株式会社レクリエ財務改善コーチング

コロナ禍で拡大している雇用シェアリングの仲介ビジネスについて解説

業務改善

新型コロナ感染症の影響は長引いており、世界的な流行から1年以上経ってようやくワクチン接種が始まったとはいえ、経済にも多くのダメージを与え続けています。我が国においても、3度目の緊急事態宣言が2021年4月下旬に発出されることになっており、多くの労働者にとっては先行きが見えない不安な状況に置かれています。

コロナ禍で労働者にはどのような影響が生じているのか、コロナ禍で注目が集まっている「雇用シェアリング」とはどのようなものか、「雇用シェアリング」の仲介ビジネスが注目されている背景とメリット・デメリット、「雇用シェアリング」の具体的な事例と将来性について、などについて詳しく解説します。

1.コロナ禍における労働状況の変化

2020年の有効求人倍率(平均)は2018年よりも0.42ポイント低下して1.18倍でした。2019年の有効求人倍率は1.60倍となり、過去で3番目に高う水準だったものの、新型コロナ感染症の拡大により、2020年になり企業経営の環境は大きく変化して、有効求職者数が6.9%増の182万人だったのに対して、有効求人数は21%も減少して216万人となりました。この下落幅の水準は、2009年のリーマン・ショック後に記録した0.41ポイントを上回っています

都道府県別の有効求人倍率については福井県が最高の1.62倍、沖縄県が最低の0.79倍、となっており、東京都では0.88倍となっていて2020年7月以降6か月間連続で1倍を割り込む水準でした。コロナ禍においては、飲食店などを中心にパートやアルバイトを雇用し続けることが困難になっている企業も増加しており、非正規雇用者にとっては厳しい雇用情勢が続いています。

また、非正規雇用者のみならず業績が悪化している企業が増加していることから一般従業員の採用を抑制している業界(エアライン、旅行業者、デパート、など)も増えており、仕事を求めている人が減少することは考えにくい情勢だと言えるでしょう。

このような環境下において、「働き方改革」とは異なる観点で、働き方のタイプも変化しており、「雇用シェアリング」という考え方に注目が集まっています

2.「雇用シェアリング」とはどのようなものか

「雇用シェアリング」は「従業員シェア」とも呼ばれており、新型コロナ感染症の拡大によって、需要が減った飲食業界やエアラインなどといった業種から、スーパーマーケットや農業業界などの人手が不足している業界に対して労働者を派遣・出向させることで、労働者の本来の雇用そのものは維持しようとする仕組みのことです。

新型コロナ感染症の影響がかなり長引いている中において、労働者に職を失わせることなく雇用を死守するという部分では、企業と労働者の両方に利点ある方策のように見えるかもしれません。しかしながら、雇用の継続などの労働相談においては、従来の雇用条件が引き下げられるのではないか、これまでに経験したことのないような業務をしなければならないのではないか、といった不安を訴える声も集まっています。

前述したような不安の声があがる理由としては、雇用タイプで用いられるケースが多い出向や派遣とい労働法上の制度が関わっています。例えば、出向の場合には出向労働者に対する使用者の責任が曖昧になってしまいがちです。また、従来とは全然違う業界・業種において働くことになるようなケースでは、そのような環境で働くことそのものに不安を感じてしまう人も多いのではないでしょうか。

新型コロナ感染症による影響で事業の縮小や店舗の休業などを余儀なくされていて雇用している労働者に休んでもらうようなケースでは、雇用調整助成金を利用することで従業員の雇用を維持するという方法が一般的になっています。一方で、労働者に休んでもらうのではなく、別の会社などで働いてもらうような形式で雇用を維持する方法が「雇用シェリング」になります。

雇用シェアリングの場合には「在籍型出向」という形式を採用するケースが多いようで、本来労働者が所属していた会社(出向元企業)と雇用契約は締結したままの状態で、新しく就労する会社企業(出向先企業)とも雇用契約を締結することになります。出向元企業にとっては、今後新型コロナ感染症の影響による状況などが回復したような場合には労働者を自社に呼び戻してすぐにでも働いてもらうことが可能になるし、出向先企業にとっては足元の労働力不足を解消することができるという利点があると考えられます。

