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エドテック(EdTech)とは? 概要と取り組みや課題について解説します

エドテックをイメージする画像 起業家の基礎知識

エドテック(EdTech)とは、教育(Education)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語のことです。エドテックはmテクノロジーを活用して教育環境を変革していくことを目標にしています。エドテックの概要と注目が集まる背景、エドテックの代表的なサービスの紹介、そしてエドテックの課題や将来性、などについて説明します。

 

1.エドテック(EdTech)の概要

エドテックとは、新たなデジタル技術などのテクノロジー(Technology)を駆使して教育(Education)の場をより効率的・効果的なものに革新していこうとする取り組みのことを指しています。

従来の教育というものは、基本的には受け身のもので(一部にはインタラクティブな授業を取り入れているケースもありますが)、教室に生徒が座って一方的に教師の授業を聞く形式が主流でした。

このような形式では、その授業を聞き逃してしまえば二度と同じ授業を受けることができず、また、例えその「場」にいたとしても理解度が異なる生徒に対して同じ進捗ペースで授業を実施するしかできず、教育の本質的な部分に対する不満が常に存在していたと言わざるを得ません。

このような状況に対してデジタル技術が飛躍的に進化している今日においては様々なテクノロジーを教育の場に活用することにより、これまで対応することが難しかった様々な教育に関する課題に対して解決方法を提供することが可能になってきたのです。

 

2.エドテックに注目が集まる背景

エドテックに世間の耳目が集まる理由としては、以下のような点を挙げることができます。

エドテック(EdTech)に注目が集まる理由とは

(1)教育における格差解消

(2)グローバル人材の育成

(3)STEM教育への注目

(4)教育現場における働き方改革

(5)アダプティブ・ラーニング(Adaptive Learning、適応学習)への期待

(1)教育における格差解消

本来教育を受ける機会は均等に付与されるべきですが、現実的には、家庭の経済事情で学ぶことを制限されてしまっているケースも少なくないものと考えられます。アメリカでは教育ローンが、日本では奨学金返済が、それぞれ大きな負担となっている場合も多く発生しており、本当の意味での教育機会の均等を実現することは簡単なことではありません。

また、上記のような経済的な格差だけではなく、都会と地方との教育機会の格差なども大きな問題となっています。しかし、オンラインを利用した教育機会の拡大は、コスト減にも繋がり、様々な格差を解消する方向へと弾みをつけることが可能です。

エドテック関連サービスにおいては、従来に比べて安価でサービスを提供することが可能になっていますし、地方に住んでいても都会の教室と同水準の授業を受けることも可能です。つまり、エドテックを活用することにより、経済的あるいは地理的な制約から解放されて、望んでいる教育を受けることが可能になる、と言うことができるのです。

(2)グローバル人材の育成

これからの世の中においてはグローバルに活躍できる人材の育成というのは極めて重要な国、あるいは学校や企業としての課題になります。その点においては、特に英語教育に対する注目度は今後も高まっていくものと考えられます。

既に大、学受験におけるセンター試験の廃止などが実施されており、リーディングやヒアリングといったインプット重視の学習方法から、ライティングやスピーキングというアウトプット重視の学習方法へと重視される項目が切り替わっています。

現在では、Web技術を利用したビデオ通話などのオンライン英会話、人工知能(AI)を活用した英会話学習、音声技術を駆使した発音を習得するための学習効率の向上、など、英語を学ぶ環境は大きく進歩しているといってもよいでしょう。

人工知能(AI)について、AIと労働について中小企業が考えておくべきことを徹底解説の記事もご覧ください。

(3)STEAM教育への注目

STEAM教育とは、「科学(Science)、技術(Technology)、ものづくり(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)」に関する教育」のことで、科学、技術、工学、数学、における教育分野を総称している言葉です。

STEM教育とは、アメリカで2000年代に始まった教育モデルで、今後ロボットが活躍するような世の中になった場合に、人間にしかできない創造力を活かして課題を解決することが重要になる、したがってその創造力を伸ばすような教育が必要になる、という考え方から提唱されたものです。

このようなSTEAM教育に関する考え方から、早い段階でプログラミング教育をスタートさせ、ロボットに関する学習を実施することが、現在では推奨されており、様々なスクールも開設されています。

(4)教育現場における働き方改革

学校現場における教職員の労働環境の劣悪な状況はマスコミにも何度も取り上げられ、現場の教師は常に疲弊しているといっても過言ではありません。部活動への指導などサービス残業が多くなってしまう要因はたくさん考えられるものの、多くの教職員がITの活用に疎く、業務効率を上げることが難しくなっていることも要因として挙げられるでしょう。

