1.日本の年金制度の概要
日本の年金制度は、主に会社勤めの人を対象にした厚生年金制度と主に自営業の人を対象にした国民年金を基礎部分(1階部分)にした制度となっており、それぞれ2階部分である厚生年金基金や国民年金基金、3階部分である企業独自の年金、という建付けになっています。
<国民年金被保険者種別と給付内容について>
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 第3号被保険者 | ||
加入者 |
日本国内に住む20歳以上60歳未満の者で、第2号被保険者・第3号被保険者でない者(具体的には、自営業者、農業従事者、学生、厚生年金の被保険者とならない労働者、無職の者、など) | 第1号厚生年金被保険者(具体的には、厚生年金被保険者のうち、第2~4号厚生年金被保険者ではない者。民間企業に勤務していえいる正社員や所定の要件を満たす短時間労働者、など) | 第2~4号厚生年金被保険者
(具体的には、公務員共済の組合員や私学共済の加入員、など) |
20歳以上60歳未満の第2号被保険者の被扶養配偶者 |
保険料 |
月額16,410円(2019年度) | 2017年9月以降、標準報酬月額の18.3%で固定(労使で折半) | 独自の保険料率を設定(経過措置) | 本人負担はない
(第2号被保険者の年金制度で負担) |
3階部分 | なし | 厚生年金基金など、各企業独自の企業年金 | 「職域加算」、一元化により「年金払い退職給付」に変更 | なし
|
2階部分 | 国民年金基金 (任意加入) |
厚生年金
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1階部分 | 基礎年金 |
上表のように基礎年金の2階部分、3階部分に国民年金基金や厚生年金基金といった年金基金制度が設けられています。それでは、国民年金基金や厚生年金基金について詳しく解説しましょう。
2.国民年金基金
国民年金基金とは、国民年金にしか加入できない第1号被保険者である自営業などの人と会社勤めの厚生年金加入者(第2号被保険者)とでは、将来受け取る年金支給額に差がありました。
厚生年金加入者は国民年金に上乗せされた年金部分があるため年金の手取り額に差が生じるのですが、この差額を解消するために設けられたのが国民年金基金という制度なのです。
(1)国民年金基金の種類
国民年金基金には、全国国民年金基金と3種類の職種別に設けられた職能型国民年金基金の2つがあります。全国国民年金基金に加入できるのは、国民年金の第1号被保険者の人で、住所や業種は問われません。
また、職能型国民年金基金に加入可能な人は、各基金で定められている事業、または業務に従事する国民年金の第1号被保険者の人となります。全国国民年金基金と職能型国民年金基金のそれぞれの基金の事業内容は同じとなっています。なお、加入はどちらか一方の基金にしか加入することはできません。
(2)加入条件
国民年金基金に加入できる人は、「日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生などの国民年金の第1号被保険者および60歳以上65歳未満の方や海外に居住されている方で国民年金の任意加入されている方」とされています。
しがって、厚生年金に加入している人やその配偶者は国民年金基金に加入することはできません。また、国民年金の第1号被保険者でも、国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・納付猶予を含む)されている人や農業者年金の被保険者の方も加入することはできません。
(3)加入資格の喪失
国民年金基金への加入は任意ではありますが、付加年金を代行した公的な年金制度という性格から、加入後に途中で自分の意思で自由には脱退できません。以下のいずれかに該当した場合のみ加入資格を喪失します。
・60歳になったとき(除く、海外に転居し国民年金に任意加入されている場合)
・65歳になったとき(国民年金に任意加入されている人)
・会社員になった場合など、国民年金の第1号被保険者でなくなったとき(含む、海外に転居した場合)
・国民年金の任意加入被保険者でなくなったとき
・職能型基金の場合は、該当する事業または業務に従事しなくなったとき
・国民年金の保険料を免除されたとき(含む、一部免除・学生納付特例・納付猶予)
・農業者年金の被保険者になったとき
・加入者本人が死亡した場合
(4)給付の種類
国民年金基金の給付には、老齢年金と遺族一時金の2種類があります。国民年金基金の加入資格を途中で喪失した場合には一時金は支給されず、掛金を納付した期間に応じた年金が将来支給されることになります。
また、国民年金の老齢基礎年金を繰上げ受給されている期間の間は、基金から国民年金の付加年金に相当する部分だけを受給されることになります。
➀老齢年金
国民年金基金を老齢年金として受け取る場合には、加入は口数制で年金額や給付の型を自分で選ぶことになります。自分が何口加入するかによって受け取る年金額が決定します。給付の型は、終身年金A型・B型、確定年金Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型、という7種類があります。
②遺族一時金
保証期間がある終身年金A型と確定年金Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型に加入している人が、年金を受け取る前、又は保証期間中に死亡した場合、には遺族に一時金が支払われます。
年金受け取る前に死亡した場合には、加入時の年齢、死亡時の年齢、死亡時までの掛金納付期間に応じた額の遺族一時金が支給されることになります。また、保証期間中に死亡した場合には、残りの保証期間に応じた額の遺族一時金が支給されることになります。
3.厚生年金基金
厚生年金基金は、厚生年金や国民年金基金とは異なり、あくまで私的な年金制度であることには注意が必要です。企業が運営する厚生年金基金が、国が管理している厚生年金の一部の運営・管理を代行しているということなのです。
(1)厚生年金基金の種類
厚生年金基金には大きく分けて、➀単独型、②連合型、③総合型、の3つのタイプがあります。
➀単独型
1つの企業だけで設立される厚生年金基金のことです。1,000人以上の加入者が必要、などの要件があるため、主に大企業において設立されている厚生年金基金です。
②連合型
連合型とは、グループ企業全体などのように資本関係があるような密接な関係がある企業集団によって設立される厚生年金基金を言います。(1)単独型と同様に、この連合型も加入人数が1,000人以上という要件があります。
③総合型
総合型とは、業界団体や地域団体、業界内の健康保険組合に加入している企業、などが集まって基金を設立する形式です。この方法であれば、中小企業同士が集まって厚生年金基金を設立することが可能となります。
(2)厚生年金基金の管理
厚生年金基金を管理するためには、企業とは独立した特別法人を設立して管理・運用を行います。しかし、実際には企業が特別法人に対して基金の職員を出向させるような場合や、積み立て不足に対して企業が追加拠出する場合などがあるので、形式上は独立していても、企業との関係がある程度は深い特別法人という位置付けとなっています。
(3)厚生年金基金の運用悪化
バブルが崩壊する前までは各厚生年金基金ともに運用益を確保できていましたが、バブル崩壊以降は運用成績の悪化による厚生年金基金の積立金不足が発生するようになり、企業にとっては積み立て不足解消のための拠出が負担になってきました。
そこで、2014年4月に改正厚生年金保険法が施行されることになりました。残念はありますが、この法律により運営状況が悪化している厚生年金基金に対しては5年以内の解散と他の制度への移行を促すということになったのです。
しかし一方で、現在では確定拠出年金という年金制度も整備されましたので、自分の力で年金資産を増やすことも可能にはなっています。
まとめ
年金基金には国民年金基金と厚生年金基金というものがありますが、その位置付けや運用・管理主体が異なっていることは理解頂けたとおもいます。どちらも基礎年金を補充する制度ではありますが、老後の資産を確保するためにはより一層の自助努力と各制度への理解が必要だと考えられます。