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【アフターコロナ】中小企業がとるべき経営方針とは? 

アフターコロナで中小企業がとるべき経営方針をイメージする画像 起業家の基礎知識

新型コロナウイルス感染症は世界中に大きな影響を与えており、現時点(202068日)で感染が拡大している地域もあります。日本においては、202047日に先ず7都府県に緊急事態宣言が発出されてから同年416日に全国に拡大され、その後多くの国民・企業の自粛対応などの努力により発症者数などが落ち着いてきたことから同年525日に緊急事態宣言は解除されました。

当然ながら緊急事態宣言が解除されたからといって新型コロナウイルス感染症が撲滅されたわけではなく特効薬やワクチンが開発されたわけではないので、まだ新型コロナウイルスに対する警戒感は高い水準で保持しておく必要がありますし、マスクの着用や手洗い・消毒といった自衛策はまだ当分の間必要でしょう。

そのような中において、新型コロナウイルスは日本の経済活動に大きな打撃を与えてきましたし、現時点でもその影響に苦しんでいる企業は多いものと推察されます。特に飲食業や宿泊業、小売業などを営む中小企業にとっては、早期の公的な休業補償が実行されない中で自粛休業を実施していた会社も多く、非常に苦しい状況であったことは想像に難くありません。

本稿においては、新型コロナ以前の中小企業状況と新型コロナが中小企業に与えた影響、新型コロナ以後の中小企業における人材確保や売上確保などの施策はいかにあるべきか、新型コロナ以後には中小企業はどのような経営方針の下で会社の付加価値を上げて社会貢献するべきなのか、などについて説明します。

 

1.新型コロナ以前から新型コロナ感染症拡大下の中小企業の状況について

新型コロナ以前の中小企業の状況については、各社によって業績は千差万別でしょうし、業種や業態によって大きな差はあるものと考えられますが、昨年の消費税アップの影響で個人消費はやや動きが鈍かったものの、オリンピックイヤーを迎えたこともあり、インバウンド増加による売上アップなどを期待していた企業は多かったと考えられます。

その一方で、少子高齢化の進展は深刻で、労働力の確保は中小企業のみならず多くの会社にとって深刻な問題になっていました。このように、働き手の不足という課題はあるものの、将来的には企業業績に好影響を与えることになるイベントに期待している、という状態だったでしょう。

しかし、新型コロナ感染症の拡大でその期待は大きく裏切られることになりました。人の移動に大きな制限がかかることになり、特に海外からの来日が困難になり、国内客も含めて、多くの宿泊予約がキャンセルとなりました。あっという間に消えてしまった宿泊予約などは、その後も客足が元に戻ることなく現在に至っています。

国内においても他の都道府県への移動を自粛するように自治体の首長から要請が出されたこともあり、春のお彼岸の帰省やゴールデン・ウィークの旅行などもほぼ人が移動することはなく、新幹線や飛行機などでも満席にはほど遠い状態が続きました。

また、百貨店やショッピングモールにおいても自主休業が相次ぐこととなり、商品などを納めている中小企業にとっても売上が見込めない状態となり、手元のキャッシュが日々減少していく、という事態に陥ることになりました。また、飲食業においても、夜間営業の自主休業などから売上が激減することとなり、昼間のテイクアウトに打って出る会社も激増しました。

夜間の飲食店では利益率の高いお酒がよく注文されていたのですが、それらがなくなってしまい、いくら昼間のテイクアウトで何とかキャッシュを確保できたとしても、コロナ以前のような利益を得ることは困難になってしまった飲食業の会社は多いものと思われます。

また、アパレル業界も新型コロナ感染症による大きな影響を受けた業種のひとつです。前述したようにショッピングモールや百貨店が閉まっているので、出店先や直営店の売上が見込めず、資金繰りが非常に厳しくなった会社が多いものと思われます。実際に大手アパレルのレナウンは、コロナ以前から業績は芳しくありませんでしたが、コロナにとどめを刺される形で20205月に民事再生法の適用を申し立てるに至っています。

このように新型コロナ感染症の影響は、飲食業、宿泊業、アパレル(販売)業、などに最初にダイレクトに表れましたが、実は製造業にも深刻な影響を与えているのです。国際分業体制を構築しているメーカーでは、例えば中国や東南アジアなどで部品製造を行っているケースが多いのですが、中国などから組み立て基地のある日本や欧州に部品が届かずに、一時的に向上を休ませる決断をした会社も多かったようです。