前述したように、一方的な授業の進め方により、生徒の学習到達度の判断が難しくなっており、結局理解が不足している生徒は置いてけぼりの状態で次に進めざるを得ないことが日常的に発生していると思われます。

そこでエドテックのサービスを導入して、例えば、教師と生徒を相互にWebで繋いでいるようなインタラクティブな状態で、全ての生徒に対して理解度を測るミニテストのようなものを導入・導入して、各生徒に対して丁寧なフォローをすると同時に、教材やテストを自分で作らなければならない、といった手間から解放することが可能になります。

また、授業そのものも動画やアプリケーションを利用することにより、生徒の関心が高まるとともに、教師側の板書やプリント作成といった時間が節約されることになり、こういく現場における業務の効率化が推進されるものと考えられます。

(5)アダプティブ・ラーニング(Adaptive Learning、適応学習)への期待

アダプティブ・ラーニング(Adaptive Learning、適応学習)とは、各生徒に対して最も適した学習内容や学習方法を提供することにより、より効率的かつ効率的に学習することができる方法のことを言います。

これまでも、生徒の理解レベルに応じて指導する方法を変えることは実施されていましたが、それは教師の経験による感覚的なものでしかありませんでした。ところが、最近では、生徒の学習データを収集・蓄積して、AI(人工知能)やアルゴリズムなどのICT技術を利用した客観的な分析に基づいて、各生徒の理解度や得意・不得意な範囲などを明確にして、各生徒に最適な参考書や問題集といった教材の提案が実施されるようになっています。

アダプティブ・ラーニングを活用することにより、生徒の学習効果を飛躍的に高めることが期待されています。これまでは、経験が豊富な教師であれば、この生徒はどこに苦手分野があって、こういった学習方法が効果的である、ということが生徒に提案できたのでしょうが、アダプティブ・ラーニングを利用すれば、あまり経験のない若い教師であっても、科学的な手法によって、各生徒に対する的確なアドバイスをすることが可能になると期待されています。

 

3.エドテックのサービス事例

エドテックの概要と注目を浴びている背景について説明してきましたが、ここでは具体的なエドテックのサービスについて紹介します。

(1)オンライン講義(e-Learning、イー・ラーニング)

インターネット回線を利用して授業や研修を受けるe-ラーニングは多くの人が受講したことがあるかもしれませんが、このようなオンライン講義もエドテックを代表する学習方法である、と言うことができます。

オンライン講義の最大の利点は、講師も生徒も同じ場所にいる必要がない、というところにあります。自宅からでも講義に出席することが可能ですし、場合によっては海外の大学の授業を日本に居ながらにして受けることもできるのです。

人気の高い講師の授業の場合は、大勢の生徒が教室に押し掛けてしまい、授業に参観するための座席確保に大変な苦労をしなければならないようなケースも考えられますが、オンライン授業であれば、自分の好きな場所で快適に人気講師の授業を受講することも可能なのです。

また、オンライン授業を録画しておくことで、欠席した場合の補講として利用することもかのうですし、理解度が不足している項目の授業を自発的に再度勉強することもできるようになります。

これまでのオンライン講義のイメージとしては、一方的に講師が説明する内容を生徒が聞く、というものでしたが、デジタル技術の発達により、講師が生徒に質問をして生徒が答える、ということをリアルタイムでできるようになっており、オンライン上でもインタラクティブなコミニュケーションが可能になっています。

(2)学習管理システム(LMS、Learning Management System)

LMSとは、オンラインを利用して教材やプリントなどの配布を実施したり、各生徒の学習進捗状況を管理するシステムのことを言います。前述したe-ラーニングを活用するためのプラットホームのことをLMSと呼ぶこともあり、受講生の学習効率を向上させるためのツールとして位置付けられています。

従来は、DVDCDを利用してパソコン学習を進めていたのですが、生徒の学習意欲を高く保つことが難しいこと、受講生の学習状況の管理が困難であること、といった課題が挙げられるようになっていました。

そこで、以下のような機能を持つLMSの導入や活用が活発になってきたのです。

LMSの機能>

①学習する教材の管理

②講座の進捗管理

③テストの実施や管理状況の設定

④受講者の情報に関する管理

⑤受講した記録の管理

⑥レポートの作成・提出

⑦双方向のコミュニケーション

①学習する教材の管理

プリントやCDDVDなどを配布することに比べれば、オンライン上の配布の方が手間もコストもかからないというメリットがあります。また、教材を配布(公開)するタイミングもコントロールすることが可能ですし、配布(公開)対象を限定することもできます。

