価に関する指標のひとつ、とされています。関連する用語には、QCD、QCDSE、QCDF、QCDSM、などがあります。

本稿ではQCDSの構成要素について詳しく説明し、生産管理においてどのような点が重要なのか、類似した指標との比較、などについてわかりやすく解説します。

1.QCDSの概要

QCDSの考え方は、元々製造業にける生産管理の現場で使われるようになったもので、現在ではこのQCDSをシステム開発の管理指標にしたり、顧客満足度向上に利用したり、と様々な場面で活用されています。

前述したように、QCDSとは、Quality(クオリティ、品質)、Cost(コスト、費用)、Delivery(デリバリー、納期)、Safety(セイフティ、安全)、を表している言葉ですが、重要なことはQCDSを可視化できるようにしておくことで、予防的に異常に対応することが可能になります。先ずは、QCDSを産んだ生産現場におけるQCDSの各要素に関して解説します。

(1)Quality(クオリティ、品質)の可視化と管理のポイント

適切に品質を管理するためには、4M(Man[人]、Machine[設備]、Method[方法]、Material[原材料])のそれぞれの品質状態を可視化して管理することが必要になります。品質におけるMan(人)の管理においては、スキル充足率を用いて可視化して、スキルマップで正確に作業をすることが可能な人を大勢育成します。

次いで、品質におけるMachine(設備)の管理においては、工程能力指数で可視化して、管理図を利用して、Machine(設備)が一定の規定異常の品質を製造できる能力を向上させます。また、品質におけるMethod(方法)の管理においては、手順整備率を可視化し、手順整備マップを整備して、組織として「正常な作業」というものを定義します。

最後に、品質におけるMaterial(原材料)の管理においては、検査合格率を可視化して、品質月報を活用して、原材料が品質規格を充足するようにします。それぞれについて、以下に詳しく説明します。

①品質(Quality)におけるMan(人)の管理

良い品質というものは、正しい作業をすることができる人によって生み出されるものです。*「スキル充足率」によって、各職場で正しい作業スキルを保有している人がどのくらいいるのかを把握することができます。

*スキル充足率

その業務を遂行するために必要なスキルを抽出して、対象となる従業員がどのレベルのスキルを保有しているのかを示したもの。自己申告に対して、本人と上長が相談しながら最終的に完成するものであり、人事評価などのタイミングで定期的に見直しをすべきものと考えられています。

一方で、スキルマップとは、業務を遂行するために必要なスキルを棚卸して、各従業員が保有しているスキルを一覧して確認できる表のことを言います。 各職場における従業員のスキル状況を把握・認識して、人材の育成を計画的に実行するために利用されているツールです。

例えば、他の従業員を指導できるような水準のスキルであれば◎、自分一人でこなすことができるレベルのスキルであれば○、上長や同僚などからのサポートがあればできるスキルの水準であれば△、全くできないレベルのスキルであれば×、などと記入して従業員を評価することになります。

スキル・マップは、会社によっては、技能マップ、力量管理表、などとも呼ばれており、まだスキルが不十分な従業員の育成プランを立案したり、組織全体のスキル力向上を図ったり、という目的で活用されています。

②品質におけるMachine(設備)の管理

良い品質とは、一定の規定以上の品質を作る能力を保有している設備から生み出されるものです。ここで重要になるのが、工程能力指数と管理図です。工程能力指数とは、ある工程が保有している工程能力を定量的に評価する指標の一つのことです。

工程能力指数を計算する方法は「品質特性の規格幅を6シグマで割った値」です。品質特性とは、各ラインの製造物の品質に大きな影響を与える要因で、具体的には、重さ、長さ、抵抗値、などを挙げることができます。

規格幅とは、製造業ではそれぞれの品質特性を一定の範囲内に収まるように作るのですが、その範囲を規格と呼んでおり、その規格の最大値と最小値の差のことを規格幅と言います。最後に6シグマですが、数値データ間の分布(ばらつき)は標準偏差で表すのですが、統計学的には、その標準偏差のことシグマと言います。6スシグマは、その名の通り、標準偏差の6倍の数値のことです。

