株式会社レクリエ財務改善コーチング

コロナ禍における中小企業の海外展開の状況や影響について解説

中小企業の海外展開 業務改善

中小企業においては海外展開を実施している会社の方が海外展開をしていない会社よりも労働生産性(常用している労働者1人あたりの付加価値額)が高いというデータがあります(参考資料:「海外展開と労働生産性」)が、コロナ禍の中で中小企業の海外展開状況にはどのような影響が生じているのでしょうか。

本稿においては、中小企業の海外展開の現状(含む、新型コロナ感染症の中小企業の海外展開への影響)、中小企業の海外展開への公的なサポートにはどのような施策があるのか、中小企業の海外展開の具体的な事例(成功、あるいは失敗した要因は?)、などについて解説します。

1.わが国の中小企業の海外展開の現状

(1)日本企業の海外展開の流れ

日本の中小企業の海外展開の現状を分析する前に日本企業の海外展開状況について説明します。わが国においては、2004年に海外進出はピークを迎えたもののリーマンショック後の翌2009年にはほぼ半数に減少しました。その後東日本大震災のあった2011年に倍増し、以後2016年までは増加してきました。

進出地域別件数としては、2004年までは中国(本土)が半数以上を占めていたのですが、2011年時点では中国(本土)の件数は1/3まで減少するとともに、タイ、インド、インドネシア、などへの進出件数が増えて、進出地域は分散化する流れがありました。

また、2013年以降はアメリカへの海外進出が顕著になりました。理由としては、企業競争力を強化するために現地生産能力の増強が図られることになり、最先端のテクノロジーや流行を入手するための研究・開発拠点が設置されることになり、また、そうした専門的な機能を有している各拠点を統括管理するための機能拠点も設置されることになったので、アメリカへの進出件数が増えたものと考えられます。

また、2007年時点では1ドル117.75円くらいだったUSD/JPYの為替レートが、徐々に円高方向に進んで、2012年に79.79円まで円高が進行したこともアメリカ進出をプッシュしたものと推察できます。

(2)中小企業の海外展開の現状

2016年以降になると、トランプ米大統領の登場、イギリスのEU離脱決定、といった国際経済に大きな影響を与える変化が生じています。その後も、香港の民主化運動と中国による弾圧強化、ミャンマー政変、などにより海外展開の意欲を削ぐような事象が発生しており、現在ではさらに新型コロナ感染症の拡大という課題も突きつけられています。

換言すれば、特に中小企業にとっては、将来を見通すことが難しい状況となっているので、海外事業の展開に対する判断に悲観的な影響を与えていることは間違いないでしょう。2017年度のジェトロによる調査結果によると、海外進出の方針として「拡大を図る」と回答した企業は、2011年の東日本大震災以降では最も低い57.1%という水準に落ち込んでいました。

一方で、コロナ禍において多くの企業ではサプライチェーンの見直しを進めていることもあるので、調達先(地域)の変更(例えば、中国から調達していた原材料をベトナムからの調達へと切り替える、など)などによる海外展開は増加していく可能性はあります。

また、コロナ禍で今は積極的に海外展開できない(様子見)と考えている中小企業であっても、コロナ収束後には、コスト削減や競争力強化を目的とした海外展開を積極的に検討したい中小企業は、コロナによる業績悪化に対抗するという意味においても、けして少なくはないと思われます。

(3)中小企業の海外展開の理由

中小企業が海外展開を図ろうとする理由には以下のようなものが挙げられます。

  1. 日本国内の需要縮小による売上や利益の減少
  2. 低廉かつ高度な技術力を有している外資系企業の日本進出
  3. アジア地域の市場拡大
  4. ITテクノロジーの劇的な進化
  5. 人件費や原材料費などのコストの抑制
  6. 外資優遇制度などを利用した節税

