品物を製造して販売する、サービスを作り上げて提供する、といったビジネスの流れが今までは主流でしたが、昨今では製造やサービスを作っている過程(プロセス)を顧客にも共有することで報酬を得たり応援してもらったりするようなビジネスモデルが生まれてきています。このようなビジネスモデルを「プロセスエコノミー」と読んでいますが、本稿では、プロセスエコノミーとはどのようなビジネスモデルなのか、概要と活用事例、プロセスエコノミー推進のメリットと注意すべきポイント、プロセスエコノミーが広がっている背景、プロセスエコノミーの将来性、などについて解説します。
1.プロセスエコミーの概要と活用事例
プロセスエコノミーとは、何らかの作成プロセスもビジネスにする、という考え方のことで、反対の概念はアウトプットエコノミーになります。アウトプットエコノミ―とは、従来からある主流のビジネスモデルで、できあがった製品やサービスを顧客に提供することで報酬を得る仕組みのことを言います。
本来は報酬を得にくい(あるいは得ることができない)と考えられていた作成プロセスを顧客と共有することで、何らかの利益を得ることが可能であると気付いたことからこの新しいビジネスモデルが誕生することになりました。
例えば、好きな漫画家による漫画の制作プロセスを生中継してサイト会員から料金を徴収するような事例を挙げることができます。従来はビジネスにはならないと思われていたプロセスそのものが収益を生むことになるという発想の転換が生んだ新たなビジネスモデルといってもよいでしょう。
他にも、クラウドファンディング、オンラインサロン、AKB商法、などもプロセスエコノミーの範疇に含まれるでしょう。
<プロセスエコノミーの活用事例>
- クラウドファンディング
- オンラインサロン
- AKB商法
1.クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、群衆を意味している「Crowd」と資金調達を意味する「Funding」という単語を組み合わせた造語で、不特定多数の人々が、一般的には、インターネット回線を経由して、他人や他組織に対して資金の提供・協力などを実施すること、を言います。
クラウドファンディングのどういった部分がプロセスエコノミ―になるのかと言うと、作りたい商品(洋服やバッグなど)のデザインや機能を事前に公表して予約販売をするケースなどがプロセスエコノミーのビジネスモデルに相当すると考えられます。予約販売をすることで、商品を製作するための資金を事前に調達することが可能になりますし、予約購入してくれた顧客に対しては、材料の選定、染色、縫製、などのプロセスを公表して製品完成への期待度を高めていきます。このように製作工程を公開することでより、事前の資金調達のみならず、多くの顧客を獲得することも可能になるでしょう。
クラウドファンディングには、大きく分けて、購入型、投資型、寄付型、の3種類がありますが、プロセスエコノミーの特色を最も強く打ち出しているのは購入型のクラウドファンディングであると言えるでしょう。但し、クラウドファンディングは案件として成立しない(資金が集まらない、など)可能性があり、その場合には出資した資金が返還されないかもしれないリスクがあることには注意が必要です。
2.オンラインサロン
オンラインサロンとは、インターネットを介してウェブサービスやSNSなどを利用して運営される会員制のコミュニティのことを言います。2012年頃に誕生して、現在では多くの著名人(実業家、人気タレント、など)がオンラインサロンを開設しています。その結果として利用者も急増しています。
オンラインサロンにおけるプロセスエコノミー的な部分は、オンラインサロンを有料会員制にすることで、事業開発(例えば、実業家のホリエモンこと堀江貴文氏による宇宙ロケット開発事業)や映画製作(例えば、お笑い芸人の西野亮廣氏による映画製作ビジネス)などのメイキング過程を公開することで収入を得て、事業開発や映画製作の資金に充当することが可能になる点です。
プロセスの公開手法にはメルマガやYouTubeなどの動画を利用することが多く、利用者はリアルタイムで進捗状況を把握することができます。また、オンラインサロンでは、主催者による投稿と会員同士の交流というサービスを利用者に対して提供することができます。つまり、オンライン参加者のネットワーク拡大にも資するサービスなのです。
ただし、期待していたほどの活動をしていないオンラインサロンや会費を払っているのに無料で働かされてしまうケースなどもありますので、体験入会期間の利用や他の会員からの評判などをきちんと確認してから正式に入会することをおススメします。
3.AKB商法