したがって、各生徒の学習進捗度に合わせて、適切な内容・タイミングで教材の配布(公開)を制御できるのです。

②講座の進捗管理

次の講義のために配布・公開すべき教材の準備や配布(公開)タイミングを、今実施している講義の進捗状況を勘案して、遅らせたり早めたりすることが柔軟に行えるようになる点もLMSのメリットだと言えます。

③テストの実施や管理状況の設定

LMSを利用することで、テストの合否ラインの設定やテスト結果の分析などが簡単に行えるようになります。これまでのe-ラーニングでは、各受講者の弱点や次に受けるべき講義内容の提案などの丁寧なフォローが可能になるのです。

④受講者の情報に関する管理

各受講者に対する詳細な分析に基づいて、同じような弱点(理解不足の項目が共通している、など)を持つグループを設定して、共通して理解度を向上させるような教材を提供したり、必要であれば個人指導に役立てたりすることも可能です。単に個人の情報を保有するだけでなく、分析して、各人の今後の学習はどうあるべきか、といった提案までサポート可能なシステムがLMSなのです。

⑤受講した記録の管理

これまでの受講者に関する情報を全て管理することが可能です。どのような講義を受講してきたのか、テストの結果はどうだったのか、といった情報を即座に一覧することが可能になっており、今後の学習の参考にすることができます。

従来のe-ラーニングのシステムにおいては、上記のような情報は学習者側で保有されていましたが、LMSにおいては学習の提供者側に情報が蓄積されている点に違いがあるのです。

⑥レポートの作成・入手

LMSでは、グループ単位でも個人単位でも、情報の管理・分析が可能です。個人レベルでテスト結果を分析してレポートを作成して入手することは当然に可能ですし、その個人レベルで収集した情報をクラス単位で分析することも簡単にできてしまうのです。

⑦双方向のコミュニケーション

LMSを利用することで、講師から受講生へ、という一方向のコミニュケーションだけでなく、受講生から講師へ、というコミニュケーションを実施することが可能になります。このような双方向の(インタラクティブな)コミュニケーションをすることで、一方的な講義や教材だけでは気付くことができなかったポイントを発見する可能性があります。

 

4.教育ソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)

教育ソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)とは、学校(教師)、保護者(親)、生徒、におけるコミュケーションを活発に行うためのツールのことです。以前は、クラス内に連絡網が整備されて、必要であればその連絡網を使って情報を伝えていたものですが、現在では個人情報に関する重要性の認識が格段に高まっていることから、クラスの連絡網、といったものは作成することは難しくなっています。

そこで、ソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)の仕組みを利用して、以前の連絡網に代えているケースが相当に増えているものと考えられます。宿題を出した連絡、テストの範囲や期日の連絡、災害が発生した時の緊急連絡、など、迅速に安全な周知が可能になっていると言えます。

また、教師間でのSNSや他校とのSNSなど、情報の共有においては、以前に比べてはるかに手軽に素早く行えるようになっている、と言うことが可能です。ただし、SNSの場合にはIT情報の漏洩管理に関する対策などに留意することが必要になる点には留意しましょう。

前述したように様々なエドテックのサービスが提供されていますが、どのサービスにおいても利便性の向上とコストの削減・抑制といった結果に繋がるようにサービス内容が設計されているように思えます。どちらかと言えば、教育現場というものは、技術革新や業務効率化といった一般企業では当然の目標からは遠い存在だと思われてきました。

しかし、少子高齢化が急激に進んでいる我が国においては、教育においても最新のテクノロジーを導入・活用して、世界との競争に勝ち抜くような人材を育成することが必要不可欠であると考えられます。したがって、エドテックに代表されるような、これまでの常識を覆すような新たな考え方を教育の世界に取り入れていくことは、日本の教育力を強化するとともに、多くの人が学習することにおける積極的な参画を促す、という点でも重要だと考えられるのです。

教育は多くの人々にとって重大な関心事でもありますので、全ての人にとって役立つことになるであろうエドテックを今後推進するためには、現在認識されているエドテックの課題と将来性について、把握・分析しておくことは無駄にはならないと思われます。

 

