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未払法人税の定義と会計処理について詳細説明します

未払い法人税の会計処理をイメージする画像 起業家の基礎知識

未払法人税とは、言葉通りの意味であれば、まだ払っていない法人税のことですが、具体的にはどのような状態のものを指すのでしょうか。また、未払法人税の会計処理は期末などにどのように行うのでしょうか。詳しく解説します。

 

1.未払法人税とは

会社の事業年度における利益が確定したら、その利益に基づいて申告書上で税額を計算して、その税額を「未払法人税等」という勘定科目で流動負債に計上します。相手先の勘定科目は「法人税・住民税及び事業税」という費用勘定になります。

ただし、この「未払法人税」とは、納めなければならない法人税を期日までに納めていない、ということではありません。事業年度の利益は事業年度が終了してはじめて確定するものなので、事業年度末の時点においては、法人税の計算も納付も不可能なのです。

したがって、未払法人税等とは、「法人税、住民税(道府県民税及び市町村民税)及び事業税の未払額」を言いますが、『決算時において』今期の納税額を計上することになるのです。なお、税務上の取り扱いは、法人税法上、未払法人税等は「損金算入納税充当金」として、損金には算入されません。

ここで、未払法人税等を計上した場合には、利益も変わってくるので、申告書も修正が必要になります。そうなると、申告書を修正した場合には納める税額も変わってくるのでは、と考えるかも知れませんが、実は税額は変わらないのです。下記の例で説明します。

損益計算書の内容は以下の通りとします。

確定利益                            :100(未払法人税等の計上前)

税額                                   :30(未払法人税等の額、確定利益100を基に計算)

差引最終利益       :70(未払法人税等の計上後)

ここで未払法人税等を計算した結果として、法人税申告書別表4は以下のように変更になります。

(参考:国税庁ホームページより、「別表四 「所得の金額の計算に関する明細書」、https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/tebiki2002/02/04.htm

「未払法人税等の計上前における申告書の先頭に記載される利益は100だったものを、未払法人税等の計上後には申告書の先頭に記載される利益を70に変更して、未払法人税等30を加算します。」

未払法人税等を計上した結果として、利益額は減少しますが、その減少額を加算することになるので所得税の金額には影響なし、ということになるのです。

また、別表5(1)と(2)も記載内容の変更が必要です。

(参考:国税庁ホームページより、別表五(一) 「利益積立金額及び資本積立金額の計算に関する明細書」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/tebiki2002/02/05_1.htm、別表五(二) 「租税公課の納付状況等に関する明細書」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/tebiki2002/02/05_2.htm

具体的には、別表5(1)における「繰越損益金」と「納税充当金」(後述)が変更になります。また、別表5(2)においては「期末納税充当金」が修正になります。

中間申告で納税している場合には、損益計算書上の「法人税・住民税及び事業税」にその金額が含まれていますが、この額には未払法人税等は含まれていません。しかし、法人税申告書別表4(上記参照)上においては、加算が必要となります(ただし、事業税は不要です)。

また、月次決算において未払法人税等を概算で計上している場合には、法人税申告書別表4において、概算した計上額を加算して税額を計算して、確定した税額と概算した税額との差額を、損益計算書と法人税申告書別表4の両方で調整します。ただし、この方法は複雑ですので、概算計上額をいったん取り消してしまった方が簡単でしょう。

 

2.未払法人税の会計処理

法人税や住民税は、その会計年度に対応するものなので、一般的には、期末に未払法人税等の仕訳が必要となります。期末に未払法人税等の仕訳を計上するプロセスは以下のようになっています。

(1)決算において棚卸や減価償却費の計算を行って、損益を確定させます。

(2)確定した損益(税引前当期純損益)を用いて、法人税等を計算します

(3)上記(2)で計算した法人税等の金額を使って、未払法人税等の仕訳を入力します。

例として、税引前当期純損益に基づいた法人税等の金額が150,000円だった場合の仕訳を以下のように示します。

(決算日の仕訳)

