一般的には、中小企業においては大企業のように有名大学の卒業予定者を多数採用するような体力も余裕もないものと考えられています。一方で中途採用市場でも競合他社(採用面におけるライバル企業)に対する優位性を確保して求職者にアピールすることも、簡単ではないでしょう。しかし、中小企業だからこそ人材を強化することが企業の業績アップには不可欠であることも間違いないのです。本稿においては、日本の中小企業を取り巻く人材面における課題、日本型人材マネジメントのアップデートとは、経営トップからステークホルダーに対する積極的な発信と建設的な対話の必要性、中小企業が求める人材像、人事制度の見直し、などについて詳しく解説します。
- 1.日本の中小企業を取り巻く人材面における課題
- 2.日本型人材マネジメントのアップデートとは
- 3.経営競争力・人材競争力強化のための3つの原則
- 4.経営競争力・人材強化のための6つの方策
- (1)イノベーション・人材育成を担う経営リーダー・ミドルリーダーの計画的な育成やサポート
- (2)経営にとって必要となる様々な人材の確保を可能とする外部労働マーケットと連動したフレキシブルな報酬制度の導入やキャリア上のチャンスの提供
- (3)従業員個々のチャレンジや成長を促して、強みを活用した企業価値の創出に貢献するような企業文化や評価制度の構築
- (4)従業員個々の自主的なキャリア開発や学び直しを支援してサポートできるチャンスを提供
- (5)個々の従業員のニーズに応じて、経営競争力の強化を実行できる事部門を構築
- (6)経営トップ自身が人材・人材戦略について積極的に発信すると共に従業員・労働市場・資本市場との対話を実践する
- まとめ
1.日本の中小企業を取り巻く人材面における課題
- 少子高齢化による労働力不足、後継者不在
- 劇的なデジタライゼーションとグローバライゼーションの進展
- 働き方改革や新型コロナ感染症の影響拡大による働き方の大きな変化
(1)少子高齢化による労働力不足、後継者不在
中小企業に限らず、我が国においては少子高齢化の進行により深刻な労働力不足に陥っている企業も少なくないとされています。労働力の不足と共に後継ぎがいないといういわゆる「後継者不在」となっている中小企業も多く、廃業せざるを得ない状況の会社も増加していると言えます。
このように日本経済を支えてきた多くの中小企業が労働力不足という課題に直面しており、将来的な事業の成長を描くことができないだけでなく、足元のビジネスをどのようにして回していくのかという喫緊の問題に早急に対応しなければならない状態にあると推察されます。
(2)劇的なデジタライゼーションとグローバライゼーションの進展
デジタル技術の劇的な進展は我が国における仕事の仕方=働き方に大きな影響を与えています。デジタル化の進展によって従来は日本企業の強みであった組織内での「擦り合わせ」(コンセンサスを得る方法)による競争的な優位が減退してしまい「勝者が全て得る」経済へと変化することになりつつあります。
また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やサービス化が劇的に進展していく中において既存ビジネスの陳腐化が加速しています。デジタル化とグローバル化が既存ビジネスを大きく変えることによって、現代のような不安定かつ不確実な経済・社会情勢においても競争力を発揮することが可能で柔軟かつ迅速なビジネスを遂行可能な体制を構築することが可能になるでしょう。
さらにデジタル化の進展はAI(人工知能)やロボティクスによって業務の内容や要求されるスキルは連続することなく(非連続的に)変化しているとも言えます。
(3)働き方改革や新型コロナ感染症の影響拡大による働き方の大きな変化
2019年4月に働き方改革関連法が施行・推進されたことに加えて、2020年3月からは新型コロナウイルス感染症への対応として多くの企業でテレワークに取り組まれるようになってきました。ほんの数年で会社における従業員の働き方は大きな節目を迎えていると言えます。
多様な人材に活躍してもらうために多くの企業においては長時間労働の是正、労働生産性のアップ、同一労働同一賃金の導入、フレキシブルな働き方の推進、などの取り組みが推進されています。そして、ここ数年では新型コロナウイルス感染症に対する予防策としてテレワークが急速に普及しています。