AKB商法とは、アイドルグループのAKB48から始まったと言われている、独自のCDや関連商品の販売手法のことを言います。 具体的には、アイドルグループの選抜メンバーを選ぶための投票権といった特典をCDや関連商品にプラスすることによって、同じCDであってもより多くの枚数を購入するようにファンの購買意欲を刺激する方法です。
顧客からすれば、自分たちが多くのCD枚数を買ったから応援しているアイドルが上位にランクインできた、という選抜プロセスに積極的に参加することが可能になり、アイドル側(アイドルが所属している芸能事務所など)にはCDなどの売上が増えるというメリットがあります。
このようなAKB商法には批判も多く、大量のCD枚数へと誘導すること自体が悪質、オリコンなどの楽曲ランキングは売上枚数で決まるので正確なランキングを表すことができない、などの声もあがっています。アーティスト側からも、音楽の価値観が崩れる(ミュージシャンの山下達郎氏)、といった批判があります。
2.プロセスエコノミー推進のメリットと注意すべきポイント
プロセスエコノミ―は様々な分野で利用され始めているビジネスモデルではありますが、プロセスエコノミ―の推進にはどのようなメリットがあって、どのような点に注意しなければならないのでしょうか。
(1)プロセスエコノミーの推進メリット
プロセスエコノミーを推し進めることには以下のようなメリットあると考えられます。
- 新たなファンの獲得
- 安定した収益の確保
- 表現力や発信力の向上
①新たなファンの獲得
プロセスエコノミーというビジネスモデルを推進することで新規のファン獲得に繋がることが期待できます。従来はファンクラブなどへの誘導により会員数を増やすような努力が行われてきたものと思われますが、例えば、楽曲、漫画、小説、絵画、などの製作プロセスをリアルタイムで公開することに新たに興味を持つような人が増えれば、ファン層の拡大、ファン人数の増加、などが図れることになります。
このようなケースでは、正確に言うと製作者のファンというよりも製作物にたいするファンが増える、と言えるかもしれません。つまり、今回の作品が高い評価を受けているからといって必ずしも次回作も高い評価を受けるとは限らないのです。プロセスエコノミーの場合は、短い期間で熱狂的なファンを生み出すことは可能ではありますが、長年のファンを獲得するためにはクオリティの高いプロダクツを生み続けるという不断の努力も必要になると言えます。ある程度の期間ずっとファンでいる人は、製作者との距離も縮まり身近な存在として捉えるようになっているので、この段階では作品だけではなく製作者自身のファンになっていると考えてもよいかもしれません。
②安定した収益の確保
プロセスエコノミーのビジネスモデルを推進することには、安定的な収益源を確保できるというメリットがあります。前述したように、毎月オンラインサロンの会費を集めたり、商品を完成させるまでに必要な費用をクラウドファンディングで集めたりすることでインカム先行型のビジネスの流れを組み立てることが可能になるのです。
アウトプットエコノミーのビジネスモデルにおいては、一般的には、原材料などをあらかじめ調達する必要がありますし、機械設備や作業人員なども先に用意することが求められます。しかし、プロセスエコノミーのビジネスモデルでは、作業工程を公開しながら資金を集めることができたり、商品やサービスのコンセプトだけを先にオープンにするだけで収益を得たりすることが可能です。
金融機関などから融資を得にくいようなビジネスであっても、プロセスエコノミーのビジネスモデルでは必要な資金や収益を獲得することが可能になることは大きなメリットであると言えます。
③表現力や発信力の向上
プロセスエコノミ―によるビジネスモデルを推進する場合には、当該ビジネスの魅力を多くの人にわかりやすく強烈に印象付けることが必要になります。また、多くのコンテンツに埋没してしまわないように、プロセスエコノミーの推進者には、動画、メルマガ、ホームページ、などによる情報提供を適切なタイミングでユーザーに届けることも求められます。
こうした活動を行っているうちに情報の発信力や表現力が磨かれることになりますので、そうした能力を向上させることにも繋がるでしょう。
(2)プロセスエコノミーにおける注意点
プロセスエコノミーを推進する場合にはメリットだけではなく、以下のような注意すべき点があることも理解しておくことが必要です。
- プロセスエコノミーのモデルが適さないビジネス
- 熱狂し過ぎるファンの存在
- 倫理観を逸脱したコンテンツ
①プロセスエコノミーのモデルが適さないビジネス
プロセスエコノミーのビジネスモデルにビジネスによって向き・不向きがあります。例えば、企業のホームページをプロセスエコノミーに不向きの代表例として挙げることができます。企業HPは、自社の沿革や経営体制、自社の製品や提供サービス、などを紹介することが目的で開設されるものです。
