事業承継補助金は、平成29年度から始まった制度ですが、「令和2年度経済産業省概算要求のPR資料一覧:一般会計」にも盛り込まれていることから、来年(令和2年)も引き続き募集される補助金と考えられます。本稿では、事業承継補助金の制度概要と、事業承継補助金のメリットや留意点について説明します。
1.事業承継補助金の制度概要について
事業承継補助金とは、事業承継やM&Aなどを契機とした中小企業の「新しい取組」をサポートする制度のことです。経営者が交代した後に経営の変革などを実施するような場合(これを「Ⅰ型」と飛びます)や事業の再編や統合などの後に経営の革新などを実施するような場合(これを「Ⅱ型」と呼びます)に必要な経費を補助する制度となります。
(1)事業承継補助金の種類「Ⅰ型」(後継者承継支援タイプ)
事業承継補助金の「Ⅰ型」(後継者承継支援タイプ)は、中小企業の代表者が交代することを契機に、新しい取組に必要な経費を補助します」」といタイプの補助金です。「Ⅰ型」における重要なポイントは、経営者が交代した「後」で、当該後継者が実施する新しい取組に関する補助金である、という点です。
ここで言われている「経営者の交代」とは、代表権の完全な移転のことを意味しています。事業承継補助金を利用するために必要な「代表権の完全な移転」は、株式の贈与時点では代表権の移転が完了している必要があります。そこで以下のような事例はどのように考えればよいのでしょうか。
①代表権の移転を行ってから株式を贈与する場合
代表権の移転を行ってから株式の贈与をしている場合には、代表権の転のタイミングは事業承継補助金を利用する要件に適合しているのでしょうか。このケースには何ら問題はありません。しっかりと代表権が移転した状態で株式の贈与が実施されているので、代表権の移転タイミングはOKです。
②代表権の移転を複数回繰り返したうえで株式を贈与する場合
例えば、元代表取締役である父からいったん親族が代表権を持ち、その後に子に代表権が移転して、父から子に株式が贈与されるような場合です。つまり父から子へ直接代表権が移転しているわけではく、途中に親族を挟んでから代表権が移転しているケースです。
結論を言うと、この場合も事業承継補助金を利用するための要件に適合します。元代表者であることの要件とは「代表権を保有していたことがある人」であるので、直接代表権を移転をしなくても、過去のどこかの時点で代表権を保有していれば問題はありません。結果として、株式贈与の時点で代表権が新たな代表に移転済みなのでタイミングも問題ありません。
上記の事例では、「親族を介して」、というパターンを例示しましたが、親族か親族以外か事業承継補助金の利用可否には影響がありません。また、上記の事例では、後継者も「子」としていますが、親族外の人に株式を贈与することに問題がないような場合であれば、親族以外の人を後継者にすることも可能です。
③株式の移転を実施してから代表権を移転する場合
株式移転が行われてから代表権を移転するような場合には、事業承継補助金を利用することができません。代表権移転→株式移転、という順番を間違えてしまうと、事業承継補助金を使うことができなくなってしまうのです。代表権を移転させるタイミングには十分注意をしてください。
「Ⅰ型」(後継者承継支援タイプ)を利用できる対象者は以下の通りになります。
- 経営者の交代をきっかけとして、経営の革新などに取り組む者。
- 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援等事業者により、特定創業支援等事業を受ける者など、一定の実績や知識などを有している者。
- 地域の需要・雇用を支える者で、地域の需要・雇用を支えることに寄与する事業を行う者。
なお、Ⅰ型(後継者承継支援タイプ)における承継者が法人の場合、事業譲渡や株式譲渡等による承継は対象とはなりません。
(2)事業承継補助金の種類「Ⅱ型」(事業再編・事業統合支援タイプ)
事業承継補助金の「Ⅱ型」(事業再編・事業統合支援タイプ)を利用するためには、事業再編や事業統合などを行う中小企業・小規模事業者などであり、以下の要件を満たすことが必要となっています。なお、後継者が不在で、事業再編や事業統合などを実施しなければ事業の継続が困難になることが予想されている者に限られています。
- 事業再編・事業統合などをきっかけとして、経営の革新などに取り組む者。
- 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援等事業者により、特定創業支援等事業を受ける者など、一定の実績や知識などを有している者。
- 地域の需要・雇用を支える者で、地域の需要・雇用を支えることに寄与する事業を行う者。
(3)事業承継補助金の対象者
事業承継補助金の対象者については、以下の通り、事業承継補助金事務局が作成した「平成30年度第2次補正事業承継補助金 公募要領」に示されています。
本補助金の補助対象者は、以下の(1)~(7)の要件を満たし、かつ後述する「6 事業承継の要
件」を満たす中小企業、個人事業主、特定非営利活動法人(以下、「中小企業者等」という)であること。(中小企業者等の要件については後述の*対象となる中小企業者等を参照)
※特定非営利活動法人とは、中小企業者等の振興に資する事業を行う(事業)者であって、以下のいずれかを満たす(事業)者であること。なお、特定非営利活動法人の認証申請は本補助金に関係ないため注意すること。
イ) 中小企業者と連携して事業を行うもの
ロ) 中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって設立するもの(社員総会における
表決権の二分の一以上を中小企業者が有しているもの。)
ハ) 新たな市場の創出を通じて、中小企業者の市場拡大にも資する事業活動を行う者であって、
有給職員を雇用するもの
(1) 補助対象者は、日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
※個人事業主は、青色申告者であり、税務署の受領印が押印された確定申告書 B と所得税青色申告決算書の写しを提出できること
※外国籍の方は、「国籍・地域」「在留期間等」「在留資格」「在留期間等の満了の日」「30条4
