新型コロナ感染症は、一般的には、2019年12月に初めて中国の武漢市で発生して、そこから世界中に拡大していった、という認識になっていると思われます。既に発生から1年を超えて、我々の社会生活や経済活動などに大きな影響を与え続けているわけですが、現状新型コロナ感染症を理由とする企業破綻の状態はどのようになっているのでしょうか。
コロナ禍における企業破綻の現状を分析するとともに、今後コロナの影響が残る中でどのように企業破綻を防ぐのか、などについて解説します。
1.新型コロナ感染症の発生から世界的な拡大へ
新型コロナ感染症の拡大は現在も継続しており、世界での感染者数は約1億1,000万人、亡くなった方は240万人を超えています(2021年2月18日時点、米国ジョンズ・ホプキンス大学による発表から作成)。
ワクチンの接種が始まった国もありますが、多くの人に対するワクチン接種には時間がかかるとともに、先進国以外におけるワクチン接種が順調に進むのかどうか(これを「ワクチン格差」と呼んでいるようです、という点にも懸念があるようです。
公式に世界保健機関(WHO)が発表している世界最初の新型コロナの症例は、前述したように、2019年12月8日に中国の武漢市で発生した、としています。ここから世界に拡大していった、というのが一般的な認識ですが、時間が経つに連れて様々な事実が判明してきたようです。
当初、武漢市で新型コロナ感染症の流行が確認された頃は武漢市の海産物マーケットに関係している人々の感染例が多数にのぼっていたことから、このマーケットで販売されていた野生動物が感染の原因でそれが人間に感染するようになったらしい、という推測がなされていました。
しかし、2019年12月上旬には、この武漢市の海産物マーケットは全然関係がない感染が複数例も報告されていることから、現在では海産物マーケットが新型コロナウイルス感染症の起源ではなかったとの指摘がなされています。
それでは、当初新型コロナ感染症の起源とされていた武漢市の海産物マーケットは何だったのでしょうか。おそらく、新型コロナ感染症流行の初期段階に発生した1種のクラスター現象だったのではないだろうか、という意見もあります。
そもそもどのタイミングで新型コロナ感染症は人間間で拡大していていったのでしょうか。現在世界保健機関(WHO)の調査が進められていますが、結論を言ってしまうと「まだ分からない」状態です。ただし、我々が最初に認識していたよりも早い段階で世界に拡散していた可能性も考えられます。
アメリカでは2020年1月19日に最初の新型コロナウイルスの感染例が見つかっています。アメリカの新型コロナウイルスの侵入を確認するために、アメリカ赤十字社で献血された7,389人分の血液に関して新型コロナウイルスを調査したところ(2019年12月13日〜2020年1月17日)、106の血液検体が陽性を示しました。
今回の検査で血液検体が陽性だったのは、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、マサチューセッツ州、ウィスコンシン州、などの複数の州における住民の血液検体でした。このことから、特定地域のみならずアメリカの広範囲において2019年12月中旬から2020年1月中旬までの期間において新型コロナ感染症が拡大していたことを示しているのです。
一方で、ヨーロッパにおいても2019年12月時点で新型コロナウイルスが発見されています。2019年12月にはイタリアのミラノとトリノから採取された排水の中から新型コロナウイルスが見つかりました。また、フランスでは、原因がはっきりしなかった肺炎症例の検体を調査したところ(2019年12月)、新型コロナウイルスが発見された、という報告がありました。
このように研究結果からはアメリカやヨーロッパにおいては2019年時点で新型コロナ感染症の感染者が存在していた可能性が高いと考えられます。一方で日本で最初に新型コロナ感染症の感染者が見つかったのは2020年1月16日であり、武漢市からの帰国者でした。中国との人的交流が盛んな我が国ではヨーロッパよりも早く新型コロナウイルスが侵入していた可能性は否定できないでしょう。
