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アフターコロナで激変? 中小企業M&Aの現状と課題

中小企業のM&Aをイメージする画像 起業家の基礎知識

最近の中小企業M&Aを巡る状況はどのように変化しているのでしょうか。後継者不足などに悩んでいる中小企業は依然多いものと考えられますが、新型コロナ感染症の拡大は、中小企業のM&Aにも大きな影響を与えているものと推察されます。本稿においては、中小企業M&Aに関する状況や課題、今後の中小企業M&A市場の展望・予測、コロナ後の中小企業M&Aに関する留意点や経営者の意識変化に対する影響、などについて解説します。

 

1.中小企業M&Aの現状と課題について

(1)中小企業M&Aの現状について

日本企業におけるM&A件数は増加し続けており、2017年には初めて3,000件を超え(3,050件)、昨年(2019年)には4,088件と過去最高の件数となっています。

(参考:「2019年のM&A回顧」、URL:https://www.marr.jp/genre/market/MAkaiko/entry/19844、「1985年以降のマーケット別M&A件数の推移」、URL:https://www.marr.jp/genre/graphdemiru

この数字は12年連続での増加となっており、M&A市場での活況が続いていることの表れでもあります。2019年のM&Aのタイプ別内訳としては、*IN-INが3,000件、*IN-OUTが826件、*OUT-INが262件、となっています。

*IN-IN、IN-OUT、OUT-IN

IN-INとは国内企業同士のM&A、IN-OUTとは国内企業が海外企業を買収対象とするケース、OUT-INとは海外企業が国内企業を買収対象とするケース、のことです。

このようなM&A市場の活況は、低成長が続いている国内企業が収益機会の獲得を目指してM&A市場に多く参加してきたことや少ないパイを奪い合うように企業競争が激化してきていることなどが背景として考えられます。

また、新たな会社法の成立、独占禁止法の改正で持株会社が解禁されたこと、株式交換や株式移転などの制度導入、といったM&Aを後押しするような法的なインフラが整備されてことも影響していると思われます。

実は2008年から2011年にかけては、M&A件数は落ち込みを見せていました。これはリーマンショック、東日本大震災、といった企業業績の悪化に直結するようなことが発生したためです。しかし、その後は、経済の復活とともに、内外の競争激化に対する業界再編や競争力強化といった積極的で前向きな施策が実行されてきたのです。

最近では、M&Aを有効活用した企業経営戦略が一定の市民権を得たようにも感じられます。それでは最近のM&Aを巡る課題にはどのようなものを挙げることができるのでしょうか。

(2)中小企業M&Aの課題について

中小企業M&Aが増加している理由にもなっているのですが、現在多くの中小企業においては後継者不足に悩んでいる経営者が多いようです。高度成長期を超えて中小企業を経営してきた世代が高齢となっている中で、後継者となるべき世代の子供たちが既に他の企業で中心的な戦力となっており、苦労してきた親のことを思うと親の事業を継ぐという意思を持てなくなっている人たちも増えているようです。

サラリーマンとして安定した生活を送っている人たちにしてみれば、中小企業の経営者となって苦労しかねない、と本人のみならずその家族も後継者となることに反対するかもしれません。

したがって、中小企業においては後継者不在から会社を畳んでしまうケース(廃業・閉鎖)も見受けられます。そういった環境下において、M&Aに活路を見出す経営者も増加しています。前述したIN-INのタイプのM&Aが、中小企業を中心に増加してる拝啓としては、この後継者不足の深刻化が大きな影響を与えていると考えられるのです。

また、中小企業にとっては労働力の確保も大きな課題となっています。少子高齢化の進展から、若年層の労働者が絶対的に減少しており、大企業に比べると、中小企業にとっては人材確保が困難になっているという現状があります。

中小企業ならではの裁量の広さや会社の風通しの良さなどをアピールしたり、大企業に負けない技術力や独創的な技術などを学生などに理解してもらうような説明会を開催したりしていますが、正直苦戦していることは否めない事実のようです。