最近世界各国でも関心が高まっている「Well-being(身体的・精神的・社会的に良好な状態であること)」ですが、働き方についても広く普及しているテレワークという労働環境下においてどれだけWell-beingな状態を保持しながら働けるのかということは、働き手側にとっても企業にとっても強い関心があるでしょう。
2.日本型人材マネジメントのアップデートとは
我が国の企業は、長期的に安定した雇用がもたらすハイレベルな集団的な能力を発揮することで企業経営のための競争力を維持・強化してきましたが、経営を取り巻いている環境が目まぐるしく変化していく現代社会ではそうした優位性が相対的に低下しています。多様な個人が活躍して、そして急激な変化にも対応可能な経営体制の構築を実現のものとするためにも経営者自身が率先して人材マネジメントのアップデート・企業文化の大変革に迅速に取り組む必要があります。
(1)経営課題と人材マネジメント上の課題との関係
領域 | 経営上における優先課題 | 人材マネジメントにおける 優先課題 |
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国際化 (グローバル化) |
・高い成長性がある海外マーケットにおける占有率の獲得やバラエティに富むクライアントニーズに対応する必要性 ・グローバルな水準での企業、組織ガバナンスの徹底 |
・国際的な企業の成長を牽引できる経営人材をはじめとする多様な人材の確保と育成 ・仕事内容や必要なスキルに応じたフレキシブルな人事制度の構築・整備と運用 |
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デジタライゼーション
(デジタル化) |
・「ひとり勝ち(winner takes all)の経済への移行、「すり合わせ」による競争優位の重要性が大きく低下 ・競争力や「勝利の道筋」を再検証する必要性 ・技術(テクノロジー)が変化していく速度に対応する必要性 |
・イノベーションの創出をリードできるような人材を育成、発掘、獲得、できるような強みと、従来のオペレーションを運営できる人材の強みとの両立 ・事業モデルの劇的な変化に対応した従業員の再配置や再教育 |
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少子高齢化 | ・シニア層人口数の増加と若年層人口数の減少への対応の必要性 ・社会で活躍している期間が長期化したいるので個人のキャリアに対する意識が向上 ・技術(テクノロジー)が変化していく速度に対応する必要性 |
・人材の多様化、個人の働くモチベーションの多様化、への対応 ・従業員の自発的な会社に対する貢献意欲の向上 ・個人の自律的なキャリアを構築することに対するサポート、成長できるチャンス(機会)の提供 |
(2)人材マネジメントの変化
従来の日本型人材マネジメント | 今後必要となる人材マネジメント | ||
・自社が保有している人材を長期的に管理することが前提 ・ 新卒の一括入社と連動している年次別管理 ・社内における公平性の担保を最重要視 ・自社に特有な強みや特殊なスキルの育成が目的 |
・即時的な対応性と中長期的な視点を両立させる必要あり ・ビジネス環境や経営戦略と連動していることが必要 ・経営戦略に応じたフレキシブルな人的リソースの獲得 ・人材活用を個別に(採用・配置・リスキルなどに応じて)最適化 |
(3)求められる雇用コミュニティの在り方の変化
【これまでの日本型の雇用コミュニティ】
-
- 事業環境を予見できる可能性が高く安定性を最重要視
- 新卒一括採用をベースとした採用:同質性
- 企業が主導するキャリア形成
⇒メンバーが変化しない閉鎖的なコミュニティ
内部公平性が最重要
【これから必要となる雇用コミュニティ】
-
- 変革の時代に。変化に対応できるイノベーションが重要
- 新卒、中途、再入社、リスキル・再配置:多様性
- 従業員個人の自律的なキャリア形成
⇒メンバーの出入りがある変化するコミュニティ
外部競争力も重要になる
(4)経営戦略を実現するための人材戦略の重要性
【従来の人材マネジメント】
- 自社が保有している人材の長期的な管理を前提
- 新卒一括入社と連動した年次管理が基本