1.日本国内の需要縮小による売上や利益の減少

国内市場には多くの競争相手が参入していることから、少ないパイを奪い合っている状況になっているので、このまま競争が激化すれば売上も利益も減っていくだけなので将来性がないと考えている中小企業の経営者は多いのではないでしょうか。そのためには、ライバル企業に先んじて海外にビジネスの成長を求めて展開するということを検討するケースも大いにあり得ます。

ただし、単純に海外で従来と同じビジネスを展開すれば成功できる、というほど海外展開は簡単な手法ではありません。現地の法制度や商慣習などに精通することや信頼できる地元の取引先を確保することなど、多くのことを学んで経験することが必要になります。そのため、既に当地に進出済みの事業会社や商社などに協力してもらって海外展開を実施している中小企業がたくさんあるのです。

2.低廉な労働力や高度な技術力を有している外資系企業の日本進出

外資系企業の中には高度な技術力を保有しているにもかかわらず、安い労働力を確保している企業があります。結果的に、低コストな労働力と高度な技術力は収益力に直結するので、企業競争においては非常に有利になると考えられます。

つまり、そういった企業と競争するためには自社においても従業員コストを抑制して高度な技術力を持つことが重要になります。そのためには海外展開を実施することで、目的を達することが必要になります。特に安い労働力を日本国内で求めることは困難であり、外資系企業と同じ土俵に立つことすら覚束ないでしょう。

3.アジア地域の市場拡大

欧米諸国市場に比べると、様々な分野でアジア諸国の市場は、未発達ではあるものの、潜在的にも非常に高い成長力を保有しているマーケットであると言えます。今後の経済成長率を考えた場合には、その高い経済成長とともに自社ビジネスも大きく伸びる可能性を秘めた市場がそこにはあるのです。

もちろん未整備な市場であるが故のリスク(リーガルリスク、行政リスク、など)はありますが、そうしたリスクへの備えも十分に検討したうえで海外進出すれば、許容リスク内でのビジネスを成功させられる可能性はあります。

4.ITテクノロジーの劇的な進化

ITテクノロジーの劇的な進化が中小企業の海外進出の背中を押した面は否めないでしょう。海外拠点との通信手段も、昔は国際電話やテレックスなどが主流だったものが、現在ではインターネット回線に繋がっていればリアルタイムで動画を利用したコミニュケーションをすることも簡単にできます。

地理的な要因によるコミニュケーションしにくいといった問題はほぼ解消されているといって良いかもしれません。ただし、国によっては当局による回線切断などのリスクがあることは事前によく調査しておくことが必要になるでしょう。

5.人件費や原材料費などのコストの抑制

上記の「②低廉な労働力や高度な技術力を有している外資系企業の日本進出」でも触れましたが、中小企業にとってはコスト抑制は非常に重要な経営課題になっていると言ってよいでしょう。外資系企業との競争、といった面だけではなく、無駄なコストはたとえ1円未満の銭単位であっても排除して利益を確保することが中小企業にとっては生き残るために絶対に必要なマインドでもあるのです。したがって、労働コストや原材料コストを抑制することは海外進出の大きな目的になるのです。

6.外資優遇制度などを利用した節税

国によっては、企業が進出する際に様々な税務面での優遇措置を付与してくれるようなケースもあります。企業誘致の目玉としてそうした優遇措置を設定している場合には、上手にその制度を利用することが賢明な方法でしょう。ただし、どのような場合に優遇措置の適用対象になるのか、などを専門家にも相談してよく確認しておくことは重要です。

(4)中小企業が海外展開するための課題

多くの中小企業が、前述した「(3)中小企業の海外展開の理由」により海外展開を図ろうとしてはいますが、実際には以下のような様々な課題により積極的には踏み出せていないのが現状のようです。

  • 販路や販売先の確保
  • 必要となる資金の手当
  • 海外進出先のマーケットの動向や取引先ニーズの把握

1.販路や販売先の確保

製造拠点だけを海外に展開することも考えられますが、ビジネス効率の観点から、一般的な海外展開は製販一体で実行されることが多いと考えられます。現地ニーズにマッチした製品などを作って現地で販売するというビジネスサイクルを構築して適切に回せることが現地ビジネスを成功させる鍵となります。