そもそも中国などの部品工場が稼働できず(コロナ患者の急増、外出禁止令の発令などにより)部品が作れなくなっていたり、輸出業務が運営できなくなっていたり、サプライチェーンが分断される事態が発生していたのです。つまり、国際的な分業体制に支障が生じた時の補完体制がなかったことから、代替措置を講ずるのに多くの時間がかかってしまった、ということができるのです。

親会社や主要取引先の要請によって海外に工場などを移転させてきた中小企業にとっては、問題はさらに深刻で、いざとなれば大企業はこれまで取引があった中小企業から、他の部品など安定供給してくれる会社に乗り換えれば済むかもしれませんが、取引を打ち切られた中小企業にとってはたまったものではありません。

新型コロナ感染症の拡大により、パートやアルバイトなどの非正規従業員の雇用継続を断る企業が続出したように、緊急事態には社会的に弱い立場に置かれている人や会社に皺が寄ってしまうことが明らかになりました。何らかの公的なサポートは制度として存在はするものの、現時点で、施策の実施までには非常に時間がかかっていること、手続きが極めて煩雑であること、から実質的にそれらの制度が機能しているとは言い難いのが現状です。

これまで説明してきたように、新型コロナウイルスは現在の日本、あるいは世界における様々な問題点を浮き彫りにしてきたとも言えます。特に中小企業などの社会的弱者と見做されることの多い人々にとっては、この新型コロナウイルスによって表面化した課題に真摯に取り組み、新たな方針のもとで働くことが求められるでしょう。

重要なことは、大企業と同じことに取り組むことは難しいとは思われますが、中小企業ならでは機動性や意思決定及び実行の速さなどを活かして、コロナ以後の世界の中を泳ぎ切るという強固な意志とベスト・プラクティスとして目標にしている企業のやり方を参考にして良い意味で「真似る」というしたたかさが重要になってきます。

これまでの常識の中だけでは対応できないような事態や課題が発生するかもしれませんが、日本の中小企業がこれまで生き残ってこれたのは、「先達の知恵」があったからです。国難とも言えるこの状況においては、日本経済を支えている中小企業の知恵が求められているのです。

 

2.新型コロナ感染症後の中小企業における課題と取組

新型コロナ感染症後に中小企業が直面すると思われる重要な経営課題には以下のようなものが考えられます。

<新型コロナ感染症後に中小企業が直面すると思われる主要な経営課題>

(1)コロナ以後の人材確保

新生活様式を念頭に置いた新たな労働環境の整備

②多種多様な従業員(働き手)の受け入れ

③地域レベルでの人材のマッチングの必要性

(2)コロナ以後の売上や販路(物流網)の確保

企業連携によるオンラインサービスの活用

②新型コロナを経験した消費者とのデジタル技術を利用したコミュニケーション

③リージョン(地域)内における連携の発要請と情報発信サポート

(1)コロナ以後の人材確保

中小企業に限らず、コロナ以前から勝機高齢化の急激な進展を受けて労働力の確保は企業経営の大きな課題となっていましたが、新型コロナ感染症の拡大を受けて多くの労働者は自らの働き方を持つ目直す機会を持つことになったと思われます。今後、中小企業はどのような課題を念頭に置きながら人材確保に挑む必要があるのでしょうか。

①新生活様式を念頭に置いた新たな労働環境の整備

前述したように、「新生活様式」という言葉がすっかり市民権を得ているようですが、新型コロナ感染症の拡大で多くの労働者はこれまでの生活スタイルを大きく変化させる必要に迫られることになりました。働く側の立場から最も大きな変化があったのは、会社に出社せずにリモート(遠隔操作)で仕事をする、という点ではないでしょうか。

一般的には「テレワーク」という言葉で括られているようですが、パソコンやスマホなどのWeb会議システムを利用することにより、会社の会議室に物理的に集合することなく、ミーティングを開催できるようになったり、仕事の進捗や報告は従来の電話に加えてメールやチャットを使用することで滞りなく業務を進められるようになったり、という仕事のスタイルが大きく変わることになった人は多いのではないでしょうか。

もちろん工場などの生産現場や取引先や見込先への営業活動においては、テレワークでは代替できない面がありますので、従来通りの働き方をしなければならないケースもあるでしょうが、一度会社に出社しなくても仕事ができる、という経験をしてしまうと、その新たなスタイルから脱却することが困難な場合も想定されます。

実際に緊急事態宣言が解除されても、テレワークを継続的に実施するとしている企業は多く、テレワークで仕事の生産性はむしろ向上した、としている会社もあります。今回のテレワークは大企業のみならず多くの中小企業においても導入されたものと考えられます。