2.新型コロナ感染症が日本経済に与えた影響
冒頭に述べたように現時点においても新型コロナ感染症は世界中に大きな影響を与え続けており、日本でも二度目の緊急事態宣言が発出され、マインドとしては「自粛」ムードが引き続き漂っているのが現状ではないでしょうか。新型コロナ感染症の発生から1年を超えたこのタイミングで、日本経済にどのような影響をあたえているのか、について説明します。
(1)倒産企業の増加
帝国データバンク(信用調査会社)によると、2020年2月から2021年2月19日までに新型コロナウイルスの影響により倒産した企業数は1,047にのぼっています。 (参考URL)
この新型コロナウイルスの影響による倒産(含む、法的整理、事業停止(除く、銀行取引の停止)、負債総額1,000万円未満及び個人事業者も含む〉は、全国で1,047件(内訳は、法的整理:944件(破産:897件、会社更生法:1件、民事再生法:40件、特別清算:6件)、事業停止:103件、が確認されています。
倒産した企業の負債総額は4,025 億5,800万円となっており、小規模倒産(負債総額が1 億円未満)が 557 件と全体の53.2%を占めています。一方で、大型倒産(負債総額が100億円以上)はエアアジア・ジャパン株式会社など、4件(全体の0.4%)が発生しています。
また、月別の倒産発生件数は2021 年1 月が131 件となり最多で、次に2020 年12 月の124 件、2020 年6 月の111 件、と続いています。また2021年の累計倒産企業数は169件にのぼっています。
次に業種別の状況ですが、飲食店(167 件)の倒産件数が最多で、建設・工事業(89 件)、ホテル・旅館業(79 件)、アパレル小売店(58件)食品卸(52件)と続いており、特に飲食店、アパレル業、食品業への深刻な影響が目立っています。
都道府県別に関しては、東京都(252件)が最多で、続いて大阪府(106件)、神奈川県(62件)、静岡県(48件)愛知県(45件)、兵庫県(44件)となっており、東京と大阪の2都府が全体の34.2%を占有しています。
日本においても多くの補助金や助成金などの導入・活用が推進されてきたものの、コロナ対策と経済対策の両輪をタイミング良く効果的なタイミングで実行できていたとは言えない面もあり、残念ながら倒産ペースは加速しているのが現状です。
(2)失業者の増加
前述したように倒産件数が増加しているということは仕事を失ってしまった方も増加しているということです。新型コロナ感染症の影響で仕事を失ってしまった人は8万人にものぼっているとのことです(2021年1月、厚生労働省調べ)。
新型コロナウイルス感染症の拡大のより企業業績が悪化した会社から解雇されてしまったり、雇用契約の更新をしてもらえないいわゆる「雇い止め」をされてしまったりした事例に関して厚生労働省は調査を行っています。
上記の調査によると、2020年1月末から2021年1月6日までの間に解雇、雇い止め、によって事を失った人は、(含む、見込み)8万121人と、8万人を超過していることが判明しました。ただし、この数字は全国のハローワークなどにおいて把握することができた人数なので、実際に仕事を失った人はもっと多いものと考えられます。
新型コロナウイルス感染症の影響によって仕事を失った人は、2020年5月21日に1万人を超過した後に、同年8月31日には5万人、同年11月6日には7万人、をそれぞれ超える状況になっていました。2020年12月25日時点における業種別データによると、仕事を失った人数は、
(1)コンタクトレス・テクノロジーのメリット
- 製造業:1万6,717人
- 飲食業:1万1,021人
- 小売業:1万399人
- 宿泊業:9,620人
- 労働者派遣業:5,165人
となっています。
また、都道府県別データでは
- 東京:1万9,318人
- 大阪:6,657人
- 愛知:4,696人
- 神奈川:3,594人
となっています。
一方で、新型コロナウイルス感染症の影響によって仕事を失った方々の中で、パートやアルバイトなどの非正規雇用社員として働いていた人は2020年5月25日から2020年12月25日までの期間で3万8,009人となっています。
