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経営者・経理担当者必見!賞与にかかる社会保険料計算の全知識

賞与にかかる社会保険料をイメージする画像 社会保険

会社から受け取る賞与の明細書を見ると、しっかりと社会保険料が差し引かれていることに気が付くでしょう。毎月の給与に加えて賞与でも社会保険料が差し引かれるのはどうしてなのでしょうか。また賞与時の社会保険料の計算方法はどうなっているのでしょうか。詳しく説明します。

 

1.賞与とは

賞与をイメージさせる図

賞与とは、一般的にはボーナスとも呼ばれており、年に1回あるいは数回給与の他に支給される臨時収入のことで、多くのサラリーマンやその家庭にとってはとてもうれしい収入なのではないでしょうか。

じつは、「健康保険法」と「厚生年金保険法」にも賞与の定義が定められています。左記の法律によると賞与とは「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他のいかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるもの」(健康保険法第三条の6、厚生年金保険法第三条の四)となっています。

したがって、ボーナスや臨時手当などのようにどのような名称であっても、健康保険法や厚生年金保険法においては、1年に3回以下支給されるものは賞与とされます。また、自分の会社の製商品のように現物支給されるものも賞与となります。

しかし、1年に4回以上支給されるものは賞与とはみなされません。このような場合には月次給与として取り扱われることになります。

また、賞与を支給した場合には、賞与支給日を起算日として5日以内に「賞与支払届」を管轄している年金事務所と健康保険組合に事業主は提出する必要があります。賞与の支払いがない場合であっても賞与支払届総括表に「不支給」と記載して届け出る必要があります。

 

2.賞与の社会保険料の計算

それでは賞与にかかる社会保険料の計算方法を、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料、の順に確認してみましょう。

(1)健康保険料

賞与における健康保険料は「標準賞与額」に保険料率を掛けて求めます。標準賞与額とは、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額のことを言います。

つまり、賞与の際の健康保険料を求める計算式は

健康保険料=標準賞与額×保険料率

となります。

保険料率は毎年改定されるものですが、健康保険組合によっては料率が異なるケースもあります。ここでは参考までに中小企業の多くが加入している「協会けんぽ」の料率を参考までに掲示しておきます。

参考:都道府県毎の保険料額表(協会けんぽホームページより)

都道府県毎の保険料額表 | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

 

一方、大企業などでは自前の健康保険組合を保有しているところも多いようです。このような健康保険組合における料率は、協会けんぽの料率と比べると割安に設定されているケースが多くみられます。

また、健康保険料については労使で折半しているところが多いようですが、福利厚生の観点から、若干会社の負担分を多めに設定しているところもあるようです。

<賞与時の健康保険料の計算例>

東京都のX社に勤務しているAさん(協会けんぽに加入)が賞与100万円をもらう場合には、100万円×9.9%×1/2(労使折半)=49,500円がAさんの納める健康保険料になります。

(2)厚生年金保険料

厚生年金保険料も、健康保険料と同様に、「標準賞与額」に保険料率を掛けて算出されます。厚生年金保険料は、

厚生年金保険料=標準賞与額×保険料率

という計算式で算出されます。

厚生年金保険料の料率については毎年改定されてきましたが、平成29年9月分からは固定されて変わっていません。厚生年金保険の料率についても下記を参照してください。また、厚生年金保険料も、原則として、労使折半の負担となっています。

参考:都道府県毎の保険料額表(協会けんぽホームページより)

都道府県毎の保険料額表 | 協会けんぽ | 全国健康保険協会

 

<賞与時の厚生年金保険料の計算例>

東京都のX社に勤務しているAさん(協会けんぽに加入)が賞与100万円をもらう場合には、100万円×18.3%×1/2(労使折半)=90,500円がAさんの納める厚生年金保険料になります。

(3)介護保険料

介護保険料も、健康保険料や厚生年金保険料と同様に、「標準賞与額」に保険料率を掛けて算出されます。介護保険料の料率は健康保険と同じく毎年改定されます。介護保険料は、

介護保険料=標準賞与額×保険料率

という計算式で求められます。

協会けんぽの介護保険の料率は、平成30年3月分(5月1日納付期限分)以降は1.57%となっています。(参考:協会けんぽのホームページより、「協会けんぽの介護保険料率について」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/1995-298

 

介護保険料は、原則として、労使折半の負担となります。また、介護保険は資格取得日に注意が必要です。介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満)の資格取得日は40歳の誕生日の前日になるので、誕生日の前日が含まれている月の分から介護保険料の徴収が始まります。

例えば、1月1日生まれの人が40歳になる場合、資格取得日となる「誕生日の前日」が12月31日なので、12月から介護保険料の徴収がスタートします(会社員の場合は12月の賞与分から天引きされます)。

<賞与時の介護保険料の計算例>

東京都のX社に勤務しているAさん(協会けんぽに加入)が賞与100万円をもらう場合には、100万円×1.57%×1/2(労使折半)=7,850円がAさんの納める介護保険料になります。

(4)雇用保険料

雇用保険料は、健康保険、厚生年金保険、介護保険とは異なり、賞与額に雇用保険の料率を掛けて算出します。雇用保険料は事業の種類によって異なっており、毎年改定されています。

雇用保険料は

雇用保険料=賞与額×保険料率

という計算式で算出されますが、保険料率は事業主と従業員でもそれぞれ異なります。

雇用保険の保険料の料率は以下のように定められています。

区分 保険料率 事業主負担 雇用者負担
一般の事業 9/1000 6/1000 3/1000
農林水産・清酒製造の事業 11/1000 7/1000 4/1000
建設の事業 12/1000 8/1000 4/1000

雇用保険の保険料は労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)に定めることとされており(雇用保険法第68条)、上表の料率は2017年4月から適用されているものです。

<賞与時の雇用保険料の計算例>

東京都のX社に勤務しているAさが賞与100万円をもらう場合には、100万円×0.3%=3,000円がAさん(一般の事業の労働者負担)の納める介護保険料になります。

 

3.賞与時の社会保険料に関する注意点

上記の標準賞与額については上限が定められています。具体的には、健康保険の場合は年間573万円(毎年4月1日~翌年3月31日までの累計額)となっており、厚生年金保険の場合は月間150万円となっています。

また、前述した賞与の定義に含まれない年に4回以上支給される給与以外にも、結婚祝金や見舞金などの労働の対価でないような金品も対象外となります。

実は賞与に対する社会保険料は平成15年までは総報酬の1%という基準だったのですが、平成15年以降から総報酬制という方式に変更になりました。つまり、毎月の給与を抑制しておいて賞与でたくさん払うということで企業側の負担を軽くすることが可能だったのです。

しかし現在の総報酬制では、多く賞与をもらっていても社会保険料負担が軽かったような人にも、そうでない人にも、同様に「標準賞与額」という概念を導入することで公平な負担感を負ってもらうことにしたのです。

 

まとめ

これまでの説明のように、賞与時においても、総報酬制の導入により、公平な税負担という目的に沿った運用が行われるようになっています。しかしながら、一方で相次ぐ保険料率の上昇などにより、ボーナス時の社会保険料負担が賞与額の約15%にも達している状況にあることは知っておかなければいけません。

社会保険の存在はいざという時のセーフティ・ネットという大切な役割があることは事実ですが、日常の生活が苦しくなってしまうような社会保険料の重い負担は抜本的な社会保険に対する対策の必要性も感じてしまいます。