同一労働同一賃金は中小企業にも影響する?考えておくべきことを徹底解説

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202042日より働き方改革の一環として、「同一労働同一賃金」制度が全国一斉に施行されます。この制度は、別名「パートタイム・有期雇用労働法」とも呼ばれており、同じ仕事に就いている限りは、正社員であるか非正社員であるか、を問わずに、同一の賃金を支給するという考え方に基づいています。

本稿では、同一労働同一賃金の度内容やメリット・デメリット、導入に関する注意点、中小企業における対応方法、などについて詳しく解説します。

 

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1.同一労働同一賃金とは

日本政府が推進してする「働き方改革」の一環でもある、「同一労働同一賃金」の実施が目前(202041日)に迫っています。これまでも労働基準法や男女雇用機会均等法などの各種労働法規に基づいて、様々な差別の禁止や待遇の改善が進められてきました。

そして、今回の同一労働同一賃金に関する各種法改正によって、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に生じている不合理な待遇差別の禁止、が明確となります。この措置により、多くの企業においては同一労働同一賃金の実現に向けて対策を実施する必要に迫られることになります。

特に多様な雇用形態が存在しているような企業では、パートやアルバイトなどの非正規雇用の労働者から正規雇用の労働者との待遇格差について説明を求められた場合にどう対応するのか、さらには人事制度の改定などの対策が必要になる可能性も考えられるのです。

上記のような、同一労働同一賃金の実現に向けて、企業はどのような対策をすべきなのでしょうか。

(1)同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間に存在している不合理な待遇格差の解消を目指す考え方です。同一労働同一賃金の実現は、20204月から各企業に対して法律で義務付けられます。

したがって、現在の日本では、主に契約社員やアルバイトなどの非正規雇用労働者と正社員など正規雇用労働者との間に横たわっている不合理な待遇格差をなくすために必要な対策を実施する動きが加速・拡大しているのです。

不合理な待遇格差の禁止によって、正規雇用労働者と非正規雇用労働者に違いがあるのであればその違いに相応しい待遇を行い、待遇差が不合理であってはならないこと(これを「均衡待遇」と言います)と、正規雇用労働者と非正規雇用労働者に違いがなければ差別的な取扱いをしてはいけないこと(これを「均等待遇」と言います)が求められるようになりました。

しかしながら、「同一労働同一賃金」の原則は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な差別待遇を禁止するものなので、同一の労働には必ず同一の賃金を支払わなければならないというものではありません。

(2)同一労働同一賃金の目的と背景

同一労働同一賃金の法制化は、2016年に第3次安倍内閣が閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」において初めて明記されました。これは、顕在化しつつある急速な少子高齢化の進展や非正規雇用労働者の増大という社会問題への対策の一環として取り上げられました。その中でも、同一労働同一賃金は日本政府が掲げる「働き方改革実行計画」の主要なテーマのひとつとして位置付けられました。

まだ戦後間もない1946年の時点で、国際労働機関(ILO)憲章では既に「同一価値の労働に対する同一報酬の原則の承認」を掲げており、また1948年に採択された世界人権宣言においても「すべての人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する」と規定されています。

つまり、「同一労働同一賃金」という考え方は70年以上も昔から世界標準(グローバル・スタンダード)になっており、既に欧米などの先進国においては法律で同一の労働を行っている労働者の間に賃金格差を設けることを禁止しているのです。

しかし、日本の企業や役所では、これまで正規雇用労働者の新卒一括採用と年功序列社会を重要視してきたという歴史があります。このような文化の下においては企業での就業年数と待遇が比例しているので、上述したILO憲章や世界人権宣言にも規定されている同一労働同一賃金は積極的に受け入れられることは難しかったと言わざるを得ませんでした。

ところが、少子高齢化が進展している現在のようなわが国の労働力不足は、今後の日本の経済・社会基盤の維持継続を危険に晒してしまう可能性が高くなります。この対策として、ILO憲章や世界人権宣言により世界では標準とされている同一労働同一賃金を法制化することにより、優秀な外国人労働者等の受け入れを促進する、という狙いもあります。

世界的には、業務内容に応じて賃金が決まる「職務給」という考え方がが主流となっており、これまでの日本のように勤続年数に基づいて賃金が決まるような「職能給」という考え方は一般的ではないのです。今後外国人の雇用を増やすためには、外国人にとっても理解・納得がしやすい賃金制度に変更していく必要があるでしょう。

