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ピアボーナスとは? 制度の特徴やメリット・デメリットを解説します

ピアボーナスのイメージ画像 起業家の基礎知識

ピアボーナスとは、英語のPeer(仲間、同僚)とBonusが一体となった言葉で、日常の中ではあまり表面化しにくいような仕事の成果や貢献といったものに対して、一緒に働いている従業員同士が相互にボーナス(成果給)を送り合える仕組みのことを言います。

本稿ではピアボーナスの制度概要、メリットやデメリット(ピアボーナス導入によるトラブルや弊害など)、そしてピアボーナスを導入している企業の特徴やピアボーナスのツール、などについて解説します。

1.ピアボーナスとは

ピアボーナスはインセンティブ(成果給)のひとつで、インセンティブとは、仕事の成果に応じて金銭的報酬を与えるケースと、表彰などにより優れた成果を評価し賞賛あるいは承認するケース、とがあります。ピア・ボーナスは、成果や貢献に対して少額の報酬を支払わうことになるので、インセンティブ制度のひとつとして理解されています。

これまでのインセンティブ制度と異なっている点は、現行の業績評価制度においてはなかなか評価することが難しい仕事の成果や貢献に対しても評価をすることが可能なことです。また、評価のフィードバックを半期、あるいは1年に1度だけでなく、成果や貢献を把握してからあまり時間をかけることなく評価することが可能なので、従業員のモチベーション維持・向上を期待することもできます。

また、360度評価と同様に、社内の様々な人間からの多角的な視点を盛り込むことができる評価システムである、とも言えます。ピアボーナスを導入により、これまでの人事評価制度などでは見落とされてしまいがちな成果への貢献ポイントを従業員の評価に反映できる効果があるでしょう。

(1)ピアボーナスの仕組み

ピアボーナスの「peer」が同僚を意味していることからもわかりますが、ピアボーナスは従業員同士が親外にボーナスを送りあうことになります。仕事ぶりなどを見ていて称賛や評価に値すると感じた人に対して、各従業員が「オープンな場」でボーナスを送るということになります。

既にピアボーナスを導入している企業においては、ピアボーナス専用のツールやサービスを利用して、従業員同士が相互にボーナスを送りあえるような環境を整備しているところが多いようです。専用のツールやサービスを導入することにより、従業員同士はパソコンやスマートフォンからピアボーナスを簡単に送ったり受け取ったりすることが可能になります。

(2)ピアボーナスが注目される背景

AIIoT技術の進展、ビッグデータの活用などテクノロジーの進化、などによって、労働者の職場環境は日々変化を続けています。また、労働力不足による雇用形態の多様化やダイバシティーの推進などにより、多種多様な価値観を保有している労働者が増加しています。

このような状況の変化に対して、企業は柔軟に対応できる組織へと体質を強化し、継続的に成長可能な企業文化を構築・醸成することが重要な経営課題となっています。同時に従業員の離職を防止して、従業員の人材開発の可能性やパフォーマンスを向上させるだめの施策も重要かつ必要となっているのです。

こうした中において、ピアボーナスの導入ツールを提供するサービスが出現しています。中小企業を中心に導入が進んだことで、このようなピアボーナスの導入ツールの認知度が上昇して、社内組織の改革や人材の定着化に効果的な方策として注目されるようになっています。

 

2.ピアボーナスのメリットとデメリット

それではピアボーナス導入のメリットデメリットについて説明します。

ピアボーナスのメリットとデメリット

(1)メリット

(2)デメリット

①レコグニションによるモチベーション向上

①導入コストが必要

②従業員エンゲージメントの向上

②導入後の浸透具合の確認

③定性的な成果を評価

③報酬稼ぎを優先する社員の登場

④従業員が部署を超えて協力し合う

④管理職の力が弱体化

(1)ピアボーナスのメリット

①レコグニションによるモチベーション向上

ピア・ボーナスにおいては、成果給という金銭的な報酬と(あるいは)賞賛や承認という非金銭的な報酬を付与することが可能です。金銭による報酬という手段には即効性が期待できますが、金額が増えなければモチベーションを維持することは難しく、一時的な効果に留まってしまう可能性があります。

一方で、内発的なモチベーションは、従業員同士から*レコグニションを与えられることで得られる満足感や達成感によって、更にやる気を引き出すことが可能になります。

*レコグニション

レコグニション(recognition)とは、個々の努力や実績を認識し承認すること、を言います。ビジネスの現場では、社員表彰制度や資格取得奨励制度、などのように制度化されたものから、社員同士で称賛・承認しあうソーシャル・レコグニションのようなものまで、多種多様なレコグニションが実施されています。