- 内部的な公平性を担保することに重点を置く
- 企業独自の強みや特殊なスキルの育成を重視する育成方法
【これから必要になる人材マネジメント】
- 即時対応性と中長期的対応能力の両方の視点を育成
- 事業環境や経営戦略との整合性確保や連動の必要性
- 戦略に応じたフレキシブルな人材やリソースの獲得・確保
- 人材活用(採用・配置・リスキルなど)の個別的な最適化を図る
3.経営競争力・人材競争力強化のための3つの原則
【経営競争力・人材競争力強化のための3つの原則】
- 経営戦略を実現する重要なファクターとして人材および人材戦略を位置付ける
- 個人の多様化・不断な経営環境の変化の中で個人と企業が相互に選び合い高め合う関係を構築する
- 経営トップが自ら率先してミッション・ビジョンの共有と実現を目標に組織・企業文化の変
- 革を推進
(1)経営戦略を実現する重要なファクターとして人材および人材戦略を位置付ける
最初の原則において考えるべき点は、人が生み出している価値の重要性が増加して経営的な課題と人材的な課題が表裏一体化していく中で経営戦略を策定する段階から人材・人材戦略が策定対象に含まれているかどうか、という点です。また、短期的、その場しのぎ的な人事施策ではなく、経営の環境変化スピードと広がり・深まりに対応可能な人材確保と人材戦略を構築して実行ができているかどうかという点も重要な観点になります。
これまでは成果を生み出すまでに時間がかかる人材戦略や人材投資が、経営トップの交代や業績不振を理由とする継続的な取り組みに繋がらない事例や、経営戦略と人材戦略が連動しておらず人事部門に任せてしまっているような事例もあったと思われますが、上記のような原則に基づいて今後目標とすべき方向性と具体的なアクションは以下のように考えることができます。
人材は経営戦略や事業戦略を実行・実現していくために必要不可欠な要素であるとあらためて再認識したうえで、人材戦略の構築・実行を通して、必要な人材・組織能力を獲得することが極めて重要になります。具体的には、
ことを挙げることができます。
(2)個人の多様化・不断な経営環境の変化の中で個人と企業が相互に選び合い高め合う関係を構築する
第2の原則として考えるべきポイントは、これまでの日本型雇用コミュニティが変化している環境下において、個人のスキル・専門性を最大限に発揮するために、多様な人材が成長あるいは活躍できるような機会を提供できているのかどうか、という点です。また、経営の競争力強化のために、多様な人材が自社に魅力を感じて自主的な貢献意欲を引き出すことが可能な仕組みを構築できているか、という点も重要です。
これまでは安定的な雇用コミュニティの状況下において新卒一括採用・階層別研修・ジョブローテーションなどを通して均質でレベルが高い労働力の育成に注力することで同質的で「すり合わせ」を得意とする組織を構築することが求められていたと言えますが、今後は個人のキャリア志向や多様化する価値観の中で企業はそれぞれの個人に適した成長機会を提供して専門性やスキルの強化をサポートすることによって個人の貢献意欲を引き出して必要な組織能力を構築することがより重要になるでしょう。具体的には、
といったことを挙げることができます。
(3)経営トップが自ら率先してミッション・ビジョンの共有と実現を目標に組織・企業文化の変革を推進
第3の原則として考えるべきポイントは、自社のミッション・ビジョン・バリューを単なるスローガンとすることなく経営トップ自身が信念を持って従業員に発信することでひとりひとりに対して腹落ちさせると共に具体的な行動へと繋げられているかどうか、という点です。また、変革を生ずることができるリーダーの存在が企業の社運を握るような今のこの時代において、保守的な減点主義や過度な完璧主義にこだわることで、変革(イノベーション)の機運を潰していないかどうか、という点も極めて重要です。
これまでは高い同質性を有する安定的な雇用コミュニティの中で働き手の企業への高いロイヤルティに基づいて積極的に企業理念やビジョンなどを発信しなくても価値観や企業文化は暗黙的に組織内で共有されていましたが、今後は様々な人材を組織が目指すべき方向に惹き付けて巻込んでいくためには、ミッション・ビジョン・バリューを明示的に共有することが非常に重要になります。ビジネスの速度が飛躍的に向上する中でチャレンジを奨励して一定レベルの失敗ならば許容するような企業文化の醸成が求められるでしょう。具体知的には、