その際にポイントとなるのが、販売先をどうやって見つけるか、ということになります。現地工場の従業員を見つけることは、よほど会社の評判などが悪くない限りは、そんなに難しくはないと思われますが、自社製品を買ってくれる顧客企業を見つけることは簡単ではありません。したがって、現地企業と合弁会社を設立して販売サポートの面で協力してもらったり、経営コンサルタントや日系商社に販路の開拓を手伝ってもらったり、することも多いのです。

また、自社が狙っている海外市場への進出を他国の企業も狙っている可能性は十分に考えられます。そのような場合には優良な取引先とのビジネス争奪戦は相当に激しい戦いになるものと考えられます。つまり、優良な取引先の確保は極めてハードルが高い課題となる可能性があることも考慮しておく必要があります。

2.必要となる資金の手当

中小企業の海外展開には、現地工場や事務所の設立、現地従業員の採用、信頼できるアドバイザー(経営コンサルタント、日系商社、など)との契約、などの費用がかかります。前述したように、国内業績が低迷しているので海外展開で挽回したいと考えているような企業にとってはこうした費用を捻出することは簡単ではないかもしれません。

また、海外展開においては、法制度の大きな変更、環境の急激な変化、などが生じてしまうリスクも考えられます。そういった意味においても、ある程度はリスクに備えるための余裕資金を手元に用意しておくことが重要かつ必要になるでしょう。

3.海外進出先のマーケットの動向や取引先ニーズの把握

海外マーケットには日本国内とは異なる様々な商慣習や文化が存在しています。つまり、日本でヒットした商品やサービスがそのまま現地でも受け入れられるとは限らないのです。そこで、自社製品やサービスをいかに現地化(ローカライゼーション)できるか、といったことも重要な視点になります。

そのためには、海外展開の前に現地調査を綿密に実施して市場動向や取引先ニーズを認識・把握しておくことが極めて重要になります。それらの調査結果を踏まえて事業計画を策定して実行していくことが現地化を進めるためには必要です。

2.中小企業の海外展開への公的なサポート

わが国においては中小企業の海外展開を支援するために以下のような事業などがサービスの提供を行っています。

  • 国内・海外販路開拓強化支援事業
  • 中小企業海外ビジネス人材育成支援事業
  • JETRO
  • 中小企業庁
  • 新興国等知財情報データバンク
  • 中小企業国際化支援ナビゲーター

1.国内・海外販路開拓強化支援事業

国内・海外販路開拓強化支援事業とは、中小企業庁(経済産業省)が中心となって推進している海外展開を支援する事業のことで、日本国内における地域経済の活性化と地方経済の再生を目的として、国内や海外の販路の開拓をシームレスにサポートします。

例えば、地域資源を積極的に活用することで中小企業の経営者と農林漁業者との連携を推進して、新たな商品やサービスを開発したり販路の開拓をサポートしたりします。また、海外で開催される展示会などへの出展を活用して、ブランドの周知や海外の販路を開拓するような事業に対する支援を実施します。

また、事業の成果をエリア内(地域内)の中小企業に広範に発信して、チャレンジする意欲を高めることを醸成するだけでなく、マーケットとのより強固な連携の推進を実施しています。そして、中小企業海外展開現地支援プラットフォーム、の整備によって、海外進出後に生じた課題への対応も含めて、ワンストップなサポートを展開しています。さらに、中小企業が海外展開する際に留意すべき国内・海外の税制などに関して、セミナーの開催や各種資料やパンフレットなどの配布も実施しています。

2.中小企業海外ビジネス人材育成支援事業

中小企業海外ビジネス人材育成支援事業とは、中小企業における海外事業の担当者を対象に、海外マーケットの新規開拓において必要となるナレッジ・スキルの育成、実務的かつ実践的な現場におけるトレーニングのプログラムを提供する事業です。マーケット調査のナレッジ、海外の取引先とのコミュニケーション・スキル、海外展開する際の事業戦略や事業方針の立案や策定、などの国際的な人材育成に関するサポートを受けることが可能です。