雇用シェアリングの仕組み

雇用シェアリングでは、余剰な人材を保有している企業と、労働力不足を補いたい企業との間のマッチングを実施してくれる仲介者が必要になるのですが、一般的には、失業対策を目的とした「雇用シェアリング」は公共性の高いサービスになるので、公的な性格を有する公共団体がその役割を担っています。

日本全国の都道府県に事務所を設置している「公益財団法人 産業雇用安定センター」はそうした公共団体の一つであり、新型コロナ感染症の影響を受けている企業に在籍型出向制度のスキームを活用した労働者のマッチングサービス提供しています。宿泊業、飲食業、小売業、といった売上高が落ち込んで雇用維持が困難な状態に陥っている企業は、産業雇用安定センターに情報を登録すると、労働者人材の受入を望んでいる企業とのマッチングが実施されます。また、マッチングが成功した場合の手数料や報酬は不要となっています。

具体的なマッチングの事例には、インバウンド(来日する外国人旅行者)が大きく減ったことで観光バスの運転手の雇用を維持することに苦しんでいるバス会社から感染症への対策物資の搬送を担っている物流企業へと出向するようなケースを挙げることができます。また、レストランのシェフ(料理人)がスーパーマーケットへと出向してバックヤード(売り場には適さない商品倉庫や商品のパッケージングなどを実施するスペースのこと)などにおいて食品を調理する仕事を担う事例も挙げることができます。こうした出向は、基本的には、長期間にわたるようなものではなくて新型コロナ感染症が収束すれば元の職場や会社に戻るという約束になっています。

産業雇用安定センターでは、新型コロナ感染症登場の遥か昔の1980年代から国や地方自治体などとの連携を行っており、出向を使った人材の移動仲介を実施していました。これまでに既に21万件以上もの多数の仲介実績があることが強みです。この人材仲介の仕組は失業者を増加させない目的においては一定の効果期待できるのですが、その反面、出向させられた従業員自身が必ずしも自分の得意な、あるいは、好きな業務に就けるとは限りません。従業員自身の同意を得ないで出向先企業を決定してしまうようなことは法律で禁止されてはいるものの、一般的な企業の人事と同様に、従業員の立場で会社からの出向指示を断れるような場合は少ないのが実態でしょう。

3.「雇用シェアリング」の仲介ビジネスが注目されている背景とメリット・デメリット

「雇用シェアリング」の概要について説明してきましたが、それではなぜ今「雇用シェアリング」が多くの企業から注目を集めているのか、その要因について解説します。

(1)「雇用シェアリング」の目的とは

「雇用シェアリング」には、出向企業元(従業員を出向させる企業側と、出向先企業(従業員を受け入れる企業)の双方に以下のような目的があります。

①雇用シェアリングで従業員を出向させる場合の目的は「雇用維持」

②雇用シェアリングで他社の従業員を受け入れる場合の目的は「(一時的な)人材不足の解消」

①雇用シェアリングで従業員を出向させる場合の目的は「雇用維持」

雇用シェアリングでは、原則として、在籍出向という形式を採用しますが、どんな企業でもこれまで共に頑張って仕事をしてきた仲間である従業員を簡単には手放したくはないでしょう。また、これまで時間をかけて大切に育成をしてきた人材である従業員の経験や能力・スキルは、企業にとっても非常に重要な財産になっており、もし解雇してしまったら業績や経済状況などが回復した場合に、今までと同じような戦力を有する人材を採用することは至難の技と言ってもよいでしょう。雇用シェアリングを利用することで業績が不振な場合でも貴重な人材である従業員の雇用を守ることが可能になるのです。