などを挙げることができます。
4.経営競争力・人材強化のための6つの方策
【経営競争力・人材競争力強化のための6つの方策】
- イノベーション・人材育成を担う経営リーダー・ミドルリーダーの計画的な育成やサポート
- 経営にとって必要となる様々な人材の確保を可能とする外部労働マーケットと連動したフレキシブルな報酬制度の導入やキャリア上のチャンスの提供
- 従業員個々のチャレンジや成長を促して、強みを活用した企業価値の創出に貢献するような企業文化や評価制度の構築
- 従業員個々の自主的なキャリア開発や学び直しを支援してサポートできるチャンスを提供
- 個々の従業員のニーズに応じて、経営競争力の強化を実行できる事部門を構築
- 経営トップ自身が人材・人材戦略について積極的に発信すると共に従業員・労働市場・資本市場との対話を実践する
(1)イノベーション・人材育成を担う経営リーダー・ミドルリーダーの計画的な育成やサポート
最初の方策で重要なポイントは、従来のように内部の公平性を重視した横並び方式で経営リーダーを育成する方法ではなく、トップがなすべきアジェンダとして、時代を引っ張ってイノベーションを引き起こすような人材を早いタイミングで登用して育成できているかという点です。また、ミドル層に対しては経営の意思をはっきりと現場に伝えると同時に現場の声を経営に伝える橋渡し役ができているか、という点も重要です。人材戦略において、こうした役割を明確に位置付けて、計画的に育成が行われているのかどうかは極めて重要なポイントになります。
これまでは自社内の社内調整や連携に長じているリーダーを、新卒採用から長期間の育成期間を通して選抜してきました。ミドル層の人事権は限られていて人材育成は人事部が主導するローテーションを主体に実施されてきました。しかし、今後はイノベーションを担当する経営リーダー候補を早いタイミングで選抜して、特別な育成投資やチャンスの提供によって計画的に育成することが必要になります。人事部門は一定の権限を委譲することなどでミドルリーダーによる現場主導の人材育成をサポートすることが必要になるでしょう。
具体的なアクションとしては、
などを挙げることができます。
(2)経営にとって必要となる様々な人材の確保を可能とする外部労働マーケットと連動したフレキシブルな報酬制度の導入やキャリア上のチャンスの提供
第2の方策として重要なポイントは、これまでの日本型の雇用コミュニティが変化しつつある環境下で個々の従業員のスキル・専門性を最大限に発揮してもらうために様々な人材の成長・活躍へと繋がるチャンスを提供することができているのか、という点です。また、 経営上の競争力強化のために多種多様な人材に自社の魅力を発信して惹きつけることができているか、自主的な貢献意欲を引き出せる仕組みが構築できているのか、という点も同様に非常に重要になります。
これまでは安定的な雇用コミュニティの中で新卒一括採用・階層別研修・ジョブローテーションなどを通じて均質で高い水準の労働力の育成に注力すると共に同質的で「すり合わせ」が得意な組織を構築すればよかったのですが、これからは個人のキャリア志向・価値観が多様化しているする中で企業はそれぞれの従業員に適した成長チャンスを提供して専門性やスキルの強化をサポートすることによって各個人の貢献意欲を引き出しながら必要な組織能力を構築することが極めて重要になると考えられます。具体的には、
が必要になるでしょう。
(3)従業員個々のチャレンジや成長を促して、強みを活用した企業価値の創出に貢献するような企業文化や評価制度の構築
第3の方策として重要なポイントは、処遇のためだけの人事評価ではなく様々な各授業員の成長を促すと同時に経営目標の実現へのチャレンジを評価することが可能な仕組みを構築できているか、という点です。また、多様な個人が活躍することが可能な企業文化の醸成を経営層やミドルリーダーが率先して関与することで組織の潜在力を最大化することができているかどうか、という点も同様に重要です。