この工程能力指数を維持するためのツールとして、管理図というものがあります。管理図では、中心線から管理限界線を引いて、その限界線を超えたものを異常とみなします。異常の兆しが見つかった際には、全件数の検査などのサンプリングを実施する頻度を高めることで、異常が発生するかどうかを確認して、もし異常が発生しているのであれば、すぐに生産を中止して対応する必要があります。

③品質におけるMethod(方法)の管理

良い品質というものは、正しい方法で作業が定義・実施されることにより生み出されるものです。ここで重要になるのが、手順整備率と手順整備マップです。手順整備率とは、各製品、各製造ライン、などにおいて正しい作業手順書が維持されているかどうかを示している指標のことです。また、手順整備マップとは、作業手順書を整備するためのツールのことです。

作業手順書が最新のものに改訂されて正しいものになっていれば◎、存在はしているものの改訂されておらず古いままの状態であれば○、まだ作成中の状態であれば△、そもそも存在していない×、を記入することで各製造現場での作業手順書の作成状況を一覧できるようにしておきます。

各職場における作業手順書の整備状況が可視化されることで、職場のリーダーに他の職場との競争意識や優劣を意識させることで、自分の自職場における手順書整備のモチベーションを高める効果が考えられます。

④品質におけるMaterial(原材料)の管理

良い品質とは、一定の品質以上のMaterial(原材料)を利用することで生み出されるものでもあります。ここで重要となるのが、検査合格率や品質月報です。検査合格率とは、各ラインや各購買取引において、自社で設定した品質規格に対する合格率を可視化したものです。

どの製造ラインやどの購買取引先が良いのか(あるいは、悪いのか)、や今後改善して良くなっていくのか(あるいは、反対に悪化していく方向なのか)、などを予測することも可能です。また、これを管理するツールが品質月報になります。

品質月報では、合格率をキーにして順位付けを行い、低い順位の製造ラインや購買取引先社に対して、品質の改善計画を提出してもらったり、対策の実施状況をレポートしてもらったり、監査の実施、などを行うことになります。また、特性項目別に不良率を計算して、不良率が高い場合には、情報の提供と注意喚起を実施することになります。

(2)Cost(コスト、費用)の可視化と管理のポイント

適切に費用に管理するためには、以下の4Mのコストの状態を可視化して管理することが必要です。コストにおけるMan(人)の管理においては、労働生産性を可視化し、配置図を利用して、生産性が維持される配置にすることが重要です。

次にコストにおけるMachine(設備)の管理においては、設備生産性を可視化し、設備投入計画表を活用して、生産性を維持した設備稼働にすることが必要になります。コストにおけるMethod(方法)の管理においては、手順別コストを可視化し、ABCの手法を利用して、生産性を維持した手順で作業をさせることが必要です。

コストにおけるMaterial(原材料)の管理においては、在庫回転率を可視化し、在庫回転率推移表を利用して、原材料の滞留や停滞がないように在庫を回転させることが重要です。それぞれについて、以下に詳しく説明します。

①コスト(Cost)におけるMan(人)の管理

適切なコストは生産性を維持した人員配置から生み出されることになります。ここで重要になるのが労働生産性と労働生産配置図です。労働生産性とは、労働者1人当たり、あるいは1時間当たり、に生み出される成果や業績を表す指標のことです。

生産性とは、工程に投入したリソース(資源)と産み出されたモノの比率を意味している言葉であり、投入したリソース(資源)に比べて産出したモノが大きければ生産性が高い、ということを意味しています。つまり、労働生産性の算出式は、

