株式会社レクリエ財務改善コーチング

企業経営に必要なCVP分析(損益分岐点分析)の手法・必要性を解説

経営分析

CVP分析とは、Cost-Volume-Profit Analysisという英語を省略した言葉で略したもので日本語では「損益分岐点分析」と呼ばれています。Cost(コスト)、Volume(販売量)、Profit(利益)、という言葉の各頭文字を繋げた会計用語でもあります。管理会計における重要な分析手法のひとつとして利用されています。本稿では、CVP分析の概要、CVP分析の必要性について、CVP分析の手法、具体的なCVP分析の経営への活用方法、CVP分析の注意点、などについて詳細に解説します。

1.CVP分析(損益分岐点分析)の概要

CVP分析(損益分岐点分析)を実施する際には、最初にCVP(損益分岐点)がどういうものなのかをきちんと理解することが極めて重要になります。

(1)CVP(損益分岐点)

会社を経営する場合には、日常的に利益を生み出し続けることができなければ会社は破綻してしまいます。しかし、実際に販売して獲得できた金額である売上高と、販売活動に要した費用が同じ金額になって、損益がプラスマイナス0になってしまうケースも少なくないかもしれません。こうした状態のことを「損益分岐点」といいます。もう少し分かりやすく表現すると、利益はないが損もしていない、という営利企業にとっては何とも評価しにくい状況のことです。

簡単に言うと、損益分岐点を売上高が上回れば利益が生じることになり、反対に損益分岐点を売上高が下回れば損失が発生し、赤字経営の状態となります。つまり、損益分岐点の値を求めることによって最低でいくらくらいの売上を上げれば利益が出すことができるのか、ということが判明するということです。

非常にシンプルな算式で表現すると、

利益=売上高-費用

という計算式になります。単純に売上高(売り上げた金額)が、諸費用(販売の際にかかった費用)よりも高い場合には利益(儲け)が、結果として費用が余計にかかってしまった場合は損失(ロス)が生じるということになります。

上記の「費用」ですが、損益分岐点を計算する際には、最初に会社の運営に関する全ての費用を「固定費」と「変動費」のどちらかに分類することが必要になります。
「固定費」とは、製品の生産量や商品の販売量の範囲に関係なくず、毎月必ず必要になる一定の経費のことです。具体的には、人件費、オフィスの賃料、固定資産税、その他機器類のリース代金、などが該当します。一方の「変動費」とは、製品の生産量や商品の販売量などの増減変動に比例して変わる経費のことです。具体的には、生産する際の原材料費、外注加工費、販売する際の仕入れ原価、仕入手数料、などを挙げることができます。上記の費用とは、この固定費と変動費の2つの費用を合わせたものになります。こうした点を踏まえると、上述した「利益=売上高-費用」という算式は

「利益=売上高-(変動費+固定費)」

に置き換えることが可能です。

(2)固定費と変動費の分解方法

固定費と変動費の分解(以下、固変分解)することが大全体ですが、実は固変分解をすることは思っているほど簡単ではありません。固変分解するには、主に以下の5つの方法があります。

  1. IE(Industrial Engineering Method、インダストリアル・エンジニアリング)法
  2. 勘定科目精査法(費目別精査法)
  3. 高低点法
  4. スキャッター・グラフ法
  5. 最小自乗法(回帰分析法)
①IE(Industrial Engineering Method、インダストリアル・エンジニアリング)法

IE(Industrial Engineering Method、インダストリアル・エンジニアリング)法とは、費用の変動を表現する関数に類似しているものを論理的に見つけ出す演繹的な方法のことを言います。言い換えると、工学的にインプットとアウトプットの関係を測定することで正確な関数を見つけ出す科学的な分解法とも言えます。しかし、そうした関数のようなものを見つけ出すことは簡単ではないので、現実的に利用されている方法とは言いにくいと思われます。もしも、利用する場合であっても限定されたケースにしか利用することができない場合が一般的です。