これまでは人事評価の最重要目的のひとつは公正な処遇決定でした。内部の公平性や評価の継続性を担保するためには、目標設定・評価調整において、現場では一定の制約があって全体的な調整を行う仕組みが一般的でした。しかし、今後は処遇決定のための評価のみならずフレキシブルな目標や評価基準の設定、高い頻度で実効性があるフィードバックの実施、などを通して、より高い水準でのパフォーマンスの発揮・成長や従業員個人の自主的な貢献意欲の強化を促すことが求められるようになるでしょう。具体的には、
といったアクションが必要になります。
(4)従業員個々の自主的なキャリア開発や学び直しを支援してサポートできるチャンスを提供
第4の方策として重要なポイントは、イノベーションの時代で生き残るためには経営層が不断の学び直しの必要性を発信し続けて社内に健全な危機感を醸成できているか、という点です。また、従業員ひとりひとりに対して業績評価などのシステムの中で新たに学びの気付きを促すと同時に社内外における主体的な学びの機会・場を提供できているか、という点も重要です。
これまでは、安定的で同質的な雇用コミュニティというものを労使が共に前提としている環境下で自主的なキャリア構築の必要性の意識は薄かったと言わざるを得ません。ジェネラルローテーションや階層別研修などを通じて企業主導による育成機会の提供が行われてきました。しかし、これからは不断な環境変化が避けられない環境下で従業員のキャリアの自立・自律は個人のみならず企業経営の競争力強化にも重要であると認識したうえで、社内の様々な人材に対する能力開発のチャンスやキャリア構築のサポートを実施することがより重要になります。具体的には、
などのアクションが必要になります。
(5)個々の従業員のニーズに応じて、経営競争力の強化を実行できる事部門を構築
第5の方策として重要なポイントは、経営課題と人材課題とが表裏一体となる中において人事部門は経営競争力の強化を実現するための能動的に機能すべき部門として経営のイノベーションを引率する役割・機能を担当することができるのか、といった点です。また、人事部門は勘と経験だけに頼るのではなくIT技術(テクノロジー)なども活用しながらデータに基づいた客観性と納得性を武器にして自社の人材力・経営力の強化に貢献することが可能かどうか、という点も非常に重要になります。
これまでは、新卒を主体とした人材採用、長期的な視点での人材育成・配置、安定的な処遇の決定を実現すること、などを主な目的に最適化された人事部門の体制下で現場の要請に応じながら正確にオペレーションを実行することをメインに業務を執行してきましたが、これからは、事業や経営の要望に応じつつ必要な人材を迅速に確保しながら、客観的なデータの活用を通じてより個に寄り添ったフレキシブルで効果的な意思決定のサポートを実行することに主眼が置かれるようになるでしょう。具体的には、
などのアクションが必要になります。
(6)経営トップ自身が人材・人材戦略について積極的に発信すると共に従業員・労働市場・資本市場との対話を実践する
第6の方策として重要なポイントは、自社の人材投資を単なるコストとして捉えるのではなく継続的に企業価値の創造を支えるために必要な中長期の投資として明確に位置付けて発信できているか、という点になります。また、企業価値の向上を実現できる人材像や人材戦略を明確に定義した上で人材関連の目標値やKPIを設定して社内外のステークホルダーと建設的に対話ができているか、という点も重要です。
これまでは従来の同質的な雇用コミュニティ内で自社の人材戦略や人事施策に関するコミュニケーションは経営層・人事部門ともに積極的とは言えず、社外のみならず社内に対しても十分ではない状態だったと言えるでしょう。しかし、今後は自社の人材や人材戦略がどのように継続的な競争優位に繋がっているのかを経営トップ自身が率先してステークホルダーに対して発信することで、人材戦略の実現や市場にからの価値評価の適正化に繋げる必要があるでしょう。具体的には、
といったアクションが必要になります。
まとめ
中小企業でも企業の将来を担う人材をどのように採用して教育・育成していくのか、という経営課題は非常に重要です。現在のように企業規模に関わらず劇的な経営環境の変化に晒されている状況下では、従来の日本型慣行に基づいた人事施策がマッチしない状況が発生していることは間違いがないでしょう。本稿では、中小企業であっても人材強化に資するヒントをまとめました。
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