働き方改革が進められている中において行政への申請文書などにおいてハンコを押印することを廃止しようという動きが加速しています。この「脱ハンコ社会」への流れの背景にはどのような理由が考えられるのでしょうか。
また、脱ハンコ社会のメリットと注意点、主な電子署名ツールとは、電子署名ツールの活用方法、などについても詳しく解説します。
1.ハンコ社会の課題
わが国においては昔から社会的な慣行・習慣としてハンコが利用されてきており、現在においても特に「承認」をするというケースに使われているのが実態ではないでしょうか。しかし、現在のペーパーレス化などの働き方改革の状況下では真っ先に改善すべき習慣として取り上げられることも多いものではないでしょうか。ハンコ社会の課題には以下のような点を挙げることが可能です。
(1)「押印して当然」という業務フローが生産性の低下に繋がる
上長から承認印をもらわなければその書類が次に押印する人に回せない、という状況に遭遇した人は多いのではないでしょうか。押印する人が物理的に職場にいなければ、承認プロセスが中断されてしまい無駄な時間だけが過ぎる、という非効率な状況が発生します。
つまり押印のための待機時間や回覧手続きなどが業務の生産性を低下させており、場合によっては、本来やるべき仕事の時間が取れない、ということを生じさせている可能性も否定できません。特に現在のようなコロナ禍で在宅ワークが進んでいる中においては、物理的にハンコを押印してもらうという業務フローを維持することには無理が生じているとも言えます。
(2)ペーパーレス化の阻害要因
働き方改革の一環として従来の紙文化から脱却して、様々な書類を電子化してファイリングするという動きが加速しています。ペーパーレス化には、紙のコストが不要になる=バックオフィスのコスト削減になる、という利点が考えられるのですが、ハンコ社会のままではペーパーレス化を進めることが難しくなってしまいます。
意外と書類などを物理的に格納しておくためのコストは馬鹿にならず、例えば、段ボール箱、書庫などのスペース、保存期間が過ぎた文書類の廃棄、などの費用が実際にかかっているのです。したがってペーパーレス化の推進は無駄なコスト削減に直結する、ということができるのです。
(3)テレワーク導入の妨げとなる大きな要因
前述したようにコロナ禍においては多くの企業においてテレワーク(在宅仕事)の導入を進めています。テレワークにおいても従来から生産性を低下させないように様々な取組が各企業において実施されています。
しかしハンコ社会がそのままではテレワークをすることは実質的に不可能です。上司から承認印をもらう度に出社しなければならず、押印する上司もその度に会社に行かなければなりません。これでは何のためにテレワークを導入したのかわかりません。少なくとも物理的な押印をしなくても済むような業務フローの再構築を図る必要があります。
2.脱ハンコ社会のメリットとデメリット
脱ハンコ社会には以下のようなメリットとデメリットをそれぞれ挙げることができます。
メリット | デメリット |
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脱ハンコ社会のメリット
①生産性の向上
脱ハンコ社会の最大のメリットは、生産性向上に対する貢献、が挙げられます。脱ハンコ社会が実現することで、「押印が当然」とされていた従来からの無駄な仕事を減少させることが可能になり、部署類の書類保管や管理といった業務負担を軽くすることもできます。
ただし、無駄な業務が減少しただけでは生産性が向上した、とは一概に言い切ることはできません。無駄な業務が減少・消滅することによって、他に力を注ぐべき仕事に充当させる時間が増加して、生産性が向上する、ということになるのです。
②働き方改革への対応
脱ハンコ社会の実現は、テレワークをはじめとする新たな働き方を実現させることにも繋がると考えられます。脱ハンコ社会の進展でペーパー書類を電子化する動きが加速することで、押印のためのみの目的で会社に行く必要はなくなります。つまり、いつでも、どこでも、申請や承認のプロセスを遅滞なく進めることが可能になるのです。
脱ハンコ社会となり、場所、時間、などによる制限を受けることなく、自分らしい働き方を目指すことで、労働生産性の向上のみならず、働き手のワークライフバランスに対する意識や行動にもよい影響をもたらすことが可能になると考えられます。
③コストの削減
ペーパーレス化を進めることによって、これまで発生していた、紙代、封筒代、プリンターの保守・点検費用、といったコストが必要なくなります。また、課税対象となる文書であれば印紙税(印紙を貼り付ける)が必要になりますが、電子契約の場合であれば、印紙税を納付する必要がないので、印紙代は不要となります。
また、契約書の、印刷、封入、郵送に関する費用(人件費、郵送費、など)を削減することも可能です。さらに、パーパー・ベースの際には必要だった、文書類保管スペースや管理に関するコストもカットできるでしょう。
④コンプライアンスの強化