②勘定科目精査法(費目別精査法)

勘定科目精査法(費目別精査法)とは、費目別に固定費と変動費に分解する方法のことで、これまでの経験をベースにして勘定科目ごと(費目ごと)にひとつひとつを変動費と固定費とに分解していくことになります。このくらい操業度が変動すればこのくらいは金額が変更になる、というこれまでの経験から分解をするのです。現実的には手間や時間がかかるし、変動費と固定費の分解が客観的ではないとも言われることはありますが、直感的で多くの人の納得性が高い方法ではあるので実際にはよく使用されています。勘定科目精査法(費目別精査法)を利用して正確に固変分解を実施することは不可能ではありますが、多少の不正確でも問題がなければ簡便に利用できる方法だとも言えます。中小企業庁では勘定科目精査法(費目別精査法)を採用・利用しています。

③高低点法

高低点法とは、これまでの実績データから正常な操業状態にある最高操業度の時点と最低操業度の時点の2種類のデータを選び、その2種類の時点を結んだ直線から固定費と変動費とを導き出す方法のことです。簡単に実施することが可能ですが、正確性には欠けている欠点が指摘されています。

④スキャッター・グラフ法

スキャッター・グラフ法は前述した高低点法の弱点を補強した方法だと言えます。これまでの実績のデータをグラフ上に置いて、目測で近似した直線を引いて固定費と変動費とを求める方法のことです。高低点法よりは精度は高いと考えられるものの、目測なので客観性にはまだ欠けていると考えられます。

⑤最小自乗法(回帰分析法)

最小自乗法(回帰分析法)とは、上記のスキャッター・グラフ法で得られた近似直線を数学的に見出して、その近似直線から固定費と変動費とをそれぞれ導出する方法のことです。これまでは計算することが非常に困難でしたが、今ではExcelを利用して簡単に計算を実施可能なので、最も実用的な方法であると言えるでしょう。

固変分解が難しい理由は、上記の固変分解するそれぞれの方法に問題があるということのみならず、現実の総費用線が直線ではなくて曲線である、という点にあるのです。現実には、費用の大部分は準固定費や準変動費である、ということもあるので、損益分岐図表で見ることができるような綺麗な直線とはならないことが判明しています。

しかし、そうした現実を踏まえてCVP分析実施すると算出方法が極めて複雑になってしまうので、実務上の利便性(ただし、いくら正確に分析が可能であっても、多額の費用を要する場合には意味がないとも言えます)を考えて、正常な操業レベル内で近似している直線を使用して総費用線を表しているのです。

したがって、実際の操業度が正常な操業レベルからかけ離れればかけ離れるほど、現実の数値と分析上の数値とが大きくかけ離れてしまうことになります。また、正常な操業レベルの範囲の捉え方などによっては、変動費率の値が1を超過して、固定費がマイナスに陥ってしまうケースも考えられます。

上記のように、上手く固変分解をすることができないような場合には、いくらCVP分析を実施したとしても、その情報は使えないのみならず、かえって経営の判断を誤らせてしまうおそれがあることには注意が必要です。

そこで、このような場合には、CVP分析などを行うのを諦めるか、あるいは、現状に適合するように工夫をした上で行う必要があります。

(3)CVP分析(損益分岐点分析)とは

損益分岐点の値を用いて実施するCVP分析(損益分岐点分析)は、企業の売上高や必要費用における目標を設定する際にとても有用かつ有効な方法となっています。特に、固定費と変動費との関係性に注目して、その関係性が企業の利益にどのような影響を与えるのか、といった点について分析を行います。

基本的には、利益と費用が一致する売上高、つまり企業が赤字に陥らない最低水準の売上高がいくらになるのかを探ることが目的になりますが、これまで以上に利益率をアップさせるためにはどのくらいの費用が必要になるのか、あるいは、一定の利益を確保するためには最低でどのくらいの売上高を上げることが必要なのか、などCVP分析は幅広く応用することが可能な分析手法です。

