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電子定款の作成や認証の方法について解説します

電子定款の作成や認証の方法について解説します 起業家の基礎知識

会社を設立する時には「定款」が必要になります。定款とは、会社の目的や組織、活動、業務執行などについて基本的な規約や基本的な規則を定めたものです。定款は紙ベースの定款だけではなく、PDFで作成した定款を利用することすることも可能で、このような定款を電子定款と言います。本稿では電子定款の作成方法や認証方法などについて説明します。

1.電子定款のメリットとは

定款とは会社の目的、業務執行、組織などの基本的な規則が記載されているもので、定款に記載されているかどうかで法的効力が異なってしまうような内容もあるので、会社を設立する際には必ず作成・認証が必要です。元々は書面による定款のみが認められていましたが、現在ではPDF化した電子定款が認められています。

電子定款のメリットは、収入印紙代(紙ベースの場合は4万円が必要)が不要になるため、コスト的なメリットを挙げることができます。ただし、電子定款の作成にはICカードリーダライタやPDF編集ソフトが必要となり、これらを自分で準備するとなると、紙ベースの定款作成費用とさほど変わらないコストがかかってしまう可能性があります。

もし、ソフトなどを保有していない場合には、司法書士などに電子定款の作成代行を依頼することは可能です。ソフトなどを準備して自ら電子定款を作成する場合と、電子定款の作成代行を依頼する場合と、紙ベースの定款を作成する場合、の3者の費用や手間を比べたうえで最も自分に適している方法を選択することをおすすめします。

(参考:日本公証人連合会ホームページより、「定款等記載例」:http://www.koshonin.gr.jp/format

 

2.電子定款の作成方法

それでは、電子定款の作成方法について説明します。手続の流れは下表のようになっています。

電子定款作成方法の流れ

(1)定款を作成

(2)定款をPDFファイルに変換

(3)マイナンバーカードの取得

(4)電子証明書の交付手続

(5)ICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み込み

(6)PDF化した定款に電子署名を挿入

以下に、手続内容について詳しく説明します。

(1)定款を作成

電子定款を作成する場合でも、最初は定款の原本を作成する必要があります。当然ながら、定款の内容が存在押していなければ、その内容を電子化することは不可能だからです。この際に作成した定款を、事前にFAXなどで公証役場で確認してもらっておくと、不受理・差戻といったことを避けることができます。

(2)定款をPDFファイルに変換

多くの場合では、定款作成はMSワードなどの文書作成ソフトを利用して作成することになると思われますが、電子定款はPDFで作成する必要があります。電子定款を作成する時にPDFに変換するには、電子署名を挿入できる機能が付いているソフトを利用する必要があります。

PDFへの変換が可能で、電子署名の挿入もできるソフトで代表的なものは、Adobeの「Adobe Acrobat」が有名です。上記以外にもいくつか利用可能なソフトがありますが、各種機能の説明や電子署名の挿入方法なども詳しく解説されていることもあり、多くのユーザーが存在しているようです。

(3)マイナンバーカードの取得

前述したようにり、電子定款の作成には電子署名を挿入しなければいけません。電子署名を挿入するには電子証明書の認証が必要となりますが、そのためには電子証明書付きのマイナンバーカードの取得も必要です。

以前は、住民基本台帳カードが電子証明書の申請には必要だったのですが、住民基本台帳カードはマイナンバー制度の開始に伴って新規発行が終了となっています。新規発行する場合にはマイナンバーカードの発行が必要なので注意してください。

(4)電子証明書の交付手続

マイナンバーカードを取得できたら、電子証明書の発行・交付手続をします。この手続により、電子証明書を利用することが可能になります。

(5)ICカードリーダライタでマイナンバーカードを読み込み

取得した電子証明書は、マイナンバーカードのチップ内に保管されているので、電子証明書を利用するためには、マイナンバーカードのチップを読み込むことが必要です。この読み込みに必要な機器が「ICカードリーダライタ」というものですが、マイナンバーカードの読み取りが可能なものとそうでないものあることには注意してください。

詳細は公的個人認証サービスのポータルサイト(参考URL:https://www.jpki.go.jp/)に記載されているので確認してください。

(6)PDF化した定款に電子署名を挿入

電子証明書を利用するためには、「利用者クライアントソフト」のダウンロードが必要となります。このクライアントソフトを利用することにより、電子署名を定款に付することが可能になります。「利用者クライアントソフト」についても、公的個人認証サービスのポータルサイト(参考URL:https://www.jpki.go.jp/)に記載されています。

 

3.電子定款の認証方法

電子定款は、認証されなければ効力が生じませんので、「電子定款の認証」という手続が必要となります。

(1)オンラインで申請

電子定款の認証のためには、「登記・供託オンライン申請システム」というサイト(参考URL:https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/)から申請手続を行うことが必要です。このサイトを利用するためには利用者情報の登録が必要なので、まずは登録を完了しましょう。そのうえで、サイトから申請用ソフトをダウンロードして、電子定款を送信します。

(2)提出後、公証役場にて定款を受取

  1. 1.の手続で提出は完了しますが、その後直接公証役場へ赴いて、定款のデータを受領することが必要です。公証役場に行く場合には、電話での予約が必要なので、注意してください。定款を受け取る際に必要な以下のような持参物を忘れないようにしましょう。
  • USBメモリ
  • 定款を印刷したもの
  • 発起人の印鑑証明書
  • 電子署名をした発起人以外の委任状
  • 認証手数料など(約5万円)
  • 身分証明書
  • 印鑑

4.電子定款を紛失してしまった場合

何らかの理由で電子定款を紛失してしまった場合であっても、定款は再発行・再作成が可能ですので、大丈夫です。会社設立後、5年以内であれば法務局で定款を閲覧することが可能です。会社設立の際に公証役場で認証された電子定款は、会社設立時から20年間は、認証された公証役場に20年間保存されることになります。

設立後の定款の保存期間は、紙ベースの定款であっても電子定款であっても20年間と変わりませんが、保存料金に関しては、紙ベースの定款は無料なのに対して、電子定款の場合は300円の料金がかかってしまいます。

中小企業の場合には、様々な理由により、会社保存用の定款を失くしてしまうようなケースがあるようです。紛失してしまった場合の定款の謄本取得手続は、認証された定款のコピーや公証人の認証手数料の領収書などが手元に残っている場合で、認証番号と認証した公証人の名前が判明しているようなケースでは、公証役場でその情報を申し出て、交付申請をします。

上記の方法が最もスムーズに交付してもらうことが可能でしょう。もし、認証番号や認証した公証人の氏名が分からない場合には、認証された年と会社名を申し出て探してもらうことになります。このような場合だと多少は時間がかかってしまうかもしれません。特に認証日から数年が経っているような場合には、倉庫まで行って探してもらうことになるからです。

したがって、定款の認証が終了したら、認証番号や公証人の氏名を控えておくとよいかもしれません。あるいは、あらかじめ認証時に多めに謄本の交付請求す方法も考えられます。

 

<まとめ>

電子認証は、印紙代が節約できるものの、必要な機器を自前で揃えるとなると結果的には紙ベースの定款認証と変わらない費用がかかってしまう可能性があります。費用だけではなく、手間や時間なども勘案したうえで自分、あるいは自社にとって最も最適な方法を選択することが大切です。