事業資金とは、機械設備を購入したり仕入れ代金を支払ったりと会社の事業を運営するために必要なお金のことです。
また、事業を立ち上げるための資金も事業資金に含まれます。
具体的に事業資金にはどのような「お金」があり、その資金を調達する方法について説明します。
1.事業資金とは
事業資金とは、文言の通り、事業のために使われる資金のことです。
会社が行う事業のためには様々なお金がかかりますが、会社の事業目的のために利用される資金を事業資金と言います。
例えば、雑貨屋を開きたい場合には、店舗の敷金や家賃、内外装の工事費用、陳列家具の購入、従業員募集関連の費用、広告宣伝費用、商品の仕入れ費用、など多くの費用がかかります。
これらの費用を賄うお金を事業資金と呼ぶのです。
会社の売上(収益)で事業を運営できれば、資金調達をする必要はないかもしれませんが、一般的には入金と支払いのタイミングがずれていることも多く、資金負担をしなければいけないケースがあります。
また、事業を拡大するために新しい高額な機械を購入したり、工場を拡張したりすることもあり得ます。
このように会社にとって事業資金とは、日々の運営に必要な資金だけでなく、会社の規模を大きくするためにも必要かつ重要な資金であると言えるのです。
2.事業資金の調達方法
事業資金の調達には様々な方法がありますが、調達先や調達方法については以下のように整理ができます。
調達先 | 調達方法 |
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(1)金融機関(銀行・信用金庫など) | ・プロパー融資
・信用保証協会の保証付き融資 ・不動産担保融資
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(2)日本政策金融公庫 | ・運転資金貸付
・設備投資貸付 ・起業資金貸付 ・再生資金貸付
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(3)地方自治体 | ・助成金、補助金
・公的な貸付
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(4)ノンバンクなど
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・ビジネスローン
・不動産担保融資
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(5)消費者金融 | ・ビジネスローン
・個人事業主向け融資
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(6)その他(直接金融) | ・社債発行
・株式発行
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(1)金融機関からの融資
日本では融資を行っている金融機関は多岐にわたっており、どの金融機関から事業資金を調達すればよいのか判断に悩む場合があります。
一般的にはこれまで取引がある銀行などに対して融資を申し込むことになりますが、場合によっては保険会社が融資を行う場合もあるので、その金融機関との取引状況や金利などの条件を比較して検討することをおすすめします。
銀行からの融資でハードルが高いのはプロパー融資です。
銀行が融資対象案件を独自に審査して、直接融資を行うもので保証協会の保証も付かないので保証料もかからずコストを抑えることができます。
しかし、一方で銀行から要求される水準も高く、融資の実行にはこれまでの会社の業績や事業計画に問題がないことが前提となる場合が多いでしょう。
信用保証協会の保証付きの融資の場合は、プロパー融資に比べると保証が付される分ハードルは若干低くなります。
しかし、保証協会と銀行の両方の審査を受ける必要があるために融資の可否決定や実行までには時間がかかることが考えられます。
したがって、事業資金が必要になる時期から逆算してゆとりを持って融資の申し込みを行うことが重要です。
銀行などの金融機関は不動産担保融資も取り扱っています。
例えば、工場の建物や土地、あるいは機械設備などを担保にして資金調達を行う方法ですが、会社の業況には左右されずに担保となる不動産価値のみを評価して融資を行います。
会社の業績が思わしくなくても、会社の資産を利用して資金調達ができる方法として活用が可能です。
しかし、返済ができなくなってしまった場合には担保物件は売却されてしまうことになるので、事業の継続が困難になってしまう場合もあります。
不動産担保融資を利用して事業資金の調達を行う場合には、返済可能性や担保物件の利用可能性などをよく検討して申し込むようにしましょう。
(2)日本政策金融公庫からの貸付
銀行などの民間金融機関からの融資ではなく、日本政策金融公庫からの貸付を利用することを「公的融資を利用する」と言います。
公的融資の場合は、民間金融機関に比べると利率が低く、返済猶予期間が設定されるなど借入人の負担が少ない点が特徴です。
これは、民間資本の充実や地方経済の活性化など、国や自治体の目的に沿った貸付を行うことで政策の実現に寄与するという点があげられるからです。
利用者にとってはメリットが多い公的融資ですが、融資の実行までに時間がかかるのが難点で、案件によって異なりますが、日本政策金融公庫の場合は貸付が実施されるまでには3週間程度はかかります。
したがって、事業資金が必要な時期から逆算して余裕を持って申し込むことが大切です。
日本政策金融公庫からの事業資金調達には、運転資金や設備資金だけではなく、起業するための事業資金調達も可能になっています。
これは「新規開業資金」という融資制度で、新規に事業を開始する人、あるいは事業を開始してからだいたい7年以内の人が利用可能です。
融資限度額は7,200万円(そのうち運転資金は4,800万円)、融資期間は設備資金の場合は20年以内(据置期間は2年以内)、運転資金の場合は7年以内(据置期間は2年以内)となっています。
また、起業再生などの目的で「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」や「企業再建資金」といった融資制度もあります。
どの融資制度を利用すればよいのかは、日本政策金融公庫の代理業務を行っている金融機関の担当者などに相談をされることをおすすめします。
(3)地方自治体の助成金・補助金
地方自治体によって助成金や補助金の申請に必要な書類等は様々です。
自分の会社が利用できる地方自治体の助成金や補助金の制度を良く調べて、どのような書類を準備する必要があるのかを明確にしておきましょう。
ちなみに中小企業庁が運営している「ミラサポ」というサイトでは全国の助成金・補助金に関して様々な情報を一覧することができます。
地方自治体の助成金・補助金はいつでも利用できるわけではなく、申し込みに締切が設けられている場合が多いので、締切に間に合うように準備を進めることが重要です。
(4)ノンバンクなどによるローン
銀行に比べると審査基準もさほど厳しくはないので、事業資金を調達しやすい相手ではありますが、その分金利は高いので、事業としてのリターンと比較して調達するメリットをよく考える必要があります。
銀行からの融資までのつなぎ融資として一時的に利用するような場合であれば、利用する意味はあると考えられますが、常時利用する場合の金利負担は決して軽くはないでしょう。
(5)消費者金融
社長が個人名義で消費者金融から借り入れを行い、その資金を会社に事業資金として貸し付けるようなことも考えられます。
しかし、ノンバンクと同様に貸付金利が高いので、利用目的をよく検討する必要があります。
(6)その他(直接金融)
会社によっては社債や株式の発行を実施して、事業資金の調達を行う場合があります。
社債は融資の変形なので、取引銀行ともよく相談をして、発酵の有無を検討することをおすすめします。
一方、株式発行による資金調達は、会社の経営権の行く先にも影響がある話なので、既存株主も含めて将来の資本政策をどうするかという相談が必要になります。
事業資金調達まとめ
事業資金を調達する場合には、その資金を使ってどのように事業を推進していくのか、利益計画はどう考えているのか、など、事業の将来に対する精緻な見込みを資金提供者にしっかり説明して理解してもらう必要があります。
大切なことは、事業を成功させるためにはこの資金が必要である、ということとお互いのメリットをはっきりさせるということでしょう。