社用車を購入した時には、新車であれ中古車であれ、会社の資産に計上することになります。しかし、税法上、購入した金額を費用として計上する方法には新車と中古車には大きな違いがあります。
本稿では、新車と中古車の減価償却について説明します。中古車の購入が会社にとって節税対策になるという話を聞いたことはありませんか?新車購入と中古車購入の違いを見てみましょう。
1.新車の購入
会社で社用車として新車を購入した場合には、車両本体価格以外にも、自動車税、自動車取得税、自動車重量税、自賠責保険料、預かり法定費用、リサイクル料、課税(消費税)諸費用、などがかかりますが、このうち自動車取得税や預かり法定費用(検査登録法定費用や車庫証明法定費用など)などは、取得価額に含めて減価償却対象として費用化してしまった方がよいでしょう。
消費税を税抜処理した場合の仕訳は以下の通りです。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
車両運搬具
租税公課(自動車税) 租税公課(自動車取得税) 租税公課(自動車重量税) 保険料 仮払金 雑費(預かり法定費用) 雑費(課税諸費用) 仮払消費税等 |
XXXXX
XXXXX XXXXX XXXXX XXXXX XXXXX XXXXX XXXXX XXXXX |
現金預金 | XXXXX |
廃車する時に廃棄物などのリサイクル処理をしたものとして費用に計上することになります。なお、リサイクル料は、車両取得時には「仮払金」として資産計上します。
2.中古車の購入
中古車の購入に関しても、新車購入と違いはなく、同様の仕訳処理となります。中古の固定資産を購入する場合でも下記のような費用は取得価額に含めることが可能です。
- 固定資産の購入代金
- 固定資産を事業に利用するために直接かかった費用
- 運送費用
- 保険料、など
つまり、中古車を購入した際の費用や運搬費用は取得価額として認められるのです。しかし、中古車に関する自動車税などは取得価額には含まれませんので、注意が必要です。また、新車購入と中古車購入の最大の違いは「費用化する方法」で、具体的には「車両の耐用年数と償却率の差」です。
3.車両の耐用年数と償却率
減価償却とは資産を一度で費用化するのではなく、資産の種類に応じた耐用年数で費用を分割して費用に計上する方法です。税法に定められた自動車の耐用年数は6年です。減価償却の方法には定額法と定率法があります。償却方法は、建物以外であれば、どちらの方法でも選ぶことができます。
定額法とは、減価償却資産における一定の金額を毎年償却していく方法のことです。減価償却資産の種類に応じた耐用年数ごとに決められた償却率を利用して、「取得価額×償却率」を減価償却費として計上します。毎年決まった金額が償却されることになるので、認識しやすい減価償却方法であると言えます。
一方で、定率法とは減価償却資産における一定の割合を毎年償却していく方法です。定額法と同様に、原価償却資産の種類に応じた耐用年数に定められた償却率があるので、「未償却残高×償却率」で求められた金額を減価償却費として計上します。
定率法の償却率は定額法の2.5倍となっているので、最初の償却額は定率法の方が大きくなりますが、年が進むとだんだん償却額が小さくなっていくという特徴があります。また、定率法の場合はいつまでたっても残存価額が0にはならないので、一定の償却保証率を下回った場合には定額での償却とする、という仕組みとなっています。
償却方法は選択することが可能、と説明しましたが、法定の償却方法は、個人事業主は定額法、法人は定率法です。なお、平成10年4月以後に取得した建物については、定額法のみとなっています。
平成28年度税制改正により、建物附属設備および構築物ならびに鉱業用の建物等の償却限度額の算定方法について、定率法が廃止されることとなりました。すなわち、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備および構築物については定額法のみが認められ、平成28年4月1日以後に取得する鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る)については定額法又は生産高比例法によることになります(法令48条の2第1項1号から3号)。
それでは新車を300万円で取得した時の減価償却費がいくらになるのか、計算してみましょう。