②雇用シェアリングで他社の従業員を受け入れる場合の目的は「(一時的な)人材不足の解消」

同じような状況下にあっても、労働力人材が不足してしまうような企業も存在します。今回のコロナ禍を例にすると、先ず医療関連機関で人材が不足することになりました。また、急激にオンライン化が進展したことが理由でITや通信に関連する会社の求人が増加しました。そして、外出の自粛期間中における「巣ごもり需要(外出を自粛するようになった人が自宅などで快適に生活するために必要な消費行動に先立つ需要のこと)」

による影響は物流業界に対しても影響を与えることになりました。

今回のコロナ禍ように、一時的に需要が急激に増加しても、人材の獲得に費やせるコストや時間には当然ながら限りがあります。もし必要な人材を獲得できた場合であっても、これまでのように十分に適切な教育を実施する余裕はないと考えられます。こうした場合に、豊富な経験やスキルを保有している他社の従業員が自社のサポート人材として来てくれることは非常に有用だと考えることができます。また、半永久的に人材不足に苦悩している、具体的には、第三次産業などにおいても、テンポラリーではありますが人材不足を補うことが可能になります。

(2)「雇用シェアリング」のメリット

雇用シェアリングのメリットとしては、以下のような点を挙げることができます。

①出向元企業にとっては雇用継続と人件費削減

②出向先企業にとっては継続雇用のリスクなしで必要な人材を入手可能

③出向する従業員にとっては雇用の継続が守られる

①出向元企業にとっては雇用継続と人件費削減

雇用シェアリングっを利用して自社の従業員に出向してもらった場合には当該従業員の人件費のは出向先企業の負担になります。従業員の雇用を継続したままで費用を抑制することができるのは出向先企業にとってのメリットになります。

②出向先企業にとっては継続雇用のリスクなしで必要な人材を入手可能

出向先企業(他社の従業員を受け入れる企業)にとっては、一時的であったとしても、自社の業務に必要な能力やスキルを有している人材を得ることができること、加えて、一時的な措置という位置付けなので継続して雇用しなければならないというリスクを負わないこともメリットとして挙げることができます。

③出向する社員にとっては雇用の継続が守られる

出向の対象になる社員にとっても、今のままでは継続して雇用してもらうことが難しいかもしれない状況にもかかわらず、自分自身の能力やスキルを必要とされている職場で働いて価値をを発揮することができるのは能動的な気持ちで働くことができるでしょう。

もし望んでいないような場合であっても、会社を解雇されるようなケースに比べれば、一時的な出向という選択をすることが自分自身のみならず家族にとっても最善の方法である可能性もあるでしょう。

前述したように、雇用シェアリングは「従業員の雇用を守る」という点において、企業にも従業員にも、さらにはサービスの利用者や消費者にとってもメリットがある組みであると言うことができる。

 

(3)「雇用シェアリング」のデメリットと課題

上記のようなメリットがある一方で「雇用シェアリング」を利用する場合には、以下のような、注意点があります。

①労務関係などにおいて細かい部分にまで調整が必要

②出向することになる従業員の心理面を含めて丁寧なフォローが必要

③優秀な人材を手ばなしてしまう可能性があり得る

①労務関係などにおいて細かい部分にまで調整が必要

出向に関しては労働基準法などに定めがあるわけではないので、出向することになる社員の給与、保険料、労災保険料、などはどちらの企業が加入するのか、といったことは双方の企業の間で話し合いのうえで決定することが必要になります。こうした労務関連の各決めごとを丁寧に実行して労働者自身が納得したうえで出向できるように準備しなければなりません。

②出向することになる従業員の心理面を含めて丁寧なフォローが必要

出向することになった従業員は以下のような状況になってしまう可能性があります。

  • これまでよりも給与水準が下がってしまう可能性が高い
  • 慣れていない職場環境であり新しい業務手順もよくわからない
  • 労働時間や勤務場所といった労働の条件が変化してしまう
  • 出向先でトラブルが生じた場合に責任が曖昧になってしまう
  • これまでの業務経験を活かせるという保証がない

