● はじめに
会社を経営していく上で、銀行から貸付を受ける場面は何度も遭遇すると思います。しかし、業績がいいはずなのに借りられなかったり、逆に不安だったはずの審査に通ることもありませんか?果たして、その差は何なんでしょうか。
今回は、銀行が企業に貸付を行う場合にどのような視点から判断しているのかを説明します。銀行側の視点を知っているだけで、どういう時に融資を受けやすいかも予想がつくようにもなります。ぜひ、最後まで読んでいってくださいね。
● まず始めに明確にすべきこと
貸付の判断を予測するポイントを把握する前に、まずは希望している資金がどういった内容なのか考えておく必要があります。なぜ貸付を希望しているか、その理由によって銀行員の目のつけ所も変わってくるからです。内容については、主に2種類に分類できると思います。それは運転資金か、設備資金かということです。
分類するにあたって、それぞれの内容もきちんと理解しておきましょう。まず、設備資金については、企業が資産を購入する場合に銀行から調達する資金のことを指します。どんな業種であれ、企業が成長すると社屋や工場等の設備が必要になります。一般的には、事業の拡大を目的とした前向きな理由が多いです。しかし、例えば製造業であるなら老朽化した設備の更新といった必要不可欠な理由もあり、事情は様々です。設備資金は、貸付希望額が運転資金よりも大きくなることが多いので、銀行へは早めに相談し計画的に進める必要があると言えます。
次に、運転資金についてです。運転資金は細かく分類すると5種類ありますが、貸付を希望する会社の多くが経常運転資金という種類の資金で銀行に相談をします。これは、仕入先に買掛金を支払うサイトと、販売先から売掛金を回収するサイトの違いにより発生するものです。経常運転資金が不足した場合、仕入先に支払期限を延ばしてもらうか、販売先に早く支払ってもらえば解決します。しかし、サイトの変更は企業経営の不信につながるので、銀行からの貸付によって手当することが一般的なのです。運転資金には他に、赤字補てん資金、過剰投資による設備しわ補てん資金、事業拡大に伴う増加運転資金、売上減少に伴う減少運転資金といった種類があります。
これらの種類によっても、貸付を審査する際のポイントが異なってきます。続いて、どのようなポイントがあるのか、またそのポイントはどの種類の資金の時に注目されるか説明していきましょう。
● 貸付判断のポイント
① 企業のこれまでの実績
企業がする際は、必ず直近3期分の決算書など過去の営業実績の提出が求められます。運転資金であれ設備資金であれ、まず決算書上で利益が出せているかは注目されるポイントになります。貸付を受けた場合は利息の支払いがあるので、単純に考えて利息を払えるだけの利益がないと貸付は許可されないからです。特に、設備投資を行いたいと考えている場合、金額が大きくなりやすいため返済期間が長期化しがちです。そのため売上や利益の実績が十分になければ、貸付を許可されにくい傾向にあります。銀行では、過去の決算書に基づいて企業の格付けをしていて、格付け次第で条件が変わったり貸付の可否が決まります。どのような決算内容だと良い条件が引き出せるかについては、銀行の担当者に率直に聞いてみるのもいいかもしれません。
② 収支見通し
これまでの実績が悪かった場合であっても、具体的で実現可能性の高い計画がある場合は貸付を受けられる可能性があります。そのために、運転資金でも設備資金でも今後の見通しを最低3年程度は示す必要があります。その際は、より具体的な事象や数値を盛り込んで見通しを立てるといいでしょう。「新規開拓を頑張り売上を伸ばす」ではなく「XX社から7000点の受注が確定済」など、具体名や数値を示すことで信憑性が高まります。信憑性の高さは、そのまま貸付の許可が出るスピードに影響します。赤字補てんの運転資金など早急に必要になる資金の場合は、銀行へより具体的な収支見通しを提示することを心がけましょう。ただし、銀行も提出された計画と実際の結果をモニタリングしています。現時点の営業実績と大幅に異なるような計画は、実現可能性が低いと判断されてしまいます。そうなれば、その後の貸付の可否にも影響が出るので、実現可能性が見込まれる計画を策定することに留意してください。
③ 担保
過去の実績や収支予測が立派であっても、銀行はさらなる安心材料を求めます。担保を設定することは、無担保での与信金額を減らしてリスクを軽減してくれます。実際に担保を差し出すかどうかは、企業が銀行と交渉する際の1番の腕の見せ所でしょう。無担保で借りられる方が、企業側としてはリスクが低くなるはずです。
また、何を担保とするかも交渉の際に十分に考慮したいです。担保は、万が一返済ができなくなった際は銀行側へ渡さなくてはなりません。そのため、本社社屋や工場など営業に直結する資産などは避けるべきなのです。担保がない場合に信用保証協会を利用するという手段もあります。しかし、その際は保証料の支払いが結果として割高な貸付を受けることになる可能性もあります。どういう資金を、どれくらいの貸付期間で、担保をつけて貸付条件にメリットが増えるか、銀行側としっかり意見交換しましょう。
④ 保証人
昨今、経営者保証ガイドラインの制定によって経営者や第三者の連帯保証を要する機会は減少してきています。しかし、それは一部の優良な企業に限り、起業間もない会社や業績が悪い企業に対しては従来と変わらず代表者保証を依頼する場合が多いと言えます。実際、銀行としては事業を何とか続けてもらう意識付けとして保証を依頼することもあります。赤字補てんや設備しわ補てん資金など、後向きな理由の場合は銀行も意識確認を念入りにするはずです。保証人の相談があった場合、銀行がどのような理由で依頼しているかヒアリングして、銀行の支援姿勢を確認してみてください。
● おわりに
今回は、資金の種類と、貸付許可の審査におけるポイントを解説してきました。最近では、金融緩和やゼロ金利政策等により銀行も収益が苦しい状況が続いています。それによって、銀行も貸付実績を伸ばそうとする傾向にあります。それは、過去と比較すると若干ではあるかもしれませんが融資のハードルが下がっているとも言えます。できるだけ貸付に関連する情報を集め、銀行側とも定期的に意見を交わし、必要時にはスムーズに銀行から貸付を受けたいものです。