(3)勝ち組と負け組の2極化
前述したように新型コロナ感染症の拡大は企業倒産件数を増加させてり、仕事を失う人を増やしたり、と基本的には、日本経済に大きなマイナスの影響を与えており、早期収束が望まれていることは間違いがないでしょう。
しかしながら、その一方でこのコロナ禍をビジネスチャンスと捉えて、会社の業績を落ち込ませることなく、にほ好調な結果を保持、あるいは好調なビジネスへと反転攻勢、している企業もあります。コロナ禍への対応によって企業は勝ち組と負け組に二極化しているのが現状ではないでしょうか。
コロナ禍で倒産した業種で最も多かった飲食業では、時短営業や外出自粛などの影響により多くの店舗で苦しい運営を続けているところも多いようです。しかし、いち早くテイクアウト営業に形態を変更していた店舗では、減少した売上をカバーするのみならず、これまでの売上を超えているようなケースもあるようです。
これは自粛生活が続く中において多くの人々の「巣ごもり需要」を取り込むことができたことが成功要因になっていると考えられます。単に持ち帰りができるようにしただけではなく、例えば、これまではコースの中でしか食べられなかったメニューや夜間しか提供していなかったようなメニューなどをテイクアウト可能にする、といった工夫をこらしている点にも特徴があります。
つまり、コロナ禍における新生活様式に早い段階で対応するとともに、自分たちが提供している商品やサービスにコロナ禍を逆手にとった付加価値の提供ができているのかどうか、という点が勝ち組と負け組の差になっているのではないでしょうか。
(4)「新しい生活様式」の普及
新型コロナ感染症が拡大している環境下において、日本政府は2020年5月4日に「新しい生活様式」の実践例を発表し、現在では多くの部分が我々の生活に取り込まれているものと考えられます。ここで「新しい生活様式」の実践例についてあらためて確認しておきましょう。
①各自の基本的な感染対策
◎感染を防止するための基本は以下の3点:ソーシャルディスタンス(身体の間の距離)を確保、マスク着用、手を洗う
- 相手との間隔は、可能な限り、2m(最低でも1m)は空けること。
- 可能な限り、真正面での会話を回避すること。
- 外出の際、あるいは屋内で会話をする際でも、人との距離(間隔)が十分にとれないような場合には、症状がないときでもマスクを着用すること。しかし一方で特に夏場では、熱中症には十分留意すること。
- 帰宅したら最初に手・顔を洗うこと。また、人で混んでいる場所からの帰宅後は可能な限りすぐに着替えてシャワーを浴びること。
- 手を洗う場合は30秒くらいの時間をかけて流水とソープを使用してよく洗うこと(なお、手指の消毒薬などの使用もOK)。
- なお、高齢者・基礎疾患のある人、など、重症化リスクが高い人と会う場合には体調を厳重に管理すること。
◎人の移動における感染対策
- 新型コロナ感染症が流行っているエリアからの移動、新型コロナ感染症が流行っているエリアへの移動、はともに控えること。
- もし新型コロナ感染症を発症した場合に備えて、どこで誰と会ったのか、ということをメモにしておくこと。接触確認アプリを活用することもおすすめ。
- 勤務場所などの利用しているエリアにおける感染状況に常に留意しておくこと。
②日常的に生活するうえでの基本的な生活様式
日常生活における基本的な生活スタイルは、こまめに手を洗うこと、手指を消毒する、咳エチケットを徹底すること、を挙げることができます。
- 極力こまめに室内の換気を実施する(室温は、エアコンを併用して、28℃以下を目安にしましょう)
- 身体的な人との距離を確保する
- いわゆる 「3密(密集、密接、密閉)」を避ける
- 各自の健康状態に応じた運動・食事・禁煙、など、の生活習慣に対する理解や実行
- 毎朝、体温測定や健康状態の確認などを実施すること。もし発熱や風邪の症状などが見られた場合には無理をしないで自宅などで静養する
③日常的な生活シーンごとの生活様式
◎買い物(ショッピング)
- 対面型の店舗のみならずネット販売・通信販売などの利用も