もちろん、製品が完成するまでの工程を紹介したり、就活生向けに自社で活躍する社員を紹介したりはしますが、製造プロセスの紹介で収益を獲得しようとは思っていないでしょうし、就活生向けのページは企業HPとは別に独立したページを設けることが多く、就活生の役に立てるという目的にしか利用はされないでしょう。
つまり、企業HPの場合はビジネスのモデルとして利用するのではなく、あくまで事実に則した自社の紹介にしか適していないと考えられるのです。例えば、人気の高いお菓子の製造工程を動画にして有料会員向けに公開するというようなビジネスの展開も考えられますが、そのような場合には自社のHPとは別に会員向けサイトを開設することになるでしょう。
もし、自社のHP内に有料会員向けページを作成したら、多くのHP利用者は企業HPを閲覧するだけでも費用を徴収するようなケチな企業である、という印象を抱いてしまうかもしれません。
②熱狂し過ぎるファンの存在
非常に難しい点ではあるのですが、コンテンツを熱烈に指示してくれるファンの存在は非常にありがたく、プロセスエコノミーの基盤を支えれてくれる大変貴重な存在ではあります。しかしながら、もしそういったファンはそういった熱が覚めると強烈なアンチに変貌してしまう可能性もあります。
具体的には、運営側が書き込んだ何気ない一言がファンの離反を促すことになり、SNSなどが炎上して、不買運動などに繋がってしまうリスクもあるのです。したがって不用意な発言や発表をしないように、事前チェック(複数人数の目を通す、などの)を義務付けるとともに、問題が拡大しないようにSNSの炎上問題などに詳しい弁護士などの専門家にも協力してもらって迅速に対策を講じることが重要になります。
また、そもそも論として、普段からファンを煽るような言葉や画像を使用しているのであれば、そうした行為を少しづつトーンダウンさせる、などの対応を運営側も仕掛けていくべきだと思われます。
③倫理観を逸脱したようなコンテンツ
過激な主張や表現を含んでいるコンテンツには熱烈なファンがつきやすいと考えられていますが、集客さえできればどんなコンテンツでも構わない、ということはありません。上述した、アンチの問題もありますが、より多くの人々から企業倫理が確立していない企業である、という不名誉な烙印を押されてしまう方がより大きな問題になるでしょう。
あくまでプロセスエコノミーはビジネスのモデルなので、ビジネスとして上手く回らなければモデルとしての価値はありません。にもかかわらず、運営会社が倫理観が欠如したようなコンテンツの提供を続けていれば、多くのユーザーやファンは離れてしまうでしょうし、このようなビジネスモデルで事業を継続することが難しくなってしまうでしょう。
つまり、集客は重要ではありますが、節度を持ったビジネスへの臨み方が求められるものがプロセスエコノミーというビジネスモデルである、と言えるのです。
3.プロセスエコノミーが拡大している背景
これまで説明してきたようなプロセスエコノミーの考え方に基づいたビジネスモデルは最近ますます拡大していると言っても過言ではないでしょう。なぜ従来のアウトプットエコミーよりもプロセスエコノミーが選好され拡大しているのでしょうか。
- 情報発信手段の多様化と進化
- ストーリー性を求める利用者の増加
- 「自分だけが」という優越感を得られる
1.情報発信手段の多様化と進化
ITテクノロジーの進展により、人々の情報発信手段は多様化するとともに進化してきました。つまり、これまでよりも多くの情報をより速く利用者に届けることが可能になってきたのです。例えば、ひと、むかし前であれば、動画を公開したくても通信能力やPC能力が低かったのでスムーズに動画が動かないようなケースも多かったのではないでしょうか。
ITテクノロジーの進化は、情報提供者が簡単に高画質な動画をユーザーに提供することを可能にしているので、コンテンツやプロダクツの製造・作成過程を詳細な部分までユーザーに見てもらうことができるし、そこに価値を感じて利用者は何らかのお金を落としているのです。
つまり、IT分野の技術革新が情報の提供者と利用者との距離を縮めて、そこにビジネスが発生することに気付いた人々がいた、ということがプロセスエコノミーの誕生・拡大の理由だと考えれるのです。
2.ストーリー性を求める利用者の増加
自分が購入した商品には、原材料の入手にこうした苦労がある、とか、金具の加工は中世から行われている伝統的な方法で行われている、といったプロダクトの「物語性」が現在では重視されるようになっています。これは、大量消費社会で多くの人々が同じような商品を購入してきた時代にたいするアンチテーゼとも考えられます。