新車を社用車として購入した場合は、法人に対する法定償却方法である定率法を利用すると、償却年数は6年で償却率は0.333となっているので、300万円×0.333となり、初年度の償却額は999,000円となります。
これに対して、中古車を300万円で購入した場合の減価償却費はどうなるのでしょうか。中古車の償却年数は2年なので、償却率は1.0となっています。
つまり購入初年度の減価償却費は300万円まるまるが計上できることになります。中古車購入代金の全てを初年度に費用として計上することが認められているのです。新車の場合と比べると、購入初年度の減価償却費に大きな差があることがわかるでしょう。
なお、自動車のタイプによる耐用年数表(減価償却資産の耐用年数等に関する省令、別表第一)は以下の通りです。
構造または用途(普通用途の車両タイプ) | 耐用年数 |
---|---|
普通自動車 | 6 |
小型車(総排気量0.66L以下) | 4 |
二輪又は三輪車 | 3 |
自転車 | 2 |
貨物自動車(ダンプ式) | 4 |
貨物自動車(その他) | 5 |
通信報道用 | 5 |
フォークリフト | 4 |
トロッコ(金属製) | 5 |
トロッコ(その他) | 3 |
次いで、自動車の耐用年数に応じた償却率は以下の通りです。
耐用年数 | 償却率
(定額法) |
償却率
(定率法) |
改定償却率
(定率法) |
保証率
(定率法) |
---|---|---|---|---|
2 | 0.500 | 1.000 | – | – |
3 | 0.334 | 0.833 | 1.000 | 0.02789 |
4 | 0.250 | 0.625 | 1.000 | 0.05274 |
5 | 0.200 | 0.500 | 1.000 | 0.06249 |
6 | 0.167 | 0.417 | 0.500 | 0.05776 |
改定償却率とは、 改定取得価額に対して、その償却費の額がその後同じ額になるように調整した当該資産の耐用年数に応じた償却率のことです。
なお、改定取得価額とは、調整前の償却額が初めて償却保証額に満たないことになる年の期首未償却残高のことを言います。上記の数値は2007年4月1日以降に取得した固定資産に適用される償却率です。
4.中古車を会社資産として活用する方法
このように企業にとって中古車の購入は税法の規定を活用して、減価償却費を一括で費用計上して、納税額を抑えることが可能な方法の一つであると言えますが、その他にも中古車を購入することで会社経営上メリットが生じることが考えられます。
ひとつには税務署に目を付けられにくい点です。
いつも新車に乗り換えているような経営者は、世間からの見栄えは良いものの、会社がそれだけ儲かっているという印象を与えることにありますので、その割りに納税額が少ないとなれば、税務当局から厳しく調査をされることにもなりかねません。
ところが中古車を利用して節税している、ということであれば、税務当局もしっかりとした経営者であるという認識を持つことが考えられます。
身の丈を超えた華美な振る舞いにつながるような行為(この場合は、新車購入の頻度が高いということ)は、慎んだ方が無難だと思われます。
もう一つの観点は、資産売却の可能性を考えた換金性の高い中古車を選ぶことにもメリットがあると思われます。
自動車の中には、まれに中古車の方が新車よりも販売価格が高い、俗に言う、プレミアムが付いた車が存在します。
さすがにそのようなケースはあまりないでしょうが、中古車市場で高値がつく車種というものが存在しています。
万が一の時には会社資産を売却しなければいけない事態に陥る可能性がありますが、その際に換金性に優れている、中古車市場でも一定の評価を得ている自動車を保有していれば、売却することで手元資金を得ることが可能です。
つまり、あまり中古車市場で人気のない、マニアにだけ好まれるような車種を会社で購入するのは避けた方が賢明でしょう。
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中古車購入まとめ
中古車を購入する場合には、新車との減価償却年数との違いから大きな節税効果が期待できます。
会社を経営するという観点から、保有している資産の減価償却費を認識しておくことは極めて重要なので、保有資産の用益性だけでなく税務上の取扱いまで理解したうえで、その資産を利用することが求められるといえるでしょう。
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