さらには、中小企業にはM&Aに詳しい従業員が不足している、という課題もあります。大企業などで日常的にM&Aに関与しているような部署や要員がいるような場合には、M&Aの進め方にも詳しいでしょうし、何か問題が生じた場合にも適切な対応が可能ですが、中小企業ではそのようなケースへの対処が困難になってしまうことが想定されます。

したがって、中小企業がM&Aを進める際には、専門家であるFA(Financial Adviser、財務アドバイザー)を活用して円滑に案件を進めることがひとつの解決法になります。ちなみにFAとしては、M&A仲介企業、M&Aに詳しい税理士や公認会計士、などが考えられますが、自社に寄り添って行動してくれる、あるいは、自社のことをよく理解しているところと付き合うことをおススメします。

 

2.中小企業M&Aのメリットとデメリット

(1)中小企業M&Aのメリット

①後継者不在の解消

前述したように、M&Aには中小企業における後継者の不在を解消してくれるという利点があります。会社を引き継ぐのに相応しい人物なのかどうか、M&Aにおける事業の売却先企業の経営者を見極めることで、会社の行く末を託すかどうかを判断することになります。

このような場合には、売却する会社の将来的な事業戦略をどのように考えているのか、売上高や利益をどのくらいにすると計画しているのか、会社の従業員に対してはどのような考え方で臨むのか、など、会社を承継するに足ると考えるポイントを事前にリストアップしておくことが重要です。

誰でも引き継いでくれれば良い、というような考え方の場合は、従業員が不幸になってしまうかもしれませんし、会社の業績も急激に悪化してしまうかもしれません。したがって、事業を譲渡する際の条件は、あらかじめ確りと明確に決めておく必要があります。

②利益の実現化・享受

会社の株式を売却することになりますので、創業者としての実現化した企業価値(創業者利益)を受け取ることが可能になります。もちろん、企業価値が残存している(プラスになっている)場合に限りますが、創業者にとっては大きな節目となるでしょう。

また、これまで金融機関から会社の借入金などに対して経営者として個人保証を求められていたようなケースであれば、会社の売却により個人保障からは解放されることになる、というメリットもあります。

③事業の継続的な存続

事業を売却した相手先は、基本的には、経営が安定している企業が多いでしょうから、今後も継続的に事業を営んでもらえることが期待できます。また、売却の条件にもよりますが、これまで会社のために尽くしてくれた従業員に対して安定した生活の確保を約束してあげることも可能です。

(2)中小企業M&Aのデメリット

①希望した金額で売却できない

想定していた価格では売却先が見つからない場合が考えられます。また、売却先が見つかったとしても売却金額が考えていたよりも相当程度低く妥協しなければディールが成立しない可能性もあります。

②社内に混乱が生じる

売却先企業の従業員との軋轢が生じたり、社風の違いによる労働意欲の減退が発生したりする可能性が考えられます。また、システムの統合が上手くいかずに業務に支障が起きてしまうこともあり得ます。したがって、従業員同士の懇親会の実施、システムの統合シミュレーション、などの*PMI(Post Merger Integrationの略)をしっかりと実施することが極めて重要になります。

*PMI

PMIとは、プランニングしたM&A実施後の統合した効果を極大化するためのプロセスを言います。PMIの活動は、M&Aで統合した対象範囲における、経営、業務、従業員及び経営陣の意識、といった統合に関する全てのプロセスに及ぶこととなります。

③従業員の退職

約束していた待遇が保証されないようであれば、多くの従業員が退職してしまう可能性があります。従業員の雇用条件などについては、あらかじめ売却先業と何度も丁寧な打ち合わせを実施して、従業員の理解も得ておく必要があるでしょう。

 

3.今後の中小企業M&A市場の展望・予測

(1)新型コロナ感染症による直近の影響について

新型コロナ感染症の拡大は国内のM&A市場にも大きな影響を与えており、2020年4月のM&A件数は実績ベースで59件となり、増減数は前年同月比で▲8件で、低い水準に留まることとなりました。