労働力が不足している中において、優秀な外国人が日本で労働する意欲を高めるためには、同一労働同一賃金の考え方に拠って、同一の労働を行っている労働者の間の不合理な待遇格差をなくすことが必要不可欠であると思われます。

(3)同一労働同一賃金のメリットとデメリット

同一労働同一賃金のメリットとデメリットを以下のようにまとめてみました。

同一労働同一賃金のメリット

①さまざまな社員が活躍の機会を得られる

同一労働同一賃金ガイドライン(後述)では、賃金のみならず、福利厚生や教育訓練の機会なども改善対象となっています。

非正社員が、現在の仕事に必要なスキルや知識を身に付けるための教育訓練を受けることができれば、能力の向上に応じて業績のアップも期待できます。

②キャリアアップにつながる

キャリアアップや活躍の場が拡大することとなり、非正規雇用社員の仕事へのやりがいも増すことが期待できます。

雇用形態にかかわらず、労働者にスキルアップのチャンスを付与することにより、従業員の潜在的な能力を引き出す可能性が高まります。

さらには、同一労働同一賃金の実現により、少子高齢化の進展で問題となっている「労働参加率の向上」も期待できます。

このように、多くの企業が直面している人材不足問題の解決策としても重要な方法として考えることが可能です。

同一労働同一賃金のデメリット

①人件費が高騰する可能性

同一労働同一賃金の導入で非正社員の待遇改善を目指すとはいえ、正社員の基本給を下げる、といった不利益な取り扱いは基本的にできません。したがって、待遇の見直しを行うためには、非正規雇用社員の賃金をアップすることが必要となります。

さらには、同一労働同一賃金の対象には、福利厚生や教育訓練などの処遇も含まれるので、基本給や各種手当だけではなくこれまでよりも費用負担が増すことになります。

多くの非正規雇用社員を抱えている企業では、人件費が高騰することが予測され、場合によっては経営圧迫などの深刻な状況に発展してしまう可能性も考えられます。

特に、派遣社員に関しては派遣先の労働者に合わせた待遇改善が必要になります。もし、派遣先が大企業で、派遣元が中小企業の場合には、派遣元の経営を圧迫する可能性が高いと考えられています。

②非正社員間での賃金格差拡大

同一労働同一賃金の実施によって、非正規雇用社員も就く職務によっては賃金の改定が実施されることになります。どの部署に配属され、どのような仕事に就くかによっては、同じ非正規雇用社員の間でも賃金格差が生じることが十分に予想されるのです。

例外なく全ての労働者にとって公平な制度を構築することは極めて難しいことです。賃金格差の解消といった待遇の改善を目的として施行された制度が、新たな賃金格差が生んでしまう可能性もあるのです。

 

2.同一労働同一賃金ガイドラインの概要

平成301228日に厚生労働大臣から「同一労働同一賃金ガイドライン(正式名称は、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」が告示されています。

同一労働同一賃金ガイドラインとは、同一労働同一賃金の実現に向けた企業のマニュアルとでも言うべきもので、企業が遵守しなければならない事項や対策について、ケース・スタディなども交えつつ詳細に記載されている指針となっています(参考:「同一労働同一賃金ガイドライン」、URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html)。

(1)同一労働同一賃金の対象となる労働者と対象外の労働者

同一労働同一賃金は、原則として、全ての雇用形態の労働者が対象となります。派遣労働者に関しても、原則として、派遣先の労働者の待遇格差が生じないように対策を講じることが求められています。それでは、正規雇用労働者と有期契約から無期転換した労働者との待遇格差についても同一労働同一賃金の対象になるのでしょうか。

労働契約法第18条によると、別段の定めがある場合を除いて、無期転換当時の有期雇用契約と同一の労働条件が無期転換後も引き継がれる、ということが定められています。したがって、有期雇用契約当時の労働条件に正規雇用労働者との待遇格差があるような場合には、同一労働同一賃金の対象となるかが問題となるのです。

この点に関しては、前述した通り、同一労働同一賃金が、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇格差の解消を目指すものである以上、無期である正規雇用労働者と無期転換した労働者の待遇格差は、直接的には規制の対象ではありません。

また、無期転換制度自体が、非正規雇用労働者の待遇改善に向けた対策として設定された制度なので、無期転換した労働者と正規雇用労働者との間でさらに同一労働同一賃金を適用(または類推適用)することまでは想定していない、と考えることは可能です。

しかし、無期転換した労働者と正規雇用労働者と労働条件の違いは、無期転換前の有期雇用契約当時からの待遇格差であることが通常なので、無期転換後に、無期転換前からの待遇格差について同一労働同一賃金の対象になるとして争点になる可能性は大いにあり得ます。

