コロナ禍でも利益を残し続ける中小企業の秘訣

事前確定届出給与の概要と利用方法について説明します

起業家の基礎知識

従業員に対しては毎月の給与支払に加えて賞与を支給している会社も多いと思いますが、役員に対しても会社の業績が良ければ何らかの支給を行いたいと考えても不思議ではありません。しかし、役員賞与を恣意的に決めてしまうと、利益が多額に上った場合には、たくさん役員賞与を払って人件費として費用に計上してしまうことが考えられます。

しかし、上記のように恣意的に支払われた役員賞与などは費用としての経常が否認されてしまい、まるまる税金がかかってしまうことになります。そこで、一定のルールのもとで役員賞与(役員報酬)を支払うのであれば、税務上経費にすることが可能になる、という制度を作ったのです。

その方法のひとつが「事前確定届出給与」と言われているものです。本稿では、事前確定届出給与の制度内容や利用方法などについて説明します。

 

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1.事前確定届出給与とは

役員賞与などの役員に対する報酬に関しては、損金算入が可能かどうかは重要な論点です。損金算入の「損金」とは、資本取引などを除いた、法人の資産減少となる原価、費用、損失、の金額を言います。そして、当該事業年度の益金からこの損金を差し引いた金額が法人の所得金額となり、この所得金額に応じて法人税を課せられることになります。

つまり、費用などが損金として算入されれば支払う税金は減ることになるのです。反対に、本来損金として算入すべきものを算入しない場合には不要な税金を支払うことになります。したがって損金算入が可能かどうかは税金対策上極めて重要なポイントなのです。

前述したように、役員報酬を損金算入するためには一定のルールがあり、現在は、定期同額給与、利益連動給与、事前確定届出給与、の3つの方法が定められています。定期同額給与と利益連動給与についても簡単に説明しておきましょう。

定期同額給与とは、支給時期が1ヶ月以下の一定期間毎で、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものを言います。また、利益連動給与とは、会社またはその会社と支配関係にある会社の業績に、役員の給与額を連動させる制度のことです。

定期同額給与と利益連動給与も要件を満たすことにより、損金算入が可能な方法です。それでは、事前確定届出給与とはどのような制度なのでしょうか。事前確定届出給与とは、その役員の職務について所定の時期に確定額を支給する、という定めに基づいて支給する給与(除く、定期同額給与及び利益連動給与)のことです。

決まった届出期限までに、所定の事項を記載した書類を事業所を管轄している納税地の所轄税務署長に届出をしている給与を言います。

前述した定期同額給与は、1ヶ月以内の期間ごとに支給される給与で、当該事業年度の各支給期間の支給額が同額であるものでした。つまり、定期同額給与は毎月支払われる役員給与である必要があります。しかし、実際は、非常勤監査役などのように年間を通じて執務をする必要がない役員もいます。

このような役員に対して、毎月支給をしていないから損金不算入にする、というのは逆に不公平であり、現実的ではありません。これまでも、実務的には非常勤役員に対して年に1回まとめて報酬を支給するような方法が行われていました。

このような歴史的な背景もあり、たとえ年に1度の支給であっても、報酬が予め決まっているのであれば、役員報酬が利益調整に悪用される可能性も少ないだろうから、「税務署に事前に届出をすることを条件に損金算入を認めよう」というものが事前確定届出給与なのです。

 

2.事前確定届出給与の手続と損金算入

役員報酬が単に社内的に確定しているというだけでは、確定した役員報酬とは認定しないというのが税務署の考えです。事前に、いつ、いくらを、誰に支給するか、を税務署に届出していなければ、事前確定届出給与とは認められないということになっています。

また、「事前に」という点についても具体的な期限が定められていて、下記の日の中で、いずれか早い日が届出期限とされています。支給金額、支給時期、がともに届出内容と完全に一致している場合には、何の問題もなくその支給額の損金算入が認められることになります。

支給する金額や時期の

パターン(事例)

