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会社設立前に必ず押さえるべき!「有限責任」の定義を詳細解説

有限責任をイメージする画像 起業家の基礎知識

有限責任とは、言葉の通り、責任に限りがあることを意味しますが、ビジネスの世界における有限責任という言葉には会社の債務における責任の範囲が「有限=限界がある」という意味があります。有限責任の定義や有限責任社員となる場合などについて解説します。

1.有限責任とは

有限責任の定義とは、会社が倒産した際に会社に債務が残っている場合は、株主として会社に出資した金額を上限として、その債務に対して責任を負うということです。したがって、会社が倒産した場合には、資本金などの会社設立時に出資したお金は全く戻ってくることはありません。

しかし、出資した金額が上限(=有限責任)のため、出資した金額以上の支払い義務も発生しないことになります。反対に、出資金額を超えてでも会社の債務に責任を負うことを無限責任と言います。

無限責任については、「会社設立前に必ず押さえるべき!無限責任の定義を詳細解説」の記事でも詳細に解説しています。

有限責任を負う社員を有限責任社員と言います。ここで言う「社員」とは従業員という意味ではなくて、会社に出資している人、という意味となります。有限責任社員となるのは、以下のような場合です。

・株式会社の出資者
・合同会社の出資者
・合資会社の一部の出資者

株式会社と合同会社の場合は出資者全員が有限責任社員となります。また、合資会社の場合は有限責任社員と無限責任社員の両方が存在します。合資会社の社員で自分がどちらにあたるのかを確認するためには、会社の定款を確認する必要があります。

また、事業形態による分類は下図の通りです。

  物的組織 人的組織
法人 組合 個人
有限責任 株式会社 合同会社 有限責任
事業組合
 
最低1人以上の
無限責任構成員
  合資会社    
全構成員が無限責任社員   合名会社 民法組合 個人事業主

 

(1)株式会社が有限責任であることの意味は

①株主は出資した金額以上の損失に責任は負わない

株式会社は株主からの出資によって成立します。そして、株主が設立に際して出資した金額は「資本金」と呼ばれます(設立後に増資した金額も同様)。

例えば株主が、会社設立の際に、3,000万円を出資したとします。この3,000万円は、会社の事業活動に必要な支出(原材料の仕入代金、事務所の家賃、人件費など)に使用されることになります。会社はこれらの支出を、製商品やサービスなどの販売により売上として回収する必要があります。

回収した金額が支出よりも大きければ、株主が設立に際して出資した3,000万円は増えることになりますが、反対に回収した金額が支出を下回れば、出資した3,000万円は減ることになります。株主が出資した3,000万円が底をついてしまった場合は借金をする必要があります。

2,000万円の借金をして、この分を事業の支出に使用しましたが、思うように販売できず回収ができない場合には借金だけが残ることになり、このままであれば会社は倒産することになります。ところで、この借金の2,000万円は誰に返す義務があるのでしょうか。

もちろん会社には返済義務がありますが、借金も使い果たしてしまっているので返済したくてもお金がありません。そして、株主が出資した3,000万円も使い切ってしまっているので返済しようがありません。結論から言うと、借金は返す必要がありません、というよりも、「返す方法がない」のです。

そうすると、結果として、株主の損失は3,000万円となります。株主はこれ以上の責任(損失)を負うことはないのです。2,000万円の借金を返済するために、追加で出資する義務も責任もありません。これが、株式会社は有限責任であるといわれる所以です。

ですので、後述しますが、ベンチャー企業や中小企業に対して金融機関が融資を実行する際には、連帯保証などの債権保全手段を講じるようにしているのです。

(2)ベンチャー企業の創業者は有限責任か

多くのベンチャー企業は株式会社、あるいは合同会社が多いと思われますが、創業者は有限責任であることが一般的です。したがって、創業者は出資額以上に会社の債務に責任を負う必要はないことが本来の姿です。

しかし、ベンチャー企業が金融機関から融資を受けるような場合には、会社の創業者や経営陣が連帯保証人となることを要求されることがほとんどでしょう。ベンチャー企業には、十分な実績や信頼がないため、債権保全の観点から個人保証を求められることになるのです。

連帯保証人になるということは、会社の債務全体に対して責任を負うということになるので、ベンチャー企業の創業者などは実質的には無限責任であると言っても仕方ないでしょう。例えば、ベンチャー企業が破産してしまった場合には、連帯保証をしている創業者や代表取締役個人なども破産してしまうケースがほとんどでしょう。

なぜならば、会社が破産した場合には、会社の借金を創業者や代表取締役個人が肩代わりをする必要があるからです。つまり、ベンチャー企業の場合では、有限責任とは「名ばかり」の状態であると言うことができるのです。

(3)有限責任か、無限責任かの検討(例)

①民法上の組合

民法上の組合は法人格を有していないので、その組合員は無限責任ではありますが、例外として、投資事業有限責任組合における有限責任組合員や有限責任事業組合における組合員は有限責任となります。また、法人格を有する組合における組合員も有限責任となります。

②信託における受益者

信託における受益者も、原則として、有限責任であり、自分から財産を拠出する義務を負っていません。有限責任信託における受託者も有限責任であり、信託財産の限度でのみ責任を負っており、固有財産については責任を負う必要はありません。

また、法令の定めがない場合でも、「責任財産限定特約」を結ぶことにより、相手方に対する特定の債務に対して特定の財産でのみ責任を負うものとすることも可能です(ただし、一切の責任を負わない、とした場合には「責任なき債務」となります)。

 

3.有限責任のメリットとデメリット

(1)有限責任のメリット

有限責任(法人化)の主なメリットは以下の通りです。

・取引先や金融機関からの信用度が高まる。
・330万円を超える所得がある場合には、個人事業主よりも税負担が軽くなる。
・自分自身の給与に対して、給与所得控除を利用することができる。
・退職金を会社の損金に計上することが可能。
・会社が従業員の社会保険料を一部負担することで優秀な人材を採用することが可能。
・会社の決算日を自由に決定することができる(個人事業主の場合は、一律で12月31日)。

(2)有限責任(法人化)の主なデメリット

・法人設立時に費用がかかる(株式会社の場合は20万円~、合同会社の場合は6万円~)。
・申告書の様式が煩雑となり、決算業務を自社で完結させることに手間と時間がかかる。
・複式簿記が必要になり、事務作業が増える。
・所得が330万円以下の場合には、個人事業主よりも税負担が重くなるケースがある。
・会社が赤字の場合でも、法人住民税の均等割負担が発生する。
・株式会社の場合は、一定期間ごとに役員の改選が必要になる。

 

まとめ

これまで説明してきたように、有限責任と無限責任の違いは、会社の債務に対する責任範囲の違いにあります。いくらベンチャー企業や中小企業の代表取締役が実質上は無限責任だとは言え、個人としての責任範囲は小さい方が良いに決まっています。

つまり、会社を設立するのであれば、有限責任の方が望ましい、ということができます。新たに設立される会社の大部分が株式会社、あるいは合同会社である理由はこの点にあります。

会社設立の費用に関しては、「会社設立にはいくらかかる?株式会社と合同会社を比較してみた」の記事を参考にしてみてください。