多くの企業において業績が悪化する中で手元流動性(キャッシュ)の確保を最優先とする対策が進められてきたこと、そして企業買収に資金を投下するような環境ではないと当初は多くの経営者が考えたこと、が新型コロナ感染症拡大初期におけるM&A件数減少の大きな現象の要因であると考えられます。

しかし、コロナ禍をチャンスと考えているM&A市場の参加者がいることもまた事実であり、会社の苦境をM&Aを利用して脱しようと考えている経営者や買収価格が一段と低下するタイミングを狙っている買収企業などは、時機を見てこのマーケットに参加しようと考えていたものと思われていました。

実際に2020年5月のM&A件数は適時開示ベースで69件と、前月に比べて+10件と(比較するベースは異なってはいるものの)持ち直してきている傾向が伺えます。これは手元資金を確保したいという企業に対して金融機関が十分に応えており、M&A目的の融資に対しても前向きに対応してきたことが反映されていると考えられます。

以前のリーマンショックの際には多くの金融機関が引き締めに走って融資が実行されるような環境ではありませんでしたが、今回のコロナ禍では企業の流動性確保のみならずM&Aのような前向きな資金需要にも十分な供給が行われていたことが、2020年5月のM&A件数の増加へと繋がっているのでしょう。

このような状況はしばらく継続するものと考えられるので、新型コロナが再び猛威を奮って我が国の経済活動が崩壊してしまうような危機的な状態にする可能性も全くないとは言い切れませんが、M&Aに対する資金供給は、基本的には、潤沢に実施されていくものと予想されます。

(2)コロナ後の中小企業M&A市場について

前述したように、新型コロナの感染拡大の再発、というリスク要因はあるものの、これからの中小企業M&Aは会社経営にとって必要不可欠な手段となっていくと考えています。少子高齢化、労働力不足、といった企業課題に対する解決手段としては、前述した「2.中小企業M&Aのメリットとデメリット(1)中小企業M&Aのメリット」で説明したように、上手にM&Aを利用することが企業経営の巧拙に直結することになるのです。

現状の各業界を見渡すと、M&Aの可能性がまだ十分考えられる業界と、M&Aの予知に乏しい業界がそれぞれ存在するものの、M&Aをする目的にそった経済効果を発揮できるのかどうか、といったポイントを十分に検討することが重要だと考えます。

中小企業の新型コロナ対策活用の生き残り戦略について【緊急】新型コロナ対策を活用した生き残り戦略について考察しますの記事もご覧ください。

 

4.中小企業M&Aに関する留意点

M&Aには買い手と売り手の双方が登場します。一方にとっての成功はもう一方にとっての失敗である、という人もいますが、双方の対立している利害を乗り越えて、共に満足するディールを行うことも可能ななずです。中小企業がM&A取引をする際の留意点を、売り手側、買い手側、それぞれの立ち位置から説明します。

(1)売り手側になった場合の留意点

①アドバイザー(FA)の選定には細心の注意を払うこと

M&Aのアドバイザーには、手数料が大きな金額で儲けられる、ということから素人同然のような会社や人材も参入してきているのが現状です。もし、そういったアドバイザーを選んでしまった場合には、臨んでいるようなMU&Aでの成功は難しいでしょう。

少なくとも、これまでの実績、参画メンバーのバックグラウンド、などをしっかりと確認しておくことが必要です。また、紹介手数料が高過ぎたり、安過ぎたりするようなアドバイザーとの契約にも注意が必要です。案件の難易度によっても手数料率は異なりますが、複数の候補先から見積もりを取って比較してみることが重要です。

手数料率が高過ぎるケースでは、アドバイザーとしても収益にばかり目が向いている可能性があり、自社に寄り添った助言が行われない可能性があります。また安過ぎる手数料の場合は、自社の希望に沿った買い手企業を発掘する気があまりなくて、紹介そのものが難しい場合が考えられます。

