PR

債権者の権利とは?取引の際に気を付けておくポイントを詳細解説

債権者の権利ときおつけておくポイントのイメージ画像 起業家の基礎知識

債権者とは文字通り債権を持っている人のことを言いますが、「債権」とはどのような権利なのでしょうか。そして債権者にはどのような区分があって、具体的にどのような権利を保有しているのでしょうか。本稿では「債権者」について詳しく説明します。

 

1.債権者とは

債権者とは「債権」を保有している人のことです。そして、債権とは、債務者(特定の人)に対して一定の給付を行う権利のことを言います。例えば、銀行などの貸金を融資した金融機関は債権者となり、融資を受けた借入人は債務者となります。

上記の融資(法律的には金銭消費貸借契約、と言います)以外にも、「債権者⇔債務者」という関係が生じるような取引はたくさんあります。我が国の民法においては債権の発生原因を、(1)契約、(2)事務管理、(3)不当利得、(4)不法行為、の4種類と定めています。

(1)契約

契約は最も身近な債権の発生原因と言えるのではないでしょうか。例えば、不動産売買契約であれば家の買主は家を買って代金を支払う、その一方で家の売主は家を売って代金を受け取る、という契約になります。

「家」を軸にして考えれば家の売主は債務者で家の買主は債権者ですが、「売買代金」の観点から考えれば家の売主(売買代金を受け取る人)は債権者で家の買主(売買代金を支払う人)は債務者となります。このように双方が債務(債権に対する反対給付)を負う契約を双務契約と言います。

その他にも、典型契約(民法で定められている典型的な契約)として、贈与契約、売買契約、交換契約、消費貸借契約、使用貸借契約、賃貸借契約、雇用契約、請負契約、委任契約、寄託契約、組合契約、終身定期金契約、和解契約、の13種類があります。

(2)事務管理

事務管理とは、法律上の義務がない人が他人のために事務の処理を行うことです。例えば、入院中の友人の代わりに公共料金の支払いを立て替えるような行為を言います。この場合、事務管理を行った者に対して、本人はその費用を償還する義務があります。

(3)不当利得

不当利得とは法律上の原因(正当な理由)もなく、他人の財産などから利益を受けて他人に損害を与えることを言います。不当利得を得た者は、損失を蒙った人に自分が受け取った利得を変換する義務が生じます。

(4)不法行為

不法行為とは、違法に他人に対して損害を与える行為のことです。不法行為を行った者は損害を被った者に対して、その損失を賠償する義務があります。

 

2.債権者の種類

債権者は大きく分けて(1)一般債権者と、(2)担保債権者、になります。

(1)一般債権者

一般債権者とは、債権に担保が含まれていない債権を保有している人を言います。

(2)担保債権者

担保債権者とは、一般債権者とは異なり、担保を含んだ債権を保有している人を言います。債権者にとって、最も重要なことは債権がきちんと履行されるかどうかです。例えば、具体的に言うと、ローンの返済日にきちんと貸金を返してくれるかどうかが重要なのです。

そこで、例えば金融機関が融資をする際には債権保全の方法として、借主が保有する土地に抵当権を設定して、もし返済がなされない場合にはその土地を債務者(融資金の借主)から取り上げてしまいますよ、という担保を取ることが一般的です。

つまり、一般債権者に比べると担保債権者の方が債権に対する返済の可能性が一般的には高い、と考えることができます。

しかし担保の対象によっては、価格が大きく変動してしまうもの(上場株式など)もあるので、常に担保価値の変動には注意を払っておくべき必要があるケースもあります。

 

3.債権の目的による分類

債権の目的物によって債権者が請求するものも異なります。債権はその目的によって、(1)特定物債権、(2)種類債権、(3)金銭債権、(4)利息債権、(5)選択債権、の5つに分類されます。

債権の種類(目的別) 説明
(1)特定物債権 特定物債権とは、特定の「モノ」を請求する権利のことです。主に売買契約で成立しますが、客が品物を購入することで、モノの所有者が債務者から債権者へと移ることになります。他にも土地の売買による引き渡しなどが考えられます。
(2)種類債権 種類債権とは、目的としているモノの種類と数量を指定した債権のことを言います。特定物債権の場合は、例えば「この車」と代替が効かないモノを対象としますが、種類債権の場合は車種と台数が特定されていれば問題はありません。極端なことを言えば、もし車種と台数が指示通りであれば、燃費がとても悪い車に当たってしまっても文句は言えない可能性があります。
(3)金銭債権 金銭債権とは、金銭の請求を行う債権のことです。例えば働いて(労務の提供)給与を貰う権利は金銭債権と言うことができます。
(4)利息債権 利息債権とは、貸したお金などの対価として利息を請求することができる権利のことです。一般的には銀行からお金を借りたら返済する時には利息も請求されます。金融機関に返済する貸金の元金は金銭債権ですが、利息分は利息債権となります。
(5)選択債権 選択債権とは、複数種類の物や金銭などの中から選択して請求できる債権のことです。原則として、どのような債権で支払うか(給付するか)の選択権は債務者側にあります。

 

4.債権者の権利

債権者に対して、問題なく債務者からの給付が行われれば良いのですが、返済期日に間に合わない、お金が足りない、など反対給付の実施の際には様々な問題が生じることが考えられます。そこで債権者には以下のような権利(効力)が認められています。

債権者の権利 内容
(1)給付保持力 給付保持力とは、債務の履行によって給付を保持しても不当とはみなされない効力のことです。わかりやすく言うと、裁判で以下のような方法を用いて所有を移してしまった場合でも問題はない(不当利得にはならない)という効力のことです。債権の必要最小限の効力とされています。
(2)訴求力 訴求力とは、訴訟手続きによって、裁判所に自分の債権の存在を訴えることができる効力のことです。もし債務者が債権者の請求に応じなうような場合には、訴訟を提起しても十分に認められる権利があるということです。法律的には、訴訟手続で債権を実体法上の権利として確認できる効力、と言い換えることができます。
(3)執行力 執行力とは、裁判の判決を得ることによって、その内判決容を執行することができる効力のことです。これは、確定判決を債務名義に執行しうる効力、とも言うことができます。
(4)貫徹力 貫徹力とは、債権の内容を強制的に実現することができる効力のことです。これは、本来の給付をそのまま強制的に実現する効力、とも言い換えることが可能です。
(5)掴取力

(かくしゅりょく)

掴取力とは、債権の内容を実行する場合には、財産を差し押さえることも可能である、という効力のことです。つまり財産の差し押さえと換価という手段で給付を実行させる権利のことです。

上記のように債権者には様々な権利(効力)がありますので、原則として、債務者はその債務から逃れることは難しいとされています。

 

まとめ

お金は借りた者勝ち、のような言葉が言われることがありますが、上記のように債権者は法律的には様々な方法で保護されています。しかし、普段から相手方の信用能力(支払能力)を踏まえたうえで取引は行うべきですし、いざという場合の債権保全(担保設定)にも留意しておく必要があります。

長期間の取引の中で強固な信頼関係を構築できているような相手先であれば比較的安心できるとは思われますが、現在のように環境変化のスピードが速く、急激に状況が変わってしまうような中では、債権者として常にアンテナを高くしておくことが大切でしょう。