● はじめに
経営者の皆さんが、銀行に融資のお願いをすることは数えきれないぐらいあると思います。では、銀行が融資の可否を判断する時、どんな所を見ているのかご存知でしょうか。「損益計算書でしょ?売上と利益が増えてれば大丈夫なんじゃないの?」と思われた方!それも影響しますが、それだけを重視すると実際に融資を受けようとした時、融資をしてもらえないかもしれません。
では、具体的に何を見ているのでしょうか。通常、銀行へ融資のお願いをする際、決算書などの膨大な書類を渡していますよね。それらを見て判断するのですが、内容が膨大なだけに「コレで判断しています!」と分かりやすく教えてくれる文献や資料って、あまり見当たらなかったりしませんか?
この記事では、銀行の融資担当者が着目する基本的なポイントをまとめてみました。
銀行は、企業の「過去」「現在」「未来」という3つの基準を使って判断していると言われています。そこで、実際にどの資料からこれらを読み解いているのかを、その3つの基準に分けて解説していきます。
1. 過去
企業の過去とは、具体的に「企業が安定した事業運営を行ってきたか」ということです。
それは、決算書の中の「貸借対照表」を見て判断します。「あれ?損益計算書じゃないの?」と思われた方は、ぜひ最後まで読んでくださいね。実際、損益計算書で売上の増減や利益の有無を前面に出している経営者は少なくありません。ですが、損益計算書はあくまでも一時点の成績であり、過去からの積み重ねは貸借対照表に現れる、というのが銀行側の見方です。例えば、直近の決算が大幅黒字であっても、その前までが赤字続きであれば融資が難しい場合もあります。逆に、直近が赤字であっても過去の業績が良く、自己資本が厚いような場合は融資がスムーズにいくこともあります。
貸借対照表の中で、最も見られる科目が自己資本です。この科目の内容で、今まで着実に利益を積み重ねてきたかを読み解くのです。具体的には、在庫や債権、投資など資産に本当に資産性があるのかを検証します。仮に、固定化した債権や陳腐化した在庫がある場合、その分を自己資本から控除して考え、決算書上の自己資本よりも少ないと判断します。また、他社や代表者への貸付け、ゴルフ会員権、過去の株式なども資産性が低いと思われがちです。このようなものは、極力圧縮しておくことが必要です。将来スムーズに融資を受けるために、健全な資産をコツコツと積み重ねるようにしましょう。
2. 現在
企業の現在を知るには「試算表」を見ます。これは、決算以降どのような推移をしているのか確認して、悪い兆候がないか判断するためです。仮に、直近の決算が赤字で一度融資を断られた場合でも、試算表の時点で業績が改善していれば融資が通る可能性があります。そのため、業績が回復している指標が出ているならば、再度挑戦することを検討しましょう。逆に言えば、決算時点では好調だったのに試算表で悪い値が出た場合、融資が難しくなる場合があります。このような場合、悪化した要因は一時的なものなのか、業界全体のことなのかなど、詳しく説明できるようにしておきましょう。銀行側にもタイムリーに状況を把握してもらうことで、急な必要時にも慌てないで済むことにつながります。
この試算表ですが、企業としても継続的に事業の状況を把握したいものです。銀行に提出を求められたらすぐ対応できるよう、月末で締めてから2カ月程度を目途に試算表を作成しておくといいでしょう。
3.未来
企業の未来を表すのは、まさに「収支計画」です。銀行は、社長がどのようなビジョンを持っているかを含め、様々な情報を総合して融資の可否を判断します。しかし、最終的には「具体性のある収支計画」を求めてきます。
では、具体性のある収支計画、と判断されるものとは一体どんなものでしょうか。ポイントは、現実的な数値を掲げているか、ということです。なぜなら、銀行は計画の妥当性もそうですが、計画と実績の差異に注目するからです。どんな計画でも、必ず達成できる保証はありません。そのため銀行は、過去のトレンドと大きく外れない手堅い計画を好みます。もし、数値に表せられない新規事業や増収要因があるならば、その確実性を含めて必ず口頭で説明しておきましょう。また、計画を立てる段階で今期の予想が悪くなりそうな場合は、先だって調達するなど戦略的な調達計画も必要なことがあります。そんな時も早めに銀行へ伝えておくことで、経営者の先見性に信用を持ってもらうことにつながります。
計画をたてる時は大きくしようとしがちですが、実績とかけ離れていない、具体的な数値を使用するよう心掛けましょう。数値で表せないものは必ず口頭で説明する機会をつくり、銀行により多くの安心感を与えて、スムーズに審査してもらいましょう。
● まとめ
いかがでしたか。全ての資料が常に必要なわけではありませんが、自社で常に現状を把握しておくことは必要です。そのためにも、より詳細な資料を無理の無い範囲で作成しておくことが大切と言えます。