新型コロナ感染症は依然多くの人々の社会活動に影響を与えていますが、その中でもテレワークの推進は働き方を大きく変えることに繋がっているものと考えられます。テレワークも単なる仕組みの導入に留まらず、いかに効率的に仕事を進めることができるのか、という本質的な検討が行われてきました。
企業活動や国民生活が停滞して経済成長が鈍化している中においては、テレワークの導入のような手法に限らず、無駄を極力排除した業務の効率化を図ることで筋肉質な経営体制を構築することがポストコロナの時代には求められます。
本稿においては、新型コロナ感染症が企業活動や働き方に与えた影響、業務効率化の必要性、具体的な業務効率化の考え方、業務効率化のメリットと留意点、中小企業における業務効率化の事例、などについて解説します。
1.新型コロナ感染症が企業活動や働き方に与えた影響
新型コロナ感染症は多くの会社や労働者に影響を与えており、外出自粛、ソーシャルディスタンスの確保、3密回避、など様々な行動制限が実施されてきました。そのため、宿泊業や飲食業を中心に多くの企業で業績が悪化して、倒産件数も2020年9月9日時点で506件(出典:帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産」)に上っています。
このような逆風の環境下において、いかにして効率的に事業を進めていくべきか、いかに効率的に働くことが可能なのか、といった点を熟慮するような社会になってきた、ということができるでしょう。
その最たる例がテレワーク導入の増加でしょう。職場や通勤地などの新型コロナ感染を予防するために、自宅にいながらにして仕事をすることが可能な労働環境を整備することが企業の大きな目標となってきました。
テレワークの導入において難しい点は、機材やソフトの準備以上に、労働時間の把握や普段のコミニュケーションの確保、といった運用面でした。導入前は多くの企業が不安を抱えた状態でのスタートだったようですが、既に導入して数か月が経とうとしている現在では、コミニュケーションなどに対する不安は残ってはいるものの、押しなべて従業員からは肯定的な声が聞かれます。
例えば、混雑している電車に乗って通勤しなくてもよい、(通勤時間がなくなって)余暇の時間が増えた、家族との会話が増えた、自宅で仕事に集中できるので効率が上がった、というものです。もちろん、自分自身で時間管理をしっかりと行う必要があるので、そういった面での苦労はあるかもしれませんが、新型コロナによる数少ない良かったと思われる点ではないでしょうか。
ある意味では、新型コロナが契機にはなっていますが、テレワークも業務効率化のためのひとつの方法だということが可能です。通勤地獄から解放された従業員は日々スッキリとした気持ちで仕事に臨むことができますし、無駄な会議の見直しにより開催頻度も適切化されますし、場合によってはオフィスの存在意義にまで踏み込んだ検討が実施されている企業もあります。
テレワークのみならず、企業として、あるいは従業員として、日々の業務を効率化することは、業績の向上、働きやすさの確保、といったメリットへと繋がることになるのです。つまり、新型コロナ感染症は「待ったなし」の業務効率化を迫るきっかけになっているのではないか、とも考えられるのです。
2.業務効率化の考え方(ECRSの原則、PDCAサイクル、KPT、OODAループ)
(1)ECRSの原則
業務を効率化するには様々な方法が考えられますが、それらの中でも「ECRSの原則」という考え方に基づいて業務改善を推進する方法があります。「ECRSの原則」とは、「イクルスの原則」と呼ばれており、業務のプロセスを4つの観点から改善していくフレームワークのことです。
<ECRSの原則>
原則 | 考え方 |
E(Eliminate:排除) | この業務は本当に必要なのか(なくすことはできないのか)? |
C(Combine:結合と分離) | 他の業務と一緒にやることはできないか? 別々にやった方が良くないか? |
R(Rearrangement:入替・代替) | 他のタイミングでやれないか? 別の人がやった方が効率的ではないか? |
S(Simplify:簡素化) | やり方が複雑すぎないか? もっと簡単にできないか?(ITの活用も視野に) |
①E(Eliminate:排除)の事例
E(Eliminate:排除)とは、業務におけるゴール(最終目標)を見直して、不必要な業務やなくしても問題のない作業などを検討することです。業務の最終目的をあらためて定めたうえで、不要なプロセスは排除するようにします。
具体的には、
- 不要な会議の開催を止める
- 「議題X 〇〇部からの発表」は実施しないものとする
- 部長以外の参加を不可とする
といった業務改善の方法が考えられます。
②C(Combine:結合と分離)の事例
C(Combine:結合と分離)とは、いくつかの業務を同じタイミングで作業・処理することが可能かどうかを考えることです。同時に実行できる処理・作業、あるいはまとめて実施することが可能な業務、に関しては手順などを統合して効率化するようにしましょう。