5規定区分」の項目が明記された住民票を添付してください。
(2) 補助対象者は、地域経済に貢献している中小企業者等であること。地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支えるなど、地域経済に貢献している中小企業者等で
あること。
※地域経済に貢献している例
・ 地域の雇用の維持、創出などにより地域経済に貢献している。
・ 所在する地域又は近隣地域からの仕入(域内仕入)が多い。
・ 地域の強み(技術、特産品、観光、スポーツ等)の活用に取り組んでいる。
・ 所在する地域又は近隣地域以外の地域への売上(域外販売)が多い(インバウンド等によ
る域内需要の増加に伴う売上も含む)。
・ 新事業等に挑戦し、地域経済に貢献するプロジェクトにおいて中心的な役割を担っている。
・ 上記によらずその他、当該企業の成長が地域経済に波及効果をもたらし、地域経済の活性
化につながる取組を行っている。
(3) 補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等の資金提供を受けている場合も対象外とする。
(4) 補助対象者は、法令順守上の問題を抱えている中小企業者等でないこと。
(5) 補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていない中小企業者等であること。
(6) 補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
(7) 事務局が求める補助事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
(出典:「平成30年度第2次補正事業承継補助金 公募要領」より:URL、https://www.shokei-hojo.jp/
*対象となる中小企業者等
本事業における「小規模事業者」とは、下記の「対象となる中小企業者等」の要件を満たし、以下の定義に該当する者とされています。(小規模企業活性化法に則り、宿泊業及び娯楽業を営む従業員20人以下の事業者を小規模事業者として規定しています。)
「対象となる中小企業者等」の要件
業種分類 |
定義 |
製造業その他 |
資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社 又は、常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主 |
卸売業 |
資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社 又は、常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主 |
小売業 |
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社 又は、常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人事業主 |
サービス業 |
資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社 又は、常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人事業主 |
(注1)ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下又は従業員900人以下
(注2)旅館業は資本金 5 千万円以下又は従業員 200 人以下、ソフトウエア業・情報処理サービス業は資本金 3 億円以下又は従業員 300 人以下
ただし、次のいずれかに該当する「みなし大企業」は除く。
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の*大企業が所有している中小企業者等
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業(*)が所有している中小企業者等
- 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者等
*大企業とは、上記で定義する中小企業者以外の者であって、事業を営む者としています。ただし、次のいずれかに該当する者については、大企業として取り扱わないものとします。
- 中小企業投資育成株式会社法に規定する中小企業投資育成株式会社
- 投資事業有限責任組合契約に関する法律に規定する投資事業有限責任組合
「小規模事業者」の定義
業種分類 |
定義 |
製造業その他 |
従業員20人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
従業員20人以下 |
商業・サービス業 |
従業員5人以下 |
(出典:「平成30年度第2次補正事業承継補助金 公募要領」より:URL、https://www.shokei-hojo.jp/)
(4)「新しい取組」とは
事業承継補助金を受給するための「新しい取組」とは、具体的にどのようなものを指しているのでしょうか。「新しい取組」とは、新規出店や新規設備投資などといった、事業活性化になるものを指しており、その取組に必要な資金を補助金対象としています。
具体的には、新たな取組に直接関与する従業員の給与などの人件費、新しく借りる店舗や事務所などの賃料、店舗開設に必要な外装や内装にかかる費用、機械設備の調達費用、などが挙げられます。
なお、「平成30年度第2次補正事業承継補助金 公募要領」(https://www.shokei-hojo.jp/)によると、下表の通り、補助対象経費が定められています。
費目名 |
概要 |
Ⅰ.事業費 |
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人件費 |
本補助事業に直接従事する従業員に対する賃金及び法定福利費 |
店舗等借入費 |
国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料 |
設備費 |
国内の店舗・事務所の工事、国内で使用する機械器具等調達費用 |
原材料費 |
試供品・サンプル品の製作に係る経費(原材料費) |
