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流動資産とはどんな指標?流動比率を用いて詳細な財務分析を

流動比率を分析するイメージ画像 経営分析

流動資産とは貸借対照表の資産の部でどのような位置付けとして認識されているものなのでしょうか。他の資産とはどのような相違点があるのでしょうか。また、流動資産を利用した財務分析には具体的にどのような方法があるのでしょうか。本稿では、流動資産に関する上記のような疑問について詳しく解説します。

 

1.流動資産とは

流動資産は貸借対照表(バランスシート、Balance Sheet、B/S)の貸方(左側)の資産の一部を構成する勘定科目です。資産には、流動資産の他に、固定資産、繰越資産があります。この内、流動資産とは事業活動において発生した資産で、原則として、1年以内に換金(現金化)することが可能な資産のことを言います。

流動資産は、(1)当座資産、(2)棚卸資産、(3)その他流動資産、の3種類に区分できます。貸借対照表においても、この順番で記載されることになっています。

(1)当座資産

当座資産とは、具体的には現金、預金、売掛金、受取手形、有価証券などを指しており、流動資産において、現預金そのもの或いは最も換金(現金化)しやすい資産のことを言います。

(2)棚卸資産

棚卸資産とは、会社の倉庫などに保管されている商品のように販売活動を通じて現金を得ることができるような、いわゆる在庫のことを言います。前述の流動資産の定義でも説明しましたが、原則として1年以内に販売をして現金化することが可能な在庫を棚卸資産と呼びます。

したがって、あまりにも多過ぎる在庫を保有している場合(過剰在庫)には、製造→在庫販売、といったビジネスの流れが滞ってしまい、売上が立たなくなる可能性があります。

例えば、年末商戦に向けて一時的に在庫を多めに保有する、などといった販売戦略に基づく在庫増加であれば良いのでしょうが、自社にとっての適正在庫量を常に、あるいは定期的に認識しておくことは重要だと考えられます。

また、いつまでも棚卸資産の状態にある場合には、長期滞留品として会計的な取扱を変更する必要があり得ます。具体的には、流動資産から固定資産に振り替える、あるいは費用化して評価損を計上する、といった処理が必要になります。

(3)その他流動資産

その他流動資産とは、当座資産と棚卸資産に含まれない流動資産のことを言います。具体的には、短期貸付金(1年以内に返済しなければならない貸付金)や未収金(会社の本業取引以外の資産の売却で発生した債権)などを言います。

 

2.流動資産と固定資産との違い

前述したように、流動資産とは1年以内に換金可能な資産のことを言いますが、これに対して固定資産という資産も存在します。資産には繰越資産という資産もありますが、固定資産とは流動資産以外の資産と捉えてもよいでしょう。

繰延資産の本質は費用であり、これまでに対価の支払が完了している、あるいは支払義務が確定しており、そのサービスの提供は受けたものの、その効果が将来にわたって実現されるような費用のことで、次期以降にわたって繰延べられた資産のひとつです。

具体的には、固定資産とは、(1)有形固定資産、(2)無形固定資産、(3)投資その他の資産に分けられます。簡単に説明すると、(1)有形固定資産は目に見える資産、(2)無形固定資産は目に見えない資産、(3)投資その他の資産は事業目的以外で投資する資産のことです。

もう少しわかりやすく例を挙げると、会社が保有している土地や建物などは有形固定資産となります。また、会社が保有している特許やのれん(顧客への知名度や品質などのプレミアム分の価値のこと)は無形固定資産となります。

そして「投資有価証券」などは、投資その他の資産となります。流動資産における「有価証券」は満期までの期間が1年未満であったり、短期売買目的の有価証券をさします。

このように、短期間での保有を目的として換金(現金化)しやすい資産を流動資産と呼び、長期間保有を目的とする資産を固定資産と呼ぶ、としています。短期間、長期間の区分は、ワン・イヤー・ルール、とも呼ばれ1年未満か1年以上かで区分しています。