具体的には、
- 部長会議と課長会議を同時に開催するようにしてみる
- 会議で使用する資料は、指定された決まったサーバーに集約する
- プレゼン資料の形式はPDFに統一する
などの改善手段を挙げることができます。
③R(Rearrangement:入替・代替)の事例
R(Rearrangement:入替・代替)とは、業務の工程・手段・方法などの処理や作業の順番を変更することで、業務効率の改善が図れるかどうかを検討する方法です。工程や方法などを変更することによって、大幅な時短短縮などが可能になる場合があります。
具体的には、
- 会議の議長を交代してみる
- 遠隔地の支店や支社のメンバーについては Web会議での参加を許可する
- これまで夕方に実施していた会議を朝一番へと開催時間を変更する
といった業務改善方法などが挙げられます。
④S(Simplify:簡素化)の事例
S(Simplify:簡素化)とは、業務内容の一部をなくしてしまっても(省略しても)、同じような水準の成果を出すことが可能かどうかを検討してみることです。時間の短縮はもちろん、精神的な負担や肉体的な負担も削減可能です。
上記の4つの観点については、「E(Eliminate:排除)」→「C(Combine:結合と分離)」→「R(Rearrangement:入替・代替)」→「S(Simplify:簡素化)」、の順番に検討することが重要となります。
例えば、「サービスの提供が過剰状態にある」ようなケースでは、「E(Eliminate:排除)」と「S(Simplify:簡素化)」の2つ切り口での検討が必要になりますが、このような場合にはそれぞれで2回検討することが必要になります。異なった視点で検討することも重要なのです。
業務改善には完了という概念はなくて、今現在は問題がない業務の進め方であっても数年後にはどうなっているのかは全くわかりません。ましてや新型コロナ以降の新たな社会生活を見据えて業務改善を行うべき「今のタイミング」においては、これまで課題がなかったような業務にもメスを入れてみることが大切でしょう。
(2)PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを継続的に繰り返すことで業務を改善して品質を向上していく、というフレームワークのことです。
PDCAサイクルは国際的な品質基準を定めたISO(国際標準化機構、International Organization for Standardization)でも取り入れられている考え方で、多くの企業においても活用されています。
PDCAサイクルの利点としては、目標ややるべきことが明確になる、具体的な行動に集中しやい、課題や不足しているポイントを把握くしやすい、といったポイントを挙げることができます。
このようなメリットがある一方で、PDCAサイクルの考え方は古い、失敗しやすい、といった批判があることも事実です。PDCAサイクルの、Plan、Do、Check、Action、の各アクションにおける失敗の要因を分析してみましょう。
①Plan(計画)における失敗の理由
Plan(計画)における失敗の理由は、到達するべきゴール(到達目標)までの具体的なアクションが最後まで描き切れていないこと、現状把握や現状分析が表層的なものに留まっており深堀できていないこと、などを挙げることができるでしょう。
PDCAは仮説検証のサイクルでもあります。したがって、最初の仮説がいい加減では、その仮説に立脚した対策の検証作業自体が成立しない可能性が高いと言えるのです。いくら仮説である、とは言っても具体的なアクションまでイメージすることが可能な計画になっているかどうか、という点はとても重要なのです。
②Do(実行)における失敗の理由
Do(実行)の失敗の原因としては、頑張ればできる、やるしかない、といった非科学的な精神論を振りかざして無計画にプランを実行しようとすることが考えられます。また、計画の進捗が見えにくくなっていることもDo(実行)が失敗する要因となります。
長期的な計画であれば、短期間に細分化して改善活動の進捗を把握しやすくする、といった工夫が必要になるでしょう。
③Check(評価)における失敗の理由
Check(評価)における失敗の理由としては評価基準が定まっていない、曖昧な基準になっていることが考えられます。自己評価は甘くなってしまったり、必要以上に厳しくなってしまうことがあったり、客観的な評価を実施することが難しいものです。
だからこそ、定量的な評価基準を設定したり、数値目標を設けたり、という具体的な目標設定をすることが重要になるのです。それも難しいような場合には、外部の目による客観的かつ厳正な評価方法を取り入れることが必要になるかもしれません。
④Action(改善)における失敗の理由
Action(改善)における失敗の理由としては、具体的なアクションを確実に実行しているかどうか、という点が重要になります。例えば、業務改善のために可能性のある方法は全てトライしてみること、業務改善に向けたアクションを行っても効果が全くなければ課題そのものを見直してみること、途中で投げ出すことなく実行・検証・再設定を何回でも繰り返してみる、といったアクションを実行することが大切です。