知的財産権等関連経費 |
本補助事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用 |
謝金 |
本補助事業実施のために謝金として依頼した専門家等に支払う経費 |
旅費 |
販路開拓を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費 |
マーケティング調査費 |
自社で行うマーケティング調査に係る費用 |
広報費 |
自社で行う広報に係る費用 |
会場借料費 |
販路開拓や広報活動に係る説明会等での一時的な会場借料費 |
外注費 |
業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 |
委託費 |
業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 |
Ⅱ.廃業費 |
|
廃業登記費 |
廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費 |
在庫処分費 |
既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 |
解体・処分費 |
既存事業の廃止に伴う設備の解体・処分費 |
原状回復費 |
借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 |
移転・移設費用 (Ⅱ型のみ計上可) |
効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
なお、人件費、店舗等借入費、設備リース費・レンタル料及び広報費の展示会等の出展申込みについては、交付決定日より前の契約の場合でも、交付決定日以降に支払った補助事業期間分の費用は、例外的に対象とします。
(5)事業承継補助金の内容(補助率や補助金額などについて)
「平成30年度第2次補正事業承継補助金 公募要領」(https://www.shokei-hojo.jp/)によると、事業承継補助制度における助金額や補助率については下表のように定まっています。
タイプ |
申請内容 |
補助率 |
補助金額の範囲 |
上乗せ額*1 |
【Ⅰ型】 後継者 承継支援型 |
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2/3 以内 |
100 万円以上~ 200 万円以内 |
+300 万円以内 *2 (補助上限額の合計は 500 万円) |
小規模事業者以外 |
1/2 以内 |
100 万円以上~ 150 万円以内 |
+225 万円以内 *2 (補助上限額の合計は 375 万円) |
|
【Ⅱ型】 事業再編・ 事業統合 支援型 |
審査結果上位 |
2/3 以内 |
100 万円以上~ 600 万円以内 |
+600 万円以内 *2 (補助上限額の合計は 1,200 万円) |
審査結果上位以外 |
1/2 以内 |
100 万円以上~ 450 万円以内 |
+450 万円以内 *2 (補助上限額の合計は 900 万円) |
補助金の交付は、事業完了後・精算後の支払い(実費弁済)になります。したがって、補助事業は借入金などで必要な資金を自己調達する等の対応が必要となる場合がありますので、資金繰りには十分に留意しましょう。
*1 事業転換(少なくとも1つの事業所又は事業の廃業・廃止を伴うもの)により廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費及び移転・移設費(Ⅱ型のみ計上可)がある場合のみ認められる補助金額のことです。なお、上乗せ額の対象となる廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費及び移転・移設費(Ⅱ型のみ計上可)のみの交付申請はできませんので、注意してください。
※2 廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費、原状回復費及び移転・移設費(Ⅱ型のみ計上可)として計上できる額の上限額です。
なお、補助率とは、実際に新しい取組にかかった費用の内、補助金が交付される割合のことを言います。平成30年度の補正予算においては、補助対象経費の3分の2以内または2分の1以内とされています。
(6)事業承継補助金を受け取るまでの手続きの流れ
事業承継補助金を受けとるまでには以下のような手続きが必要になります。
①認定支援機関*(税理士など)に経営相談
②認定支援機関が確認書を発行
・承継者の資格確認
・補助事業計画の内容
・補助対象経費内訳の確認
(上記3点を確認後に確認書発行)
③企業が事業承継補助金事務局(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)に交付申請
④審査 ⇒ 交付決定
⑤事業実施(企業)
⑥状況報告(企業→事業承継補助金事務局[一般社団法人サービスデザイン推進協議会])
⑦実績報告(企業→事業承継補助金事務局[一般社団法人サービスデザイン推進協議会])
⑧確定通知(事業承継補助金事務局[一般社団法人サービスデザイン推進協議会]→企業)
⑨補助金請求(企業→事業承継補助金事務局[一般社団法人サービスデザイン推進協議会])
⑩補助金交付(事業承継補助金事務局[一般社団法人サービスデザイン推進協議会]→企業)
⑪事業化状況報告等(企業→事業承継補助金事務局[一般社団法人サービスデザイン推進協議会])
*認定支援機関(経営革新等支援機関)
認定支援機関とは、経営革新等支援機関とも呼ばれており、中小企業・小規模事業者が安心して経営相談などが受けられるために、専門知識や、一定水準以上の実務経験を保有する者に対して、国が認定する公的な支援機関のことです。
具体的には、商工会や商工会議所など中小企業支援者のほかに、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、などが主な認定支援機関として認定されています。
上記のように無事に補助金を受け取ることができた場合も、その後5年間は、その補助金で新しく始めた事業の収益状況を事務局へ報告しなければなりません。そして、その5年間に新しい取組によって一定「以上」の収益が生じた場合には、収益の内の一部を返金することとなります。
