金融機関から融資を受けることに成功したら、翌月からすぐに毎月の返済がスタートします。
中小企業者が事業資金としてお金を借りた場合、返済期間は10年以上となるのが一般的です。
もし返済にいきづまるようなことになってしまうと、事業経営そのものが危うくなってしまいますので、返済がスタートした当初から毎月の資金繰りの計画をしっかりと立てていくようにしましょう。
ここでは中小企業者の方が借入金を返済していく時の注意点や、万が一返済が予定通りにできなくなってしまったときの対策(リスケなど)について解説させていただきます。
借入金の返済が滞ってしまったらどうなる?
金融機関から融資を受ける場合、何らかの形で担保を差し出す必要があるのが一般的です。
担保というのは「もし返済が滞った場合にはこれの所有権を引き渡します」と約束したり「もし返済が滞った場合にはこの人が代わりに支払いを行います」という約束をしたりすることです。
前者としては社長の個人宅に抵当権を設定することが考えられます。
この場合、返済が滞ると金融機関はその抵当権が設定されている物件を強制的に売却し、その売却代金から借入金を回収することが考えられます。
後者については保証人や連帯保証人といわれるものが該当します。
保証人がついている借金の返済が滞ってしまうと、金融機関は今度はその保証人に対して借入金の返済をせまってきます。
保証人には多くの場合親族や親しい知人の人などになってもらっているでしょうから、信頼関係を損なわないためにも返済が滞ることはできる限り避けなくてはなりません。
なお、保証人と連帯保証人の違いについてですが、法律上は「保証人はまず債務者本人に先に支払ってもらうように主張できるが、連帯保証人はそれができない」という違いがあります。
しかし、実務では金融機関が連帯保証人に対していきなり請求を行うことは実質的にないことなので、実際には保証人と連帯保証人の区別が問題となることはありません。
融資が必要になるタイミング
資金繰りのコツとして、毎月の運転資金の3ヶ月分の現預金はキープしておくということがよく挙げられます。
逆にいうと、この水準の現預金が手元にないと自転車操業の状態になっている可能性が高いといわざるをえません。
運転資金がショートしているという場合、何らかの要因で事業そのものがうまく回っていない可能性が高いということを理解しておく必要があります。
また、設備投資を行う場合も融資が必要になるタイミングです。
設備投資の場合にはその投資した金額を、どのぐらいの期間で回収するのかということを明確に意識しておくことが大切です。
わざわざ融資を受けて設備投資を行う以上、設備投資の結果として何らかの形で売り上げと利益が増加しなくては意味がありません。
その利益の増加分で融資を受けたお金を返済していくとして、どのぐらいの期間が必要になるのかということを明確にしておきましょう。
その上で、その計画を融資審査で担当者にアピールすることが大切です。
毎月の借入金の返済負担を減らす方法
1つの金融機関から、複数の借入をしていると言う場合、別の金融機関であらたにローンを組み直すことで、毎月の返済額を減らすことができる場合があります。
例えば、金融機関Aから毎月返済額10万円の借入を3本していると言う場合、毎月の返済額は合計で30万円ということになりますが、別の金融機関Bから借入をしてAの借入金を全額返済し、Bからの借入は返済期間を長くして一回あたりの返済額を減らすと言う方法があります。
金融機関Bとしては新規の融資先が増えることになりますから、金融機関Aからの借入金を全額返済することを条件に融資を通してもらえる可能性があります。
もちろん、この場合返済期間が長くなる分、トータルで負担する借入利息が多くなってしまいますので注意しましょう。
借入金の返済と税金計算について
借入金の返済額のうち、利息の支払い分は「支払利息」として損益計算上の経費として処理することができます。
経費が多くなるほど利益が小さくなりますので、税金も安くなります。
ただし、注意点としては元本部分の返済については経費とはならないことです。
元本部分の返済は会計上、借入金の返済で損益計算書ではなく、貸借対照表にのみ関連する取引になります。
リスケには応じてもらえる?
資金繰りが悪化してしまい、当初の約束通りに返済ができなくなってしまった場合には、最後の手段として返済のリスケ(リスケジュール)を依頼することが考えられます。
リスケとは簡単に言うと金融機関にお願いをして返済の条件を緩和してもらうことです。
金融機関側としては融資先が倒産してしまって貸したお金が全額返ってこないよりはましなので、条件によっては応じてもらえる可能性があります。
リスケでは、具体的には返済期間を延長することで月々の返済額を小さくしてもらったり、一定期間(1年間とされることが多いです)は元本返済を猶予してもらって、利息の支払いだけでよいとしてもらったりするといった形がとられます。
リスケは、金融機関側としては審査の手続きが非常に大変で、金融機関内部で稟議書を通すために非常に苦労するものですので、現状返済が非常に難しいことと、リスケをしてもらったあとの返済計画を丁寧につたえることが大切です。