(3)KPT(Keep、Problem、Try)
KPTとは「振り返り」という考え方を活用して業務の改善を図るための考え方のことで、(1)K(keep、良かったこと、今後も継続すること)、(2)P(problem、悪かったこと、これからはしないこと)、(3)T(try、今度から挑戦すること)、の3つの観点から現状分析をするフレームワークのことです。
「振り返り」を実施する場合には、
keep | try |
problem |
のような表を使用します。
課題になっている日常の業務を振り返ってみて、Keep=これまで問題はなく良かったので今後も継続的に実行すること、Problems=改善が必要である業務上の問題、Try=課題を解決するためにこれから必要なアクション、といったものを上記の表中に書き出します。
KPTを日常的に行っていると、常に改善を実施する、という状況を生み出すことが可能になります。つまり継続的にKPTを実践することで業務改善の品質も向上することが期待できるのです。
(4)OODAループ(Observe、Orient、Decide、Act)
OODAループとは「ウーダループ」と呼ばれており、Observe(観察)、Orient(意味付け・方向付け)、Decide(意思決定)、Act(実行)、の4つの観点から成り立っている意思決定のプロセスのことです。
OODAループはPDCAサイクルとよく比較されますが、PDCAサイクルが生産現場などでの業務改善を目的に考え出されてきたのに対して、OODAループは明確なプロセスがない意思決定のようなケースに活用できるフレームワークです。
PDCAサイクルが「How」を検討する際に効果的である一方で、OODAループは「What」を検討する際に効果的である、と言われています。
①Observe(観察)
Observe(観察)とは、単に「見る」ということではなく、必要な情報を収集する、という意味があります。自分や相手が置かれている現在の状況、マーケットの状況や動向、などを把握することです。
②Orient(意味付け・方向付け)
Orient(意味付け・方向付け)はOODAループの中で最も重要なステップと言われており、Observe(観察)によって得た情報を分析して仮説を構築するステップになります。ここで構築した仮説次第で今後の具体的なアクションが決定される、という意味において、需要なステップであると言われているのです。
③Decide(意思決定)
Decide(意思決定)とは最後のステップであるAct(実行)で具体的に何を実行するのかを決定するステップです。前段階のOrient(意味付け・方向付け)では方向性しか決まっていないので、複数の選択肢がここでは生じることも十分に考えられます。
④Act(実行)
Act(実行)では決めた行動を実践することになるともに、このステップが完了すると次のOODAループが始まることになります。最初のOODAループの結果が思わしくなくても、次のループでの反省点として活かすことが可能になりますので、繰り返してOODAループを回すことが重要なのです。
3.業務効率化のステップと留意点
業務効率化のためには、いきなり個別の課題に対応してしまうと、それこそ非効率な業務改善に陥ってしまう危険性があります。そこで、以下のようなステップを意識して業務改善を進めることが重要になります。
(1)現状把握
- 業務における課題を棚卸してみる(何を具体的に改善したいのか、問題点を明確にする)
- 明確に業務の「見える化」「可視化」して、対象となる業務を特定する(業務分析をしてみる)
- 詳細な業務分析の実施(業務を定量化・数値化してみることで、どのような点に無理や無駄が生じているのかを探す出す)
- どのような手法やツールを利用することができるのか、ということを(このステップでは粗々で良いので)考えてみる
業務のフローチャートやマニュアルなどが整備されているような業務に関しては、業務の「見える化」「可視化」の観点から内容が網羅的で十分なものかどうか、ということを確認しておく必要があります。
また、業務を定量化・数値化することで、改善対象となる業務に優先順位付けがしやすくなり、無駄な作業をしなくて済むようになります。ひいては業務改善の効果も実感しやすくなるというメリットが考えられるのです。
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(2)計画の立案
- 目標とKPIの設定
- 具体的な業務を想定して実効性の高そうな改善方法を検討する
- 具体的なアクションを決めて、それぞれの期限を設定する
- 各プロジェクトの責任者と要員を決定・アサインする
計画を立てる時に重要なことは、例えばルールやワークフローなどが明確に定まっていたり、何度も繰り返す行われていたり、するようなるような効率化しやすいような業務から改善をスタートするようにすることです。また、工程がシンプルな業務や長い時間がかかるわりには成果が見えにくい業務なども改善対象にするとよいでしょう。