受け取るだけではなく、返すことにもなるので、納得がいかないように感じるかもしれませんが、利益が発生している場合に限定される話で、しかも、返済する金額は受け取った補助金の範囲内なので、損失が発生するようなことはありません。
(7)申請に必要な書類
「平成30年度第2次補正事業承継補助金 公募要領」(https://www.shokei-hojo.jp/)によると、事業承継補助金の申請に必要な書類は下表の通りです。
書類内容 |
型式 |
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1. 補足説明資料 PDF ⇒必要に応じて添付が可能です。添付する場合はA4判片面印刷10枚程度までの資料で、2MB 程度のデータサイズに収めてください。また、「ビジネスコンテストの受賞実績」欄に記載された場合は、当該ビジネスコンテストの内容及び受賞が確認できる資料(パンフレット及び表彰状の写し等)の添付することも可能です。 |
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2. 住民票 |
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被承継者(代表)と承継者(代表)の住民票 (交付申請日以前3ヶ月以内に発行されたもの) ※住民票について、外国籍の方は、「国籍・地域」「在留期間等」「在留資格」「在留期間等の満了の日」「30条45規定区分」項目が明記されたものを提出してください。個人番号(マイナンバー)の記載は不要です。記載された住民票は該当部分を墨消し可。 |
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3. 認定経営革新等支援機関による確認書 |
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事務局が指定した様式で、認定経営革新等支援機関の印鑑があるもの |
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4. 申請資格を有していることを証明する後継者(承継者)の書類 ※①~③に該当する場合はいずれか1つ以上を提出。 |
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① 経営経験を有している者(役員・経営者3年以上の要件を満たす者) |
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該当する会社の履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書(交付申請日以前3ヶ月以内に発行されたもの) ※申請者が役員・経営者であることまたはあったことがわかること 個人事業主の場合は経験年数が確認できる年数分の確定申告書一式(税務署受付印のあるもの*1) |
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② 同業種での実務経験などを有している者 |
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経歴書、在籍証明書等 |
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③ 創業・承継に資する下記の研修等を受講した者 |
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産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けた証明書 ※証明書発行対象でない場合は修了書、研修受講予定の場合は特定創業支援等事業に係る確認書 |
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地域創業促進支援事業(平成 29 年度以降は潜在的創業者掘り起こし事業)を受けた証明書 |
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中小企業大学校の実施する経営者・後継者向けの研修を履修した証明書 |
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5. 承継に関する書類 |
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会社の場合 |
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履歴事項全部証明書(交付申請日以前 3 ヶ月以内に発行されたもの) |
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直近の確定申告書〔表紙(税務署受付印のあるもの*1)及び別表4(所得の簡易計算)〕⇒表紙に受付印がない場合、「納税証明書〔その 2〕(所得金額の証明書)」を追加で提出。 |
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直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)、1 期目の決算書が確定しておらず、前身となる関係会社がある場合には関係会社の決算書でも可 |
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特定非営利活動法人の場合 |
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履歴事項全部証明書(交付申請日以前 3 ヶ月以内に発行されたもの) |
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直近事業年度の事業報告書、活動計算書、貸借対照表 |