それでは、企業としては、流動資産と固定資産のどちらを多く保有していた方が高く評価されるのでしょうか。

流動資産を多く保有している会社は、資産の流動性が高い(現金化しやすい)ので、商取引における支払余力が高く、一般的には取引の安全性が高い企業であると言えます。しかし、一方で、現預金の出入りが激しいことが想定されるので(長期間の担保設定などには向かい資産が多いので)、支払いサイトの長い取引にはリスクがあります。

つまり、いつの間にか保有していた流動資産が現金化されて社外流出してしまっている場合もあり得ます。したがって、保有資産の確認は度々実施することが必要になります。

逆に、固定資産を多く保有している企業の場合は、即現金化して支払ってもらうことは難しい可能性があります。例えば、土地の売却にしても、時間がかかることが十分に想定されるので、すぐ現金が必要な取引先にとっては、適切な担保ではないかもしれません。

しかし、一方で、金融機関などからすれば、会社が保有している固定資産に対して抵当権を設定することで、融資をして以降もじっくりと会社の成長に関して相談に乗れるというメリットもあります。

つまり、企業にとっては流動資産と固定資産のバランスを考えて、それぞれの資産を保有することが望ましいと思われます。以下では、前述した会社の支払能力に関する指標について説明します。

 

3.流動比率とは

流動比率とは、流動資産と流動負債のそれぞれの金額から求めれれる、会社の短期的な支払能力を表す指標のことです。

流動比率を求める算式は以下の通りです。

流 動 比 率  = 流 動 資 産
流 動 負 債

前述したように流動資産とは1年以内に換金可能な資産のことで、流動負債とは1年以内に支払う必要がある負債のことです。つまり、流動負比率とは、手持ちの流動資産でどのくらいの流動負債の支払がカバーできているのかを表す指標なのです。

流動負債が1以上(百分率で表示すれば100%以上)であれば、現在保有してる流動資産で全ての流動負債を支払うことが可能であり、さらに支払い余力があることを示しています。

反対に流動比率が1未満(100%未満)の場合は、手持ちの流動資産では流動負債の支払いに対応することができず、資金がショートする可能性があることを表しています。

但し、流動比率だけを見て会社の支払い余力を決めつけてしまうのは早合点になってしまう可能性があります。例えば、流動資産には必ずしもすぐ換金ができないかもしれない棚卸資産や前払費用も含まれています。

したがって流動比率が1を上回っていたとしても、流動資産の内容を詳しく確認しておくことが必要な場合もあるのです。

また、逆に流動比率が1を下回っているような場合でも、既に銀行などから資金調達の目途がついているような場合や日々現金が入ってくるようなビジネス(個人相手のスーパーマーケットなど)をしているような場合であれば、一時的な現象に過ぎないかもしれません。

この場合も会社の資金繰りについて詳しく確認することが必要になるでしょう。

会社のキャッシュフロー分析にとって重要な指標の一つで、流動資産とも密接に関係のある「当座比率」については、「当座比率とはどんな指標?キャッシュフロー改善に直結する考え方とは?」の記事で詳細に解説しています。

 

まとめ

このように流動資産とは、会社にとっては現金化することが容易な資産であり、会社の資金繰りにおいても重要な位置付けを占めている資産です。どのくらいの流動資産を保有していれば良いのか、は会社の置かれている状況によっても異なりますし、将来的な事業戦略にもよるでしょう。

しかし、流動資産とは会社にとっても安全全としての役目があるのも事実なので、会社がどのくらいの流動資産を保有していて、すぐに現金化できる資産はどのくらいあるのか、を適宜適切に認識しておくことは、経営者にとって重要なミッションと言えるでしょう。

資金繰り表の作成方法についての考え方については、経営者必見!資金繰り表の作り方をわかりやすく解説!」の記事を読み込んで勉強しておきましょう。