また、アドバイザリー契約の内容にも注意しましょう。選任契約(他のアドバイザリー企業との契約は禁止)のケースが多いと思われますが、契約解除の可能性や条件の確認は怠ってはいけません。もし、全く役に立たないアドバイザーであれば、契約を解除して他の企業に乗り換えることが必要になることも考えられるからです。

②M&Aの仲介業者(仲介FA)以外の相談相手を確保しておくこと

M&A取引においては、売り手企業、買い手企業、売り手側企業のアドバイザー(売り手側FA)、買い手側企業のアドバイザー(買い手側FA)、売り手側企業と買い手側企業との仲介業者(仲介FA)、弁護士、公認会計士、などが主な登場人物になります。

当然ながら、売り手側FAは売り手の意向に沿うように、買い手側FAは買い手側の希望に沿うように、それぞれアドバイス(助言)をします。また、仲介FAは、中立的・客観的な立場から、DD(デュー・デリジェンス)や契約書作成などの業務を担当します。

案件によっては、売り手側・買い手側のアドバイザーを置かないで、仲介FAのみが参加するような進め方をするディールも少なくはありません。これは、ディール全体のコストセーブの観点から、中立的なFAがいれば大きな問題は生じないだろう、という考えに基づくものと思われます。

しかし、仲介FAはあくまで中立的な立ち位置なので、売り手側(あるいは、買い手側)の希望に必ずしも応じてくれるとは限りません。実際は案件を進めていく中で、どうしても自社に有利な条件を付したい、あるいは自社の希望を汲んで欲しい、といった場面が必ずあるものです。

その際に、売り手側FA(あるいは、買い手側FA)のように、自社サイドに立ってくれる相談相手を見つけておくことは重要です。具体的には、自社のことをよくわかっている、税理士、公認会計士、財務コンサルタント、取引金融機関の職員、などが適任だと考えられます。

③買い手候補は複数とし、必ず比較すること

買い手となる候補企業は、最終的にはもちろん1社に絞ることになりますが、その前までは必ず複数の買い手候補先企業を選定することが大切です。複数企業を候補先とするメリットとしては、自社の価値をより高く評価してくれる企業を見つけやすくなること、自分の後継者として相応しい優れた経営者に出会う確率が高くなること、候補先企業同士で競合させることで希望している条件に近付けるための交渉がやりやすいこと、が挙げられます。

自社に有利な条件を買い手企業に呑ませるためにも、競合状態を作り出すための複数候補先の選定は必ず実施すべき、と考えます。

④希望買収価格を買い手企業から引き出すために意識すべき戦略の必要性

M&Aを売り手企業として意識しておかなければならない戦略は、自社に高い付加価値があると感じている企業に対して売り込みをする、買い手が「買いたい」と思うような情報開示を適切なタイミングで実施する、入札による買い手企業の決定方法を前提にして複数の買い手企業を競わせて焦らせること、といったポイントでしょう。

交渉がスムーズに進まない状態に陥った場合には、「この条件を呑んでくれないのであれば、他の会社に売却します」と、強気な姿勢を崩さないことも必要かもしれません(だからこそ、複数の買い手候補企業が必要とも言えます)。大切なポイントは、買い手企業に対して、常に他の買い手候補企業の存在を意識させておくことです。

⑤M&Aの取引スキームは早い段階で決めておくこと

M&Aの取引スキームとは、法律上の形式、とも言い換えることができますが、中小企業M&Aで主に活用されている法形式としては、以下の4つがあります。

*会社法の規定(会社法における事業譲渡に関する条文)

(事業譲渡等の承認等)
第四百六十七条 株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。

一 事業の全部の譲渡

二 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)

二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。

三 他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け

四 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約

五 当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。
イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額

2 前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。

上記の4つのM&Aスキームのどの手法を選ぶかは、なるべくM&Aの初期段階で決めておくことをおすすめします。途中で変更してはいけない、ということはありませんが、買い手側にとっても、法的なスキームが決まっていた方がメリットやデメリットの比較がしやすいと思われます。

