中小企業の場合、利益が出ているかといって経営が必ずうまくいってるとは限りません。利益が出ていても手元に現金がなく、支払いが出来なくなると倒産してしまいます。いわゆる黒字倒産というものです。この黒字倒産にならないために、現金の残高を管理するのが資金繰り表です。資金繰り表は今後、現金がいつ、どのくらい入ってくるのか、いつ、どのくらい支払い、手元に残っている現金はどのくらいあるのかを示す表です。会社を経営していくためには、現金の確保が非常に重要となり、この資金繰り表を作成することも非常に大切です。
資金繰り表の活用手段
では、資金繰り表はどのような時に使われるのでしょうか。資金繰り表が必要な代表例としては、金融機関から融資を受ける場合です。金融機関から融資を受けるためには、今後の利益がどうなるかだけでなく、現金がいつ入ってくるかということも非常に重要な要素です。特に契約が決まってから売上が入金されるまでに時間がかかる業種は特に作成が必要です。また、金融機関から融資を受けない場合でも、資金繰り表を作成し、日ごろから今後の現金の動きを把握することは、中小企業を経営するためには非常に重要です。
資金繰り表の作成手順
資金繰り表は様々なフォーマットがありますが、基本的な作り方は同じです。 まず、以下の2つに大別されます。
① 営業(経常)収支
② 財務収支
まず、①の営業収支(経常収支という場合もあります。)についてですが、営業収支とは日々、会社が行っている業務での現金収入や現金支払いを表したものです。営業収支は下記の式で計算されます。
営業収支 = 営業収入 ― 営業支出
・営業収入
営業収入とは売上や掛け金の回収等の日々の事業活動で手元に入ってきた現金、営業支出は日々の仕入支払いや人件費の支払等の事業活動のために現金で支払いを行った分です。
この営業収支がプラスだと、その月は事業活動によって現金が増えており、逆にマイナスだと事業活動によって現金が減少してしまっている状況になります。ここでの現金とは、金融機関の預けている預金も含まれます。例えば、会社の事務所に現金がなくても、金融機関の口座に売上が振り込まれているのであれば、その売上分は現金に加算されます。また、給料の支払等についても、現金で直接払わずに、各従業員の口座に振り込む場合でも現金での支払いとして考えます。
では、営業収入の具体的な項目についてです。営業収入は先述した通り、事業活動によって得た現金です。主な項目としては、売上の入金、売掛金の回収、受取手形入金、手形割引等が挙げられます。現金売上については、文字通り売上をその場で現金、もしくは月をまたがず振込でもらった場合です。飲食業やサービス業では現金売上が多くの割合を占めます。一方で、建設業や卸売業では、契約完了しても売上が月をまたいで入ってくるケースがほとんどです。そのようなお金は売掛金となり、入金があるときに売掛金の回収として、営業収入に記載します。受取手形入金は、現金での支払ではなく、先方が手形を振り出した場合に、その期日が到来したときに現金化となります。手形割引については、手形を期日が来る前に
金融機関へもっていき、手数料を支払い、期日前に現金化してもらうことです。
・営業支出
続いて、営業支出についてですが、営業収支は日々の事業活動で支払う現金です。主な項目としては、現金での仕入支払、買掛金支払、支払手形支払、人件費支払、水道光熱費支払、その他現金での経費支払です。基本的に営業収入項目と比べると営業支出項目の方が項目数は多くなります。事業活動の費用で現金で支払う費用はすべて計上されます。
次に②の財務収支についてです。財務収支とは、①の営業収支以外での現金の収支を表したものであり、下記の計算式で算出されます。
財務収支 = 財務収入 ― 財務支出
・財務収入
財務収入とは、事業活動以外で得た現金収入であり、主な項目としては、借入による現金調達や受取利息、受取配当金等があります。この中でも圧倒的に多いのが借入による現金調達です。金融機関から借入をした場合は、その月の財務収入の欄に借入をした金額が記載されます。