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(3)計画の実行
- プロジェクトマネジメント(プロジェクト管理)
- 期日管理(タイムマネジメント)
- 計画に沿って作業を実行
計画を実際に遂行するうえで、選んだ対象業務は本当に優先的に改善するべき業務なのかどうか、という観点を持っていることは極めて重要です。例えば、従業員の間では当然の常識のような(暗黙知)の業務手順であっても、具体的にどこに時間や手間がかかっているのかがよくわからない、ということがあるかもしれません。
このような場合にはなぜその業務が選ばれたのか、誰も明確な答えを持っていないようなケースが起こってしまうかもしれません。常に対象業務を選んだ明確な理由を共有しながら改善活動を継続することが大切なのです。
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(4)改善効果の測定
- KPIの達成度合いや期日までの完成度合いなどを確認
- 達成度合いや完成度合いが低いものについてはどの原因を分析・特定して再トライ
上記(4)が完了したら再び(1)に戻って、この(1)から(4)のサイクルを回し続けることが重要になります。この回転が業務を改善し続けていくことに繋がるのです。
4.業務効率化の目的とメリット
業務を効率化する目的としては、会社の売上の向上させてコストを削減し、収益を上げることが目的となります。コロナ禍において多くの企業が大きく業績を低下させている状況では、無駄をなくして少しでも収益を稼げる企業体質へと変革させることが必至である、と言えるのではないでしょうか。このような目的を達成することで、業務効率化には経営者、従業員、それじれの立場に応じてメリットがあると考えられます。
(1)経営者にとっての業務効率化のメリット
上記の目的でもありますが、経営者にとっての業務効率化の最大のメリットはコストの削減に尽きるでしょう。無理や無駄をなくして利益を増やすことは経営者にとっては企業経営の観点から大きな利点があると思われます。
例えば過剰在庫や余剰人員を抱えていると、余計なコストが流出してしまう可能性が高いと考えられます。せっかく確保した利益を無駄にすることなく、従業員に還元したり、設備投資に回したり、という活用が可能になる、という意味においても業務効率化には大きな意義があるのです。
また、業務効率化による収益力の強化には企業体質の強化という質的な向上も図ることが可能になります。日常的に業務の効率化を念頭に置きながら企業活動を継続することで、常に無駄を省きながら仕事を進めようとする意識が強まり、筋肉質な企業体質への変貌を遂げられる可能性があるのです。
(2)従業員にとっての業務効率化のメリット
従業員にとっては業務効率化のメリットは直接的に感じられるものが多いかもしれません。前述したように、コストが削減されて企業の利益が増えれば、その増えた分が分給与や賞与に反映される可能性は高いでしょう。つまり、業務の効率化は自分自身の報酬の増加に繋がるという利点があるのです。
また、業務の効率化により余計な仕事や作業が減って労働時間が短縮されれば、その分自分の時間を確保することが可能になりますので、自己学習や習い事に使える時間も増えることになるでしょう。つまり、従業員にとっては業務効率化には自分自身の働き方を変える可能性があると言えるのです。
5.業務効率化とポストコロナにおけるオフィスの在り方
業務効率化のメリットや進め方について説明してきましたが、昨今はコロナ禍におけるオフィスの在り方に関する議論が盛んになっています。業務効率化との関係にも触れながらこれからのオフィスの在り方について説明します。
(1)これまでのオフィスの役割
コロナ以前は、「働き方改革」の掛け声の下で、シェアオフィスやコワーキング・スペース、といった新たなオフィスの形式が広がってきましたが、それでも多くの企業においては固定されたオフィスを構えて事業を行うことが一般的でした。
従業員は毎日決まった場所にあるオフィスに出勤して、そこを拠点にしながら仕事を行って、一日の業務が完了すればオフィスから自宅へ帰宅する、という行動が多くの労働者の平日の一般的なパターンだったのではないでしょうか。
このような働き方は、集団を統率するのには適していましたし、濃密なコミニュケーションを実施することも簡単でしたし、職場単位での目標設定や業績評価もさほど難しくはなかったでしょう。つまり、没個性的ながらも企業にとっては管理しやすい従業員を育成しやすいオフィス環境というものが構築されてきました。
ところが「働き方改革」によって、従業員個々の会社以外での生活を豊かに過ごすことで結果的に仕事の効率も向上する、という考え方が徐々に広まっていく中で今回の新型コロナ感染症の影響で否応なく「テレワーク」という新たな労働環境が一気に広まることになったのです。
(2)ポスト・コロナにおけるオフィスの在り方