また、きめ細かくCVP分析を実施することで、従業員一人ひとりの業務に対する意識を向上させることもできます。具体的な数値をそれぞれの従業員が認識しておくことによって、売上をアップさせることや、逆に、コストを低減・抑制させること、などを各自が十分に意識するようになれば、結果として企業の業績アップに繋がると考えられます。

2.CVP分析の必要性について

CVP分析は、特に新規事業を立ち上げる場合や、新規商品を市場に投入する際に有用・有効な分析手法であると言われています。既存の自社ビジネスが軌道に乗っていて調子が良いからといって、綿密な事業計画を立案することもなく新たに事業をスターとさせてしまっては、何の方針も計画もないことが原因となって新たな事業のみならず既存の事業に対しても悪影響を及ぼしかねないことも懸念されてしまいます。

こうした状況の場合には、CVP分析を活用して損益分岐点を把握し、どのくらいの単価で最低どのくらいの分量の商品を販売することができれば利益を確保することができるのか、若しくは、赤字に陥ることを避けられるのか、といったレベル感を把握してから具体的な経営の目標を立案することが必要になります。

一方で、既存企業でもCVP分析は重要な分析手法として活用されています。CVP分析を実施することによって、会社全体のみならず各部署や製品別のコスト構造を認識・把握することが可能になり、企業が抱えている課題やリスク明確にすることができます。原則としては、毎月損益分岐点を求めることが理想です。毎月の収支を明確にすることによって、大きな変動が生じたかどうかを確認し、もし大きな変動が見受けられた場合には対策を十分に練って実施することで、結果的に安定した経営を行うことが可能になります。

柔軟かつ臨機応変に、売上、費用、などの各指標の目標設定を実施してい、目標とする利益を確保するための具体的な対応策を検討するためにも、CVP分析は企業にとって必要不可欠なものであると言えるです。

3.CVP分析の手法

利益を求めるための算式は、シンプルに表現すると、

「利益=実際の売上金額-商品原価-販売費用」

となりますが、上記の算式の「実際の売上金額」を「売上高」に、「商品原価」を「変動費」に、「販売費用」を「固定費」に、各項目を置き換えて、前述した

「利益=売上高-(変動費+固定費)」

という計算式にまとめてみます。

損益分岐点と利益も損益も共にプラスマイナス0の状態なので、

「0=売上高-(変動費+固定費)」

つまり「固定費=売上高-変動費」となります。

これは、「毎月必要となる経費をカバーするためには、どのくらいの利益(売上高-変動費)が必要なのか」ということを意味しているのです。

上式の売上高から変動費を差し引いた利益を「限界利益」と呼んでおり、ダイレクトに入手できる利益を意味しています。つまり、会社が赤字に陥らないためには、最低でも、固定費=限界利益、という状況になればよいのです。

計算式としては、

「限界利益=売上高×限界利益率(総売上高において限界利益が占めている割合)」

で求めることが可能で、別の計算式に置き換えると、

「固定費=売上高×限界利益率」

という算式が成立することが分かるでしょう。

上記の計算式を計算しやすいように入れ替えると、

「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」

となります。この計算式が最も簡素化された数式です。ただし、この計算式でも若干分かりにくいので、下記で簡単な事例を上げて説明しましょう。

15万円で販売する商品を3万円で仕入れて、その商品を販売するために店舗を毎月10万円で借りることにしました。
すると、前提としては、
売上高:15万円
変動費:3万円
固定費:10万円
となります。

上記の前提に基づいて限界利益率を計算してみましょう。

限界利益率は「1-(変動費÷売上高)」

で求めることができるので、
限界利益率=1-(3÷15)=0.8となります。

上記の、限界利益率0.8の値を

「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」

という計算式に当てはめてみます。
すると、

損益分岐点売上高=家賃(固定費)15万円÷限界利益率0.8=187,500

となります。

つまり、187,500円が損益分岐点であり、毎月この金額以上の売上を上げれば赤字に陥ることはない、ということが分かります。こうした計算方法の流れを活用することで、誰であっても損益分岐点を簡単に求めることが可能になります。