3.JETRO

JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)は正式名称を「Japan External Trade Organization」とする日本最大の海外進出関係の行政機関です。JETROは世界各国に展開していて、数十ヵ国の営業所を基点として世界中にそのネットワークを拡大しています。各国・各地域における情報の収集は当然ながら、海外への進出に関する様々な助言をもらうこともできますし、幅広いサポートを受けることも可能です。 JETROが有する世界中を網羅したネットワークを利用して現地に精通した専門家に支援を依頼できます。

JETROには、新輸出大国コンソーシアム、というプログラムがあり、海外進出を考えている企業を対象とした支援を受けることが可能です。この新輸出大国コンソーシアムに属しているコンシェルジュ(プロのスタッフ)が国内各地に存在しており、コンシェルジュが様々な分野のプロフェッショナルや専門的な機関とのつなぎ役(橋渡し)を果たしてくれる、という仕組みを構築しています。

様々な分野のプロフェッショナルは、海外展開の初期段階に必要な準備の支援から、それぞれの事業展開の分野における支援まで、非常に幅広くサポートを実際に行っていることが最大の強みと言えます。何を海外ですればいいのか、というシンプルな問いから、自社の経営戦略において海外進出はどういった意味を有するのか、という極めて重要な経営上の意思決定に関する事項に至るまで、サポートを受けることが可能なのです。

また、海外取引先との貿易の実務や海外拠点における人事面での管理といった専門的なフィールドであっても支援を受けることができますので海外展開を目指している会社にとっては、必要不可欠なノウハウを入手することができる極めて重要なサービスとなります。また、この新輸出大国コンソーシアムにおける様々なサポートサービスは、大部分が、誰でも無料で利用することができます。 日本政府としては、海外市場を優先するという方針を立てていることもあり、無料で手厚い支援を受けられるのです。

また、JETROでは、海外ビジネス環境調査、というサービスも提供していますす。このサービスは、既に世界中に展開している企業に対して、アンケートを利用して現地ビジネスの状況を回答してもらうものです。複数の質問に対して現地でビジネスを実施している企業が回答しているので、実質的でリアルな現地の状況がわかるので、もし自社が海外に展開した場合に発生し得る事象や問題点をあらかじめ想定して対策を考えておくことが可能になります。

海外展開を考えているエリアやビジネスの業界が類似しているようなケースであれば、どのような問題が発生する可能性があるのかを事前に把握することも可能になります。上記のアンケートは、これまで長期間にわたって海外展開した多くの中小企業をサポートしてきたJETROであるからこそ提供可能なサービスと言えます。また、今後海外展開を考えているような企業にもアンケートを依頼しており、これらのアンケートの内容を把握することにより、海外展開の大きな流れやトレンドを理解することが可能になり、あらかじめリスクに対応する措置を考えておくこともできるのです。

4.中小企業庁

経済産業省の外局である中小企業庁は、経営サポート(海外展開支援、という名称で中小企業を対象にしたサポートを実施しています。海外展開を考えている、あるいは既に海外に展開している中小企業を対象にしたセミナーを催しています。また、中小機構(正式名称は独立行政法人中小企業基盤整備機構)やJETROが開いているセミナーに関する情報をまとめているので、定期的に確認することで役立つ情報を入手することが可能です。

5.新興国等知財情報データバンク

新興国等知財情報データバンクとは、海外の知的財産に関する実務的な情報をまとめているサイトです。主に東アジアや東南アジアなどの、知的財産権、特許権、意匠権、などに関した様々な判例を確認することが可能です。自社がこれから展開する予定の国々の商品・サービスの判例をあらかじめ確認しておくことで海外展開した後の想定外の事象を防御することが可能になるでしょう。