したがって、「無期転換した労働者は有期雇用労働者ではないので、同一労働同一賃金の適用はない」と考えることにはリスクが生じるおそれがあるので、無期転換した労働者と正規雇用労働者との間でも待遇格差が生じないように対策を講じるべき、と考えます。

(2)同一労働同一賃金ガイドラインのポイント

同一労働同一賃金ガイドラインの趣旨は、非正規雇用労働者に対して、正規雇用労働者と比較して不合理な労働条件・待遇差を設けることの禁止、という点にあります。雇用者は、正規雇用労働者であるか非正規雇用労働者であるか、を問わずに、従事している仕事内容や責任範囲に相応しい合理的な待遇を要求できる、と言うことも可能でしょう。

これは毎月の定例給与のみならず、労働者の貢献度に応じて支払われるような賞与(ボーナス)や福利厚生などの待遇に関しても同様である、と定められています。同一労働同一賃金ガイドラインのポイントは、「不合理」の判断基準とは何か、ということを理解して、対策を実施することにあります。

同一労働同一賃金ガイドラインによると、賃金の決定基準や決定方法の違いは、職務の内容、職務内容や配置の変更範囲などと照らして、また客観的かつ具体的な実態も勘案して、不合理なものではいけない、とされています。

例えば、全雇用期間を通じて職務内容と責任範囲、配置変更などの条件が同一であるにもかかわらず、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間に待遇格差が生じているような場合は、「不合理」である、と言えます。

 

3.企業がしなければならないこと

同一労働同一賃金は、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」に規定されています。この法律に基づいて、「労働契約法」・「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」・「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)の3つの法律が改正されます。

なお、パートタイム労働法は名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)に変更されて、有期雇用労働者もその対象となります。

そして、改正されたあとの改革関連法は、大企業に対しては20204月より、中小企業に対しては20214月よりそれぞれ順次適用されることになり、同一労働同一賃金が実現化することとなります。それまでに企業が実施しておくべき対策は、主に以下の3点である、と考えられます。

企業が講じる必要がある対策とは・・・

(1)仕事の実態を雇用形態ごとに把握

(2)新しい人事制度の構築

(3)改正内容の把握

(1)仕事の実態を雇用形態ごとに把握

同一労働同一賃金の実現に同時に、今後、非正規雇用労働者から正規雇用労働者との待遇格差などについて説明を求められた場合に、企業はそれに対して応じる必要があります。例えば、事業主には、パートタイム・有期雇用労働者への説明義務が課せられることになるのです(パートタイム・有期雇用労働法142項)。

説明しなければならない内容はパートタイム・有期雇用労働者と正規雇用労働者の待遇の相違の内容やその理由、そして各種措置に関する事項を決定する際に考慮したポイントです。また、パートタイム・有期雇用労働者がこれらの説明を求めてきたことを理由に解雇などの不利益な取扱いをすることも禁止となります。

非正規・正規を問わず、労働者に対して待遇格差に関する納得のいく説明をするための対策としては、最初に、正規雇用労働者よび非正規雇用労働者がそれぞれどのような職務内容でどの程度の責任範囲の仕事を行っているのか、といった現状を把握する必要があると考えます。

現状把握を行うことにより、待遇の違いについて説明を求められたとしても、「職務内容と責任範囲の違い」を根拠として合理的な説明をすることが可能になるでしょう。また、現状把握の結果、本来正規雇用労働者が行うべき職務を非正規雇用労働者が担当している、あるいは逆のパターンが判別したような場合には、同一労働同一賃金の対策の一環として担当職務や賃金などを見直すきっかけにもなると考えられます。

(2)新しい人事制度の構築

次いで、現状把握の結果を踏まえたうえで、同一労働同一賃金に関する法令や趣旨から逸脱しないような人事制度を構築しておく必要があると考えられます。具体的には、全ての労働者に対する職務評価基準と待遇に関する見直しが重要なポイントとなるでしょう。また、同時に就業規則や雇用契約書の見直しも必要になる場合も考えられます。

新しい人事制度を構築する場合には、研修会などを通じて、全ての労働者に対して十分な説明を実施することが必要です。新しい人事制度の周知と定着を徹底することにより、同一労働同一賃金に関する各種法令に沿った人事運営が可能となり、企業の法的リスク対策にもなります。