モチベーションの向上は生産性の向上に繋がるのみならず、仕事に対して自発的にその意味や価値を見出す意欲を高めることになるので、能力開発も同様に期待することが可能です。外発的な動機付けと内発的な動機付けが同時に実現されることにより、相乗効果が発生して、持続的なモチベーション向上に対しても効果的と言うことができます。

②従業員エンゲージメントの向上

ピア・ボーナスは、経営目標の実現と経営課題の解決を同時に実現することができます。従業員を評価する権限の一部を仲間である従業員に付与することで、経営層に対する信頼や仕事への意欲を高めることができるでしょう。

また、職場の仲間から評価されることにより、取り組んでいる仕事に対する自信が醸成され、お互いの仕事ぶりに興味・関心が高まることで相互コミュニケーションの機会も増えて、組織の活性化に大いに役立つと考えられます。このようにピア・ボーナスは、従業員エンゲージメントを向上させるメリットがあると考えられるのです。

ピアボーナスの導入に関しては、企業理念や経営者が描いているビジョンを反映した行動や成果を評価の対象とすることが大切です。従業員側から見た場合には、企業の行動指針が明確になることに繋がり、企業の目標などのミッションに安心して仕事に集中して取り組むことが可能になるからです。

③定性的な成果を評価

これまでの人事業績評価制度においては、結果として表れている成果や実際に目にした仕事ぶり、などのように上司が認める範囲のみで評価されることが多く、あまり目立たない業務による成果や貢献は評価対象にはならないケースが少なくはなかったでしょう。

したがって、評価者と従業員自身との評価に齟齬や食い違いが生じてしまい、被評価者である社員は評価者からの評価に納得することができず、満足度が低下してしまう可能性が考えられます。一方で、ピア・ボーナスは、会社組織として仕事をスムーズに推進するための業務や顧客満足度を高める貢献などの、日常的には表に出てこないような定性的な仕事の成果を評価することになります。

仕事による様々な形の成果を見落とすことなく拾い上げて、きちんと評価することで社員の納得感も十分に得られることになります。それにより、モチベーションの向上や企業貢献に対する意欲を引き出すことが可能にばるだけでなく、優秀な人材確保にも繋がると考えられます。

④従業員が部署を超えて協力し合う

これまでの上長による人事業績評価であれば、上司の評価を上げるためにだけ仕事をして、同僚には非協力的であっても気にしないという働き方も場合によっては可能だったかもしれません。結果的に自分だけ、あるいは自分が所属している組織だけを意識していれば良かったかもしれません。

しかいピアボーナスが導入されれば、他の部署に対する協力や貢献も評価の対象になります。するとこれまでは偏狭なセクショナリズムに陥っていたような人であっても、組織横断的に仕事に取り組むようになり生産性が大きく向上することも期待できます。

(2)ピアボーナスのデメリット

①導入コストが必要

ピアボーナスを導入する場合のデメリットの1つとしては導入コストが必要になるという点が挙げられます。ピアボーナスを利用するためには、専用のサービスを導入することが求められますので、初期費用や月額の利用料金などが生じます。

また、従業員に支払うピアボーナスを現金で支給するような場合は、その支給額を会社で負担することになりますので、その会社負担分のコストが発生するということも認識・理解しておく必要があります。

何となくピアボーナスを試してみたい、というような安易な動機で無目的に導入してしまうと、余計な無駄な出費が増加してしまうおそれがあります。したがって、ピアボーナスを導入する際には費用対効果について、事前に十分に検討しておく必要があります。

②導入後の浸透具合の確認

ピアボーナスを導入後も、システムが社内に浸透してきちんと機能しているかどうかを確認しながら運用をしなければならない、という点にも注意を払っておくべきです。ピアボーナスは形式的に導入さえすれば業績評価体制などが劇的に改善されるという類のものではありません。

いつであっても社員同士が簡単に相互に評価しあえる仕組みを整備・構築するためには、先ずはピアボーナスという制度やシステムを正確にきちんと社員に理解してもらう必要があります。しかし、新しいシステムというものは利用方法を社内に浸透させるまでにある程度の時間がかかることが一般的です。

そのためには、実際に社員同士で積極的に評価しあえているかどうか、制度やシステムに関して使いづらい点はないか、などについてピアボーナス導入後も定期的、あるいはこまめに確認をしながら運用していくことが重要になるのです。