それぞれの国のそれぞれの事例を全て自社で翻訳することには膨大な費用がかかりますが、前述した新興国等知財情報データバンクを利用すれば個別の事例について既に翻訳された情報を入手することが可能です。したがって余計なコストをかけることなく進出予定国の知財に関する事例をチェック・把握することができるのです。また、知的財産に関して無料で相談を受けることも可能です。

6.中小企業国際化支援ナビゲーター

中小企業国際化支援ナビゲーターとは、日本商工会議所が海外に展開している(展開予定の)企業に対して情報を発信しているサイトの名称です。本サイトに掲載されている情報には、全世界に展開している日本商工会議所からの生の情報なので、各国の現状や実態を即時に把握することが可能である点に特徴があります。

開発途上国が多いアジア・エリアでは短期間に大きくビジネスの環境が変わってしまいます。したがって、各地の商工会議所においてビジネス現場の実状をよくわかっている駐在員から得られる様々な情報は海外展開を検討している中小企業には非常に貴重な価値があるものだと言えます。

3.中小企業の海外展開の具体的な事例(成功、あるいは失敗した要因)

これまで説明してきたように、中小企業の海外展開には高いハードルが存在しますがそんな厳しい環境下においても海外展開を成功させた企業がありますので、以下に紹介するとともに、残念ながら海外進出が失敗に終わってしまった企業についても紹介します。

(1)海外展開に成功した事例

①エイベックス株式会社

エイベックスは製造業(自動車関連部品)を営んでいる中小企業で、自社製品の8割以上も海外輸出することに成功した会社です。自社でこれまで培ってきた精密加工技術の強みを十分に活用して、ニッチなマーケットと言われているスプールバルブ(糸巻きに似た形状のバルブのことで、自動車のパワステの油路を調整するバルブとして主に利用)の国際的なシェアを獲得することに成功しました。

日本国内の1次サプライヤーとの取引を積み重ねて「専門的なメーカーである」というイメージを高めてきたことが海外への展開へと結実しました。加えて、販路や販売先の確保では日系商社を経由する(販売協力してもらう)ことにより、自社の本業である精密加工部品製造力の向上に注力することにも成功しました。今でも、人作り経営、という経営理念を大切にして人材の育成と技術力の向上に取り組んでいる会社です。

②株式会社TEKNIA

自動車部品や航空機部品などの製造や精密機会の加工を行っている名古屋に本社を構える株式会社TEKNIAは、タイへの直接投資を実施することにより生産工場を設置した中小企業です。いくつかの中小企業とも連携することにより、各社の強みを協力・統合することで日系大手企業や日系中小企業から共同受注を得ることができています。いくつかの中小企業が協力・連携することにより、単独で海外進出する場合のリスクを抑制することが可能になるというメリットも生じています。

また、現在では海外展開で得たノウハウやネットワークなどを活用して、製造部門とは別に、海外展開のサポート事業を実施する会員制のコンサルティング会社を設立して、新しく収益を確保する手段を構築したり、他の多くの中小企業の海外展開を支援したり、するまでに成長をしているようです。

③株式会社ダイイチ

算盤を製造している創業100年を超える老舗株式会社ダイイチは、利用者が減少する一方の日本国内の算盤マーケットに大きな危機感を感じていたために海外展開に活路を見出した中小企業です。算盤の歴史は古く日本以外にも中国や西洋においても利用されてきた計算機として実は有名なのです。

現在の中東においては算盤を利用した教育に注目が集まっており、そうした現地のニーズをいち早く把握することができた株式会社ダイイチは、レバノンの塾に対して算盤を輸出しています。当社では、海外進出には現地のパートナーとの信頼関係が重要である、と認識していることから、社長自身が何回も直接レバノンに足を運んで現地の取引先との信頼関係を醸成できたことからビジネスが上手く回っているのです。今でも輸送コストなどの改善を目的にした取り組みが実施されており、海外展開によるさらなる販売先拡大へのチャレンジを継続しています。