基本給と同様に、各種手当においても不合理な待遇格差は禁止されることになります。時間外手当、休日手当、通勤手当、単身赴任手当、出張旅費、などは、正社員と同じ基準で支払う必要があります。一方で、基本給、賞与、役職手当、などは業務内容が異なる場合にはその違いに応じた支払いをすることが可能です。

各種手当など

職務内容や責任範囲が

同じ場合

職務内容や責任範囲が

異なる場合

基本給

同一

異なる金額も認められる

賞与

役職手当

時間外労働手当の割増率

同一

深夜・休日労働手当の割増率

通勤手当

出張旅費

*特殊作業手当

**特殊勤務手当

食事手当

地域手当

*特殊作業手当:業務の危険度などに応じて支給される手当のこと

**特殊勤務手当:交代制勤務などに応じて支給される手当のこと

(3)改正内容の把握

当然ながら、労働同一賃金に関する法令がどのように改正されたのかを把握することもとても重要です。前述した説明義務以外にも、例えば、改正前のパートタイム労働法では、差別的取扱いの禁止規定は短時間労働者のみを対象としていたのですが、改正後のパートタイム・有期雇用労働法ではフルタイムの有期雇用労働者も対象とされることになりました。

改正前の労働契約法では、有期雇用労働者に対する不合理な差別が禁止され、均衡待遇の規定が設けられてはいたものの、法改正によって、職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同じ場合には正規雇用労働者の賃金等について差別的取り扱いをすることも禁止されるようになり、均等待遇の規定も設けられるようになっています。また、同様の規定が派遣労働者に対しても設けられることになっています。

 

4.同一労働同一賃金の導入における留意点

上記「3.企業がしなければならないこと」で述べた通り、同一労働同一賃金の導入に向けて企業は様々な対策を講じる必要がありますが、対策を講じる際には留意すべきポイントがあります。法律やガイドラインの要請に応えることは大切ですが、企業経営が行き詰まってしまっては本末転倒です。

人件費の高騰のように直接財務上の影響が出てしまうようなことも考えられますし、規程やルールの整備、従業員への周知・教育、などについてコンサルタントなどの外部の力を借りる必要が生じるような場合には、その分の出費も必要となります。

したがって、同一労働同一賃金を導入する際には、必要となるコストや財務上の影響額などをあらかじめ試算して、費用対効果を十分に検討しておくことが必要になります。もちろん対策に必要な金額は必要なのでしょうから、お金がかかるから対策は止めます、というわけにはいかないでしょう。

資金繰りが厳しい場合には、取引金融機関やコンサルタントなどの専門家に相談することも有用です。例えば、同一労働同一賃金の目的である非正規雇用労働者の待遇改善を実施する企業には、所定の条件を満たすことを前提に、「キャリアアップ助成金」を受給することが可能になっています。

「キャリアアップ助成金」とは、厚生労働省が実施している制度で、短時間労働者、派遣労働者、などの非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進する事業者に対し「助成金を支給」する制度のことで、以下の3つのコースがあります。

キャリアアップ助成金の3つのコース

(1)正社員化コース

派遣社員やアルバイトなど、有期契約労働者を正規雇用、あるいは多様な正社員に転換する際に助成されるものです。

(2)人材育成コース

派遣社員やアルバイトなど、有期契約労働者に対して業務上必要でかつ従業員のキャリアアップにつながる職業訓練を行った際に助成されるものです。

(3)待遇改善コース

派遣社員やアルバイトなど、有期契約労働者の賃金規定等の改定、健康診断制度の導入、賃金規定等の共通化、週所定労働時間を延長し、社会保険加入ができるようにした際に助成されるものです。

支給対象事業主の条件は以下のようになっています。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
  • 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画(有期契約労働者などのキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、対象者、目標、期間、⽬標などのおおまかな取り組みイメージを記載した資料)を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

キャリアアップ助成金受給に向けた大まかな流れ(正社員化コースの場合)は以下のようになっています。

1ヶ月目(キャリアアップ計画の作成・提出(転換・直接雇用を実施する日までに提出))

雇⽤保険適⽤事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置すると同時に、労働組合などの意⾒を確認して「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局⻑の確認を受けます。 キャリアアップ計画の確認を受けないと、この先のステップに進むことができません。遅くとも正規転換(予定)日の1ヶ月前に間に合うように準備をする必要があります。

12ヶ月目(就業規則、労働協約またはこれに準じるものに転換制度を規定)