5.エドテックの課題と将来性

エドテックを推進していくためには多くの課題が考えられますが、「教育」そのものが抱えている課題とエドテック推進に関する課題について解説します。

(1)教育に関する課題

教育が抱えている最大の問題は少子化による生徒の減少でしょう。小学校の児童数は毎年減少を続けており、例えば、最も児童数が多かった1958年は約1,349万人でしたが、2019年には小学校の児童数は約637万人と約半分の人数まで減っています

その一方で教育に関する市場規模は26,794億円(「教育産業白書2019年版」矢野経済研究所、による)と、2015年からほぼ横ばいの状態が続いています。これは少ない子供の数に対して教育機会を獲得しようとする競争が年々激化していることを意味しているのです。

また、東京などの都市部においては義務教育課程においても私立学校を選好する家庭が増えており(依然として、国立学校の人気は高いものの)、学校以外の教育機会(学習塾など)における費用は毎年上昇しています(文部科学省の「子供の学習費調査」によると、幼稚園や小学校に通う子どもの学校外学習費は、平成28年度の調査時に比べると、平成30年度では約3万円増加しています)。

また、国(文部科学省)からは、小学生のうちから英語やプログラミング学習を実施するように求められています(正確に言うと、英語教育は2020年の新学習指導要領の対象となっていますが、プログラミングは対象にはなっていません。しかしながら、プログラミングは「教科化」される(教科書が配布されて評価の対象となる)ことにはなります。)。

現実的には、全国の小中学校に一人一台のPCを配置する予算措置が簡単ではないこと、どのようなスペックのPCが必要になるのか不透明なこと、などから、プログラミングを2020年度の新学習指導要領に基づくカリキュラムに組み込むことは時機尚早と判断されたのでしょう。

しかし、前述したグローバル人材の育成には英語とITに関する教育が必要である、という認識が一般的になっている、ということを示す証左であると言うことができるのです。つまり、教育の提供に関して激しい競争が行われている中で、さらに英語やITなど新たな分野に対する教育機会の提供も必要になっている、という課題を挙げることが可能なのです。

(2)エドテックに関する課題

次いで、わが国においてエドテックを推進するための課題について述べてみたい。先ず挙げられる課題はエドテックを推進するためのICT環境の整備が遅れている、という点です。学校のICT化を促進するために、20182022年度の間に年間1,800億円を超える予算措置が図られていますが、具体的な投資を促すような仕組みがないため、各自治体の間でICT投資をお互いに競争させるような仕掛けを導入していくことが必要になるでしょう。

そのためには、エドテック導入に関するコストの高さがネックになる、という課題へ対応も必要でしょう。そのためには、文部科学省のみならず、エドテックや教育サービス業という観点では経済産業省と、ICTの環境整備という観点では総務省と、共に連携することにより、学校におけるICT整備やエドテックに関する調達コストの高さの原因や理由を明らかにして、対策を検討する必要があるものと考えます。

また、エドテック推進に関する大きな課題のひとつとして、各自治体によって情報セキュリティ・ガイドラインの解釈が異なっていることが挙げられ、この課題に対する早期の解消が求められています。例えば、「学校教育においてクラウドを積極敵に活用する」という方針を明示して、できること、できないこと、をガイドラインとして明確に示すことが必要になるでしょう。

また、前述したSTEAM教育を促進することも重要な課題のひとつであると考えられます。具体的には、中高生が本気でチャレンジできるようなコンテンツが少ないこと、実業界によるSTEAM学習プログラム(含む、プログラミング)創出への協力が必要であること、などを理由に、STEAM学習プログラムの充実を図ることが重要であると考えます。

一方で、現状では、STEAM学習を指導することが可能な指導者が不足している、という課題もあります。そのため、教育者向けの能力開発プログラムを早期に開発すること、能力開発プログラムを教職大学院や教職課程へビルト・インすること、外部人材による副業や兼業を含めた積極的な活用に向けた教員免許制度の検討、などの対策が必要になると思われます。

(3)エドテックの将来性

<エドテック市場の今後の方向性>

学習方法

学習内容

学習領域

個別で学習する方法の拡大・進展

求められる人材像の変化とともに学習内容も変化

フィットネス、音楽教育、料理教室、などジャンルが多様化

オンラインでインプットはで実施して、リアルな「場」でアウトプットを行う、という講義形態の変化

問題解決型や探求心旺盛な人材の育成が要求されるようになることから、実践的な教育及びテクノロジーによる補完が必要になる

今後ますます教育の対象領域は拡大していくと考えられている

①今後の学習方法の傾向(トレンド)