上記のような負担を従業員に強いてしまう可能性があるということを念頭に置いておくことも自社の従業員を守る企業の大きな役割になります。

③優秀な人材を手ばしてしまう可能性があり得る

出向元企業(従業員を出向させる企業)にとっては、自社に残って仕事を続けて欲しいような優秀な社員が出向することを望んでしまい、その希望を認めざるを得ないようなことも考えられるでしょう。雇用シェアリングを利用した出向全てがネガティブなものだとは限りません。

出向という働き方を自分にとっての新たな機会やチャレンジの場として捉えることで、自分のバリューを高めたいと考える社員もいるはずです。こうした場合に、出向そのものが出向元企業にとってはデメリットになる可能性があります。

しかしながら、雇用シェアリングで従業員の能力やスキルが磨かれて、より力を付けた従業員が自社に戻ってきてくれるのであれば、出向元企業にとっても大変心強いことです。こうした従業員を自社に繋ぎ止めるのか、それとも背中を押してあげるのか、企業の判断が難しい場面でもあります。

これまで説明してきたように、雇用シェアリングはテンポラリー(一時的)なケースが多いので、出向元企業と出向先企業の双方にとってそれほど大きなデメリットはない、と言うことができます。注意しなければいけないのは、出向対象となる従業員をきちんとフォローする、ということに尽きます。

いくら社員の雇用継続のためには必要であるとは言っても、少なからず自社の従業員に対して不安や心配の気持ちを持たせてしまうことは間違いがないでしょう。解雇よりは全然マシじゃないか、というような気持ちで従業員を出向先に送り出すようなことは厳禁です。出向先企業との細部にわたる業務面の調整や待遇面に関する交渉などは可能な限り丁寧に応じることが極めて重要になります。

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4.「雇用シェアリング」の導入方法とタイプ

(1)「雇用シェアリング」の導入方法について

「雇用シェアリング」に注目が集まってはいるものの、具体的な導入方法についてどのように考えればよいのでしょうか。「雇用シェアリング」を実際に導入するためには以下のような5つのステップが必要になります。

ステップ 手続きの概要
①現状業務、実施方法、人的リソース、の把握 最初に現状把握が重要になります。どの仕事にどのくらいの人数が関与していて、どのような方法実施していて、どのくらいの時間やコストが必要になっているのか、という現状を把握します。
②無駄な業務や不必要な業務を見直してみる 現状分析を実施して、現在の業務の中で不必要で無駄だと思われる業務を抽出すて廃止する、あるいは今までとは異なる方法で実施するように見直しを行う。
③雇用シェアリングが可能な業務や職種を検討する 雇用シェアリングをすることができる業務や職種を検討して、雇用シェアリングの実施に向けてマネジメント職による管理を実施する。
④雇用シェアリング用のマニュアルを作成する 雇用シェアリングをどのように実施して、誰がマネージ(統括管理)するのか、情報を共有すべきる項目、といった内容の整理が必要なので対応可能なマニュアルを作成する。
⑤業務に対する評価を実施して、業務の進度(進捗具合)を確認する 実際の雇用シェアリングの実施により、目的が達成できているかどうか、会社の業績アップに貢献できているのかどうか、といった評価をして、進捗具合や課題解決の状況などを確認して必要であれば随時修正を行う。

(2)「雇用シェアリング」のタイプ

「雇用シェアリング」には以下のようなタイプがあります。

  • 雇用維持タイプ
  • 雇用創出タイプ
  • 緊急対応タイプ
  • 多様就業タイプ

雇用維持タイプ

シニア層や既にリタイアしたような人の雇用維持を目的にして、労働者1人あたりの労働時間を減少させて実施するようなタイプになります。人手が不足しているような企業にとっては利用しやすい「雇用シェアリング」の方法になります。

雇用創出タイプ

様々な理由で会社を休んでいるような(休職中の)人に対して、新たな雇用を創出するために実施される「雇用シェアリング」の方法です。フルタイム労働者を新規に雇うというよりもパートタイムやアルバイトなどの短時間の労働者を何人か雇うことにより業務分担をしてもらうことになります。

