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売上債権回転率とはどのような指標?求め方や見方について説明

売上債権回転率の求め方をイメージする画像 起業家の基礎知識

商取引においては、商品を売ったら完了、というわけではなく、きちんと代金を回収することで、一連の取引は完了します。そこで、どのくらいの期間で販売代金などを回収できているのか、を把握することはとても重要です。売上債権回転率の定義や算出方法、分析の仕方などについて解説します。

 

1.売上債権回転率とは

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売上債権とは、販売(納品)は完了しているのに、実際にはまだ代金を受取っていない売上、のことを言います。会計上は売上が計上されているのに、現金(キャッシュ)は全く増えていない状態である、とも言えます。

販売代金が回収できないと、売掛金や売上手形ばかりが膨らんでしまい、キャッシュが不足してくるので、自社の仕入れなどの支払に支障をきたす可能性が高まります。最悪の場合は、資金繰り倒産してしまう危険性すらあるのです。したがって、売上債権の回収は極めて重要な業務と言えるのです。

この、売上債権をどのくらいの期間で回収することができているのか、を把握する指標のことを「売上債権回転率」と言います。売上債権回転率の求め方は、

売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権

となっており、原則として、回転率が高いほど売上高に占める売上債権が低いということを表しており、回収が効率的にできていることを示しています。

また、類似した指標として、「売上債権回転期間」というものもあります。売上債権回転期間は、回収するのに必要な月数(日数)を表している指標です。計算式は、

売上債権回転期間 = 売上債権 / 売上高 ÷ 12ヶ月

となっており、回収までに平均何ヶ月かかっているのかを把握することができます。例えば、顧客別に売上債権回転期間を計算すれば、支払までの期間が短い、会社にとっての優良な顧客を見つけることが可能です。

なお、適正な売上債権回転率とはどのくらいなのでしょうか。「1年に6回転が理想的」「1年に3回転以下は危険な状態」などと言われることもありますが、実際には業種が異なれば大きな差があります。絶対的な数値よりも、同業における他社比較や、前年度や前々年度と比べた売上債権回転率の変化の方を重視しましょう。

 

2.売上債権回転率の分析

売上債権回転率は、売上債権の回収がどれくらい効率的に行われているかを表している指標で、数字が大きいほど資金が効率良く循環していると言うことができます。

売上債権回転率の分析は、貸借対照表を活用した安全性分析のひとつの手法ですが、重要なポイントとは、指標のトレンドを見極めて、分析した結果に応じた対策を実施して、経営を改善していく点にあります。

また、1期だけといった、ある1時点のみを点で捉えるのではなく、複数の決算期(2~3期くらい)通じて推移を把握したり、各期の平均値を利用して全体の流れを把握したり、といった分析が有用だと考えられます。

もし、売上債権回転期間が長くなってきている状態であれば、その原因を現場で確認したうえで確実な対策を実施することで、キャッシュ(現金)が残りやすい企業体質へと強化することができるでしょう。

本業でキャッシュを残すためのポイントは以下の4点です。

・利益を出すこと

・売ったらお終いではなく、早期回収を徹底する

・支払条件の交渉は随時行うものとする

・在庫管理を徹底すること、がお金の管理の徹底につながる

(1)売上債権を回収できないことの恐ろしさ

売上債権回転率が低い、ということは、売上債権の中に現金化(キャッシュ化)できる見込の低いものが多い、ということです。また、売上債権回転率が低くなってきている状態を放置していると、最悪の場合は、取引先から「代金を支払わなくても何も言ってこないような会社だ」と認識されることになり、ますます回収が難しくなってしまう可能性が高くなるでしょう。

このような場合は、他の仕入先などの取引先に対して自分の会社が支払うための資金が不足してしまい、自社の信用を失ってしまう、ということにもなりかねません。また、外部の取引金融機関や投資家などから、

・返済能力が低い (緊急時に現金同物としての資産が少ない)

・取引先の管理ができない会社(だらしない会社)である

・キャッシュをあまり必要としていないような成長性が低い会社である

と言ったネガティブな印象を持たれてしまいかねないとうリスクがあります。

(2)会社の経理部門のスタンスが問われる

前述したように、売上債権回転率の高低は、会社としての経営姿勢を把握することが可能ですが、日常業務においては、会社の経理部門が、どのくらい資金繰りや取引先の与信管理まで目を配っているのか、また、取引先と直接のやり取りを行っているのか、といった業務姿勢を問われることになります。

それでは、売上債権回転率を改善させるためには、どのような方法があるのでしょうか。先ず必要なことは、売上債権回転率を下げている原因を把握することです。そのためには、前述したように、売上債権を顧客別に分解してみることから始めてみましょう。

次に、顧客別に売上を把握したら、どのくらいの期間(何ヶ月、あるいは何日)で売上債権(現金)を回収することができているのか、売上債権回転期間を計算します。例えば、同じ10万円の売上債権であっても、X社に対しては来月末に支払期限が到来する売上債権を保有している、のに対して、Y社に対する売上債権は先月末までに支払わなければいけない売上債権である、といった売上債権の質の差異を把握することが可能になります。

このように、経理部門が毎月、売上債権回転率の指標推移を把握していれば、例えば、突然売上債権回転期間が長くなった会社を見つけることが可能です。このようなケースでは、取引先の経営状態が悪化している可能性が考えられるので、状況を確認したうえで、必要に応じて取引を中止するといった適切な対策を実行することが可能になります。

次いで、回収を確実にするためのルールを定めておいて、実行することも重要です。例えば、

・支払期限を○日過ぎたら、督促の連絡をする。

・督促の連絡実施から、さらに○日が経過したら、再度連絡をする。

・再度の督促から○ヶ月経過した取引先に大しては、「内容証明」を送る。

・その他、少額訴訟などの法的手段も理解したうえで、ルールに盛り込んでおく

督促の連絡は面倒だと感じるかもしれませんが、相手の立場からすると、たとえ1日過ぎただけでも督促のとメールが送られてきた場合には、「しっかりしている会社だから、すぐに払わなくてはいけない」という気持ちになると思われます。

そして、さらに回収に対する対応が悪い取引先に対しては、会社の法務部門や顧問弁護士などとも協力しながらし、与信枠の引き下げや取引中止なども検討するべきでしょう。このように、経理部門が部門を跨いで会社全体に働きかけていくことによって、商品はどんどん販売しているのに代金は払ってもらえていない=損害を被っている、ということを防ぐことも可能になるのです。

(3)効率性の意識から本物の利益へ

これまで述べてきたように、売上債権を回収できない限りは、いくら会計上は利益が出ていたとしても、それは見せかけの利益でしかありません。経理部門が売上債権を管理するスタンス次第で、会社の利益はキャッシュ(現金)を伴う本物の利益になる、ということができるのです。

売上債権回転率の分析を通じて、必要であれば、この指標を改善していくことをスタート台にして、資金繰りなどの会社の将来像を見据えたアクションを実行できる経理部門へとステップアップしましょう。

 

<まとめ>

売上債権回転率は、会社の財務安定性を把握するために有用な指標ですが、売上債権回転率を改善するための施策の検討と実施による経営への好影響が期待できることが、この指標の最大の活用理由であると言えます。