県税事務所で取り扱われている「県税」とはどのような税金なのでしょうか。また、県税事務所ではどのような業務を行っているのでしょうか。県税事務所の実態について詳しく説明します。
1.県税とは
日本国民の義務として、憲法第30条では「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と定められています。税金は大きく国税と地方税に分けられます。国税とはその名の通り、国に納付する税金のことで、地方税は地方公共団体に納付する税金のことです。
そして地方税は、道府県に納付する道府県民税と市町村に納付する市町村税に分けることができます。なお、都税とは東京都の道府県税のことですが、東京都の特別区は市町村ではないために地方税法上では別の扱いとなっています。
それでは神奈川県を例に挙げて県税の種類などについて説明しましょう。
<県税の種類>
県税 | 普通税 | 県民税 | 個人の県民税
・県民税配当割 ・県民税株式等譲渡所得割 |
法人の県民税 | |||
県民税利子割 | |||
事業税 | 個人の事業税 | ||
法人の事業税 | |||
地方消費税 | |||
不動産取得税 | |||
県たばこ税 | |||
ゴルフ場利用税 | |||
自動車取得税 | |||
軽油引取税 | |||
自動車税 | |||
鉱区税 | |||
固定資産税 | |||
法定外普通税 | |||
目的税 | 狩猟税 | ||
水利地益税 | |||
法定外目的税 |
県税は普通税と目的税に大別できます。普通税とは税金の使用目的が特定されておらず一般的な経費に充当することができるものですが、目的税は税金の使用目的が特定されているものを言います。
(1)県民税
➀個人の県民税
個人の県民税は個人住民税とも呼ばれており、県が実施している行政サービスを運営するために利用されている税金で、市町村が市町村税と一緒に課税計算や徴収事務を行っています。
また、県民税配当割とは配当などに課される県税で、県民税株式等譲渡所得割は株式の譲渡益などに課される県税です。
②法人の県民税
法人の県民税は法人住民税とも呼ばれており、県内に事務所などを構える法人が県の行政サービスを利用する際に使われています。
③県民税利子割
県内に所在する金融機関などからの利子に対して課される県税のことです。
(2)事業税
➀個人の事業税
個人が事業を行う際に利用する道路の補修などの行政サービスに必要な費用を負担するための税金です。
②法人の事業税
法人が事業を行う際に利用する道路の補修などの行政サービスに必要な費用を負担するための税金です。
(3)地方消費税
商品販売やサービス提供の際に課される税金で、消費税が課される取引には地方消費税も課されることになります。原則として事業者が納付する税金ですが、価格に転嫁されて最終的には消費者が負担している税金です。
(4)不動産取得税
不動産(土地や建物など)を取得した際に課される流通税の一種です。
(5)県たばこ税
たばこの売却に際して課される税金で、たばこの購入代金に含まれている県税です。県たばこ税の納付者はたばこの製造者や販売者ですが、最終的には消費者に転嫁されています。
(6)ゴルフ場利用税
ゴルフ場利用税とは、その名の通り、ゴルフ場を利用した人に課される税金です。ゴルフ場の運営会社が納付しますが、ゴルフ場の利用代金に税金も含まれているので、最終的には利用者に転嫁されている県税です。
(7)自動車取得税
自動車の取得に対して課される県税です。割賦販売などで販売店に所有権が保留されているような場合であっても、自動車の買主に納税する義務があります。
(8)軽油取引税
バスやトラックなどの燃料である軽油の購入をした人に対して課される税金です。なお、ガソリンの場合は揮発油税・地方揮発油税として国税になりますが、地方揮発油税は全額地方公共団体に譲与されます。
(9)自動車税
自動車の保有者に対して課される財産税の一種ですが、道路の補修などの費用に充当される性格を保有している県税です。
(10)鉱区税
鉱区税とは、鉱区が所在している道府県で、鉱区の面積を課税標準として、鉱業権者に課される税金のことです。
(11)固定資産税
固定資産税は、本来は市町村税なのですが、財政上の公平性を保持するという観点から、一定額を超える大規模な償却資産については県が課税するものです(神奈川県の場合)。
(12)法定外普通税
法定外普通税とは、地方税法に定められている税目に含まれていない地方税のことで、普通税であるものを言います。
(13)狩猟税
狩猟者の登録をした人に課される県税で、鳥獣保護や狩猟に関する行政サービスに対して充当されています。
(14)水利地益税
水利地益税とは、地方自治体が、水利事業や林道事業などの土地または山林の利益となるような事業の実施費用に充当することを目的に、当該事業によって特に利益を受けるような土地または家屋に対して課される税金のことです。
(15)法定外目的税
法定外目的税とは、地方税法に定められている税目に含まれていない地方税のことで、目的税であるものを言います。
2.県税事務所の業務
1.県税とは、で説明したような各種県税の賦課や徴収を行っているのが県税事務所です。神奈川県税事務所を例にあげると、4つの部署でそれぞれ担当業務を行っているようです。
(1)管理課
担当している主な業務は、経理及び財産の管理に関すること、県税の納付に関すること、還付及び充当に関すること、納税証明に関すること、自動車二税の減免に関すること、となっています。
(2)納税課
担当している主な業務は、徴収に関すること、滞納処分に関すること、となっています。
(3)事業税課
担当している主な業務は、個人事業税の課税に関すること、法人県民税・法人事業税・地方法人特別税の課税に関すること、となっています。
(4)不動産取得税課
担当している主な業務は、不動産取得税の課税に関すること、となっています。
以上のように、道府県によって組織構成は異なっている場合はありますが、県税事務所では県税に関する業務を行っています。
また、その一方で県税に関する様々な納税者からの疑問に答えるためにQ&A集のような冊子などを作成している県税事務所も数多く見受けられます。このQ&A集は県税事務所のホームページなどに掲載して利用者の利便性に配慮しているようなケースも増えています。
また、県税事務所は県内各地に事務所を設けている場合が殆どですので、所在地に近い事務所で納税証明書などの書類を交付してもらうことも可能です。自動車税の場合であれば、自動車税管理事務所や駐在事務所でも、納税証明書の交付を取り扱っています。
どうしても納税証明書を受け取りに凝れないような場合には、道府県によって取り扱いは異なりますが、郵送での請求も可能です(神奈川県の場合)。
神奈川県の場合は利用者の利便性を高めるために、平成26年4月に、県税事務所を18事務所から12事務所に再編しました。また、再編と同時に一部の県税事務所の取扱事務を変更しました。
このような場合には、県税事務所のホームページなどで、新しい事務所の名称・所管地域・住所・連絡先、などを周知するように努めています。
(参考:神奈川県の県税事務所等一覧、http://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a002/001.html#saihen)
まとめ
世の中にたくさん税金の種類はありますが、大きくは国税と地方税に、そして地方税も道府県税と市町村税に、それぞれ分かれています。そのうち県民税は道府県を運営するうえで非常に重要な財源となっています。
地方交付税交付金にように国から譲与される財源もありますが、独立した地方自治という観点からは県税の適切な納付は極めて大切なのです。観光資源が多い県、大企業が集積している県、移住者が多くて人口増加が顕著な県、など各道府県の状況によって税収の規模や伸び率はまちまちではあります。
しかし、各地方自治体は税収を上げるために、いかに自分の道府県が魅力的なのかを知ってもらうために知恵を絞って考えていることは間違いないでしょう。