これまでのように、年齢が同じ生徒が同じ教室で同じ授業を受ける、という画一的な学習スタイルは大きく変わっていくものと考えられます。個人個人で習熟度は異なっているので、各自の状態に適合した教育を受けられるようになることが必要でしょう。

そこで個別学習方式により、個々人に合わせた教材やテキスト、問題集などの提供が可能になり、ひとりひとりの学習ペースの管理もできるエドテックの導入・推進が必要になるものと考えられます。

また、これまでのように教師の話を一方的に聞くような授業スタイルは廃れていくものと思われ、今後教師は授業のファシリテーター(進行役)としての比重がおもくなっていくものと考えられます。

座学のようなインプットの授業はオンラインに任せて、グループワークなどを通じてアウトプットする作業が必要になるので、ファシリテーターの存在が極めて重要になる、というわけです。

そういう意味においては、これまでとは教師に求められる能力やスキルも変化せざるを得ません。多くの知識を保有していて、受け持っている生徒の多くを受験の成功に導くとともに学生としての人間性の成長に寄与する、という従来の教師像は、否定こそされはしないでしょうが、IT技術に関する知識や使用に長けていて、客観的かつ中立的な分析結果に基づいた指導により各生徒に適した教育を実施する、という面がより求められることになるでしょう。

昔の熱血教師のように生徒個人の生活に踏み込んでまで生活指導をするような時代ではなく、科学的な手法を活用して各生徒にとって最適な学習方法を提案することが、エドテックが必要とされる時代の教育手法となるでしょう。

②学習内容の傾向(トレンド)

時代とともに求められる人材像というものは変化していきます。多くの企業が海外進出を目指していたような時代であれば、英語を中心に外国語を使えるバイリンガルな国際人材がもてはやされていたこともありましたが、現在では英語を使えるだけではさほど高くは評価されず、もうひとつ第二外国語を身に付けているトリリンガルな人材である必要が言われています。

また、従来は文系の人材に対してはコンピュータ関連の知識やスキルを求めることはなかったのですが、現在では文系学部卒であってもプログラミングに関する知識やPMOProject Management Office、プロジェクト・マネジメントを実施する組織のこと)に関するスキルなどが要求されるケースが見受けられます。

つまり、私は文系だからわかりません、などと言っていると、どんどん仕事のチャンスや機械を失っていくことになりかねないのです。したがって、学習内容は今の状況に合わせて変わっていくことが当然だと思っておく必要があるのです。

次いで、言われたことだけをやる、という人材は今後不要になってくるかもしれません。定型的で判断が不要な仕事であれば、ロボットでも務まるからです。特にAIが進化している昨今においては、例えば、銀行の窓口業務などはますます仕事量が減っていくものと考えられます(現在では「テラー営業」という窓口担当者でも営業の一翼を担うことが期待されている、という動きがあることは付言しておきます)。

つまり、好奇心が旺盛で、従来のやり方はどう変えればより効率的になるのか、といった問題解決に対する意欲を持っているような人材は重宝されることになるでしょう。したがって、より実践的な教育が必要になると同時に新しいテクノロジーに常に触れることができるような学習環境にあることが、これからの人材育成には重要だと考えます。

③学習領域の傾向(トレンド)

今後の学習領域は多種多様なものが対象となり、大きく拡大していくものと考えられます。これまでは単なる趣味である、としか認識されていなかったようなものであっても、利用者のニーズが高ければ学習領域としてカテゴライズされることになり、ビジネスとしても成り立っていくものなのです。

例えば、料理に関しては、これまで料理教室などという形で学習することはありましたが、オンラインによる料理のレッスンを開催することにより、これまで以上に効率的かつ低コストで勉強することが可能になります。

そういう意味においても、エドテックを利用した学習領域の拡大は、学生のみならず主婦層などにもメリットをもたらしていると言えるのかもしれません。

 

<まとめ>

エドテックは、教育分野におけるテクノロジーの活用、という意味ですが、これまで説明してきたように、様々な課題があるものの、それらの課題への対策を実施することで将来にも大きな期待ができるサービスの導入・開発が可能であると思われます。

現時点では、ICT環境の整備、というエドテック活用のための入り口段階の準備が道半ばであ、という面も否めませんが、将来的に世界と競って日本が勝ち抜くためには、エドテックを活用して人材を育成することが不可欠であると考えます。

デジタル技術の浸透を加速させることにより人々の生活をより豊かで良質なものへと『変革』するDX(デジタル・トランスフォーメーション)について、DXとは? 概要と推進するための手順を解説しますの記事もご覧ください。