この運用状態の確認を通して改善すべき点は改善をすることで、ピアボーナスの制度が磨かれて本当の意味で従業員のためのピアボーナスへと育っていくものと考えられます。

③報酬稼ぎを優先する社員の登場

ピアボーナスを導入することによって、できるだけ多くの報酬やポイントを得ようとして、本来与えられている業務以外の仕事にばかりに集中するような社員が現れてしまう可能性が考えられます。このようなリスクを防ぐためには、例えば、本来の業務に対する評価結果とピアボーナスの評価結果から生じる報酬などのバランスに留意することが必要です。

つまり、いくらピアボーナス部分の評価が高くても本業の業績評価が低ければ全体としての評価は決して高くはならないような配分やルールを前もって定めておくことが必要かもしれません。ただし、本来はピアボーナス導入の意義を正しく従業員に理解してもらうことの方がより重要であると考えます。

④管理職の力が弱体化

これまでのサラリーマンであれば、普段の仕事に対する働きぶりを上司が評価して、その成績に応じて昇給や賞与の額が決定されていました。つまり、これまでの仕組みであれば、良し悪しに関わらず管理職が一定の「力」を保有することができた、とも考えることは可能でしょう。

その「力」を背景にして、部下への指示や命令を行うことで組織が成立し、規律が生じている、とも言えるのです。しかし、ピアボーナスのような仕組みが導入されて、社員が得られる収入のうち、本業から発生する給与や賞与の占める割合が低下していくと、その低下した分だけ管理職の持つ「力」が低下することになります。

この結果によって、管理職の行っている指示・命令の強制力が弱まっていくことが予想され、結果として組織力そのものの弱体化に繋がる可能性も十分に懸念されます。

 

3.ピアボーナス導入のツールと導入例

ピアボーナスは、米国をはじめとして海外の企業では広く活用されていますが、日本国内ではまだ積極的に導入されてはいませんでした。従業員同士で金銭を送り合うことに抵抗がある、という会社も多いのではないでしょうか。

そのような中でピアボーナスをサポートするサービスも登場していて、日本では20176月にリリースされた「Unipos(ユニポス)」が、ピアボーナス制度そのものを広めるきっかけとなったと言われています。

Uniposの導入企業数は280社以上で継続率は99.4%にものぼっています(20196月時点)。導入企業には、メルカリやマイナビ、DeNA、マネーフォワード、Sansan、など成長が著しい企業名が並んでいます。

(1)Unipos(ユニポス)の特徴

Unipos(ユニポス)の主な特徴

①連携しているチャットアプリ(SlackChatWorkWorkplace)を利用して、スマホやPCからピア・ボーナスとコメントがセットで送ることが可能

②投稿されたピアボーナスとコメントはタイムラインでリアルタイムに共有

③ハッシュタグ機能で企業のバリューを形にするための行動指針と紐づけができるので、企業文化の醸成や体質強化といった活用も可能

④拍手機能で素晴らしい賞賛のコメントに賛同することで、投稿した人と投稿された人に1ポイントずつピア・ボーナスが送ることができる

Uniposでは、社員は週に400ポイントを付与されます。そして、メッセージ送付と同時に、自分で設定したポイントを社員の間で送り合います。感謝や称賛に応じて39ポイント、キリがよい50ポイント、などのように最大で120ポイントまでを自由に設定することが可能です。

またスマートフォンアプリや、SlackChatWorkMicrosoft Teams、などのチャットツールからも利用することが可能なので、いつでも、どこにいても、即座にポイントを送ることができます。たとえ忙しいような状況にあっても手軽に活用することが可能です。

さらに、誰かへのメッセージに対して共感した場合には、「拍手」でメッセージを送付した人にもポイントを送ることができます。Uniposの「共感を広げる仕組み」が社員のエンゲージメント向上となるのです。

(2)成果給になる仕組

企業は、ポイントに対して自由に換算レート(平均では1ポイントあたり2円)を設定して、各社員が受け取ったポイント分を成果給として支払います。毎月の給与に反映する、賞与(ボーナス)に反映する、四半期ごとに賞与として支払う、など様々な方法で支払うことができます。

さらには、設定したハッシュタグデータを活用して社内表彰に利用している企業もあります。給与以外にも、例えば、Amazonギフトカード、弁当・菓子、などで還元するような利用も可能です。自社にもっとも適した形で運用できるという点には大きなメリットだと考えられます。

(3)Unipos(ユニポス)以外のツール

①RECOG

RECOGもピアボーナスツールではありますが、どちらかといえば社内SNSとしての役割が強くなっており、社内コミュニケーションの活性化のための各種機能が充実しているツールです。称賛や感謝の気持ちを伝えるレター機能に加えて、掲示板、チャットルーム、チームページ、など様々なコミュニケーション方法を利用することができます。

レター機能ではポイントを付与することも可能で、貯まったポイントは、例えば、会社でオリジナルのギフトサイトを作ってプレゼントと交換することもできますし、システム側においてもポイントと交換可能なギフトを用意できます。

機能は充実してはいるのですが、Unipos(ユニポス)とは異なり、ビジネスチャットとの連携などはできないので、既に社内SNSやビジネスチャットを導入している会社ではコミュニケーションを阻害しないように導入には工夫が必要となるでしょう。

②HeyTaco!