脱ハンコ社会の実現は様々な種類の文書類を電子化することにより、コンプライアンスを強化することにも繋がります。パーパー文書類のケースでは、手作業の実施による管理になるので、場合によっては紛失してしまう可能性であってり、文書を改ざんさてしまったりする不正の発生リスクを防止することが難しいと言えます。
しかし、電子化された文書の場合は、適切な水準のセキュリティを実施することができていれば、コンプライアンスの強化が可能になります。具体的には、文書の閲覧権限、文書の変更権限、文書の廃棄権限、など業務の種類によって付与すべき権限を変えておけばより高いセキュリティ水準を確保することが可能です。
脱ハンコ社会のデメリット
①電子対応不可の書類がある
多くの契約においてはペーパーレス化が認められており電子契約が可能になっていますが、まれにデータの電子化・データ化が認められていないケースもあることには注意が必要です。具体的には、不動産取引における賃貸借契約書、重要事項説明書、あるいは投資信託契約の約款、といった書類はペーパーベースで書面の形式で作成・保管することが法律で定められているのです。
②業務フローの再構築が必要
電子契約、申請・承認業務、といった脱ハンコを目標として新たに契約や業務のペーパーレス化を社内に導入するためには、これまでの社内の業務フローを根本的に見直す必要がある可能性があります。
ペーパーベースの書類作成・郵送などの仕事に携わっていた従業員などからは多少の反発を受ける可能性があります。脱ハンコの目的は人減らしではない、ということをきちんと従業員に説明して、理解してもらうことが大切です。
また、あらかじめ取引先にも十分な説明をすることが必要になるでしょう。もし取引先に説明したとしても取引先から十分な理解と協力を得ることができない場合には、紙と電子データを並行させて仕事を進めなければならないため、業務の効率化やコストの削減に繋げることが困難になってしまうでしょう。
3.脱ハンコに向けたアプローチ
脱ハンコは前述したように多くのメリットを享受できる施策ではありますが、実際にはなかなか実現させることが困難な施策でもあります。脱ハンコにむけたハードルと脱ハンコに向けてどのようなアプローチが必要なのか、について解説します。
(1)脱ハンコの高いハードル
ある調査(アドビ「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果」
)によると、7割以上の人が生産性を向上させるためにハンコをなくすことが必要、と回答しているのに対して、約5割以上の人がハンコを撤廃させるのは簡単ではない、とも答えています。
ハンコ撤廃が困難である理由としては、取引先との契約手段や商慣習に従わなければならない、というものが最も多い理由として挙げられており(半数以上)、他には、リーガル面での有効性確保、セキュリティ対策面における不安、脱ハンコに対応した新たなシステムを導入する費用、リソース不足、といった理由も挙げられています。
上記の調査レポートを分析すると、長い期間当たり前だった習慣を廃止して新たな習慣を作成・導入するということは、ソフト面では心理的な抵抗感が強く、ハード面でも設備導入・整備のための費用やリソースなどが妨げになっている、ということが明らかになっています。
しかし、一方でこのままの状態でハンコ文化を残ってしまえば、労働者の大切な時間を無駄にし続けることになる可能性があり、脱ハンコの実現に成功した企業との競争力格差の拡大に直結してしまう可能性があります。
また、脱ハンコに先行して成功した企業は増加しているので、「脱ハンコ」することができない最大の理由であった「取引先との契約手段や商慣習に従わなければならない」という状況も徐々に減少していくものと考えられます。
(2)ワークフローシステムを導入・活用して脱ハンコの実現へ
それでは、「脱ハンコ社会」を実現するためには具体的にどのような方法が考えられるのでしょうか。脱ハンコに向けおすすめできる取組方法は、ワークフローシステムを活用することです。ハンコそのものの電子化は既に複数のサービスが実際に提供されている「電子署名ツール(サービス)」など等でも実現することが可能ですが、もう一歩進めた「ワークフローシステム」には以下のような利点が考られます。
*電子署名ツール(サービス)
電子署名ツール(サービス)とは、オンライン上で契約書、議事録、請求書、などに電子サインを行ってやり取りすることが可能な電子契約ツール(サービス)のことを言います(詳細は後述)。
*ワークフローシステム
ワークフローとは、仕事の流れのことで、業務・活動における連続した作業や手続きのことを言います。ワークフローシステムとは業務効率の低下を発生させないように、ペーパー(紙)ベースの申請書、伝票、など「申請様式(フォーム)」として電子化することにより、承認や回覧を実施することが可能なシステムのことです(詳細は後述)。
ワークフローシステムの利点には以下のようなポイントを挙げることができます。