・財務支出
財務支出とは、事業活動以外で支払った現金であり、主な項目としては、毎月の借入返済、支払利息、配当金支払等です。この中で多いのはやはり、毎月の借入返済です。毎月の借入返済分を財務支出の欄に記載します。
営業収支と財務収支が計算できたら、当月現金収支を算出します。算出式は下記のとおりです。
当月現金収支 = 営業収支 ― 財務収支
この当月現金収支がプラスなら現金が増加、マイナスなら現金が減少しているということになります。よく、営業利益と混同される方がいらっしゃいますが、ここでの当月現金収支とは、あくまで現金が増えたか減ったかのみを考えます。例えば売上が前月よりも大幅に増加し、営業利益が増加している場合でも、その売上がその月に入っていなければ、当月現金収支がマイナスになることもあります。つまり、利益が黒字、赤字に関係なく現金の収支のみを計算するということです。
当月現金収支が算出できたら、最後にその月の最終的な現金の残高を計算します。これを翌月繰越分といいます。計算式は下記のとおりです。
翌月現金繰越分 = 前月現金繰越分 + 当月現金収支
前月現金繰越分とは、その月の最初の現金残高です。それに当月現収支を加算したものが翌月現金繰越分となります。この翌月現金繰越分がマイナスとなってしまうと事業を継続していくために必要な資金を確保できていない状況となります。つまり、支払いを行うための現金が不足している状況であり、外注先に支払いができないと今後仕事の発注を受けてくれなくなったり、金融機関に返済ができないと今後の融資ができにくくなったり、給与が支払われなくなると社員のモチベーションが低下し、優秀な社員から退職することになったり、税金や社会保険料を滞納したら年利9.1%の高い金利が掛かることになり、最悪倒産ということになってしまうことにもなりかねません。
この翌月現金繰越分について補足すると前月現金繰越分は負の値になることはありません。(これが負の値になっていると前月の支払が出来ていない状態になってしまうため)そのため、翌月現金繰越分がマイナスになる場合は下記のケースとなります。
当月現金収支がマイナスであり、翌月現金繰越分ではそのマイナスを補填できない場合です。また、当月現金収支を分解すると、営業収支がプラスまたはマイナス、財務収支がプラスまたはマイナスという下記の4通りの組み合わせがあります。
① 営業収支がプラス、財務収支もプラスとなる場合。
② 営業収支がプラス、財務収支がマイナスとなる場合
③ 営業収支がマイナス、財務収支がプラスとなる場合
④ 営業収支がマイナス、財務収支がマイナスとなる場合
①については、営業収支、財務収支がプラスとなっており、通常の営業活動で現金収入があり、更に財務収支でもプラスとなっているため、現金が増加しています。
②について、これが一番多いパターンかと思います。通常の営業活動で現金収入があり、財務収支がマイナス(金融機関からの借入を返済している等)であり、特段問題はありません。
③について、通常の営業活動で現金が減少しており、減少分を借入等で調達しようとした場合等がこれにあたります。この状態で営業収支のマイナスを財務収支で賄えず、当月現金収支がマイナスとなってしまうとやや危険な状態です。前月現金繰越分に余裕があれば良いのですが、余裕がないと、翌月現金繰越分がマイナスになってしまう場合もあるので、危険な状態です。
④については、通常の事業活動でも現金が確保できておらず、借入等でも現金が調達できていないケースです。当然、当月現金収支はマイナスとなり、前月繰越分でマイナス分を賄えないと翌月現金繰越分はマイナスとなってしまい、会社としては非常に危険な状態となります。
資金繰り表 まとめ
今回は月ごとの資金繰り表の作成について述べましたが、資金繰りに余裕がないときは、月単位ではなく、週単位での資金繰り表を作り、週単位で現金の動きを管理した方がよいです。支払いができない状態は会社にとってあってはならないことであるため、そのようなことを防ぐため にも資金繰り表を作り、余裕をもった資金管理を行いましょう。