就業規則に正規転換制度を規定します。条文には「転換の手続き」「要件」「実施時期」を必ず盛り込まなければいけません。従業員10人以上の事業所の場合は労働基準監督署に改訂後の就業規則を届け出る必要があります。10⼈未満の事業所は労働基準監督署への届け出の代わりに、事業主と労働者全員の連署による申⽴書 でも可となっています。

23ヶ月目(転換・直接雇用に際して、就業規則等の転換制度に規定した試験等を実施)

上記の規定に従い、正規転換を希望する労働者に、試験等(面接・筆記・実技など)を実施して、選考を行います。

34ヶ月目(正規雇用等への転換・直接雇用の実施)

転換後の雇用契約書や労働条件通知書を対象となる労働者に交付します。 その際には転換後に適用される就業規則等に規定している労働条件・待遇(他の正社員と同様の労働条件)にしておく必要があります。

49ヶ月目(6ヶ月間の賃金支給)

正規転換後に6ヶ月間の賃金(正社員として)を支給します。途中で支給が停止された場合には助成金の受給資格は当然ながら失われます。賃金台帳や出勤簿が申請の際に必要となるので必ず作成するようにしましょう。

1011ヶ月目(⽀給申請)

6ヶ月目の賃金を支給した日から、2ヶ月以内に支給を申請することが必要になります。所定の書類を取り揃えて、労働局での審査を経た後に支給決定となります。

おおまかな流れは以上ですが、準備から申請まで約1年がかりの手続きとなります。作業の一覧表などを作成しておいて、わかりやすいスケジュール管理を実施することが成功のポイントとなるでしょう。

(参考資料:厚生労働省ホームページより「キャリアアップ助成金」、URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

 

5.中小企業と同一労働同一賃金

これまで説明してきたように、同一労働同一賃金の導入は大企業のみならず中小企業にとっても対応が必要な制度です。ここで言う「中小企業」とはどのような企業が相当するのでしょうか。会社単位で見た場合に、金額または人数のいずれかの要件に該当すれば(下表)、中小企業に該当する、とされています。

業種

資本金の額または出資の総額

常時使用する労働者数

小売業

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

50人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の事業

3億円以下

300人以下

前述しように、大企業の場合は同一労働同一賃金の導入は202041日から、と定まっていますが、中小企業の場合は202141日から、と大企業に比べて1年間の猶予が与えられています。

しかしながら、1年という期間はあっという間です。中小企業において同一労働同一賃金の導入準備をすることはとても大変なことだと考えられます。上記「3.企業がしなければならないこと」に記載した対策、規模の大小を問わず、基本的には中小企業であっても実施する必要があることばかりです。

中小企業の場合は、大企業以上に財務上の負担増大が経営に与える影響が大きいことが考えられます。また、制度改定や規程整備などに費やす時間やコストを捻出することが難しい中小企業も実際に存在していることも確かです。

同一賃金同一労働へ対応することが困難で、会社を畳んだり、事業を廃止したり、といったことを考える経営者の方もいるかもしれません。そのような動きは、この新しい「同一賃金同一労働」制度本来の目的や趣旨に反する動きと言わざるを得ません。

働き場所が無くなってしまえば、労働条件の改善は不可能になってしまうのですから。同一賃金同一労働の導入に関して困っている中小企業の経営者の方は、取引金融機関、税理士、経営コンサルタント、などになるべく早いタイミングで相談をされることをおすすめします。

 

<まとめ>

日本政府が主導している「働き方改革」のひとつの柱として、「同一労働同一賃金」があります。この同一労働同一賃金の実現に向けて、2020年4月1日に法律が改正されますが、現実的にどのような実務対応をすればよいのか、いまだに悩んでいる会社や経営者もまだ多いのではないでしょうか。

本稿では「同一労働同一賃金」について詳しく説明をしてきましたが、会社によって悩んでいるポイントは異なっていると思われます。そのような場合には、極力早いタイミングで信頼できる相談相手に「同一労働同一賃金」の導入に関する相談をすることが重要です。

「同一労働同一賃金」の考え方の根幹になる「働き方改革」に関しては、働き方改革は中小企業にも影響有り? 意義とリスクについて解説をご覧ください。

監修
株式会社レクリエ / 弁護士・社会保険労務士
相川祐一朗

企業法務を専門とする他、社会保険労務士の立場から、中小企業経営における「事前対応」思考への転換を図るためのコーチングも手掛ける。
働き方改革対応を始め、従業員問題への対応や就業規則改定等による強い組織構築の提案、社外との紛争解決まで、企業が直面する法的な問題全般を扱う。

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