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社会保険資格喪失届の 提出方法について徹底解説

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従業員が退職した場合の手続として、社会保険の資格喪失届を提出しなければいけません。資格喪失届は従業員の退職から5日以内に提出する必要があるので、事前にどのような手続をしなければいけないのかを把握しておくことは重要です。本稿では、資格喪失届を提出する際に必要となる書類や具体的な手続に関して解説します。

1.資格喪失届とは

従業員の退職は、会社と当該従業員の間だけで完結するようなものではなく、会社の従業員の年金や健康保険を提供している日本年金機構も、どの従業員が辞めたのかという情報は、提供している年金や健康保険のサービス内容やサービス量が変動する可能性があるので、把握しておくことが必須となっています。

このような場合に、従業員が退職したことを会社以外の日本年金機構などの法人に周知するための届出を、「資格喪失届」と呼んでいます。退職以外の場合でも、例えば、従業員が死亡した場合や転勤した場合などには「資格喪失届」の提出義務があります。

(1)資格喪失届の提出期限

資格喪失届の提出期限は、資格を喪失した日から5日以内となっています。もし、6月1日が資格喪失日なのであれば、6月5日までに提出することが必要です。5日以内に提出というルールは明確になっていますが、そのスタートとなる資格喪失日を確定することには少し説明が必要です。

①従業員が退職、または死亡した場合

従業員が退職または死亡により、社会保険の受領資格を喪失するのは、原則として、当該従業員が退職をした日、あるいは死亡した日の翌日となります。退職または死亡した当日の午前0時の時点では、まだ従業員は退職あるいは死亡していないため、当日の間は受領資格が有効である、と見なされるためです。つまり、例えば、7月31日付で退職をした場合の資格喪失日は8月1日となります。

②その他の場合

上記①のケース以外にも様々な場合が考えられます。例えば、従業員の転勤による資格喪失日の場合は、転勤の「当日」が資格喪失日となります。退職や死亡のケースのように翌日ではないため、取り扱いには注意してください。

また、従業員が一定の年齢に達した場合の資格喪失日は、年齢によって異なっています。70歳で厚生年金保険の資格を喪失する場合には、資格喪失日は70歳の誕生日の「前日」になっています。これに対して、75歳になって健康保険の資格を喪失する場合は、資格喪失日は75歳の誕生日の「当日」となっています。

上記のように、様々なケースに応じた資格喪失日の違いを認識したうえで、資格喪失届を提出する必要があるのですが、どのような場合であっても、提出期限を超過することのないよう、なるべく早く提出することが望ましいでしょう。

 

(2)資格喪失届の届出先

資格喪失届は、日本年金機構に対して提出することになります。ただし、年金機構本部に郵送するのではなく、会社を管轄している年金事務所や事務センターに必要書類を郵送するか、あるいは直接窓口に持参することが必要です。

必要事項を記入したファイルを、印刷して紙で提出することも可能ですしし、CDDVDなどの電子ファイルでデータとして提出することも可能です。

2.資格喪失届の提出時に必要な書類

資格喪失届の提出時に必要な書類は、保険の種類や従業員の雇用状況によって様々なものがあります。

(1)全員に共通する書類

資格喪失届そのものは、当然ながら、どのような場合であっても必要です。日本年金機構のウェブサイト(参考URL:https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150407-02.html)において資格喪失届様式をダウンロードすることが可能です。

実際の記入例も掲載されているので、その記入例に沿って記入しましょう。ミスが一箇所でもあると受理されなかったり、再提出を求められたりすることが考えられるので、提出する前に複数回確認をした方が良いでしょう。以下が資格喪失届に記入する主な情報です。

資格喪失届に記入する情報(一覧)

  • 対象となる従業員の氏名と生年月日
  • 事業所整理番号
  • 従業員整理番号
  • 年金手帳の基礎年金番号
  • 退職などの事実が発生した年月日
  • 資格喪失年月日
    (必ずしも退職などの事実が発生した年月日と一致しないことは前述の通り)
  • 資格喪失原因
    (資格喪失原因の種類ごとに丸を囲む方式で、退職と転勤の場合は「その他」を囲む)
  • 標準報酬月額

(2)資格喪失日から相当の日数が経過した後に届け出る場合

資格喪失届における「資格喪失年月日」に記載した資格喪失の日が、届書の受付年月日から60日以上遡る場合を検討してみましょう。つまり、資格喪失日から60日以上の期間を空けて、書類を提出をせざるを得なかった場合です。

このような場合には、資格喪失届だけでなく、資格喪失の事実が発生した日付の客観的に確認できる証拠書類(エビデンス)が必要です。当該従業員が、会社役員ではなく、一般の従業員の場合には、退職した月の賃金台帳のコピーや出勤簿のコピーなどが、エビデンスになるでしょう。

また、対象従業員が役員の場合には、株主総会の議事録や役員変更登記の記載がある登記簿謄本のコピーなどがエビデンスになりますが、これらに準ずるものがあれば、他の書類であっても受理されるでしょう。

(3)60歳以上になった従業員が退職して、その日のうちに再雇用されるような場合

60歳でいったん定年退職という形式を取ったものの、即日で再雇用さるようなケースははどうでしょうか。このようなケースでは、下記の2つの方法のどちらかで書類を提出することが必要です。

  • 退職日の確認が可能な「就業規則、退職辞令のコピー」と、継続再雇用が確認できる「雇用契約書の写し」の双方を併せて提出
  • 退職日および再雇用された日に関する事業主の捺印のある証明書を提出

当然ながら、再雇用が成立しているため、資格喪失届と同日付の資格取得届は提出する必要があります。

(4)全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)受給者の場合

2種類の社会保険のうち、協会けんぽに加入している会社の場合には、以下の書類が必要ですす。

  • 健康保険被保険者証(本人分と、家族など被扶養者分の両方)
  • 高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証(該当する人のみ)

全ての協会けんぽ受給者が必ず提出する書類は「健康保険被保険者証」です。また、条件によっては、上記の2番目の追加書類が必要となる場合があります。もし、書類を失くしてしまったような場合には、資格喪失届に紛失理由を記入するか、「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」という別の書類を合わせて提出しなければなりません。「健康保険被保険者証回収不能・滅失届」は、前述した日本年金機構のウェブサイトでダウンロード可能です。

(5)組合管掌健康保険(組合健保)受給者の場合

もう1種類の社会保険である、組合健保を採用している会社の場合であれば、資格喪失届の他には提出が必要な書類はありません。この社会保険では、健康保険被保険者証を健保組合に返却することが必要なので、年金機構に書類を提出する必要がないからです。

 

<まとめ>

会社を退職する場合には、当該従業員と会社の間で退職の合意があれば、そのまま退職できるわけではなく、年金や健康保険などについても退職するということを共有する必要があります。そのために資格喪失届が必要になるのですが、資格喪失日の確認など細かい部分にもチェックが必要となることを忘れないようにしましょう。