- 1人だけで、あるいは少ない人数でお店が空いている時間帯に
- キャッシュレス決済(電子決済、など)を利用する
- 事前に買い物の計画を立てておいて買い物自体は迅速に済ませる
- 商品見本などの展示されている商品へのコンタクト(接触)はなるべく控える
- 支払時にレジに並ぶ際には自分の前後に間隔を空ける
◎娯楽やスポーツをする場合の生活様式
- 公園では人が少ない(空いている)時間帯や場所をチョイスする
- 筋トレやヨガをする際には人との間隔を十分に確保する、あるいは自宅において動画などを活用して行う
- ジョギングをする場合は少ない人数で行う
- 人と擦れ違う場合にはマナーとして距離をとる
- 予約制度などを利用することで時間的にも空間的にもゆったりと過ごせるように
- 狭い空間(人との距離を確保できないような部屋など)で長居をしないように
- カラオケ(歌や、応援、など)などは、十分に距離を確保するかオンラインで行うように
◎公共交通機関などの利用
- 会話をする際には控えめに
- ラッシュの時間帯などは回避して利用する
- 徒歩や自転車なども併せて利用することを推奨
◎飲食
- テイクアウト(持ち帰り)、出前、デリバリー、などの活用
- 屋外の空間で快適に(寒暖対策が必要な場合はしっかりと実施)
- 大皿に盛り付けて各自が取り合うような料理の提供スタイルは避けて個々に提供
- 対面形式で着席するのではなく横並びで着席し飛沫の拡散を防止
- 食事に集中して会話は極力控えめにする
- 酒類のお酌やグラス・お猪口を回し飲みすることはやめましょう
◎イベントやライブなどへの参加
- 接触確認アプリを活用することを推奨
- 自分に発熱や風邪などの症状が生じているときには参加しないようにする
◎新たな働き方のスタイル
- テレワーク(在宅勤務)や時短勤務・ローテーション勤務の導入、実施
- 混雑した通勤地獄から時差通勤の活用でゆったりとした出社へ
- オフィスにおける他人とのスペース確保で広々とした労働環境へ
- 基本的に会議はオンラインで実施
- もし対面でミーティングをする場合には、会議室の換気と参加者のマスク着用は必須
上記の「新たな生活様式」に関しては、現在では日常的な生活スタイルの常識として根付いているものも少なくないものと考えられます。つまり、新型コロナ感染症の拡大は日本経済に大きな影響を与えただけではなく、私たちの日常生活も大きく変えてしまった、ということができるのです。
3.コロナ禍における企業破綻の防止策
これまで説明してきたように、新型コロナ感染症の影響で企業倒産や失職者は増加しており、企業業績にも二極化の兆候が見受けられる、など、今後とも業績が厳しく会社が破綻してしまう可能性が頭をよぎる経営者は少なくないものと考えられます。本稿では、コロナ禍においてどのような対策を実施すれば企業破綻を避けられるのか、について緊急度の高い対応策から説明します。
(1)新型コロナ感染症など有事の際に利用可能な融資、補助金、給付金の活用
企業破綻を避けるためには、何と言っても流動性(現預金など)の確保が必要になります。売上がない以上、家賃、人件費、などを賄うためには何らかの手段で現預金を確保しなければなりません。
新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の自粛要請で売上が減った企業を対象に、日本政策金融公庫、信用保証協会、などにおいては、新たな融資制度の設定や既存融資の上限金額や対象企業などを拡大する、といった対応を実施しておりい、補助金、給付金、なども緊急的な措置として設定されました。
特に、持続化給付金(2020年5月に開始)では、前年の同月と比べて売上高が50%以上減少した月がある、という条件を充足すれば、法人の場合は最大200万円、個人の場合は最大100万円、の返済不要の給付を申請することが可能になりました。
なお、持続化給付金と家賃支援給付金の申請期限は2月15日まで延長されましたが、現在では申請は締め切られています。企業の経営者は、この新型コロナ感染症を原因とする劇的な経営悪化による経営破綻を防止するために、日常的に新たな融資や給付金といった情報を手に入れるようにしておくことが極めて重要です。