①印影は残ることになるので、従来のハンコ文化自体を踏襲しつつ電子化が可能
②ハンコのみならず書類もペーパーレス化(電子化)することが同時に実現可能
③申請、意思決定、といったアクションは全て保存することが可能。また過去の案件における意思決定の状況なども全て情報資産として保管しておくこともできる。
つまり、ワークフローシステムを活用することにより、これまでハンコ文化の職場や社会が保有していた様々な問題を解決することが可能で、脱ハンコ社会の実現もできるのです。
4.主な電子署名ツール
前述したように電子署名ツールとは、「オンライン上で契約書、議事録、請求書、などに電子サインを行ってやり取りすることが可能な電子契約ツール」のことを言い、電子署名ツールを利用したサービスのことを電子署名ツールと言います。
(1)電子署名ツールを利用するメリット
多くの電子署名ツールには、電子署名を添付・作成した電子文書を簡単に取引先など共有することが可能な機能を備えています。共有する方法は契約した電子署名ツールごとに異なっていますが、例えば、URLをメールに添付したり、ツール内でファイルを共有可能だったりする方法が一般的と言われています。ペーパー(紙)ベースの文書では書類を郵送したり、訪問して手渡しする必要がありますが、電子署名ツールではそのような手間が発生することはありません。
(2)ワークフローの確認が可能
社内稟議を起案することから承認までの一連の業務を電子署名ツールの上で実施できるような電子署名ツールの製品も既に存在しています。承認するための経路(ルート)を設定すること、などにも対応可能なので、上手に活用することができれば非常に便利なツールとなります。
ぺーパー(紙)ベースの稟議書の場合では、プリントアウトした文書類をそれぞれの担当者に回付するためには手間と時間がかかってしまいます。また、どこまで稟議書が回付されているのかを確認するためには、物理的に経路を辿ってそれぞれの担当者に確認するしか方法がありません。
しかし、電子署名ツールを利用して稟議書を回付するようになれば、承認までに必要となる時間が短縮されますし、どこで承認ルートが滞っているのかも一目で確認することが可能になります。
(3)セキュリティ強化が可能になる
しっかりとしたセキュリティ対策がなされた電子署名ツールのクラウド内にファイルを格納しておけば、大切な書類を紛失したり、第三者に盗まれたりする可能性を防止することが可能になると考えられます。一方で、電子署名ツールにログインするためのIDやパスワードなどは各自がしっかりと管理しておかなければいけません。
(4)電子文書は探すのが簡単
クラウド内で電子文書を管理することが可能な電子署名ツール(システム)を導入することにより、文書を検索することが簡単にできるようになります。紙ベースの文書の場合は、書類の格納・保管場所に実際に出向いて、日付や引先別に分類されたファイルを探さなければいけません。さらには、見つけたファイルの中からお目当ての文書を探し出さなければならないのです。
このような作業にかかる時間や手間は非常に非効率的で無駄です。契約件数が多い場合や管理している文書数が膨大だった場合には、電子署名ツールに備え付けられているクラウドの検索機能でデジタル的な管理を実施した方がはるかに便利だと考えられます。
5.電子署名ツール(サービス)を比べるポイント
電子署名ツール(サービス)には様々なものが存在していますが、重要なことはいくつかの製品を比較して自社のニーズに合致した製品を導入することです。電子署名ツール(サービス)を比べるポイントについて解説します。
①対応テンプレートを保有しているか
電子署名ツール(サービス)を導入する際には、自社でよく作成・利用するような文書のテンプレート(様式)のファイルが既に用意されているような製品を選ぶことをおすすめします。製品によっては、ツールを利用して作成した文書をテンプレートファイルの形式で登録可能な製品も存在しています。
業務効率を向上させるために電子署名ツール(サービス)を導入することが目的なのであれば、前述したテンプレート機能の有無は確認することが必要だと考えられます。
②ワークフローの申請や承認機能の有無を確認
すべての電子署名ツール(サービス)においてワークフローの申請・承認といった確認が可能なわけではありません。一般的なプランを契約したケースではワークフローを確認することが不可能であっても、オプションとして機能追加をすることで対応が可能になるような場合もあるので、ワークフローの申請や承認機能の有無の確認が必要になります。
既に会社において別途ワークフローのアプリを利用している場合であれば、そこまで気にする必要はないかもしれませんが、もしペーパー(紙)ベースで確認しているような状態なのであれば、是非導入するべき機能の1つと言うことができるでしょう。
③ツールから電子文書の送信が可能か
電子文書を電子署名ツール(サービス)上から送信することが可能なものもあれば、相手先にURLなどを共有することでファイルを確認してもらう、といった方法を採用している製品もあります。