説明

不完全一致支給

(一部支給)

届出額よりも1円でも少ない支給の場合には、支給金額の全額が損金不算入となります。支給時期がと届出と一致していない場合も、支給額が完全一致していたとしても、損金不算入となります。

不完全一致支給

(不支給)

届出は行っていたものの、実際は支給を行わなかった場合は、本来は損金不算入となるのですが、不算入とする対象額がそもそもないため結果として不算入額はゼロとなります。ただし、利益操作を目的とした届出や不支給は問題になる可能性があります。

不完全一致支給

(超過支給)

届出額を超過して支給した場合には、支給額の全額が損金不算入となります。届出額までは損金算入が認められると考えているかもしれませんが、全額が認められません。

定期同額給与と

事前確定届出の重複

定期同額給与の損金算入と事前確定届出給与の損金算入は重複して適用できるのでしょうか。実は、これらは別枠の制度なので重複が認められています。したがって、完全一致支給の場合であれば、全額の損金算入が認められることになります。なお、事前確定届出給与が不完全一致支給だったとしても、定期同額給与の損金算入の可否に影響はありません。

複数回支給の場合の

不完全支給

(一部金額相違)

複数回の事前確定届出給与を支給す場合は、全ての支給を完全一致で支給すれば何の問題なく全額を損金算入することが可能です。しかし、いずれかの支給もしくは全部の支給に不完全一致が生じた場合には、当該年度の事前確定届出給与の全額が損金不算入となってしまいます。その理由は、事前確定届出給与は年度単位の職務に対応して確定されている、と考えられているからです。

複数回支給の場合の

不完全支給

(一部不支給)

複数回の支給で全て当該事業年度中に支給される場合、いずれかに不支給があった際には、他の支給が完全一致支給であったとしても、全額が損金不算入となってしまいます。その理由は、事前確定届出給与は年度単位の職務に対応して確定されている、と考えられているからです。この場合も、上記と同様に、一度の不完全支給が他の完全一致支給に影響を与えることになり、損金不算入ということになります。

事業年度を跨いで不完全一致支給(その1

届出た支給時期が翌年度に跨ってしまう場合があります。複数回支給の届出を行っていて、1回目は事業年度中に届出の通りに支給をしたものの、2回目が翌事業年度での支給になっているような場合です。このような場合には、当該事業年度中に届出通りに支給された部分は全額損金算入をすることが可能です。しかし、翌期に支給された不完全一致支給については翌年度の所得計算上、損金不算入になってしまいます。

事業年度をまたいで不完全一致支給(その2

上記と反対のパターンで、1回目は不完全一致支給になってしまったけれども、翌期の2回目は完全一致支給になっているような場合です。この場合には、1回目だけではなく2回目の支給も損金不算入となってしまいます。事前確定届出給与は、届出を執行する年度単位で確定していることが必要なので、1回目の不一致が2回目に影響することになってしまいます。

届出外給与の混在

(同族会社の場合)

事前確定届出以外に届出を行っていない支給(例えば、決算賞与など)が支給される場合がありますが、事前確定届出給与は届出単位で完全一致が判定されるので、届出を行っていない支給に対しては影響がありません。同族会社の場合には、届出外の支給のみが損金不算入となります。

届出外給与の混在

(同族会社以外の場合)

上記のケースとの相違点は、同族会社に該当するか否かです。同族会社以外の会社では、例外的な「法人税法基本通達」で定めがあります。非常勤役員に対する報酬で、所定の時期に確定額の支給をする定めがなされており、その定めに従い支給した場合には、たとえ税務署に事前確定届出給与の支給に関する届出をしていなくても、その支給は事前確定届出給与に該当するとされているのです。

 

<まとめ>

事前確定届出給与は、役員報酬(役員賞与)を損金算入するためには利用すべき制度ではありますが、前述したように様々なパターンが想定できるので、どのパターンに当てはまって、損金算入が可能かどうか、を事前に確認しておくことが重要です。