それでは、損益分岐点分析の計算手順をあらためて解説しましょう。

(1)損益分岐点の算出

損益分岐点売上高は下記の計算式で表現することが可能です。

「損益分岐点売上高=変動比率×販売数量(=変動費)+固定費」

上式の変動費とは売上高に比例して変動する費用のことで、具体的には、材料費、工場の従業員の労務費、などが該当します。変動費率とは、売上高に対して変動費が占めている割合のことで、具体例を挙げると、1万円の売上高が増える都度に変動費が6千円発生するケースでは変動費率は0.6(6千円÷1万円)となります。固定費とは、売上高とは比例しないで、必ず一定して生じる費用のことで、工場長の労務費、減価償却費、などが該当します。

それでは下記の前提を置いた場合に損益分岐点はいくらになるのでしょうか。

製品の販売価格を1個15万円、変動費が9万円、固定費は3百万円と仮定します。すると、変動費率は9万円÷15万円=0.6、となります。次に、販売数量をXと置きます。そうすると、売上高は150,000Xと表すことができます。一方で変動費+固定費は、90,000X + 3,000,000 と表すことが可能です。

損益分岐点とは、売上高と変動費+固定費の両方が等しくなる状態を言うので、150,000X = 90,000X + 3,000,000という算式を満たせばOKということになります。この式を展開するとXは50となります。したがって、損益分岐点における販売数量は50個で、損益分岐点売上高は、150,000 × 50(個) = 7,500,000なので、750万円になることが分かります。

ここで重要なのは、費用を変動費と固定費とに分類する場合の考え方となります。具体的には、小規模な企業で工場長も他の工員と一緒に労働時間の半分は働いているようなケースでは、工場長の労務費の半分を変動費とする、といった実際の状況に応じた固変分解をすることによってより正確な損益分岐点分析を把握することができるようになるのです。

(2)損益分岐点比率の算出

損益分岐点比率とは、実際の売上高に対して損益分岐点売上高がどのくらいの割合を占めているのかを把握できる収益性指標のひとつとなります。実際の売上高と比較して損益分岐点売上が低ければ低いほど、損益分岐点比率も低い割合になります。

計算式は

「損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高」

になります。

上記(1)の例に基づいて、例えば製品が60個売れたと仮定します。この場合の売上高は150,000円 × 60個 = 9,000,000円となります。この数字を上記の算式に代入すると、
「損益分岐点比率 = 750万円 ÷ 900万円 ≒ 83%」
となります。

損益分岐点比率の割合が低い場合には赤字に対する耐久性が強いことを意味していて、不況に対して抵抗力が強いことを示しているのです。もちろん、業種・業態などによって差異はありますが、一般的には、損益分岐点比率が80%を下回っていれば問題ない、とされています。

一般的には、損益分岐点比率によって企業体質は下表のように分類されると言われています。

損益分岐点比率 企業体質
70%未満 超優良企業
70%以上~80%未満 優良企業
80%以上~90%未満 やや注意の企業
90%以上~100%未満 危険な企業
100%以上 赤字企業

(3)安全余裕率の算出

安全余裕率とは、実際の売上高と損益分岐点との差分がどの程度あるのかを示す指標で、1から損益分岐点比率を差し引いたものを言います。つまり、損益分岐点比率は低いほど良い状態を表しているので、安全余裕度は高ければ高いほど良好な指標となるのです。

計算式は

「安全余裕度 = 1 - 損益分岐点比率」

になります。
上記(2)の例で考えると、
「安全余裕度 = 1 - 約83% = 17%」
となるので、もしも現在の売上高があと17%減少してしまえば損益分岐点にまで落ち込んでしまい安全余裕度がなくなってしまうことを意味しているのです。