ひとつにはデジタル技術の発達により、以前であれば大掛かりな電話会議システムの構築が必要だったものが、無料あるいは低廉な料金でのWeb会議アプリが登場していたことで、莫大なコストを投じる必要がなく中小企業においても在宅勤務をしやすいIT環境になっていたことが大きな理由だと考えられます。

このようにハード面ではテレワークには対応し易くなっていると言えるのですが、大切なのはその運用ルールの設定と補完的なサポートをどのように実施するのか、といった点にあると思われます。Web会議であっても対面式の会議と同様に議事録が必要なものは作成して回付する、あるいは会議で決まったことはTo Doやスケジュールに落として会議の参加者で共有する、といったルールを決めておくことは重要です。

テレワークでの最大の課題は上司や同僚とのコミニューケーションのレベル(深さ、という意味における水準)が低くなり、孤独感や疎外感を感じてしまう点にあります。そこで、Web会議(テレワーク)を補完するという意味で、週に1回、など定期的に課ごとやグループごとに会社に出社する、ということも必要になるかもしれません。

会社によってテレワークを今後どのように活用していくのかは千差万別かもしれませんが、長くて混雑していて辛い通勤地獄から解放された労働者の、コロナによる自宅待機で生産性が向上しているような働き方を無理矢理元に戻すようなことは考えられません。

つまり、中小企業にとって従業員を確保するためには、新型コロナへの対応によって新たに設けたテレワークなどの在宅仕事への対応力の有無が重要なポイントになる可能性があります。その他にも、職場におけるマスクや消毒液などの備え付け、他の従業員とのソーシャル・ディスタンスの確保、など安全に仕事ができる労働環境を整えておくことが必要になるでしょう。

テレワークについて、テレワークの概要と導入に際して注意することを徹底解説しますの記事をご覧ください。

②多種多様な従業員(働き手)の受け入れ

新型コロナ感染症の拡大は様々な従業員の働き方を会社として受け入れる必要に迫られたとも言えます。前述したテレワークによる働き方も新たな働き方のひとつですが、他にも多くの学校や幼稚園などが休校する中で子供の面倒を見るために従来の働き方をすることができなくなった人もたくさんいます。

例えば、午前中のみ働くことができる人、夫婦で交代しながら会社を休んで子供の面倒を見る人、労働時間の減少により給与が減ったために副業を始めた人、など様々な働き方が模索されてきたように思われます。中小企業にとって大切なことは、個々の従業員にとって働きやすいと思われる人事制度や労働環境を整備・構築することです。

新型コロナへの対応をきっかけにして、他社にはない従業員に寄り添った施策を実施し得ることは他社との大きな差別化となり、人材確保の有用な手段になることは間違いないでしょう。そのためには、従業員の実情を会社が正確に把握して、従業員の「働きたい」という意思を具体的な方策に結ぶ付ける努力が欠かせないと考えなす。

③地域レベルでの人材のマッチングの必要性

新型コロナ感染症の拡大は大都市に限らず、全国各地に大きな影響を与えました。特に地方の中小企業においては、大企業に比べると、今後人材育成や人材確保において大きなハンデが生じかねないものと思われます。例えば、大企業ほど副業に対する意識が前向きでないこと、人材の流動化に関する仕組みが都会ほど整ってないこと、などがその理由として挙げられます。

したがって、地域(リージョン)レベルで人材流動化、人材マッチングの仕組を行政サイドのサポートも受けながら構築することが必要になっていくでしょう。一方で地方中小企業においても、前述したような様々な働き方を認めたうえで、他の企業との兼業や兼職なども許容するような柔軟な人事制度の構築・整備が必要になるものと考えられます。

例えば、週に1度は都心にある本社に出社するが、どの日以外についてはテレワークで主に田舎の自宅(自宅である必要もないのですが)や実家で仕事をする、といった働き方ができるようになれば、平日は通勤地獄からは解放され、週末はゆっくりと自然が豊かな田舎で過ごす、ということも可能になります。

更には実家近くで他の仕事をしたり、起業して新たな仕事を始めたり、これまで単調だった生活にメリハリが生まれて、毎日が充実するようになるかもしれません。今までは都心での労働者は都心で、地方での労働者は地方で、それぞれ募集することが当然だったかもしれませんが、新型コロナ感染症によって、都心と地方との間に人材の需要と供給のパイプが太くなったと考えることができるのです。