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額  
法人税、住民税及び事業税 150,000 未払法人税等 150,000 確定法人税等

(4)未払法人税等の仕訳を入力すると、後の損益((税引後)当期純損益)が確定するので、確定申告書や決算報告書などを作成して、申告をします。

 

3.未払法人税と納税充当金

「納税充当金」とは税法上の言葉で、会計上の言葉である「未払法人税」に相当するものです。法人税を計算する場合には、会計上の利益金額に基づいて、課税所得を計算します。会計上は、未払法人税は費用として収入から控除されるので、税法上は損金には不算入とするべき支出となるので、控除の必要があります。

具体的には、確定申告書の別表の中に、「納税充当金」という言葉があります。経理部門の人にとっては、未払法人税という勘定科目は業務上目にする機会が多いので、馴染み深いものだと思われますが、税務と経理の組織が分かれている企業も多くなっている中では、「納税充当金」に対する理解があまりない人も多いのではないでしょうか。

以下に、納税充当金に関する実務について、説明します。その前に、前提となる税効果会計の概念を解説します。

(1)税効果会計

税効果会計とは、「企業会計上の資産または負債の額」と「課税所得計算上の資産または負債の額」に相違がある場合に、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(これを、法人税等、と言います)の額を適切に期間配分して、当期純利益(法人税等控除前)と法人税等を整合させることを目的とした手続きのことです。

企業会計における当期純利益(税引前)と課税所得の金額には、計算目的や計算方法の違いによって通常的に差異が発生します。そこで、税金費用を納税額方式を用いて計算した法人税等をのままにしておくと、当期純利益の額(税引前)と法人税等の金額が一致しなくなってしまいます。これを合理的に対応させる手続きを「税効果会計」と呼ぶのです。

当期純利益(法人税等控除前)と法人税等が対応していない理由には、企業会計における収益または費用が計上されるタイミングと、税法における益金または損金算入のタイミングが異なっていることによる、という「期間差異(一時差異)」と、これ以外の「永久差異」があります。

上記の差異のうち、当期純利益(税引前)の金額と法人税等の金額を整合させるために調整可能なものは「期間差異(一時差異)」のみです。

一時差異には、その一時差異を解消する際に、当該期間の課税所得を減ら効果がある「将来減算一時差異」と、その一時差異が解消する際に課税所得を増やす効果がある「将来加算一時差異」の2つがあります。

(2)納税充当金に関するの留意点

税効果会計基準においては、個別財務諸表で一時差異が発生する場合として、

①収益又は費用の帰属年度が相違する場合

②資産の評価替えにより生じた評価差額が直絶資本の部に計上され、かつ課税所得の計算に含まれていない場合

の2つがありますが、上記①の場合が多く発生します。

①によって発生する一時差異は、確定申告書上においては、その全てを前述した「別表四」と「別表五」の明細書に記載しなければいけません。なお、別表四は税務上の損益計算書、別表五は税務上の貸借対照表、にそれぞれ相当するものと考えられます。

別表四が税務上の損益計算書である、というのは、法人が確定決算をうけて損益計算書に計上された当期純利益に基づいて所得金額を計算する明細書であるからです。その計算プロセスにおいて処分欄の留保に記載されたものは、利益積立金額の変更を発生させることになるので、こ別表五(一)の当期中の増減または当期利益処分等による増減に記載されることになります。

 

<まとめ>

未払法人税とは、前述したように、貸借対照表上の流動負債の一つで、法人税、住民税(道府県民税、市町村民税)、事業税、の確定申告における、納付税額の未納付金額および中間申告の納付金額を「一時的に」処理するための勘定科目です。

貸借対照表上に「未払法人税等」として表示されている金額は、予定納税や中間申告による納税もあるので、当期の法人税等の金額から中間納税額を控除した金額となる点には注意が必要です。