4.具体的なCVP分析の経営への活用方法

CVP分析の主な活用法は、以下の3種類とされています。

  1. 事業別の損益分岐点分析で高リスク事業と低リスク事業を明確化
  2. 投資計画を変更した場合にどのような影響を企業業績に与えるのかを明確化
  3. 利益計画を達成するために必要な売上高の明確化

(1)事業別の損益分岐点分析で高リスク事業と低リスク事業を明確化

損益分岐点売上高は、その値が低ければ低いほど高い安全性を有している、ということを示しています。つまり、収支がゼロになる売上高が低ければ低いほど、その分事業収支がマイナスになる可能性(投資が失敗する可能性)が低いと判断されるということになります。CVP分析をそれぞれの事業別に分けて実施することで、リスクが高い事業と低い事業とを峻別することが可能になるので、各事業に対する個別の戦略を立案することが可能になります。
事業別のCVP分析においては、具体的には、高いリスクを有する事業から迅速な撤退、リスクが低い事業に経営リソースを集中させる、などの経営上の意思決定を下すことができるようになります。ただし、一方で経営的な視点からは「リスクが高いビジネスは参入障壁が高いので競合他社が少ない分野でのビジネス」だとも考えることは可能なので、CVP分析は絶対的な指標ではなく、あくまで経営上の戦略を決定する際の一要素として捉えることが重要です。

(2)投資計画を変更した場合にどのような影響を企業業績に与えるのかを明確化

前述した損益分岐点売上高の計算式は、以下のようにより細分化することが可能です。

「損益分岐点販売量×損益分岐点販売単価(=損益分岐点売上高)=変動比率×販売量(=変動費)+固定費」

投資計画が変更されることによって、変動費率を予想よりも増加させたケースでは、増加させた費用を回収するために損益分岐点売上高も増加させることが必要になります。変動費率をアップさせることが損益分岐点をアップさせることになることは明白です。損益分岐点売上高は、販売数量と販売価格とに分解することが可能なので、損益分岐点売上高も損益分岐点の販売数量も大きくなるのです。

一方で、投資計画の変更によって当初の見込みよりも固定費を増加させた場合には、販売量を増加させる、あるいは、販売単価を値上げすることによって回収する、のどちらかの方法で対応することになります。

具体的には、変動費率が変わらなくても固定費が変動するだけで損益分岐点はととても大きな影響を受けることになるのです。こうして、損益分岐点分析は投資計画を変更した場合の企業業績に与える影響を数値として表現することが可能なのです。

(3)利益計画を達成するために必要な売上高の明確化

損益分岐点分析は収支がプラスマイナスゼロになる販売の状況を表すのみならず、経営目標としている利益金額を達成するためには、この商品をどのくらいの分量を販売すれば良いのか、どのくらいの単価で販売する必要があるのか、といった情報を得ることが可能になります。上記の計算式を以下のように変更することで、利益に対する情報も入手することができるのです。

「販売量×販売単価(=目標とする売上高)-変動比率×販売数量(=変動費)+固定費=目標利益」

上記の算式の変動費や固定費に現在の(あるいは予想上の)数値を代入して、目標利益も代入すれば、目標とする売上高を算出することが可能です。こうしてCVP分析を活用することによって将来に達成すべき具体的企業目標値を明確に示すことが可能になります。

5.CVP分析の注意点

(1)CVP分析のアサンプションについて

これまで説明してきたように、CVP分析は短期間の利益計画を立案する場合などに利用される分析方法なのですが、CVP分析を実施する場合には、下記のようなアサンプション(暗黙の了解・前提)が置かれているので、CVP分析を実施する際には、こうしたの前提が実際の姿と大きくかけ離れていないかどうか、あるいは、かけ離れていても無視できるレベルのものなのかどうか、といった点をそれぞれあらかじめ検討しておくことが必要です。

【具体的なアサンプション(前提)】

  1. 生産量と販売量とは等しいととする
  2. 販売価格は変動せず常に一定である
  3. (複数の製品を販売している場合には)製品ミックスは一定
  4. 1単位当たり変動費は一定である
  5. 固定費は常に一定とする