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中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって設立する場合、社員総会における表決権の二分の一以上を中小企業者が有していることが分かる資料(定款) |
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6. その他(公募要領の加点事由に該当する場合) |
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債権者調整プロセスを経て、各プロセスの支援基準を満たした債権放棄等の抜本的な金融支援を含む事業再生計画を策定した場合、それを証する書類 |
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「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていることがわかる書類 |
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経営力向上計画の認定を受けている場合は認定書及び申請書類、経営革新計画の承認書 |
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申請者の所在する市区町村及び近接する市区町村地域への売上規模、又は申請者の所在する市区町村及び近接する市区町村以外の地域への売上規模がわかる資料等 |
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地域おこし協力隊員の身分証明書 |
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2.事業承継補助金のメリットと留意点
これまで説明してきたように、事業承継補助金は事業承継のための費用を補助してくれる制度です。会社の事業をこれまでよりも新しい段階へとステップアップさせたい、事業規模を一層拡大したい、会社を優秀な後継者に託すことでより長く存続させたい、事業を整理して会社を立て直したい、などと考えている人にとっては、とても有益な方法です。
ただし、上記の手続きの流れにもあるように、事業承継補助金には厳正な「審査」があります。したがって、長期的な視点で補助金を受け取るために必要な綿密な計画を立案することが必要になります。事業承継補助金の制度には、5年後の事業継続率を90%に引き上げる、という目標があります。
つまり、補助を得ただけではなく、5年以上事業を継続できる計画を前もって立準備しておく必要があるのです。そもそも事業承継そのものは、補助事業の期間中に完了させておかなければいけません。確実に補助事業の期間内に事業承継を完了できるように、しっかりとしたプランを検討しておく必要があります。
また、後継者に会社を譲り渡すような形式での事業承継を行う場合には、後継者が要件を満たしておかなければいけません。後継者は、3年以上、役員や経営者などの経営に関する職務経験を有しており、創業や承継に資する研修(産業競争力強化法に定められている認定特定創業支援事業、地域創業促進支援事業、中小企業大学校が実施している経営者や後継者向けの研修、など)を受けておくことが必要です。
後継者がいる場合には、上記の要件を充足しているかどうかを確認しておきましょう。今後の事業承継補助金は多少条件が緩和される可能性がありますが、審査自体の厳しさにはあまり変わりがないと思われますので、しっかりと事前の準備をしましょう。
3.事業承継補助金の効果的な使い方
事業承継補助金は事業承継M&Aにおいても有益な補助金です。事業承継をM&Aで行う、というケースは中小企業を中心に最近増えています。そもそも中小企業の場合は経営者の高齢化が進み引退しようとしている状況に対して、後継者が存在しない「後継者不在」が課題になっているため、後継者がいない、という理由で経営者の引退とともに会社を廃業するという場合も少なくはないようです。
したがって、後継者を会社の外部に求めてM&Aを実施する、という方法を実施する会社が増えているのです。ただし、M&A相応の費用がかかる手法であり、M&A仲介業者のような専門家の助力を得る場合には、中小企業にとって仲介手数料などの負担は決して少ないとは言えません。
事業承継補助金(「Ⅱ型」の場合)はM&Aによる事業承継も対象になっています。事業承継補助金の採択率は決して高くはありませんが、採択されれば、事業承継M&Aをよスムーズに推進することができるようになるので、応募してみることが重要です。
それでは、事業承継補助金の採択率はどれくらいなのでしょうか。基本的に、国から支給される補助金の採択率は決して高くはないのですが、事業承継補助金の場合も例外ではないようです。ちなみに、平成29年の事業承継補助金の採択率は約13%と、応募した会社の1割ほどしか補助金を獲得できていないような状況でした。
長年公募を実施しているような補助金の場合は採択率が低下しやすいという傾向がありますが、事業承継補助金も同様の状況と言ってもよいかもしれません。しかし、だからといって最初から諦めてしまう必要はないでしょう。事業承継補助金については、例えば、平成30年度については大幅に予算が増額されているので、それと同時に採択率も向上すると考えられます。
国は中小企業に対する取り組みを強化しており、事業承継補助金もその一環で実施されている制度です。現在の事業承継補助金もそうですが、これからは以前よりも採択率が向上する可能性が高いと考えられます。
<まとめ>
事業承継補助金を採択してもらう確率をアップさせるために重要なファクターとなっているのが「経営計画書」です。しかし、きちんと将来を見通して、会社の実情を正確に把握した経営計画書を作成することが可能だとしても、具体的な数字を示しながら経営計画書を作成することは決して簡単なことではないでしょう。
したがって、実際に経営計画書を作成する際には、専門家の助言や指導を得ながら作成した方がより有効な経営計画書を作ることができるでしょう。中小企業にとっては、事業承継補助金は非常に有益なものです。しかし、簡単に利用できるような制度ではないので、専門家を活用してしっかりとサポートしてもらうことをオススメします。