緊急対応タイプ

例えば、急激に生産量が変動するような仕事に対して実施される「雇用シェアリング」の方法で、今働いてもらっている労働者を解雇せずに従来の仕事の分量を何人かの労働者に分担することになります。具体的な事例としては、工場現場が稼働する時間を短縮する、シフト制を導入している現場の業務時間を短縮する、工場の休日日数を増加する、といった方策を挙げることができます。

多様就業タイプ

時短勤務、フレックスタイム、テレワーク(在宅勤務)、といった様々な働き方をする従業員を採用して、出産、育児、介護、などの理由でこれまでの考え方では働き続けることが難しかったような人材にも活躍してもらえるような「雇用シェアリング」の方法です。企業にとってはニーズに沿った雇用をすることが可能になり、一方で労働者にとっても自分自身に適した働き方を見出すことが可能になる、という両者にとって大きなメリットがある方法です。

 

5.「雇用シェアリング」の具体的な事例と将来性について

実際に「雇用シェアリング」を導入している内外の企業が存在していますが、具体的にどのような「雇用シェアリング」を実施しているのでしょうか。

(1)国内企業の事例

①マツダ自動車

マツダ自動車の工場で勤務する場合は、従来は昼間と夜間の二交代制度でしたが、夜間の工場の操業を止めることで、工場で働く従業員の勤務時間を約50%減少させるとともに従業員のコスト(基本給)も約2割の削減を果たしています。

また、時間外勤務(残業時間)や土日出勤といった各種手当を大きく減少させることが可能になったことと会社全体に対するコストカットの推進を実施したことで、工場の生産体制の抜本的な見直しを進めることが可能になったようです。

②トヨタ自動車

トヨタ自動車の国内にある全ての工場(12社の工場)で操業を停止することになった2009年2月~3月の合わせて11日間の内、休業日として2日間を設定して該当日数分の給与を約2割削減しています。

これまでは操業が停止しているような状況であっても賃金は全額支払われていたのですが固定費を圧縮するためにこのような生産調整を実行することになったのです。

③TOWA

TOWAは多くの独自技術を保有している京都の半導体企業です。半導体業界は2000年頃から業績の悪化に陥ってしまい急激に売上高が減少しました。こうした環境下において従業員の稼働日数を週5日から週4日に減らすことにより雇用維持を企図したのです。この方策で従業員の給与は減ったものの雇用維持を果たすことができたので失業せずに済んだ労働者もいたようです。

(2)海外の事例

①オランダ

1980年前半にオランダは全国的な大不況に陥ってしまったために「雇用シェアリング」が一気に拡大しました。心配されていた正規雇用社員と非正規雇用社員との処遇の格差に関しては格差を生じさせることを禁止する、ということが取り決められることになりました。
このような「雇用シェアリング」の導入により、雇用契約の種類や勤務時間などを労働者がチョイスすることが実際に可能になったので、「雇用シェアリング」を上手に導入を成功させた国とされています。

しかしながら、上記のような「成功」という評価がある一方で、育児と勤労を両立させることに関してはいまだに課題があると言われているようです。育児期間には時短勤務という働き方を選ぶ人も多いと思われますが、時短勤務をしているマネジメント職の割合はフルタイム勤務をしている人と比較するとまだかなり低い状態で、キャリアを形成するという点においては時短勤務選択者は不利な状況になっていると言えるようです。

②ドイツ

ドイツにおいては、企業業績の悪化による大量の失業者が発生したために過激な労働運動などを抑え込むという目的で「雇用シェアリング」導入を開始することになりました。前述したオランダと同じように、非正規社員への差別的待遇の禁止や同一労働同一賃金制度の実施などは国のレベルで対応を実施していますが、ドイツにおいては現実的にはまだ各企業単位での対応が実施されている状況にあります。

③フランス

フランスにおいては、週間労働時間の上限が35時間と法律で決まっていたり、5週間の有給休暇制度が定められていたりしています。加えて、夜間や休日の就労などについても厳い制限が課されています。

