固定資産には、多くの人が知っている通り、有形固定資産である土地や建物、機械などの資産が含まれますが、それら以外にも無形固定資産や投資その他の資産も含まれます。
どのような資産が固定資産資産になるのかを説明するとともに、減価償却についても解説します。
1.固定資産とは
固定資産とは、販売目的でなくかつ継続的に会社で使用することを目的とする財産のことを指します。
固定資産は流動資産と共に資産を構成します。
企業の営業活動を直接表している売掛金、在庫などと、営業活動に直接の関連がなくとも短期的に現金にできるものは流動資産であり、固定資産とは異なる扱いとなります。
短期と長期の区別は、日本を含む国際的な会計の基準では1年を用いており、1年以内に現金化するものは流動資産とされます。
会社計算規則(平成18年2月7日法務省令第13号)106条3項2号に有形固定資産、106条3項3号に無形固定資産、106条3項4号に投資その他の資産として区分されるべき資産について定められています。
2.固定資産の種類
固定資産は大きく分けて、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産、に分けられます。
(1)有形固定資産
有形固定資産には、土地、建物、建設仮勘定、工具器具備品、機械装置、車両運搬具、があります。
① 土地
事務所や店舗、工場などの事業のために土地を取得した場合の勘定科目は土地で処理します。
未使用の土地も含めます。また、投資や販売目的の土地は販売用不動産、投資その他の資産などで処理します。
具体的には以下のような固定資産は「土地」となります。
- 事務所、工場、店舗、社宅などの営業目的で使用される建物の敷地
- 駐車場
- 資材置き場
- 運動場
- 農園、など
② 建物
事務所や店舗などの建物を取得した場合の勘定科目は建物で処理します。
取得にかかった登記費用や仲介手数料などの金額も含めます。
以下のような固定資産は「建物」となります。
- 事務所・営業所
- 店舗
- 工場
- 車庫
- 社宅
- 倉庫、など
③ 建設仮勘定
建設仮勘定は、建設中の建物や製作中の機械など、完成前の有形固定資産への支出などを仮に計上しておくための勘定科目です。
有形固定資産が完成し、事業の用に供した時点で、本勘定に振り替えることが必要です。
完成して、本勘定に振り替えられるまで、減価償却はなされませんが、完成が中止された場合には除却、また、完成前に収益性の低下により投下資本の回収が見込めなくなった場合には、減損処理の対象となります。
④ 工具器具備品
工場などで使用する工具、事務所などで使用する器具や備品を取得した場合の勘定科目は工具器具備品で処理します。
取得にかかった諸費用などの金額も含めます。
以下のような固定資産は「工具器具備品」となります。
- 取付工具
- メーターなど測定検査工具
- 切削工具
- 治具
- 金型
- レンチ、スパナその他加工工具、など
⑤ 機械装置
工場で使用する機械など営業の目的のため使用しているものを取得した場合の勘定科目は機械装置で処理します。
取得にかかった諸費用などの金額も含めます。
以下のような固定資産は「機械装置」となります。
- ブルドーザー
- ベルトコンベヤー
- パワーショベル
- 醸成などで使用される貯蔵槽、など
⑥ 車両運搬具
社用車などの自動車を取得した場合の勘定科目は車両運搬具で処理します。
取得にかかった諸費用などの金額も含めます。
以下のような固定資産は「車両運搬具」となります。
- 自動車(普通乗用車)
- トラック
- オートバイ
- バス
- フォークリフト
- クレーン車
- 台車
- トロッコ
- 鉄道車両、など
(2)無形固定資産
敷金や営業権などの権利を取得した場合の勘定科目は無形資産で処理します。
無形資産には以下のようなものがあります。
- 施設利用権
- 工業所有権
- 特許権
- 実用新案権
- 商標権
- 意匠権
- 営業権
- 借地権、など
(3)投資その他の資産
投資その他の資産には、出資金、保険積立金、長期貸付金、長期前払費用、創立費、開業費、などがあります。
① 出資金
商工会議所への出資など株式会社以外の会社の出資持分を取得した場合の勘定科目は出資金で処理します。