(2)取引金融機関に対する融資のリスケジュールの依頼
借入金を返済することが厳しくなった場合には、取引先金融機関(借入先)に、現在の返済額と返済期間をリスケジュールすることが可能かどうか、相談することが大切になります。経営改善計画を作ってあらためて返済の計画を提示することで、金融機関が返済のリスケジュールに対応してくれる可能性も考えられます。
(3)融資の検討
会社の資金繰りが厳しくなり、どうにも立ち行かなくなってきて、会社が破綻してしまう可能性が生じている場合には新たに融資を受けることを検討しましょう。例えば、公的な日本政策金融公庫や民間の金融機関などの場合であれば信用保証付融資や制度融資などの利用もしやすいと考えられます。
①日本政策金融公庫
政府系金融機関の1つである日本政策金融公庫は民間金融機関では融資を実行することが難しい個人事業主や中小企業などに向けた融資を取り扱っています。例えば、売上が大きく減って業績が悪化している企業などを対象にしている融資制度も設定されていることも日本政策金融公庫の特徴です。
②信用保証付融資
信用保証付融資は信用保証協会の保証が付帯している融資のことです。民間金融機関からの融資を受けたいと考えている会社が信用保証協会へ保証を申請することにより、通常のケースよりも融資を受けることが容易になる利点があります。一方で、保証を受けることができた会社は信用保証協会に対して保証料を支払う必要があります。
③制度融資
制度融資は民間金融機関と自治体とが連携して実行される融資のことです。地域における課題を解決することに繋がる融資に関しては、自治体から民間金融機関に対して、融資の原資である金銭を預託することで、融資を受ける会社の金利負担の軽減を企図したり、自治体から企業に対して一部の保証料をサポートしたりして、融資条件の緩和が可能になります。
(4)会社や事業の売却を検討
経営破綻の可能性が見えてきたような場合に、なんとか事業は続けていきたいと考えているのであれば、会社や事業の売却(M&A)も1つの有効な対策になると考えられます。
会社売却のデメリットとしては、
- 経営権を失う場合が大半であり経営の自由度が狭められてしまう
- 一般的には、通常の場合よりも安い価格で会社を売却する可能性が高い
- 買い手を探すのには相当の時間が必要なことが一般的なので時間との勝負になる
一般的には、会社を売却することで全経営権を買い手が取得して、売り手側だった経営者は従来のように自由には経営することができなくなってしまいます。自らの自由意思で経営を行ってきた経営者は仕事の仕方や価値観などが新たな経営者と合わなくて、M&Aを実施した後になって、十分に実力を発揮することができなくなってしまい、従来との違いを感じてしまうことが多々あり得るかもしれません。
また、業績不振の会社は収益力や将来性を低く見積もられてしまうことが一般的であり、高い企業価値が付けられることはほぼ皆無と言ってもよいかもしれません。例えば、債務超過になっている会社の場合は、1円譲渡、という取引事例も多々見受けられます。想定に比べてかなり低い価格で会社売却をするかしないか、金額には目を瞑って事業の継続を優先して選ぶのかどうか、という会社売却に関する優先条件は何なのか、ということをあらかじめ決定しておくことが極めて重要です。
反面、会社の売却により以下のようなメリットが見込むことができます。
- 事業を継続することが可能になる
- 従業員の雇用を確保することができる
- 第二の創業(スタート)として全く新しい環境で自社の成長に取り組むことができる
会社の売却を実行して買い手側企業の手で事業の継続をすることができるということは、今まで育成してきた会社や事業が持っている有形資産や無形資産(ブランドなど)を維持・活用することが可能になる、いうことです。経営者には大きな魅力ではないでしょうか。
また、経営者の大きな悩みでもある「従業員の雇用維持」に関しても会社の売却は解決が可能な手段になると考えられます。会社を売却する際に従業員が抱えるであろう不安をどのようにように解消していくのか、という課題は生じるものの、企業破綻と比べれば、雇用の維持、という大きな目的を果たすことができるのは大きな利点です。
