会社が従業員を雇う場合、従業員を社会保険に加入させなくてはなりません。
日本の法律では基本的に従業員を社会保険に加入させることは企業側の義務とされていますから、「会社が保険料を支払って従業員を保険に加入させてあげている」という意識でいると思わぬペナルティを課せられてしまう可能性があります。
もし加入義務のある従業員を社会保険に加入させることを怠っていると、労働基準監督署等から指導され保険料をまとめて支払わされる…ということもありますから注意しておきましょう。
会社が従業員に加入させなくてはならない社会保険としては次の4つがあります。
- 健康保険
- 厚生年金
- 労災保険
- 雇用保険
以下では加入させなくてはならない従業員の条件や、保険料の計算方法について解説させていただきます。
① 健康保険
健康保険は従業員が仕事以外の時間に病気や事故により医療機関を受診する必要がある場合に、医療費の一部を負担してもらうことのできる保険です(仕事中に生じた事故等に関しては③の労災保険が適用されます)
健康保険に加入させないといけない従業員の条件
法人として事業を営んでいる場合、基本的にすべての従業員を健康保険に加入させなくてはなりません。
一方で、個人事業主として事業を営んでいる場合には常時雇用している従業員が5人以上である場合に加入させる義務があります(それ未満の従業員数の場合にも任意で加入することは可能です)
なお、パート従業員の場合には、正社員の4分の3以上の勤務時間、勤務日数がある人は健康保険に加入させる必要があります。
健康保険料の計算と納付方法
健康保険の保険料は「4月〜6月の給与の平均額×保険料率」で従業員ひとりひとりについて計算し、保険料は給与を支払った月の月末までに納付します(納付書は健康保険の加入手続きを行うと健康保険組合から発行されます)
保険料は会社と従業員が折半して負担しますから、保険料の2分の1はお給料から天引きするのが一般的です。
② 厚生年金
厚生年金は従業員が老後に年金を受け取れるようにするために加入する保険です。
厚生年金の加入義務がある従業員や、保険料の計算や納付は①で説明させていただきた健康保険と同じで、以下の計算式により計算します(保険料率だけ違います)
「4月〜6月の給与の平均額×保険料率」
こちらも保険料の2分の1を従業員のお給料から天引きして徴収し、給与支払い月の月末日までに支払います。
③ 労災保険
労災保険は勤務時間中に従業員が怪我や病気になってしまった時に必要な保障を受けるための保険です。
上でも少し説明させていただいたように勤務時間以外に生じた傷病により従業員が医療機関を利用した場合には①の健康保険が適用になります。
労災保険に加入させないといけない従業員の条件
労災保険は個人事業主、法人を問わず従業員を1人でも雇う場合には必ず加入しなくてはなりません(正社員、パートの区別もありません)
もし加入手続きをしておらず、実際に労災事故が起きてしまったような場合には会社に厳しいペナルティが課せられてしまう可能性がありますから注意して起きましょう。
労災保険の保険料計算と納付
労災保険の保険料は「全従業員の1年間の賃金総額×労災保険料率」で計算し、1年に1度納めます。
なお、労災保険料と次の④でつ生命させていただく雇用保険料とはまとめて計算と納付の手続きを行います(この手続きのことを「労働保険料の年度更新」と呼びます)
労災保険料は会社が全額負担する必要があります(従業員の負担はありません)
④ 雇用保険
雇用保険は従業員が将来的に退職した時に失業給付を受け取ることができるようにするための保険です。
雇用保険に加入させる義務がある従業員の条件
雇用保険に加入させないといけない従業員は、「1週間に20時間以上の労働時間がある人」と「31日間以上継続的に仕事をしてもらう人」という2つの条件に該当する人です。
もし31日目以降は更新の取り決めがない場合であっても、過去に同様の形で従業員を雇った時に更新をしたことがある場合には雇用保険が適用になります。
平成22年4月1日以降は条件が引き上げられていますので注意しましょう。
雇用保険料の計算と納付
雇用保険料は「従業員の賃金総額×雇用保険料率」で計算し、労災保険料とともに納めます。
雇用保険については従業員と企業がそれぞれの負担率に応じて保険料を負担しますので、従業員の負担分については毎月のお給料から徴収する必要があります。
まとめ
本文で解説させていただいた内容をまとめると、以下のようになります。
まず、企業が従業員に加入させなくてはならない社会保険には健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の4種類があります。
このうち健康保険、厚生年金、雇用保険の3つは企業と従業員がそれぞれの負担率に応じて保険料を負担しますので、従業員の負担部分については毎月のお給料から徴収しなくてはなりません。
労災保険だけは保険料の全額が企業側の負担となりますから注意しておきましょう。