⑥誠実に嘘をつかずに情報開示を行うこと

買い手との信頼関係の構築、という観点から、相手企業に嘘をついたり虚偽の情報を開示したりすることは厳に慎むべきでしょう。DDの前段階までは、自社にとって不都合な情報に関しては黙っていることは可能です。しかし、DDにおいて黙秘権を行使してしまうと、相手先からの信頼を獲得することは困難になってしまうでしょう。

また、過去に粉飾などをしていた場合にはどのように対処すれば良いのでしょうか。M&Aのディールに慣れている買い手企業であれば、粉飾などはDDの時点で簡単に発見してしまうかもしれません。もし売り手企業が黙ったままの状態で買い手企業が粉飾を発見したような場合には、大幅な買収価格の減額を要求してくる可能性があります。

そう考えると、最初から粉飾した事実とその背景や理由などを正直に説明した方が大きな問題が生じにくくなる、と考えます。

⑦秘密厳守

中小企業M&Aに限らず、M&Aに関しては基本的に秘密を厳守することは極めて当たり前ですが、同様に極めて重要なポイントでもあります。M&Aのディールがクロージングするまでは、何が起こるかわかりません。M&Aの成立直前で案件が破断してしまうことも少なくないのです。

例えば、自社の従業員に話が漏れてしまった場合には、退職者が急増してしまい、M&Aにおいて重要な要素であった優秀な従業員の確保が困難になってしまうかもしれません。また、取引先に漏れてしまったような場合には、今後の取引へ不安から取引が縮小や打ち切りになってしまうリスクも考えられます。

したがって、情報管理を徹底することと、関係者人数を限定すること、は秘密厳守にとっては必要なことになります。

(2)買い手側になった場合の留意点

中小企業M&Aについては、基本的に、現在の後継者不足や労働力不足などの経営環境から考えると、圧倒的に中小企業は売り手側になることが多いと考えられますが、中小企業が買い手企業となった場合にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。中小企業が買い手側になった場合の主な留意点は以下の通りです。

①買い手側の企業として期待していたようなシナジー効果が生じない場合がある
②企業や事業の統合プロセスの進め方を失敗してしまうことがある
③買収した企業の従業員の労働意欲や会社への忠誠心ばどが低下する可能性がある
④会社にとって必要な優秀な人材が退職・転職してしまうリスクがある
⑤DDで漏れてしまった簿外債務などを発見してしまう可能性がある
⑥のれんの減損リスクに気付かないで買収してしまう可能性がある
⑦買収した事実の公表方法やタイミングを見誤ると社員の士気を下げてしまうリスクがある

 

<まとめ>

これまで説明してきたように、中小企業M&Aの傾向としては、後継者不在や労働力不足への対応手段として活用されるケースが増えていると言えるでしょう。自社をM&Aで他の企業に売却してしまった場合に、売却元企業の経営者は、スッパリとこれまでの事業とは縁を切って、全く関係のない人生を歩むことを望む方が多いものと推察します。

ひとつには自分自身の年齢を考慮して売却した方が多いでしょうから、引退後の生活を楽しむことに専念することもひとつの素晴らしい人生の過ごし方でしょう。これまで苦労をかけっぱなしだった家族と旅行に行くのも良いですし、時間がなくてなかなか始められなかった趣味に没頭することも良いかもしれません。しかし、一方で自分の会社は既に他人の手に渡っているのに、請われているわけでもないのに、元の職場に顔を出してあれやこれや指示を出したがる人も中にはいるようです。

はっきり言って、従業員にも新たな会社の経営者にとっても、迷惑以外の何物でもありません。もし、新たな経営者からアドバイスを求められたら、求められた範囲内のことに限り、自分自身の経験に即した助言を行う、くらいであれば良いかもしれません。

中小企業M&Aの成否は、実は売却後の新たな会社の頑張りに拠る部分が大きいと考えられます。したがって、これからの中小企業M&Aに臨むことになる前経営者としては、基本的に一歩引いた立場でM&A後の事業を温かく見守る、というスタンスが極めて大切になるでしょう。

事業継承について事業継承補助金の制度概要やメリットと留意点を解説の記事もご覧ください。