(2)海外展開に失敗した事例

海外展開の失敗事例は、具体的にどのような問題で失敗したのかの事例を挙げます。

①ロイヤルティの回収に関するトラブル

X社はA国に向けた環境技術に関するライセンスビジネスを営んでいます。しっかりと契約を締結して技術の移転を進めてはいるもののいくら催促してもランニング・ロイヤルティが入金されない、というトラブルを抱えています。

ロイヤルティ回収は、各種の法律、条例、規則、などを十分に理解したうえで契約書を作成・締結することが必要です。また、トラブルが発生した場合の契約解除に関する条項も記載しておくべきでしょう。技術ライセンスの契約は一般的な貿易よりも複雑な条件が付されることが多いので、進出国の法律などをよく理解・把握したうえで進出国のリーガル面に詳しい弁護士に依頼するなどして契約の交渉を進めることが必要でしょう。

②輸出食品が相手国の税関で止められた

国内で催された食品の見本市に出展したら、A国の寿司レストランの買い手(バイヤー)から大規模な引き合いを頂きました。納期、決済の条件、取引価格、などに関して問題なし社内合意が得られたので、早々に寿司ネタとなる半加工食品(商品)を送付したら、加工食品に含有されている着色料にA国では使用が禁止されている成分が含まれていたので税関でストップされてしまいました。

国によっては、着色料や香料などの食品添加物に関する許認可の状況が異なっているので、あらかじめ輸出相手国における規制に関する情報をしっかりと調べていくことが重要かつ必要となります。

③海外におけるP/L(製造物責任)法の対策

非常に高価なテスト装置を進出国に輸出しているが、使用上の注意を誤ると大変に危険となる部分があるので、もし問題が発生した場合の対策をそのようにしておけばよいかが課題になっています。

海外に製品を輸出することを考える企業が必ず考えておかなければならないポイントとして、P/L(製造物責任)法の対策を挙げることができます。海外においては、日本よりも遥かに多くのこの類の問題が発生していることは念頭に置いておくべきですし、そのうえで対策の準備を進めることが必要です。

例えば、P/L保険への加入に関しては、損害保険会社とあらかじめよく相談して保険の料率などを決定するうえで、支払保険料を考慮しながら顧客への販売価格を決めるべきでしょう。また、商品の取扱説明書や使用上の注意といったものも現地事情にマッチした様々な場合を考えたうえで慎重に注意しながら作成して事前に問題の発生を防ぐようなことも必要でしょう。

まとめ

中小企業が海外展開する場合には、販路・販売先の確保、為替の変動リスク、進出先のマーケっと動向や顧客ニーズの把握、などのハードルを越えることが重要になります。海外展開の失敗要因には、環境の急激な変化による販売の不振、海外進出を担える国際的な人材が不足していること、などを挙げることができます。

海外展開を上手に進めるためには、他社の海外進出の失敗要因などを踏まえたうえで、経営計画の慎重な立案、リスクや課題の正しい把握、などが大切です。海外展開の専門的なチームが調査や分析を実施して、進出国マーケットの新規開拓に対する戦略実施と現地の人材獲得や育成が必要となります。

中小企業の海外展開をサポートするような国などの事業も用意されています。海外展開の成功・失敗の事例や課題などを整理した報告書なども公表されているので、海外展開に関心を持っている中小企業は、上述のサポートや報告書などを利用することをおすすめします。また、コロナ禍で今は海外展開を見合わせている中小企業も多いかもしれませんが、コロナ収束後のことを考えて、早い段階から準備を進めておくことも重要でしょう。

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監修
株式会社レクリエ / 弁護士・社会保険労務士
相川祐一朗

企業法務を専門とする他、社会保険労務士の立場から、中小企業経営における「事前対応」思考への転換を図るためのコーチングも手掛ける。
働き方改革対応を始め、従業員問題への対応や就業規則改定等による強い組織構築の提案、社外との紛争解決まで、企業が直面する法的な問題全般を扱う。

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