自分がなぜこの商品を気に入ったのか、という自分だけの物語(ストーリー)がそこには存在していますし、例えば、商品の製造プロセスにまで自分が考えているストーリーをはめ込んでお気に入りの度合いを高めて、最終的にはオンリーワンのプロダクトやサービスが欲しいという利用者が増えていることもプロセスエコノミーの誕生・拡大の理由だと考えれます。
3.「自分だけが」という優越感を得られる
例えば、会員制オンラインサロンで会員だけが入手することができる商品が紹介されたりすれば、会員以外には手に入れることができないという優越感を感じることもできます。つまり、プロセスエコミーのビジネスモデルに参加することには、他の人(会員以外、など)では得ることができないメリットがある、という点がプロセスエコノミーの誕生・拡大の背景にもなっていると思われるのです。
4.プロセスエコノミーの将来性
新たなビジネスモデルとして誕生し拡大しているプロセスエコノミーですが今後どのような展開が予想できるのでしょうか。前述したようにITテクノロジーの進化によって情報を伝達するスピードは格段に速くなっていますが、実はその根幹にあるのは「口コミ」という手法だったりします。
世の中のトレンドを生み出しているのは極めて影響力が高い人(インフルエンサー、と呼ばれています)であり、彼ら彼女らがテレビや雑誌、そしてYouTubeやTik Tokといったネット配信などを通じて紹介するモノやコトはあっという間に世間に広まります。これは、昔のように実際に他人との会話を通じて行っていた口コミ話がネット空間内で行われているようなもので、ただその拡散スピードが以前とは比べようがないほど速くなっている点に特長があると言えます。
しかし、一方で多くの人々が同じような手法で商品やサービスの紹介や拡散をすることが可能になってくると、そこに差別化できる点が少なくなっていることも事実でしょう。そこで誕生したのがプロセスエコミーというビジネスモデルで、商品やサービスが完成するまでのプロセスでさえも利用してビジネスに繋げようという考え方だったのです。
さらに、インターネットを簡単に使える環境が整ってくると、非常に多くの消費者が商品やサービスに対してレビューや評価をすることができるようになっていることから、商品やサービスのクオリティはますます向上するようになってきて、品質や性能などで差別化することも困難になってきていると言えます。したがって、プロセスまで含めた商品やサービスが完成するまでのプロセスを公開して、ここに差別化できる要素がある、ということを利用者に訴求するようになってきたとも言えます。
ただ、差別化できる部分がプロセスにしかない、という消極的な理由でプロセスエコミーというビジネスモデルを導入しているとすれば、本当にそうなのか、といった見直しをすることは大切なことかもしれません。と言うのは、今後プロセスエコノミーの考え方は確かにさらに拡大していく可能性は高いと思われるものの、企業戦略としては、従来のアウトプットエコノミーと合わせてビジネスの展開を考えることが重要になると考えられるからです。
他社が同じようにプロセスエコミーの展開を強化していくと、従来のアウトプットエコノミーと同様に差別化がしにくくなる、という課題が生じてくる可能性があります。最初の頃は、物珍しさもあって、多くの利用者が参加してくることが考えられます。
しかし、どの商品やサービスにおいても製造や制作のプロセスを公開して報酬を得ようとしてくると、徐々に利用者は食傷気味になり離れていってしまうでしょう。つまり、プロセスのアウトプット化とも言える事象が起きる可能性があると考えられるのです。
このような問題を回避するためにはプロセスエコノミーというビジネスモデルの基本的な考え方に立ち戻ることが必要になります。ただ単にプロセスを垂れ流しているだけのような配信などで収益を得ることも可能ではありますが、結果的にそのような方法では淘汰されてしまうことになるでしょう。
したがって、利用者が常に興味を持ってくれるようにより新鮮な情報をより速く伝える、公開する、という基本を忠実に守るようにすることと、現在のようなインタラクティブな情報交換が可能な時代に則した主催者と利用者との頻繁なコミニュケーションの実施、といったことがプロセスエコミーには必要不可欠になるでしょう。
例えば、単純なライブ配信でも興味を持ってくれるファンはいますが、そのライブ配信中にファンからリアルタイムでコメントをすることが可能で、しかも主催者側がそのコメントに反応してくれたりすれば、ファンはとても嬉しいと感じることは間違いがないと思います。
つまり、プロセスエコミーは今後も拡大をしていくと予想できるものの、ファンを繋ぎ止めておくためにはプロセスの内容だけでなく見せ方にも工夫をし続けることが重要である、と考えられます。