HeyTaco!は海外の企業が提供しているSlackと連携できるピアボーナスのツールです。メンバー相互間でタコスを送りあって、タコスの数で商品と交換したり、ボーナスを支給したりします。利用料はこれまで説明した3つのツールの中でも圧倒的に安く導入費用も不要です。

*Slack

Slackとはチームのメンバーがお互いに連携しながらシームレスに仕事を進める場で、メールに代わるビジネスコラボレーションハブのことです。Slack はメンバーが自然に集まって一緒に働くスタイルをサポートするために設計されたソリューションであり、対面しながらの作業と同様に効率的に、オンラインでコラボレーションを進めることが可能です。

ただし、Slackがあることが前提のツールなので、Slackを導入していなければHeyTaco!は導入ができないこと、海外のサービスで日本法人がないこと、から他の2つのサービスと比べると十分なサポートが受けられない可能性がある点には注意が必要です。

 

4.ピアボーナスの主なツールの比較

これまでに説明したピアボーナスのツールについて下表のように特徴をまとめました。

サービス

Unipos

RECOG

HeyTaco!

導入費用(イニシャル)

200,000300,000(税抜)

無料

無料

利用料(ランニング)

35,000/(税抜)

30,000/(税抜)

社員1人あたり

1.95ドル/

ビジネスチャットとの連携

×

利用状況確認機能

無料トライアル

×

上記の3つのツール以外にも、Talknote(トークノート)、インセンティブ・ポイント、TUNAG、評価ポイント、ガルフネット、といったピアボーナス用のツールがありますが、自社の状況や導入したい制度に応じたツールを選ぶことが重要です。これらのツールの概要は以下の通りです。

①Talknote(トークノート)

Talknote(トークノート)は、業務効率化とエンゲージメントを兼ね備えたシステムで、

・社員同士で感謝、賞賛を伝えることができる

・モチベーションアップが期待できる

・独自の評価キーワードを自由に設定可能

という特徴があります。

②インセンティブ・ポイント

インセンティブ・ポイントは、働く人のエンゲージメントを強めるサービスで、

・インセンティブや福利厚生に利用できるポイントシステム

・同僚に感謝を伝える「サンクスポイント機能」も

・付与されたポイントで厳選されたアイテムと交換可能

という特徴があります。

③TUNAG

TUNAGは、 SNS機能付きで人への興味がより強くなり、

・個人プロフィールやタイムライン機能が付いている

・社内SNSで社内施策を共有することでカルチャーが醸成される

・写真や動画の投稿に対応しておりオリジナルスタンプも

という特徴があります。

④評価ポイント

評価ポイントは、 SNS連携できる人事評価システムで、

SlackChatWorkLINE WORKSとも連携可能

1on1ミーティングの記録を簡単に残すことが可能

・評価がグラフで可視化され、モチベーション向上に

という特徴があります。

⑤ガルフネット

ガルフネットは、ポイント管理と勤怠管理がひとつになっているシステムで、

・勤怠管理を行いながらポイントも付与できる

・退職金をポイントに、またはポイントを退職金に変換

・社内ポイントをコンビニなどのポイントに変換

という特徴があります。

 

5.ピアボーナスの導入を推奨する企業とは

ピアボーナスは、どのような企業でも導入さえすればよい、というものではありません。本稿ではピアボーナスを導入することで効果が得られると考えられる企業の特徴について説明します。

(1)社内の雰囲気が良くない

ピアボーナスを導入すると良いと思われる企業の特徴の1つ目は、「社内の雰囲気がよくない」状態にあることです。社内の雰囲気は会社の仕事の進捗具合にも影響を及ぼすものであり、雰囲気が悪化している業務がスムーズに進まない、という場合も増えてくると考えられます。

また、会社の雰囲気が悪いと従業員の精神面にも悪影響を及ぼす可能性が高いと思われます。そこで、会社の雰囲気を改善する方策として効果的だと考えられるピアボーナスの導入に取り組むことを推奨します。ピアボーナスによって従業員がお互いに評価しあうことでコミュニケーションが円滑になり会社内雰囲気も改善するでしょう。