株式会社以外の会社や組合には、合名会社、合資会社、合同会社、有限会社、信用金庫、信用組合、協同組合、匿名組合、その他民法上の法人などがあります。
以下のような投資その他の資産は「出資金」となります。
- 商工会議所への出資
- ゴルフ会員権
- 各種クラブへの入会金、など
② 保険積立金
逓増定期保険など解約時に受け取れる積立部分がある保険の保険料を支払った場合の勘定科目は保険積立金で処理します。
一般に、保険には、死亡等により受け取る掛捨ての保険部分と、満期等により受け取る積立ての貯蓄部分があります。
このうち、積立ての貯蓄部分については、保険積立金、掛け捨て部分については保険料で処理します。
③ 長期貸付金
決算日の翌日から起算して1年超に支払期限の到来する貸付金は、長期貸付金になります。
なお、返済期限が 1 年以下のものは短期貸付金で処理します。
④ 長期前払費用
すでに料金を支払っているが、当期にサービスなどをまだ受けていない前払費用のうち、決算期の翌日から1年を超えて費用化されるものは長期前払費用で処理します。
以下のような投資その他の資産は「長期前払費用」となります。
- 長期契約の損害保険料を一括払いする場合
- 2年以上の賃貸借契約を締結して地代・家賃やリース料を前払いする場合、など
⑤ 創立費
会社の設立登記までに支払った場合は創立費で処理します。
この場合には、会社の設立のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければなりません。
ただし、税法上は任意償却であり、設立年度に全額償却することも可能です。
創立費には以下のような費用が含まれます。
- 定款その他諸規則の作成費用
- 株主募集のための広告費用
- 株式申込証、目論見書などの印刷費用
- 創立事務所の賃借料
- 発起人への報酬
- 設立事務に使用する使用人の給与
- 証券会社など金融機関の取扱い手数料
- 創立総会の費用
- 設立登記の登録免許税、など
⑥ 開業費
会社の設立後、営業開始までに支払った場合は開業費で処理します。
ただし、備品や敷金などの資産はそれぞれの勘定科目で処理します。
(4)固定資産の経理処理
① 減価償却
減価償却とは資産(家屋・機械など)を利用するにつれて、財としての価値を減ずる部分を費用に計上することをいいます。
有形固定資産の減価償却の方法は、届出がない場合は建物、建物附属設備、構築物、については定額法、その他の資産は特殊な資産以外であれば定率法と定められています。
定率法は、最初は減価償却金額が大きく、時間の経過とともに金額が小さくなるので投資の初期段階において利益を減少させる節税の効果が期待できます。
法人であれば繰越欠損年数が10年間ありますので、最初の頃に赤字が続いても繰越欠損の期限が切れる可能性は非常に少ないので、節税効果は定率法の方が高いでしょう。
なお、自営業の場合は届出がない場合の減価償却方法は定額法となっている点には注意が必要です。
また、減価償却資産を購入時に費用計上できる金額の基準ですが、税務上原則は10万円未満で、中小企業には合計300万円までという条件で30万円未満であれば全額費用計上することが可能です。
固定資産のうち減価償却資産で取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、3年間月割計算や除却売却の仕訳などをすることなく費用計上することができます。
さらに通常の一般的な中小企業の場合は、取得価額30万円未満の減価償却資産については年換算で合計300万円までは取得価額全額を費用計上することが可能です。
② 除却・売却
固定資産の期中の除却・売却時は、月割など減価償却費を計上するべきですが、現実的にはそこまで実施されることは少なくて、期首繰越簿価を基にして除却損、売却損益を計上しています。
なぜならば、減価償却費、除却損、売却損益と名称が異なっていても結局減価償却費の分だけ除却損や売却損益で損益が調整されるので、利益額は同じになるからです。
固定資産まとめ
固定資産の会計処理、税務処理については特に減価償却についてのルールを理解することが重要です。
特に中小企業にとっては、減価償却費用を費用計上できる基準を認識しておくことは会社の経営にとっても非常に大切です。