次に、プロセスエコノミーの将来性にはサステナビリティ(持続可能性)という観点でも検討する必要があります。ビジネスモデルには、一過性のものもありますが、重要なことはどれだけ長い期間収益を生み出すことが可能なのか、という点です。一時的に多くの顧客が詰めかけたもののブームが去ったら多くの売れ残った在庫だけが積み上がっているだけ、という状況は避けたいと多くの経営者は考えているでしょう。
プロセスエコミーにサステナビリティの観点を盛り込むためには、利用者が継続して商品やサービスの製造・制作の過程にいつまでも興味を持ち続けてもらうことが必要不可欠になります。しかし、興味を持ち続けてもらうことは非常にハードルが高いと考えられます。
毎回同じようなプロセスを見せられていたのでは、あっという間に利用者は飽きてしまうでしょうし、かといってプロセスをそうそう頻繁に変更することは簡単ではないでしょう。かと言って企業秘密に属するような情報を公開することもできないでしょうし、利用者を繋ぎ止めることは簡単ではありません。
そこで利用者にも一緒に参加しているという気持ちの共有がより重要になってくると言えます。例えば、クラウドファンディングの事例が一番わかりやすいと思いますが、インフラが整っていない国に対して学校を建設するプロジェクトのために資金を集めたいような場合では、校舎建設の進捗状況がわかるように動画を配信するだけではなく、多額の寄付をしてくれた利用者の名前が付いた教室を作ったりすることでより強いプロジェクトへの参加意識を持ってもらうことが可能になりますし、サステナビリティの意識もより強くなると考えます。
つまり、サステナブルなプロセスエコノミーへと展開するためには、利用者の参加意識を高める工夫と仕組みの構築が重要になるのです。つまり。プロセスエコノミーが将来的にも重要なビジネスモデルであると位置付けられるためには、目に見える即物的な利益だけではなく、気持ちや希望といった目に見えない利用者が感じるメリットをもっと取り込むことも必要になってくるでしょう。
最後に、従来のアウトプットエコノミーとの比較の観点からプロセスエコノミーの将来を論じてみます。確かに、ITテクノロジーの進化やプロセスへの興味が増大していることからプロセスエコノミーの規模は拡大しているものと考えられます。しかし、例えば、漫画を描いているところの配信で得られる収益と漫画の単行本の売上を比較すれば、後者の方が金額としては遥かに大きいでしょう。
つまり、いくらプロセスエコノミーが拡大したとしてもアウトプットエコミーの規模には敵わないと思われます。したがって、企業の戦略としては、アウトプットエコノミーのビジネスモデルでは掬いきれなかった利用者のニーズをプロセスエコノミーのビジネスモデルを活用した手法で捕捉することが重要になると思われます。
そのためには、アウトプットエコノミーのビジネスモデルを従来から重要だとされているポイントに注意しながら展開しつつ、同時並行的にプロセスエコノミーの観点を踏まえた商品やサービスの展開を実施することが必要でしょう。プロセスエコノミーはアウトプットエコノミーの考え方を排除するようなものではなく、相互補完的に両立させることが可能なビジネスモデルです。
従来のアウトプットエコノミーに、プロセスエコノミーのビジネスモデルの考え方をを新たに導入、追加することで我が国の経済全体が活性化することが期待できるでしょう。
まとめ
これまでは価値がないと思われていた商品やサービスの製造・制作プロセスが収益源なるという新しいビジネスモデルをプロセスエコノミーと呼びますが、このプロセスエコノミーの具体例を説明したうえで、そのメリットや拡大の背景、そして将来性などについて説明してきました。
コロナ禍で傷付いている日本経済において、プロセスエコミーの拡大は、多少なりとも新しい収益源となるビジネスを見つけている企業にとっては大いに参考になるビジネスモデルになるものと考えられます。
但し、プロセスエコノミーのビジネスモデルの採用にはビジネスの内容や種類によっては向き・不向きがあるので、慎重に検討することも必要です。そのうえで息の長いビジネスへと進化させるためにも、利用者に飽きられることのない適時適切な提供しているプロダクトやサービスの改善が必要になることは忘れてはいけません。
また、プロセスエコミーを導入すれば従来のアウトプットエコノミーを捨ててもよいというわけではありません。経済規模としてはアウトプットエコノミーの方が遥かに大きいと考えられるので、アウトプットエコノミーのビジネスモデルを利用した手法とプロセスエコエコノミーを利用したビジネスモデルを同時並行的に稼働させることが最も効果を期待できる方法だと考えます。
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