(2)人事評価がうまく運用されていない企業

ピアボーナスを導入すると良いと思われる企業の特徴の2つ目は、人事評価がうまく運用されていない状態にある、ということです。公平に評価を実施したつもりであっても、人事評価に対する不満は社員の間では生じてしまいがちなものです。

そうなってしまうと、従業員の仕事に対するモチベーションは低下して、場合によっては離職にも繋がりかねません。人事評価制度がうまく機能していない、と感じている場合は、ピアボーナスの導入を推進してみることもひとつの方法です。

 

5.ピアボーナスを上手に運用するコツとは

ピアボーナスの効果を十分に発揮するためには、企業側で運用のコツをしっかりと押さえて理解していることが極めて重要です。以下に、ピアボーナスを上手に運用するためのコツを説明します。

(1)表彰制度を制定する

ピアボーナスを上手に運用するための1つ目のコツは、表彰制度を制定する、ということです。ピアボーナスというシステムのベース(土台)は社員同士がお互いに評価しあってもらうという点にあります。したがって、活発に評価が行われるほどピアボーナスの効果は現出しやすくなります。

そこで、ピアボーナスに関する表彰制度を制定する、という方法が社員同士の評価を促進するためにはとても効果的です。例えば、1週間ごとに最も高く評価された人と最も多く評価を行った人をそれぞれ表彰して、現金やポイントなどのボーナスを贈るというような方法が考えられます。

このような表彰制度を策定すれば、ピアボーナスに対する注目度も高くなり、多くの従業員が利用するようになると思われます。

(2)ピアボーナスを強制しない

ピアボーナスを上手に運用するための2つ目のコツは、社員にピアボーナスの利用を強制してはいけない、ということです。せっかく新しい制度を導入したのであれば、積極的にピアボーナスを利用するようにアピールするのは当然でしょう。

しかし、ピアボーナスの利用を強制してしまうと、かえって社員が反感を抱いてしまう可能性があるので、システムが社内に浸透しないことが考えられます。特に、日常的に業務に追われているような社員の場合は「仕事に関係ないことをしている余裕などない」と考えてしまう場合もあるでしょう。

ですので、ピアボーナスは無理やりにやらせるようなものではなく、従業員が自発的に取り組んでもらえるように運用方法を常に工夫し続けていくことが重要になるのです。

(3)操作が簡単なツールを導入する

3つ目の運用のコツは操作が簡単なツールを導入するということです。ピアボーナスは導入することにより様々な効果を得ることができますが、社員に積極的に利用してもらわなくては意味がありません。

上記「3.ピアボーナス導入のツールと導入例」で様々なツールについて説明しましたが、導入したツールの操作が難しいと使ってもらえない可能性とがあるので、多くの従業員が気軽に利用できるようになるべく簡単に操作できるようなツールを導入することが必要だと考えられます。

 

<まとめ>

ピアボーナスとは、従業員同士が日常の行動や貢献に対して報酬を与え合う仕組みのことです。報酬の種類は多種多様ですが、金銭の他にもポイントや社内通貨などが考えられます。業績・成果や数値に反映しにくいようなものにも適用することが可能で、管理職や人事部門では把握・認識しにくい現場の微細な点も評価することができる点に特長があります。

これまでの評価手法と比較した場合の目新しさとしては、以下のような点を挙げることができます。

・従業員は評価被者としてだけではなく評価者にもなる

・いつでも誰に対しても報酬を付与することができる

・業績に直結しないような行動も評価することが可能

企業がピアボーナスを取り入れるメリットは以下の通りです。

・従業員のモチベーションの向上

・職場内のコミュニケーションの促進に繋がる

・褒め合うという企業文化(コーポレートカルチャー)の醸成

・企業アピールとしても有用

ピアボーナスによって、普段はあまり汲み取られることのない見過ごされがちな従業員の頑張りや貢献を社内で可視化・共有することが可能になります。導入の際の注意点としては以下の点を挙げることができます。

・費用対効果を十分に検討してから導入に踏み切ること(人事評価制度のひとつでもあるので、
 取り敢えずの導入にはリスクが生じる可能性がある)

・自社に合う適した仕組みにすること

評価する側(評価者)にとっては客観的に評価をすることができる、また、評価される側(批評価者)にとっては納得感が得られる、ような仕組みにするためには、評価基準を公平に明確に示すことがとても重要になります。

現在ピアボーナスの導入が多くの企業で拡大しているのは、従業員同士のコミュニケーションが活発になることで組織全体が活性化して、企業の成長に繋がると考えられているからです。また、人材不足に悩んでいる企業にとっては、優秀な人材の採用や定着を強化するための方策の一つとして検討してみる意義は大きいものと思われます。

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