頻繁に電子文書をやり取りするような相手が使用している電子署名ツール(サービス)を導入・利用することで、電子署名ツール(サービス)内において文書ファイルの作成~共有、までを完結させることができるケースも考えられます。電子署名ツール(サービス)を導入する場合には、電子文書を共有する方法や種類もきちんと確認しておくことが必要になります。
④セキュリティ対策による安全は確保されているか
当然ではありますが、電子署名ツール(サービス)において大切なビジネス文書などを取り扱うようなケースではセキュリティ面での対策がしっかりなされている電子署名ツール(サービス)をチョイスすることがとても重要になります。
具体的には
- 通信における暗号化は行われているか
- タイムスタンプの仕組みに対応できているか
- 電子署名ツール(サービス)へのログイン情報は記録・保存されているか
といったポイントを確認しておきましょう。
セキュリティ面が弱い電子署名ツール(サービス)を導入・利用した場合には、後になって見逃せない大きな問題が発生し自社の社会的信用を大きく失ってしまう可能性があります。電子署名ツール(サービス)を選択する場合にはコスト面のみならず、安全性に対しても注意を払っておく必要があります。
6.代表的な電子署名ツール(サービス)の紹介
脱ハンコ化を進めるためには電子署名ツール(サービス)の導入・利用は、これまで説明してきたように、欠かせない方法になると考えます。本稿では代表的な電子署名ツール(サービス)に関して特徴や費用などを解説します。
(1)クラウドサイン
弁護士ドットコム株式会社が運営しているクラウドサインは高い知名度と人気を持つサービスで、電子契約を利用している企業の約80パーセントが導入している、多くの企業から信頼されている電子署名ツール(サービス)です。
全ての作業をWeb上で実施することが可能であり、ソフトウェアのインストールも不要で、メールを認証することで契約が締結されたことになる仕組みなので、複雑な作業をすることなく簡単に使用することが可能です。
もし相手先が同じ電子署名ツール(サービス)であるクラウドサインをを導入していない場合でも利用することが可能なので、企業のみならず個人に対する契約にも利用することができるようになっています。ただし、PDFのアップロードにのみ対応しているので、この点には注意しましょう。
基本的な料金プランは以下のように設定されており、Freeプランは費用をかけることなく(無料で)利用することが可能です。クラウドサインではStandard plusプラン(Standardプラン+ペーパー(紙)ベースの書類をインポートする機能を追加)を推奨しています。
プラン | Free | tandard | Standard plus | Business |
送信コスト | 200円 | |||
主要サービス | 書類の作成・送信、電子サイン、の基本的なサービスのみ | テンプレートの作成・管理、チームの管理、Web API | 紙の書類のインポート機能(紙ベースの書類の一元的な管理) | 電話サポート、アカウント登録制限、等の機能が追加 |
(2)DocuSign(ドキュサイン)
DocuSignは世界でも最大手の電子署名ツール(サービス)であり、国外においても多くの国で利用されています。43もの言語に対応可能なので、国際間における取引などで大いに役に立っており、また契約するために必要な業務を簡素化できる仕組みも備え付けられているので迅速に電子契約書を作成することが可能です。
モバイルアプリ(無料)もあるので、ネット接続さえ可能であればどんな場所にいてもDocuSignのサービスを利用することが可能です。基本料金プランは以下のように4種類が設定されており、無料プランはないものの、無料体験コース(30日間)が用意されています。
プラン | Personal (個人向け) |
Standard (企業向け) |
Business Pro (企業向け) |
ハイレベルなソリューション |
料金(月額) | USD10 | USD25 | USD40 | 要問合せ |
ユーザー数 | 1ユーザー | MAX3ユーザー | MAX3ユーザー | 要問合せ |
主要サービス | 基本的なフィールド、モバイルアプリ、多言語への対応 | リマインダー・通知、個人用に特化したブランドの設定 | 支払・一括送信の機能、同席者の署名機能、一括送信の機能 | 管理者・利用者の管理、ハイレベルなブランド設定、など |
(3)BtoBプラットフォーム契約書
BtoBプラットフォーム契約書は、その製品名の通り、企業間の取引を前提とした電子署名ツール(サービス)であり、非常に高いレベルのセキュリティ対策が実施されています。
具体例としては、常時(24時間365日)のサーバーの保安管理、サーバーの二重化、などを挙げることができます。見積の時点から請求業務の実施に至るまで、必要となる作業プロセスをたった1つのインターフェイスのみで管理することが可能なので、各作業の簡略化ができるし、作業の漏れ過誤を防止することも可能です。また、MS-Wordで契約書を送付することが可能なので迅速に修正対応することができます。