「労働の成果(産出したモノ) ÷ 労働量(投入したリソース」

となります。

労働生産性を可視化したツールが労働生産配置図です。労働生産配置図で各職場の労働生産性の差異を「見える化」して、他の職場との違いや優劣、といったものを意識させて、労働生産性の低い職場の責任者にどこに問題があるのか、をか考えさせることが可能になります。

②コスト(Cost)におけるMachine(設備)の管理

適切なコストは生産性を維持した設備の稼働から生み出すことが可能になります。ここで重要になるのが設備生産性と設備投入計画表です。設備生産性とは、企業における設備投資の効率性を表す指標設備のことで、機械設備(有形固定資産)を利用して、どのくらいの付加価値を生み出しているのか、を示しています。

設備生産性の算出式は、

「付加価値 ÷ 有形固定資産」

となっていますが、ここでの付加価値とは減価償却費を含む「粗付加価値」としています。

少ない設備投資で高い生産高をあげることができれば設備生産性は高くなります。このような状況を可視化するルールとして設備投入計画表というものがあります。設備投入計画表は、各設備における製品別必要数と生産能力とのバランスを「見える化」したものです。この表を用いて、設備の生産性と必要量に対応する投入計画を策定することが可能になるのです。

③コスト(Cost)におけるMethod(方法)の管理

適切なコストとは、生産性が維持された手順で作業が実行されることで生み出されるものです。ここで重要になるのが、手順別コストと活動基準原価管理(ABC、Activity Based Costing)です。手順別コストとは、手順を最初から書き出して、その手順に対応する作業工数と副材や経費を積み上げたもの、を言います。

手順別コストを可視化するツールが*活動基準原価管理(ABC、Activity Based Costing)です。

*活動基準原価計算(ABC、Activity Based Costing)
どの製品やサービスのために発生したのかが判別することが難しい間接費を、各製品や各サービスのコストとして極力正しく配賦することで、生産活動や販売活動などに関する費用(コスト)を正確に認識・把握しようとする考え方を「活動基準原価計算(ABC、Activity Based Costing)」と言います。製品の製造プロセスや商品の販売プロセスで消費され費用(原価)を計算する、原価計算方法の1つです。

製造間接費の一般的な配賦方法においては、大量生産の方が原価が高く見積もられ、少量生産の方が原価が安く見積られることになってしまい、実際と異なり、問題が生ずることになっていましたが、活動基準原価計算(ABC、Activity Based Costing)ではにおいては、製造間接費をコストプール(原価部門)という単位に割り当てることになり、各コストプールで集計された原価を各製品や各サービスに割り当てることにより、適正な配賦ができるのです。

④コスト(Cost)におけるMaterial(原材料)の管理

適切なコストは、在庫が回転している(在庫の滞留・停滞がない)ことから生み出されることになります。ここで重要になるのが、在庫回転率と在庫回転率推移表です。在庫回転率とは、一定の期間内においてどのくらいの在庫の数量が出入しているのかを示している指標のことです。

在庫回転率の計算式は、

一定期間(1年など)の商品売上金額 ÷ 平均在庫金額

となっており、少ない在庫投入で高い生産高をあげられれば在庫回転率は高くなります。在庫回転率は高ければ高いほど良い、とされており、在庫に投入されたキャッシュが時間をかけることなく売上(キャッシュ)として回収される、ということを意味しています。

在庫回転率を可視化したツールが在庫回転率推移表で、各製品における在庫回転率の時間的な推移を「見える化」した表となります。在庫回転率が悪い製品に対しては、期首在庫を削減するための方法として、購入量や購入頻度を見直す、また、期末在庫を削減するための方法としては、長期滞留している在庫商品の廃棄、などで、分母となる在庫量を減らす必要があります。

(3)Delivery(デリバリー、納期)の可視化と管理のポイント

納期を適切に管理するためには、以下の4Mのコストの状態を可視化して管理することが必要です。納期におけるMan(人)の管理では、非正味作業比率を可視化して、手待ちカウンターを利用して、手待ちの時間を減らして(なくして)、正味作業だけで実施できるようにします。納期におけるMachine(設備)の管理においては、正味生産時間比率を可視化して、可動率を利用して、可動させたい時にいつでも可動できるようにしておきます。