会社を売却した後には、買い手側の企業と連携することで、資産、人材、リソース、などを上手く利用して、さらに事業を大きく成長させていくことが可能になります。自社の力だけでは、資金的な問題、人材なリソースの限界、などから達成することが難しかったことに対しても新たな投資が可能になる、とも言えるので、会社売却後に加速度的に事業が伸長していく場合も多々見受けられます。この点に関してはM&Aの大きな特徴の1つだと言えます。
(5)経営相談の利用
国の機関や地元の商工会などと相談することにより経営に関して助言を得ることも経営破綻を防止する方法としては有効です。経営における課題を発見したとしても解決方法は1つとは限りません。経営破綻を防止するためにどういった解決手段をチョイスして実行すればよいのか、という点に関しては豊富な知見や経験を有している専門家(プロフェッショナル)に確認してみた方がより良い方法を選べることができるでしょう。以下にいくつか経営相談が可能な組織を紹介します。
①中小企業のおける「よろず支援拠点」
国(中小企業庁)が都道府県に拠点を整備して、中小企業を主な対象とする経営相談のための機関を設置しています。弁護士、税理士、中小企業診断士、などの経営に関して豊富な知識と指導経験を有している専門家がいろいろな相談に応じることが可能です。
②認定支援機関による経営指導
中小企業経営強化支援法による認定を受けた、弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、などの専門家による支援機関が経営に関するサポートを実施しています。経営指導といった支援を受けることにより、補助金の受給や税制優遇などを受けることが可能になる、という利点があります。
③商工会による経営指導
地元の商工会議所では地域のプロフェッショナル(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、など)と連携しながら、企業の資金繰り、販路の拡大、税務上・労務上の指導、などを実施しています。
一定期間、商工会の経営指導を受けて推薦を受けることにより、日本政策金融公庫が設定している「マル系融資」に申し込むことが可能になります。マル経融資(正式名称は「小規模事業者経営改善資金」)とは、商工会議所や商工会などから経営指導を受けている中小企業などが、経営改善のために必要となる資金を無担保かつ無保証人で利用することができる制度のことです。
④民間の経営コンサルタントなど
経営破綻の対策などに詳しい経験豊富な民間の経営・財務コンサルタントなどを利用する、という方法も考えられます。定期的なセミナーなどが開催されているケースも多く、他企業の経営者などとの交流の場を積極的に設定してくれることも十分に考えられます。
(6)経営セーフティ共済への加入
経営セーフティ共済とは取引先が経営破綻した場合に中小企業の連鎖倒産(共倒れ)を防止するための共済制度のことです。経営セーフティ共催に加入する会社は、納付した掛け金に応じて、最大で8,000万円の融資を受けることが可能になります。
経営セーフティ共済の掛け金は全額を損金に算入することができるうえに、もし解約した場合でも一定の割合(最大では掛金の全額)を返金してもらえることから、経営破綻を防ぐことのみならず節税の観点でも利用することが可能です。
まとめ
新型コロナ感染症の影響が長引くことにより、飲食店やホテル・旅館などの経営破綻や非正規労働者などの失職といった日本経済におけるマイナス面での事象が浮き彫りになってきていますが、一部の企業ではコロナ禍をビジネス・チャンスとして捉えて大きく業績を落とすことなく、反対に業績を向上させているケースも見受けられます。
新型コロナ感染症に対するワクチンの注射が2020年2月から日本ではスタートしていますが、全面的に収束するまでにはまだしばらく時間がかかると考えられることから、企業経営者は企業破綻を防ぐためにあらゆる方策を検討して実行することが求められている、と考えられます。
併せて読みたい:ウィズ/アフターコロナにおける人材採用の留意点を解説