例えば、企業が労働者を夜間就労させるケースでは、企業側に対して、夜間に経済的な活動を実施しなければならない必要性と社会的な有益性や有用性を明らかにして、夜間就労に関しては労働組合(労働者)との間に労働協約を結ばなければならないというルールがあり、また週に6日間以上続けて勤務するという定めなどもあります。

しかし残念ながら週35時間労働制度に関しては期待していたような実施状況にはなっていないと言われています。新たな雇用についてはリスクがあり採用のコストもかかるので、結果的に現状の組織の内部で終結させようとする動きもあるようです。

(3)「雇用シェアリング」の将来性について

前述したように世界レベルで「雇用シェアリング」の導入拡大は進んでいると考えられるものの、日本においては複数の労働者で業務内容を分担して働く、という意味での「雇用シェアリング」が明確に導入されている、という事例は少ないのが実状ではないでしょうか。

理由としては、企業にとっては「雇用シェアリング」に対応した就業規則や労働環境の整備には時間がかかるうえに、従業員のメリットと比較すると企業の実質的なメリットはさほど大きくないと思われている点が挙げられます。

簡単な例を挙げてみましょう。一人の従業員に担当してもらうためには100万円のコストがかかる仕事があった場合に「雇用シェアリング」を導入すると二人の従業員にそれぞれ50万円のコストを支払うことになるのですが、従業員からすれば馘首されることなく雇用は守られたことになりますが、会社からすれば仕事全体のコストは100万円のまま変わらず、「雇用シェアリング」の導入準備などでさらにコストや手間がかかってしまうことも十分に考えられるのです。

従業員の雇用を守って多様な働き方をすることができる素晴らしい企業である、という高いレピュテーションを得ることができるという定性的なメリットは確かにあるとは思われますが、コロナ禍のような急激な経営環境の変化に見舞われたような場合には、「雇用シェアリング」の導入よりも「労働者の整理・減員」に繋がるような経営施策のほうが採用し易いのも事実かもしれません。

コロナ禍はあくまで特殊な状況ではありますが、本質的な意味において、労働者に自主的な働き方の選択ができるような社会へと変貌することが「雇用シェアリング」が多くの企業に拡大・導入するためにはより一層必要になるのではないでしょうか。

まとめ

「雇用シェアリング」は新しい働き方として徐々に認識されてきており、いくつかの企業では「雇用シェアリング」の考え方に基づいた制度の導入・実施を既に行っているケースもあります。企業にも労働者にも、それぞれメリットとデメリットがありますが、今後は特に企業にとっての利点がより明確になってくればますます「雇用シェアリング」の導入企業は増加するものと考えられます。

我が国においては、「働き方改革」が推進されていて、様々な勤務スタイルや雇用形態による格差の是正などが国レベルで行われています。この「雇用シェアリング」も「働き方改革」の1つの手法となっており「働き方改革」を実現するうえでは非常に重要となります。
が、どの一方で我が国においては各労働者の責務や労働内容が明確化されていないので、業務のシェアリングが困難である、いう実態もあるようです。

上記のような状況下で「雇用シェアリング」を進めた場合には、労働現場における生産性低下などが生じてしまい、結局元々の勤務内容や組織などに戻ってしまうことが考えられます。

また、給与面に関しても、従業員1人当たりが得られる分が減少する、といった問題があります。こうした問題を解決することにより我が国においてもスムーズに「雇用シェアリング」の導入が推進されることになり、「働き方改革」が実現に近付くものと思料します。

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監修
株式会社レクリエ / 弁護士・社会保険労務士
相川祐一朗

企業法務を専門とする他、社会保険労務士の立場から、中小企業経営における「事前対応」思考への転換を図るためのコーチングも手掛ける。
働き方改革対応を始め、従業員問題への対応や就業規則改定等による強い組織構築の提案、社外との紛争解決まで、企業が直面する法的な問題全般を扱う。

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