また、納期におけるMethod(方法)の管理においては、原単位比較表を利用して原単位差を可視化し、詰め替え作業や積み直し作業などがなくても物流がスムーズに流れるようにします。最後に、納期におけるMaterial(原材料)の管理では、サイクルタイム差を可視化して、ボトルネックを改善し、プロセス間の仕掛発生をなくして、円滑に次のプロセスへとモノが流れるようにします。以下に、それぞれについて詳しく説明します。

①Delivery(デリバリー、納期)におけるMan(人)の管理

適切な納期は、手待ち時間が少なく(無く)、正味作業だけで行われていることから生み出されるものです。ここで重要になるのが、正味作業比率と手待ちカウンターです。正味作業比率とは、作業に占める付加価値がない非正味作業の比率を示す指標のことです。作業の中には、積み直し、不良品の手直し、手待ち、といった非正味作業と、加工などの正味作業及びその付帯作業とがありますが、この割合のことを「正味・非正味比率」と言います。

このような状況を可視化するツールとしては、手待ちカウンターを挙げることができます。非正味作業中、一番無駄なものが手待ち時間ですが、実態としては、他の作業の中に紛れてわかりにくくなっているケースが多いとも言えます。したがって、手待ち時間が発生する度にカウンターで手待ち時間を計測するのです。そこで発見された手待ち時間には、別作業を組み込むなど、手待ち時間のムダをなくすようにします。

②Delivery(デリバリー、納期)におけるMachine(設備)の管理

適切な納期は可動させたいときに可動させることができることから生み出されるものです。ここで重要になるのが、6大ロスと正味生産時間比率です。「設備の6大ロス」とは、故障ロス、段取・調整ロス、空転・チョコ停ロス、速度低下ロス、不良・手直しロス、・立上り・歩留りロス、のことを言います。これらのロスの積み重ねにより、納期が遅れたり、リードタイムが延長したり、するのです。

正味生産時間比率とは、前述したようなロスと付加価値を有している生産時間とを積み上げて、正味生産時間と非正味生産時間との比率を計算したものです。正味生産時間比率と類似した指標としては可動率を挙げることができます。可動率とは、トヨタ生産方式でも使われている言葉で、機械設備を動かしたい時に正常に動かせた時間の割合、のことを言います。

生産能力に対する、需要に応じた生産実績(生産の負荷)の比率のことを稼働率、と呼ぶことと区別するためにに対して可動率は「べきどうりつ」と呼ばれることもあります。動作可能時間を「動作可能時間+不可能時間」で割ることで可動率は算出されます。可動率は動作不可能時間によって悪化するので、その原因を*PQ分析などを活用して、ロスの大きなものから順次削減するようにします。

*PQ分析
PQ分析とは、Pはproduct(生産物、品目、製品)、Qはquantity(生産量)を意味しており、横軸に生産品を、縦軸に生産量をとり、生産量の多い順に生産品目を並べて比較ができるグラフを用いて数値分析する方法のこと。

③Delivery(デリバリー、納期)におけるMethod(方法)の管理

適切な納期は、積みなおしや詰め替えなどが発生せず、無駄なくモノが各工程を流れることで生み出されるものです。ここで重要になるのが、付帯作業比率や原単位対比表です。付帯作業比率とは、加工時間の正味作業と付帯作業(製品を収容する箱の入替作業など)、運搬作業、不良品の修正作業、手待ち時間、などの無駄な時間の割合を可視化した指標のことです。

各工程の間においては、収容箱に関わる人数が異なっているので、積み直しや詰め替えといった作業が生じるのですが、その時に利用するツールが原単位対比表になります。原単位対比表は、入荷原単位(前の工程から入荷する数)と作業原単位(生産物1つ、または、一定量の生産物を製造するために必要な時間)との差を比べることが可能な表のことです。