(2)コロナ以後の売上や販路(物流網)の確保

新型コロナ感染症の拡大により多くの企業では経済活動を一時的に休止するようになり、その結果として売上高も利益も大きく減少することになりました。緊急事態宣言が解除されて客足は多少なりとも戻っているように感じますが、これまでの外出自粛の影響が長引いておりコロナ前の状態に戻るのは簡単ではないようです。

前述した人材確保以上に、売上高や販売網の確保、といった会社の業績に直結するような課題にはコロナ以降にはどのように対応する必要があるのでしょうか。

①企業連携によるオンラインサービスの活用

新型コロナ感染症への対策として、実店舗に足を運ばずにオンラインを利用して買い物をする、という「巣ごもり消費」というスタイルが多くの国民の間に定着しました。例えば、洋服を購入する際には、実際にアパレルショップなどを訪問して試着してそのうえで買う、というこれまでの消費行動から、ショッピングサイトを訪問してサイズや色などを選んで購入し、もし配達された洋服のサイズが合わない場合にも返送して別のサイズの洋服と交換可能、という消費行動へと大きく変化することになりました。

また、飲食業においてもこれまではお客様に来店してもらう形での飲食提供が当たり前であった店舗でも、これまでのような来客数が見込めないことから配達や出前といった飲食提供の形を実施せざるをえないところが多かったようです。

飲食品のデリバリーに関しては、これまでも「出前」という形で電話をして注文して配達してもらう、というサービスが存在していましたが、今回の新型コロナ対応においては、インターネットを活用して注文・配達を依頼する、というサービスの利用者が一気に増えたようです。

同時にクレジットカードなどを含むキャッシュレス決済の利用者も増加しており、オンラインサービスを活用したショッピングは今後も必要不可欠な方法となるでしょう。多くの中小企業では自前でオンラインサービス網を構築することは難しいかもしれませんが、例えば前述したUber Eatsや出前館といったサービスに参加することで、オンラインサービスを利用した飲食の提供が可能になります。また、楽天市場やAmazonZOZOTOWNなどのECサイトへの出店により(出店費用はかかりますが)、衣料品などの販売も可能になります。

つまり、既存のインターネットサービスを利用することで、結果としてオンラインサービスの提供者として売上や販売網を確保することは可能なのです。また、企業同士で連携することで、例えば地方におけるオンラインサービスを利用したインターネット販売サイトを立ち上げることも可能です。

単独では難しいと思われるようなことでも、複数の企業で力を合わせて地元の特産品などをインターネット販売するサイトを立ち上げることで、たとえ新型コロナが落ち着いたとしても、今後長期間にわたり売上や販売網の確保に貢献することが可能になると考えられます。

インターネットを地用した販売形態における販売側の利点としては、注文を間違えることが少ない点が挙げられます。電話での注文では、言った言わない、という揉め事が発生することは避けられなかったと思われますが、ネット注文の場合は注文履歴がしっかりと残りますので、注文した側と注文を受けた側のどちらがミスを起こしているのかすぐにわかります。

このようにミスが起きやすい注文に関しては受け手であるお店などにおいてもサイト内に注意喚起をするような文言を用意する、などの対策をとりやすくなるという点もオンラインサービスのメリットであると考えられます。

しかし、一方でオンラインサービスに慣れていない、例えば高齢者などにとっては、インターネット注文はハードルが高いかもしれません。そこで、例えば、いつもの定型的な注文については事前に登録しておいてスマホなどで簡単に利用できるような注文サイトを高齢者向けに提供する、など、コロナ以後を見据えて中小企業にとってもビジネスチャンスを捉えられる可能性があるのです。

②新型コロナを経験した消費者とのデジタル技術を利用したコミュニケーション

前述したように、新型コロナ感染症の拡大は多くの人にインターネットなどのデジタル技術を活用した販売や購入といった新しい行動様式を生み出すことになりました。この新たな行動様式をどうしたら売上や販路の拡大に活かすことができるのでしょうか。

高齢者にとってはインターネットを思うように活用することはハードルが高いと前述しましたが、高齢者が多い地方においてさえデジタル化の波は否応なく打ち寄せてきています。そこで地方の行政主体においてはインターネット・スマホの利用を促すための高齢者向けの無料セミナーなどを開催しているところもあるようです。

今後、一般の買い物のみならず公的な書類の入手・提出なども含めてオンラインでの申請が一般的になる可能性が高いため、行政側としても住民に対して啓蒙の機会を提供したいと考えているようです。しかし、デジタル技術を介した他人とのコミュニケーションのあり方に対しては、人間味が感じられず冷たい印象がある、というネガティブな声があることは事実です。