なお、上記のようなCVP分析のアサンプションの大部分は、計算プロセスを簡単にすることを目的に、売上高や費用を一次関数として取り扱えるようにするためのものです。したがって、そうしたことを理解せずにCVP分析を実施してしまうと、意味がない分析を実施してしまうおそれがあります。当然ながら、意味がない分析をして作成された情報は全く使うことができない情報になってしまいます。

(2)意味があるCVP分析を実施するために

上述したような意味がない分析をしないようにするためには、具体的にどういったアサンプション(前提)に基づいて分析実施しているのか、といったことを理解すると同時に、必要に応じて、CVP分析の方法を現実の姿に則った形式になるように修正することが必要になります。

具体的には、生産量と販売量が等しい、というアサンプションを置いている主要な理由としては、もしも、生産量と販売量とが大幅にかけ離れてしまった場合には、CVP分析で求められる営業利益(これは、直接原価計算の方法で求められる営業利益と同じものです)が、全部原価計算の方法で求められる営業利益と大きくかけ離れてしまうと言う理由からです。

したがって、全部原価計算の方法で求められた営業利益ではなくても特段の支障がない場合には、このアサンプションは無視することができるということになります。しかし、制度会計上の営業利益であることが必要とされるような場合*には、生産量と販売量は等しいものとするというアサンプションを変更。修正して、意味があるCVP分析を実施できるように工夫することが必要になります。
*制度会計上では、全部原価計算の方式で計算された営業利益である必要があります。

また、複数の販売商品があるような場合には製品ミックスは一定とする、というようなアサンプションを置いている理由は計算を簡単にするためですが、こうした製品ミックスが大幅に変更されてしまうようなケースであれば、一定の製品ミックスのままでCVP分析を実施しても大きく現実とはかけ離れてしまうことになるでしょう。

したがって、企業全体の売上高を使用したCVP分析を実施するのではなく、個別製品ごとのCVP分析を実施するような工夫が必要不可欠です。その際には、独立変数を売上高にするのではなく、独立変数は販売量にした方が分析しやすいでしょう。

なお、いろいろなパターンの製品ミックスをシミュレーションとして試してみるというケースであれば、企業全体の売上高を使用したCVP分析を実施しても、それなりに意味があると考えられます。

まとめ

CVP分析においては費用を固定費と変動費に分けることが重要になりますが、「1.CVP分析(損益分岐点分析)の概要(2)固定費と変動費の分解方法」で説明したように固定費と変動費に分解することは簡単なことではありません。まずは固定費と変動費の分解をする際に注しなければならないポイントを踏まえた上でCVP分析に臨むことが重要なのです。

CVP分析は経営上必要となる様々な観点からの分析が可能ではありますが、CVP分析の目的を明確にして分析結果を活用することが非常に重要になります。ポイントとしては、CVP分析の前提となっているものが現実の状況と大きく乖離していることがないかどうかをきちんと確認することを挙げることができます。もしも前提と現状が大きく乖離している場合には前提を変更して算出し直すことが必要になるケースも考えられます。また、CVP分析の結果のみを盲信することは避けた方が良いと考えます。上記の前提条件によっては分析結果が異なることも十分に考えられますので、この前提ではこの結果になるという認識を持っていることが必要です。

こうした注意点はあるものの、CVP分析が予算の策定時や投資の意思決定時によく利用されているのは、損益分岐点を算出することで、目標とする利益に対する目標とすべき売上高や販売数量、というものを明確にすることが可能だからです。

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監修
株式会社レクリエ / 公認会計士・税理士
沢田慎次郎

お金の流れを変えて、未来を創造する専門家。決算書や申告書から企業のお金に関する問題を洗い出し、財務改善・利益改善に活かすことを得意とする。
様々な規模・業種のクラアントをサポートしてきた経験と豊富な知識を活かし、調達再編スキームの構築や融資交渉サポートなども手掛ける。

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