入荷原単位と作業原単位の差が大きい場合には、出荷サイクルと比べると入荷サイクルが長い、ということになり、オーダー数量が変動した際に入荷を待たなければならない(生産を開始できない)という問題が生じる可能性があります。

④Delivery(デリバリー、納期)におけるMaterial(原材料)の管理

適切な納期とは、各工程の間において仕掛が発生せず、次の工程に円滑に作業が流れることで生み出されるものです。ここで重要になるのが、各工程におけるサイクルタイムの違いや時間差になります。各工程のサイクルタイムを確認することで、どの部分がどの程度のボトルネックを生じさせているかをみつけることができます。

具体例を挙げて説明しましょう。A工程においては1個150秒で製品の加工が完了しますが、B工程では加工が完了するまで180秒かかります。C工程においては200秒かかります。この場合では、A工程とB工程2との完成にかかる時間の差は「180秒―150秒」で30秒になるので、A工程が製品を6個製造する度にA工程とB工程の間には在庫が1つずつ積み上がることになります。

次に、B工程とC工程の製造時間の差は20秒なので、C工程では毎回20秒手待ち時間が発生することになります。このように各工程の製造時間の差から在庫が積み上がる速度や手待ち時間が把握できるので、どのくらいの中間在庫があればよいのか、他部署からの支援要員はどのくらい必要なのか、などを検討して円滑な作業の流れを確保することが可能になります。

(4)Safety(セイフティ、安全)の可視化と管理のポイント

安全を適切に管理するためには、以下の4Mのコストの状態を可視化して管理することが重要となります。安全におけるMan(人)の管理において、安全教育実施率を可視化して、KYTを活用して、あらかじめ決めておいた安全教育を受けさせることが必要です。次いで、安全におけるMachine(設備)の管理では、不安全箇所対策率を可視化するとともに安全赤札を利用して、危険(不安全)な状況が生じないような場所で作業することが重要です。

また、安全におけるMethod(方法)の管理においては、ヒヤリハット率を可視化して、ヒヤリハットカードを利用してて、重大な事故や災害にの発生を予防することが大切になります。そして、安全におけるMaterial(原材料)の管理では、危険原材料数を可視化し、有害な原材料を取り扱うことができる人や機会をできるだけ少なくすることが極めて重要になります。それぞれについて、以下に詳しく解説します。

①Safety(セイフティ、安全)における人の管理

安全とは、職場で定められた安全教育の徹底によって生み出されるものです。ここで重要になるのが、安全教育実施率とKYTです。安全教育実施率とは、法律で定められた雇用時の教育、職長など職場のリーダーに対する教育、自社で独自に定めた安全衛生教育、といった安全教育を実施した比率のことを言います。

参加人数が揃わない、業務が多忙、など安全教育ができない理由を探すことは可能ですが、安全教育ができなかったことで実際の事故や災害が発生してしまえば、場合によっては、役所から強制的に操業停止などの措置を実施され、自社の信用が大きく損なわれる可能性があることは忘れてはいけません。

KYTは安全教育のひとつの考え方で、「危険(キケンのK、予知(ヨチのY、トレーニング(トレーニングのT」を意味しています。現場での作業に潜在的に存在している険に気付いて、安全でない(不安全)状態や危険(不安全)な行動をしないように対応を実施する活動のことを言います。

②Safety(セイフティ、安全)におけるMachine(設備)の管理

安全は、不安全(危険)な機械設備がないような場所で作業をすることから生み出されるものです。ここで重要なのが、不安全箇所対策率と安全赤札です。不安全箇所対策率とは、点検によって指摘された不安全(危険)な箇所に対して、それぞれの職場がどのくらい対応策を実行・実施したのか、を可視化した指標です。各職場で優劣や順位を可視化することにより、職長などの現場リーダーの安全に対する意識が向上するでしょう。