しかし経済学者のフィリップ・コトラーは、大量の情報が行き交うデジタル社会のコミュニケーションのあり方とは、逆に人間中心のコミュニケーションが求められる、と言っています。お互いにミスをすることがあり得る完全完璧な人間ではないことをお互いに理解し合い、相互に信頼し合える存在であることが、デジタル社会にとっては極めて大切である、としているのです。

このようなコミュニケーションの考え方は中小企業にとっては適合しやすいものではないでしょうか。中小企業がビジネスを推進する際に、自社の課題を正直に話して協力を仰ぐ、というスタイルは、前述した「デジタル社会のコミュニケーション」の考え方からすれば、多くの企業や取引先にとっては受け入れられやすいと考えられます。

つまり、事業活動においても信頼に足り得る企業であり、正直に自社のありのままの姿や課題を発信してくれる正直な会社である、という評判が大きな利点となる可能性があります。例えば、自社製品の熱狂的なファンがチケット前払い制度の導入やクラウドファンディングによる設備資金集めなどのサポートをしてくれる可能性もあるのです。

また、コロナ禍の中で顧客や取引先と前述したような新たな関係を構築することは、コロナ以後の自社の企業活動についても大きな支援になるものと考えられます。このように、デジタル社会が進展すればするほど、人間はより人間的で共感できるようなコミュニケーションを求めるようになり、「信頼関係」という無形ながら強力な価値をもたらすような関係を欲するのです。

③リージョン(地域)内における連携の要請と情報発信サポート

新型コロナ以後には、地方(あるいは地域、リージョン)内における連携と情報発信が重要な鍵になると考えられます。平時には気付かなかった地方ならではの課題を発見した中小企業も多いものと思われます。問題は、その気付いた課題に対してどうやって取り組んでいくのか、という点です。

従来は一地方企業の手には余るような課題だとすぐに諦めてしまっていたかもしれませんが、新型コロナ対応で地方連携が進んでいるような地方・地域はあると思われますので、そのような連携の場を利用して、今はこういう課題があるのだが、何か良いアイデアはないか、と率直に相談してみることはとても大切だと考えます。

これまでも、行政側で相談の場を設置してくれていたかもしれませんが、同じように新型コロナ対応を通じて困ったことなどを共有しているという素地は重要なポイントで、他社のことでも自社のことのように考えるフレームワークが成立していると考えることも可能ではないでしょうか。

前述したように、平時においては多くの中小企業では、先ずは自社のことを考える、ということが当たり前だったかもしれません。しかし、今回の新型コロナ禍は、自分だけ良ければよい、という考え方では、対応することが非常に困難であり、協力して全員一丸でコロナ対策をしなければならない状況であり、実際に協力をし続けてきたと思われます。

したがって、従来以上に地方や地域における企業間の連携レベルは深める必要があるでしょう。特に、一企業の業績だけではなく、業績の悪化が地方や地域に広がっているケースもあるので、多くの企業で手を取り合って、売上高の回復や販売網の再構築に挑むことが重要だと考えます。

また、都会の企業に比べると、地方・地域の企業は情報の発信能力があまり高くないことが考えられます。それは通信網の整備状態やデジタル企業の営業拠点の所在地などに依拠している部分も大きいので、致し方ない面もあるのですが、新型コロナ以後の社会においては、地方・地域の情報を適宜・適切に発信することが、商品やサービスの売上拡大や販売網の構築に大きく資することになります。

 

<まとめ>

新型コロナ感染症の拡大は、中小企業にとっても会社経営や事業推進の考え方を大きく変えなければならない出来事です。従来は自社を中心とした世界における売上拡大や人材確保を考えていればよかったものが、取引先や地域など会社を取り巻く様々なステークホルダーのことを考えて、協力可能な部分には協力をしながら、会社を経営する必要に迫られるようになっています。

技術的には、Web会議やオンラインショッピングなどのデジタルツールの利用が一般的になってきて、皮肉なことに利便性は向上しているように感じることが多いのですが、その一方で、コトラー教授の言う「より人間らしいコミュニケーション」が求められる世の中になっているような気もしています。

中小企業の機動性を十分に発揮して、新型コロナ以後も日本経済の屋台骨を支える存在として、多くの中小企業が発展していくことが日本復興の鍵になります。

今後の戦略について、【緊急】新型コロナ対策を活用した生き残り戦略について考察しますの記事をご覧ください。