また、BtoBプラットフォーム契約書は日本国内の多数の企業で導入・利用されているため、円滑な導入が可能となっています。基本料金プランは以下のように3種類が設定されていて、フリープラン・シルバープランには機能制限がありますが、ゴールドプランには無制限となっています。
プラン | フリープラン | シルバープラン | ゴールドプラン |
料金(月額) | 0円 | 1万円~ | 3万円~ |
コスト | なし | 50円(1通) | 50円(101~) |
ストレージ(添付) | なし | 10GBまで無料 | 50GBまで無料 |
機能の制限 |
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(4)GMO電子印鑑Agree
「弁護士による監修」という特色を打ち出しているGMO電子印鑑Agreeは、これまでに確かな実績を積んでいます。自社サイドにおいては電子証明書による本人性の担保を、相手サイドにはメール認証による本人性担保を、それぞれ確認してもらう署名方法(これを、ハイブリッド署名、と呼んでいます)を利用することが可能です。
このハイブリッド署名という方法の利用により、相手側の作業負担を軽くすることもできます。また、電子証明書だけ、メール認証だけ、で契約を結ぶことも可能なので、状況に応じて柔軟に対応することが可能になっています。
基本料金プランは、以下のように3種類が設定されていて、お試しフリープランは無料となっています。契約印プランと実印&契約印プランとの大きな差異は電子証明書を使用可能か否か、という点でありその他のサービス内容は殆ど同じと言ってよいでしょう。
プラン | お試しフリー | 契約印プラン | 実印&契約印プラン |
料金(月額) | 無料 | 1万円 | 2万円 |
コスト | 無料(上限:月10文書) | 100円(1文書) | 100円(1文書) |
電子証明書 | × | × | 〇 料金:年間8,000円/枚 送信料:300円 |
契約期間 | なし | 1か月 | 1年 |
ユーザー数 | 1ユーザー | 無制限 | 無制限 |
主要サービス | 電子署名、手書きの署名、長期署名・認定タイムスタンプ | ユーザーグループの管理、役割及び権限の設定、操作ログの管理 | 電子サイン(ただし、 相手側も実印&契約印プランの契約が必要 |
(5)リーテックスデジタル契約®
リーテックスデジタル契約®は業界で最高レベルのリーガル面での安全性を確保していることを特長としているクラウドサービスです。電子債権記録機関とも連携しているので、本人確認を徹底しており、高い信頼度を持ち合わせた電子契約書を作成することが可能です。
一方で、記録事項証明書にも対応しているので、改ざん防止・ガバナンスの強化といった、ハイレベルな法的効力を持つ電子契約書を作りたいケースには薦めたい電子署名ツール(サービス)です。なお、前述のクラウドサインと同様にメール認証を利用した契約を締結する方式を採用しています。
基本料金は以下のように4種類が設定されており、エントリープランは無料で利用可能です。ただし、アップロード(契約の発信)は5回まで、という上限が設けられているので、サービスを初めて利用する人向けのプランと考えられます。
プラン | エントリー | スタンダード | プレミアム | エンタープライズ |
料金(月額) | 無料 | 1万円 | 2万円 | クライアントの要望によりカスタマイズ可能 |
アップロード(契約の発信) | 認証・実印を問わず5回まで | 月5回まで | 月20回まで21回を超えると 1回500円 | |
締結済みの契約書(紙ベース)保管 | 1GB | 100GB | 1TB | |
オプション | ― | ― | 取引先への説明 料金:月10回までは無料 11回を超えた場合は追加料金が発生 なお、交通費は実費が発生 |
まとめ
脱ハンコ社会への実現に向けては、現時点で存在している様々なハードルを超えるとともに脱ハンコに向けた業務フローの見直しが必要不可欠になります。つまり、単にハンコを電子署名に変更するだけ、ただ電子署名ツール(サービス)を導入さえすればそれで大丈夫、というわけではないのです。
ワークフローの見直し、見直された各業務の担当者の教育・再配置、自社業務(含、取引先との連携業務)に最適な電子署名ツール(サービス)の選択と導入、そして利用するための社員教育、などが一体かつ総合的に運用されるようになって脱ハンコに向けた体制が構築されるのです。
業務効率化やコスト削減を図るとともに、現在のコロナ禍への対策としても、脱ハンコは今後の活動を見据えた場合に企業に課せられた重要な課題であると考えられるのです。
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