もし、不安全(危険)箇所への対応策がスムーズに進まないような場合には、安全赤札を使用します。安全赤札の使用方法とは、不安全(危険)な状態な箇所に赤札を貼付して、対策が完了するまでは、貼ったままの状態にしておきます。また、安全赤札には、対応策の実施担当者、完了期限、実施すべき対応策(案)、などを記入しておきます。このように他の人にも見られることで、対応策を実施せざるを得ない、というムードを醸成してしまうのです。

③Safety(セイフティ、安全)におけるMethod(方法)の管理

安全は、事故や災害が発生する前に予防的に対応することから生み出されるものです。ここで重要になるのは、ハインリッヒの法則とヒヤリ・ハット率、ヒヤリ・ハット・カードです。ハインリッヒの法則とは、重大な1件の事故や災害の背後には、軽微な29件の事故や災害が存在しており、さらにその裏には、300件もの、事故に災害までには至らなかったが、ヒヤリとした、あるいは、ハッとした、というケースが存在している、という労働災害の経験則のひとつです。

ヒヤリとした、あるいは、ハッとした、というケースが職場にどのくらいあるのか、と言う指標をヒヤリ・ハット率と言い、可視化したツールがヒヤリ・ハット・カードです。このカードには、工程の名称、時期、場所、人、行動(何をしようとしたのか)、発生したこと、最初に記載します。次いで、その発生原因を分析して、対策も記入します。カード化することによって、ヒヤリ・ハットの事象が明確になり、重大な事故や災害が実際に発生する前に予防的な対策が実施されることになるのです。

④Safety(セイフティ、安全)におけるMaterial(原材料)の管理

Safety(セイフティ、安全)は、有害な原材料を取り扱う従業員やタイミングが極力少ないことから生み出されるものです。ここで重要なのが危険材料取り扱い回数ですが、これは取り扱うアイテムの数量や取り扱うことができる従業員の人数を明確にしたものです。当然ながら、これらの数字が小さいほどリスクは低く抑えられることになります。

2.QCDSと類似した用語と考え方

QCDSと類似した考え方には、QCD、QCDSE、QCDF、QCDSM、などがあります。

(1)QCD

QCDとは、GCDSの内の「Q(クオリティ・品質)、C(コスト・費用)、D(デリバリー・納期)」の3つを抽出した考え方で、ものづくりにおける重要なポイントを順番に並べたものです。QCDSのSは主に建設業界などで使用され始めた言葉なので、製造業においてはQCDという用語の方が一般的かもしれません。

(2)QCDSE

QCDSに「Environment(環境)」を追加したQCDSEという用語もありますが、これは建設業界や施工業界などで主に使用されており、現場の環境に配慮することも求めるという意味を表しています。

(3)QCDF

QCDFとは、QCDに「Flexibility(柔軟性)」を加えた用語です。QCDFは主に製造業やサービス業といった業界で利用されている指標になります。現代の製品の入れ替わりが激しい状況に適切に対応するために、変化に応じて柔軟に対応する、というポイントを取り入れた考え方です。

(3)QCDSM

QCDSMとは、QCDSに「Moral(やる気)」を付け加えたもので、主に経営管理の手法として利用されています。具体的には、経営方針を展開する場合の具体的な実施内容や経営活動の改善を区分するため、などに使うケースが多いようです。

まとめ

QCDSとは、本来、製造業を中心に利用されていた指標(考え方)ですが、現在では、IT業界におけるソフト開発などの指標に使われるなど、その利用範囲は大きく拡大しています。また、前述したように、類似した様々な指標が業態に応じて利用されるようにもなっており、企業活動における重要な経営指標として認識されるようになっています。

QCDSの各指標は可視化、定量化することが可能なものであり、様々なツールを活用して改善や向上が図れるようにあらかじめ検討しておくことが極めて重要だと考えます。

 

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