テレワークについては前述しましたが、企業にとってオフィスを用意することが当たり前だったことがテレワークの登場により、その意識に大きな変化が生じていることは極めて重要だと考えます。
仕事の内容や進め方によっては、全ての従業員が同じ場所で同じ時間に一斉に仕事をする必要はない、という今となっては当たり前のことに新型コロナへの対応は気付かせくれることになりました。
例えば、自宅であってもパソコンや通信環境などを整えればオフィスにいる状態とさほど変わりなく仕事をすることができる、ということを多くの人が実際に体験してしまったのです。
もちろん、勤怠管理の方法、仕事の成果を確認する手段、チームで打ち合わせを行うツール(ZOOM、など)の導入や進め方のルール策定、といったことは事前に決定してメンバー間で共有しておく必要はありますが、物理的なオフィスの存在が本当に必要なのか、という疑問が、企業からも、あるいは従業員からも、生じるのは当然のことでしょう。
オフィスがあることのメリットは、共有設備(プリンター、ファックス、など)を利用することができること、自宅よりも広いスペースで家族に邪魔されることなく仕事に没頭できる、同僚とすぐにその場で打ち合わせ・報告などをすることが可能、といったことが考えられます。
また、同僚との雑談や飲み会などで気を抜くこともできるので、オフィスに出勤することは、気分転換しやすい環境である、とも言うことができるでしょう。一方で自宅で仕事をしている場合には、子供に仕事を邪魔されたり、オン・オフの切り替えが難しかったり、という問題があることが考えられます。
しかし、徐々にテレワークが拡大して従業員がほとんどいない執務スペースを見渡していると、この空いているスペースは無駄ではないのか、と考える経営層は少なくないでしょう。ただでさえ大都市圏におけるオフィスの家賃は高額であり、企業の固定費の中でもかなりの比重を占めていると考えられます。
また、フリーアドレスなどの導入によりオフィスの賃貸面積における占有人数も減少しており、テレワークの拡大と合わせて、そもそもこれだけのオフィスが本当に必要なのか、と考えている経営層は多いのではないでしょうか。
ところが、首都圏の不動産事情を考えると、大型のオフィスビルの建設はラッシュ状態が続いており、2023年には供給過剰状態になると予測している専門家もいるほどです。企業業績の悪化とオフィスの供給過剰により、オフィスビルの賃料は今後大きく低下することが懸念されています。
もちろん、新型コロナが早期に収束すれば、賃料の低下も一時的なもので済むかもしれませんが、そのような場合でも、少なくともオフィスの使い方には大きな変化が生じることは必然なのかもしれません。
このような状況下で求められる新たなオフィスの姿とはどのようなものなのでしょうか。少なくとも大きなオフィスに多くの人が一斉に押し込められて働くようなスタイルは今後はますます敬遠されることになるでしょう。例えば、通勤時間を短縮できる分散型のサテライトオフィスやレンタルオフィスのような形態は確実に増えていくものと考えられます。
これまでかかっていた光熱費やオフィスの賃料などが抑制されることで、従業員手当などに上乗せされるようなことがあれば従業員のモチベーションも向上するでしょう。また、従業員全体の生産性も高まるかもしれません。
と同時に従業員の評価項目にも変化が必要となるでしょう。長時間オフィスにいることで評価されるような旧態依然としたものから、いかに効率的に成果を出しているのか、という実績に基づいた評価体系に代えざるえを得なくなるでしょう。
このようにオフィスの在り方が変化していくと考えられますが、オフィスの在り方を変化させるためにも業務を効率することが必要になることは忘れないようにしてください。業務を効率化しないでオフィスの在り方を変えようとしても、無駄が残ったままでは、単に働く場所が変わっただけのこと、になりかねません。オフィスの在り方を変革する前に、業務の進め方を改善することが必要かつ重要なことなのです。
<まとめ>
業務の効率化と一言に言っても、ECRSの原則、PDCAサイクル、KPT、OODAループ、などの様々なフレームワークが存在しており、これらの考え方を参考にして業務効率化を推進することが重要になります。また、業務改善はステップを踏まえながら進めることが必要で、留意すべきポイントを意識しておくことも重要になります。
また、コロナ禍において、オフィスの在り方、ひいては従業員の働き方にも大きな変化が生じていることは間違いがありませんが、業務改善をせずにオフィスの在り方を論ずることにはあまり意味があるとは思えません。
ポストコロナ時代を迎えて、業務改善による無理や無駄の排除をしっかりと行ったうえで、新たなオフィスの在り方・利用方法を論じていくことで、経営者にとっても従業員にとってもそれぞれ望ましい労働環境の構築というものが果たせるものと考えます。
新型コロナ感染症は多くの人々に大きなマイナスの影響を与えていますが、この機会に経営環境や働き方などを考え直す機会になっている、という捉え方も必要かもしれません。
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